羊肉の会#01 モンゴロイドがモンゴル料理を食べるナイト

バンシ

バンシ、という名前の料理。

要するに羊肉を使った水餃子、ということになる。「なんだ、豚肉を羊肉に変えただけか」という気もするが、これが素晴らしかった。水餃子って、ものによっては全然肉の味がしなくて物足りない。旨味が全部スープに逃げ出しちゃったようなヤツがいる。

しかしこれはさすが羊肉だけあって、旨味というか主張がしっかりしている。どうだ、と胸を張って「俺って羊だぜ?」と自慢している。恐れ入りました、羊肉万歳。

シャルビン

これはなんだっけ。シャルビンだかホーショールだったか。いずれにせよ、小麦粉の生地の中に羊肉が入っているもの。

ああ、「シャルビン」っていうと聞きなれないけど、縁日の屋台で「シャーピン」という名の中華おやきが売られているな。あれと基本は同じだ。

馬頭琴

食事中、馬頭琴の生演奏があった。物悲しい、しみじみとした音でしばし店内一同、おとなしく聞きいる。

もし酔っ払いで店内が騒がしいときは、馬頭琴生演奏は効果的だと思う。これがアコーディオンとかギターとかだと、陽気になっちゃってますます店内が賑やかになる。

それにしても馬頭琴なる楽器、存在は知っていたけど実物を見るのは初めてだ。本当に馬の頭が楽器になってる。そして手元にスイッチがあって、演奏途中にそのスイッチを押すと馬の口から「ひひーん」という鳴き声が出る。・・・わけないな。

楽器の本体は四角い。バイオリンにしろギターにしろ、弦楽器たるものひょうたん型または曲線が美しくないとイカンのかと思っていたが、直線という手もあったか。そして、弦は2本しかない。シンプルなゆえに、複雑な曲を演奏しようとすると苦労するだろう。

きついお酒

さあここから酒飲みどもは蒸留酒祭りに突入だ。

羊肉の変わった料理がでてくる中、おとなしくありきたりなビールばっかり飲んでいるのは芸がない。そんなわけで、どんどん小さなグラスで、度数が40度オーバーの酒を頼み始めた。

写真の、今まさに注がれているお酒は「アルヒ(ブルーラベル) 40度小麦」だと思う。モンゴルはロシアと国境が面していることもあり、ウォッカを飲む習慣がある。このアルヒもまたそう。くせのないウォッカではなく、モンゴルのウォッカは独特の風味がある、と聞いたことがある。

チャイナドレス風の瓶

これは何だったっけ。

チャイナドレスのデザインをした瓶。さすがに普段使いではなく、お土産物店なんかで売っているような商品だと思う。

「ハルアルヒ(二鍋頭酒) 56度コーリャン」または「ハルアルヒ(老龍口) 40度コーリャン」のどっちかだったと思うけど、忘れた。

いずれにせよ、北京とかでよく飲まれる「白酒」と呼ばれるジャンルの蒸留酒だ。なんでチャイナドレス?と思ったが、そういえばチャイナドレスって清王朝時代の文化で、すなわちモンゴル民族が中国を支配していたころのものなのだった。だから「モンゴル」で「チャイナドレス」というのは全然おかしくない。

コーリャンで作られたお酒は強烈な香りがする。匂いだけでくらくらする。しかも、水餃子を食べるのに使う中国黒酢もコーリャンが使われている。もうとにかく、癖が強い。羊肉の好き嫌い以前に、この世界には耐えられない人がいてもおかしくない。

56度のお酒なんて、あっという間に酔っぱらってしまいそうだ。でも、ボトルで頼んで手酌でグイグイならともかく、小さなグラスを一杯ずつオーダーだ。追加注文するのが面倒なので、そこまでみんなカパカパと飲まなかったし、酔っ払いもしなかった。しかも、「おおこれは癖が相当に強い」とみんな嬉々として回し飲みをしていたので、実際にお酒の消費量はそこまで増えなかったと思う。

ちなみにさすが羊肉愛好家の集まりだけあって、癖が強いとされた二鍋頭酒が皆に愛されていた。その他のお酒は「癖がない」とむしろ残念なお酒扱いされる始末。

羊肉

ショルラッグ。羊肉の串焼き。

とにかく料理名になじみが全くない。そのせいで、注文する前の「みんなで作戦会議」の際、何度も「えっと、で、何を頼むんだっけ?」と聞き直すことになってしまった。なにしろ、

「ショルラッグを2皿頼んで、シャルビンを2枚、チャンサンマハは1皿で・・・」

なんて復唱しても、誰もなんの料理だかわからない。というか、独特の言葉なので、「お前その言葉を言いたかっただけちゃうんか」というものも多数。この際、食べたいかどうかは別で、「注文する際に、その料理名を口に出したい」というだけの理由でオーダーされたものもある。

こういうのが、むしろ楽しいんだよな。未知なる料理との出会い。

羊肉

羊内臓スープ、1,800円。

肝臓、心臓、腎臓、舌などが入っているそうだ。

臭みを防ぐために薬味がたくさんのっている。

ヒマワリの種

卓上に、碁石でも入っているかのような黒くてまるい器?が置いてあった。食事が一段落したころになってようやくその存在に気が付いた。

「なんだろうね」
「七味唐辛子かな?」
「塩じゃないか?」
「いや、塩は岩塩がテーブルに置いてあるし」

なんて言いながら蓋を開けてみたら、中からヒマワリの種が出てきて相当にびっくりした。こんなサービスがあるのか!これもモンゴル流なのだろうか。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • おお、羊!
    通勤途上の商店街に、最近まで誰かが住んでた雑居ビルの一室を
    ほぼ居抜きで使ってるモンゴルカフェがありまして
    ポーズやら餃子(?)みたいなもので昼飯食ったことがありますが
    スーテーツァイは確かに一瞬脳がフリーズしますね(笑

    お惣菜は『がっつり羊味ですが大丈夫ですか?』と聞かれましたが
    胸を張ってよく通るテナーで『大丈夫です!』と答えたのは言うまでもありません(笑)

    味付焼肉しか知らない私でしたが非常においしく頂きました。
    入り口がすげー怪しいのと車が止めにくいんですが、また行きたいなぁ…

  • ティータさん>
    モンゴルカフェ、というコンセプトの時点で面白いですね。
    しかも居抜きとは。
    スーテーツァイが日本で市民権を得るためにはまだ道のりが長いと思いますが、こういう選択肢が用意されていて、その気になれば注文できるというのはありがたいことです。
    今度はバリトンボイスで「がっつり羊味を!」と頼んでみたいものです。

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