羊肉の会#6 「焼き羊」というありそうでなかった単語

Tボーンステーキ

Tボーンステーキがやってきたぞー。

Tの字型の骨の両側にある2種類の部位を同時に楽しめるスタイル。方や、サーロイン、方や、ヒレ。牛肉ならば王様と女王様と呼ばれるくらいの2大巨頭が揃い踏みだから、肉好きにはたまらない。じゃあ、羊の場合はどうだろうか。

羊肉の食べ比べなんて経験が乏しいので、またとない機会だ。

ありがたいことに、ちゃんと人数分(6切れ)ずつに分けてあった。これが5切れしかない、とか4切れ、ってことになると、もう仲間同士で「拳で決着をつける」しかなくなる。ジャンケンなんて生ぬるい。

ステーキ食べ比べ

というわけで、一切れずつ取り分けた羊肉のTボーンステーキ。

ええと、取ったのはいいけど、どっちがサーロインでどっちがヒレだ?

しまった、食べ比べをするのはいいけれど、どっちがどっちかわからなくなってしまった。

で、案の定食べた感想が「うん、どっちもうまいね」だもんなぁ。駄舌だと思う、我ながら。

残念ながら、まだ「羊肉の味を食べ比べる」味覚の経験値が積めていないのが実感できる。おかでんの現状としては、「羊肉と、牛豚鶏肉の違いはわかりますよ、ええ」程度のものだ。

今後、この羊肉の会を通じて、もっと羊の味の違いを学んでいきたいものだ。いや、それ以前に牛肉の部位ごとの味の違いを学ぶほうが楽だし、順番が先かもしれない。

羊肉の酢味噌和え

羊肉の酢味噌和え。890円。

ヒャッハー、と叫びたくもなるけれど、「酢味噌和え」という和テイストでしっとりした料理を前にそれはお行儀が悪い。静かに「おおぅ」とため息をつこうじゃないか諸君。

見た目がとても美しい。本当にラム肉はフォトジェニックだと思う。前回のラム・ミート・テンダーでもそう感じたけど、今回特にその印象を新たにする。「インスタ映え」という言葉が世に定着して久しいけど、次のインスタ映えの対象はラム肉になるんじゃないかと思う。わりとマジで。派手にデコレーションした料理も映えるけど、こういう素材そのものに焦点を当てた、シンプルなものが再評価される時ってあると思うんだ。

味はもちろん素晴らしい。味、というか食感だな。硬すぎず柔らかすぎず、グニグニと噛むこの食感の素晴らしさよ。肉を食べている、という実感を強く感じる。

あと、参加者のみんながめいめいに口にしていたのが「ヘルシー」という言葉だった。羊肉の脂身が体内に吸収されにくいというのは有名な話だ。とはいえ、我々が歳をとって健康に気を遣って「ヘルシーな食材っていいよね」と言っているわけではない。牛肉と違って、ラム肉はガンガン食べても飽きが来ない気がする。肉を純粋に楽しめる気がする。そういう雰囲気を含めて、「ヘルシー」と言っているんだと思う。

スペアリブ

何かあともう少し食べたいな、と思って頼んだのがスペアリブ。

メニューでは4本1皿だと書かれていたけど、店員さんに確認してみたら人数分で用意できるとのこと。喜び勇んで6本でお願いした。危ないところだった、4本ならまた拳で決着をつけないといけないところだった。または、これを8本にしたらしたで、残った2本を「いや、せっかくだから食べてくださいよ」「いえいえそちらこそ」と遠慮と忖度の押し付け合いが始まるし。

手が汚れることもいとわずに両手でスペアリブをがぶりと噛む。豚肉をイメージしながら食べると、全然違う印象を持つ。さっぱりと食べやすく、至福の時が訪れる。こうやってこってりした外観になっても、相変わらずさっぱり感は残る。羊ってこんなにあっさりと食べられるのか!と驚かされる。

やっぱり、よくも悪くも「ジンギスカン食べ放題」のせいで羊肉に対して固定観念ができてしまっているんだと思う、我々日本人って。いや、十把一絡げにすんな、と言われそうだけど、でも実際そうなんじゃないかな。

ジンギスカン食べ放題でお腹いっぱい羊を食べてうんざり、というのと、濃いタレと焦げと、ひたすら羊肉・キャベツ・もやしオンリーで味に飽きてくる展開。あれは羊肉をメジャーにしてくれた最大の功労者であると同時に、羊肉に対して限定的なイメージを与えてしまったかもしれない。

ラムカツサンド

いしが、「ラムカツサンドが食べたいです!」と言う。まだシメの段階でもないのに、炭水化物?しかもラムカツをサンドイッチに?えー、なんだかもったいない気がする。

試しに6切れにすることができるか?と店員さんに聞いてみたけど、これはさすがに無理だという。パンとカツなので、細かく切ろうとすると崩れてしまうのだそうだ。なるほどそれはそうだ。

さっき、串カツを人数分にバラそうとしたら、中身の肉と外の衣とが分離してしまい、「単なる衣と、単なる肉」になってしまったのを思い出した。あの悲劇は繰り返したくない。

それはともかく、「うまいに決まってるだろうけど、わざわざカツサンドにしなくってもねぇ」と僕が思いながらも頼んだラムカツサンドがこれ。見た目が素晴らしいのは今更言うまでもないことだ。

しかし味がすごかった。この日一番の驚きと旨さだった、と言っていい。なんだこりゃあ。

パンの香ばしさと、カツのサクサクさ、そして中のラム肉のねっとりとした半生感。最後に鼻腔に残る羊の風味。これはすごいぞ。

できたてだからこその美味しさだ。おそらく、この旨さを真似しようと、コンビニとか街のベーカリーが同じレシピでカツサンドを作っても、僕らの今この瞬間の感動は再現できないと思う。できたてが提供できないからだ。いやあ、まいった。できたてのカツサンド、しかもラムカツサンドがこんなにもうまいとは。

一同、旨さのあまりに「うーむ」と唸りながら、このカツサンドを噛みしめた。すげえなあ、この店すげえなあとつくづく思う。

たたき

もうシメ系の段階に入っていたけど、「ラムの炙りユッケ」も頼んじゃった。

ごま油の風味とラム肉の相性もまた素晴らしい。ご飯にかけて食べたいし、パンの上に乗っけてもいい。パスタと絡めてもうまいだろう。もちろんそのままでもいい。なんだ、万能選手じゃないか。

ラムごはん

おなごり惜しゅうございますが、そろそろ最後のメニューといきましょう。

メニュー名は忘れたけど、ラム肉ご飯みたいな名前のやつ。2,800円という値段にビビって、いくらシェアするとしてもちょっと躊躇したのは事実。シメだから軽くさくっと、でいいんですけどね。でも店員さんの話を聞くと、ストウブでご飯を炊くのでお時間をいただきます、とのこと。ええ、わざわざストウブ使うの?

それは見てみたい、ということで頼んでみた。

で、やってきたのがこれ。おおう。ストウブで炊いたご飯の上に、ラム肉、三つ葉、大根が乗っている。炊き込みご飯ではなく、混ぜご飯のスタイルだ。

写真撮影タイムが終わったところで、いったん店員さんがストウブを引っ込め、人数分お茶碗によそってくれた。ありがたい配慮だ。

ラムごはん

で、これがラム肉ご飯。

ラムカツサンドで十分びっくりしたから、これは余韻ということであっさりとしているんだろうな・・・と思っていたけど、これまた驚いた。なんだこれ。単なる混ぜご飯じゃないぞ。ご飯粒一粒一粒に、ラム肉の脂成分がまとわりついていて、旨味がコーティングされている。最後までラム肉から目が逸らせない、逸らさせない。そんな気迫がある料理だった。

シメのご飯なのにこれじゃあさっぱりしないよ!ということにはならないのがラム肉の面白いところで、最後の最後で肉肉しいのを食べても全然イヤミがない。気持ちよく食べ終わることができたのだった。デザートを頼もうぜ、という話にもならなかった。それくらい、さっぱりと後腐れなく食べられるのが、ラム肉の魅力ということだ。

羊肉の会、毎回毎回いろいろなお店に出会えてすごく驚きと興奮がある。僕らはまだ羊肉経験値が浅いので、いちいち驚くことができるのが嬉しいことだ。引き続き、この会は続けていきたい。

(2020.02.18)

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