事前の準備をしていたら、すっかり日が暮れてしまった。
焙煎をやるからには、豆の状態をしっかり目視しなくちゃいけないのに、既にこの時点で失敗の予感しかしない。
でも、今更やめるわけにはいかないので、開始。
バルコニーにカセットコンロを置き、銀杏炒りの金網に珈琲生豆100グラムを入れる。
とにかく、何がどうなれば正解なのかよくわかっていない。
ネットで調べれば、だいたいの情報は手に入るのだけれど、まずは何はともあれ一回トライしてみよう。失敗したら、そこからあれこれ考えてみればいい。
この時点でわかっているのは、
「珈琲豆を焙煎していると、『ハゼ』と呼ばれるパチパチとした音が鳴る。それが合計2回ある。2回目のハゼが始まったあたりで焙煎を止めると、なんとなくイイカンジっぽい」
くらいのことだ。
そのパチパチ音だって、どれくらいのボリュームで奏でられるのか、まったく想像が付かない。まずは体験だ。
いくらガスコンロで加熱するといっても、直火焼きにするわけではない。
ガスコンロの炎から伝わる熱気で、豆を温める。それが焙煎だ。うっかり直火焼きにすると、豆は焦げてしまう。
焙煎開始直後は、遠火で豆を温め、豆の中の水分を抜く作業を行うのだという。確か、どこかでそんなことを聞きかじった気がする。で、金網をガサガサと揺すっているうちに「あ、豆が軽くなった気がする!」と思ったら、本格的に加熱を開始するんだったっけ。
全部いい加減だ。
今、3分経過。
緑色だった豆が、黄色くなってきた。
5分経過。
常に金網を揺すっていないといけないので、肩の三角筋あたりが鍛えられる。それなりにこれは肉体の負担がある作業だ。
金網を揺すると、豆が脱走を図ろうとする。なので、基本的に上フタは閉めておかないといけない。
しかし、フタがしまっていると、豆の色がわかりにくい。これは困った。
6分経過。
フタを開けて見たら、ずいぶん色づいてきた。
でも、なんか雲行きが怪しい。既に茶色くなっている豆と、まだ緑色の余韻を残している豆とが混在している。どうやら、焼きムラができているらしい。もっと腕を振れ!金網を揺すり続けろ!
8分経過時点。
全体的に黄色から茶色に変色してきた。ずいぶんムラがあるのは、豆のサイズとか質の違いではなく、明らかに僕の金網の扱いが下手だからだ。いかん、いかんぞ。ここからリカバリーしなければ。
一瞬でも手を止めると、その瞬間に下からの炎で豆の一部が変色する。たぶん炎に近づけすぎなんだと思う。結果を早く出そうと、急いでいるからだろう。
珈琲豆焙煎は、早すぎても遅すぎてもダメだという。のんびりと20分を超える時間をかけると、味が抜けてしまうらしい。なので、ちょいと前倒しくらいのスピード感で進めていきたい。
(つづく)
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