上野・御徒町エリアはすっかり食探検のし甲斐がある場所となった【新・ガチ中華タウン】

上野から御徒町にかけて、中国人による中国人に向けた中国料理の店が増えた、というのはこのサイトでも何度も記事にしている。

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もともと、東京の台所的存在として知名度が高かった「アメ横」がだんだんと中華料理のお店に侵食され、店の軒先に机と椅子が並んで中国人が中華料理を食べている光景をよく見るようになっていた。それがコロナによる飲食店大量閉店の影響なのかなんなのか、2020年代に入ってから猛烈な勢いで上野から御徒町にかけての路地やら雑居ビルの上層階やらにガチ中華のお店が増えた。

まだ池袋北口のような、リトルチャイナタウンという風情には至っていない。でも、ひょっとするとチャイナタウン化することがあるかもしれない。なにしろ、上野というのは成田空港からのアクセスが良く、外国にゆかりがある人にとっては便利が良い土地だ。

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アメ横は、昔は大晦日が近づくと「お正月用の食材を買い求めに来た人で賑わっています」とニュースが報じるような場所だった。今でもそういう報道は残っているかもしれないが、昔の風情があるようなお店は少なくなった。外国人が観光地と思ってアメ横にやってきて、ガッカリすることが多いという話をきくが、そりゃそうだろうな、と思う。だって日本ぽくなくなったから。

これまで、ガチ中華のお店というのは麻辣湯を中心としたお店が多いという印象だった。麻辣湯を出すお店は比較的お店の規模が小さく、麻辣湯のほかにも軽食に近い食べ物をいくつも売っていることが多い。しかし、ここ数年で上野御徒町界隈に出てきたお店は、中華料理をフルメニューで揃えているタイプが多い気がする。

「気がする」というのは、あくまでも僕の印象だからだ。本格的に上のガチ中華店めぐりを企画して調査したわけではないので、詳細はわからない。そもそも、ガチ中華というのは路面店ではなく、雑居ビルの地下とかずいぶん上のフロアにあったりして、新規開店しても気が付きにくい。僕はもっぱら、Googleマップをダラダラと眺めていて、「あれ?こんなお店があるのか・・・」と気がつくパターンだ。

この日訪れたのは、上野広小路の近くにある「撒椒小酒館」というお店だ。

ガチ中華めぐりをする気はない、と先ほど書いたが、僕の食欲センサーにヒットしたのは「案外、この手のガチ中華店はランチタイムにビュッフェをやっているぞ!?」ということに気がついたからだ。

ビュッフェ、というと大げさだけど、メイン料理を頼んだら、あとはご飯とスープ、そしてちょっとした副菜数品をセルフサービスで取りに行くというスタイルだ。もちろん、おかわりは自由。

テレワーク三昧で刺激に飢えている僕は、お昼にガツンと何か腹に入れたい。ガチ中華で、中華料理をズドンと食べるというのはとても魅力的に見えた。なので、結果的にガチ中華をいくつも巡ることになった。

で、だ。この日訪れた「撒椒小酒館」は、読み方が全然わからない。そもそも、日本人に店名を覚えてもらおうという気さえない。もはや、僕も名前を調べようという気にならないレベルだ。

もともとこのお店が入居している10階建てのビルは、一棟まるごとカラオケ館だったと記憶している。しかし、コロナで自粛ムードが3年続いたせいで、おそらくカラオケ館は床面積を縮小している(このお店を実際に利用したことがないので、僕が通りすがりに見かけたときの記憶に基づく。もし違っていたらごめんなさい)。

で、その空いた空間にガチ中華が入っているのだから、栄枯盛衰を感じる。

なお、建物の2階・3階にはマクドナルドが入居した。道路に面していない、雑居ビルの2階3階にマクドナルドだなんて・・・商売になるのか?と目を疑う。雑居ビル独特の決して広くないエレベーターに乗って上の階に上がらないと、マクドナルドにたどり着かない。

でも、昼時にこのマクドナルドは大勢の人で賑わっていた。これもまた目を疑った。大人気だ。

お店に入る。

ガチ中華のお店に入る際には、お作法がある。店員さんが出迎えた際、大きく、はっきりした声で「一人です!」と伝えることだ。そうすることで、「あ、この人は日本人だ」と理解してもらえる。

ガチ中華の場合、お客さんが中国人であることが多いので、「歓迎降臨!」と出迎えられることがある。「いらっしゃいませー」なんて言ってくれない。最初に僕が日本人であると理解してもらわないと、中国人同士ならわかるルールであしらわれてしまい、日本人の僕は困惑してしまう。

店内は想像以上に広い。雑居ビルならではの狭苦しさがない。天井をぶち抜いて、配管をむき出しにしていることも空間の広さを感じさせる演出なのだろう。

店内のカラーリングは、まるでCGかアクリル絵の具で書いた絵のようなパキッとしたカラーリングだ。この色合いを見るだけで、日本人にはないセンスを感じる。

エビデンスはないのだけれど、日本人と中国人とでは視覚のセンサーに差があるんじゃないかと思う。それくらい、彼らと日本人とで好む色合いが違う。どちらかといういと、中国の人が好む色の方がどぎつい。そして、ギラギラして目に突き刺さるようなLED照明も平気、という印象だ。

お店の天井から、何かキャッチコピーのようなものが書かれた紙がぶら下がっている。語尾が「!」となっているので、何かを訴えかけているようだが、いちいち読解する気にはならない。なにせ、このお店のお作法を瞬時に理解するので精一杯だ。

各テーブルには、大型のタブレットが完備されていた。さすがだ。

こういうことをしれっと平気でやるのが、中国人の凄さだ。このお店に限らず、最近のガチ中華店はタブレットをメニューにし、注文もタブレット経由で行うのが珍しくない。

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別のお店でも、似たようなシステムが導入されていた。

これは日本人にとってもありがたい。好きなものを、好きなだけオーダーできる。

店員さんは僕を席に案内した際、タブレットに人数を入力し、そのあと言語を「日本語」に切り替えていた。タブレットメニューの良いところは、紙と比べて多言語対応がしやすいことだ。

なお、タブレットはファーウェイ製。

メニューをざっと眺めてみる。

「カエル」がしれっとメニューに入っている。1,680円ということで、高級食材だ。

メニューは一応日本語対応しているのだが、すべての料理やカテゴリが日本語に翻訳されているわけではない。翻訳の最中なのか、それとも「どうせ日本人はこれを頼まないだろう」という料理については翻訳を止めたのか、または日本語で適切な表現が思いつかなかったので放置したのか。

今回は、「定食」というタブに表示されるメニューの中から一つを選ぼう。

「白身魚の高菜煮込み」880円税込、をチョイス。

ご飯や副菜が食べ放題であることを考えたら、今どきとても安いと思う。

「中国人がやっているお店でしょ?怪しい食材を使って、安い人件費で人を雇っていて、安いに決まってるでしょ」と思う人は考えが古い。それは10年20年前の発想であって、もはや今は日本と中国では立場が逆転してしまった。「中華だから雑、中華だから安い」という時代ではない。

さきほどのカエルがそうであったように、それなりの料理、それなりの食材ともなれば値段が高い。それを考えれば、この880円というのはちょっとびっくりする安さだ。

ランチの定食メニューについては、結構日本人向けを意識しているようだ。チンジャオロースーやエビチリ、麻婆豆腐など日本人にもおなじみのメニューが並ぶ。

笑ってしまったのが、中華メニュー名としては「地三鮮」といわれる、ナスとじゃがいもとピーマンの炒めものの日本語表記だ。「ナス科三兄弟炒め」と書いてあった。

こういう表現を見るにつけ、本当に翻訳というのは難しい。固有名詞や料理名というのは本当に難しい。

特に店員さんから説明もなにもないので、自分でセルフサービスのコーナーに行く。

料理が来る前にセルフサービス料理を取ってよいのか、それとも料理が卓上に届いてから取りに行くのが正解なのか、わからない。そういう些細なことでビビるのが僕の性格だ。

ホワイトボードにあれこれ注意書きが書いてある。読んでみると、ランチの定食は11:00-15:00だよ、定食メニューを頼んだ人限定だよ、定食メニューを持ち帰りにする際、このセルフサービス料理も欲しいなら100円追加料金だよ、定食を頼んでいない仲間とこの料理をシェアするなよ、と書いてあった。

それにしても、ご飯とスープがおかわり自由ならまだしも、副菜が4品、デザートとして杏仁豆腐風の寒天が1品あるというのはすごい。

白身魚の高菜煮込みが届いた。

店員さんが片手鍋をもってきて、ドスンとテーブルの上にそのまま置いたのがエモかった。えっ、そんなやり方、ありなの?と。

まず、色気もへったくれもない、実用性重視の片手鍋で料理がそのまま出てくるというのがいい。むしろ、きれいに盛り付けた料理なんかよりもうまそうに見える。「こういうのでいいんだよ」と思わず声がでてしまいそうだ。

とはいえ、熱々の鍋を鍋敷きなしで机に置くだなんて乱暴な、と思う。で、はたと気がつく。「あっ、このテーブル、タイル張りになってる!」と。店全体の異国情緒に気を取られていたが、眼の前のテーブルはタイル張りだった。単なる装飾のためではなく、熱い料理・食器をじかに置くことができるようにするためだ。

セルフサービスで取ってきた料理たち。

煮玉子、豆腐干絲(具は何も入っていない)、葱油餅のようなもの、猪耳涼拌黄瓜(豚耳とキュウリをラー油で和えたもの)。

それにご飯とスープ。これで880円だなんて、最高じゃないか。

特に奥の鍋を見てほしい。片手鍋だからといって小ぶりというわけではなく、しっかりとしたボリュームがある。恐るべきお店だ。ただし、多くのガチ中華店と同様、このお店も白米は露骨にまずい。「まずい」というとお店に申し訳ないので弁明すると、たぶん日本人の好みのお米と、中国人が好むお米とは違うのだと思う。日本人の口にあわない要素があってこその、ガチ中華の面白さだ。

今後、機会があれば再訪したい。かなり気に入った。今回の訪問でお店のお作法がわかったので、次はもっと気軽に楽しめると思う。

(2023.08.30)

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