10月10日はお好み焼の日

10月10日はお好み焼の日、なんだそうだ。
えっ、なんだそれ。聞いたことがなかった。
「いい夫婦の日」とか「猫の日」とか、日本では一年中なにかの記念日がある。その多くはダジャレや語呂合わせに由来していて、興味がない人から見ると「寒い」という印象を受ける。
でも、「いい夫婦の日」という言葉に惹かれて11月22日に結婚・入籍する人はそれなりの数いる。「記念日」は人々がなにか行動を起こすきっかけとして、うまく作用することもあるようだ。
僕のようなあまのじゃくな性格だと、むしろ「マーケティングに踊らされないぞ!」と記念日に背を向ける。しかし、「10月10日はお好み焼の日」というピースフルな宣言をされると、「なるほど、久しぶりにお好み焼きを食べてみたくなってきたぞ!」という気持ちになってきた。
なにしろ、「10月10日=ジュージュー」だからお好み焼の日、なんだって。苦し紛れの語呂合わせではなく、至って王道の語呂合わせ、いや、語呂合わせでもなくそのまんまの発音で「おっ」と思わず声が出た。その発想、ありそうでなかった。
ジュージュー音を立てる食べ物は日本にたくさんある。焼肉なんてその代表例だし、北海道のちゃんちゃん焼きとか、キャンプのバーベキューとか、「10月10日」を記念日にしても良さそうな食べ物は挙げるときりがない。オタフクソース、よくぞ気がついて記念日登録したものだ。
これがお好み焼屋(道とん堀とか)からの申請ではなく、1ソースメーカーであるオタフクソースの発案・申請であるというのが面白い。
あっ、話が前後した。今回、この「10月10日お好み焼の日」にあわせて、オタフクソースが東京でイベントを開催する、という。それに不肖おかでんが行ってきましたよ、というのが今回の話。
イベント概要
JR両国駅"幻の3番線ホーム"でお好み焼稽古
お好み焼道場「オタフク部屋」
日時:2024年10月10日(木)~13日(日) 各日11:00~21:00、1時間ごとの開催。所要時間1時間。(予約制)
場所:JR総武線両国駅3番ホーム上
対象年齢:小学1年生以上
やること:関西お好み焼をホーム上のホットプレートで焼き、試食する。お好み焼に精通したオタフク社員による焼き方のレクチャーあり。
https://www.otafuku.co.jp/corporate/news/detail/?t_id=411
取材のお誘い
この記念日、そしてイベントのことを知ったのは、1ヶ月ほど前に「お好み焼記念日 PR事務局」というところから「お好み焼道場「オタフク部屋」事前メディア体験会に来ませんか?」という連絡を受けたからだ。
疑い深い性格の僕は、首を捻った。たぶん、オタフクソースがこのイベントをやるのは本当だろう。だとしても、「アワレみ隊OnTheWeb」を「メディア」と認識し、お誘いをかけるとはどういうことだろう?
Youtuberやインフルエンサーをたくさん集めた、バズり戦略なのだろうか?ならば、僕に声を掛けるのは明らかにミスだ。何しろ、このサイトは創設24年間、「家族さえも読まない孤高のチラシの裏」を貫いてきたからだ。
事務局側の何らかのミスでうっかりアワレみ隊OnTheWebに声をかけてしまったのかもしれない。なので、「参加します!」と喜んで返事を返したら、「あっ、間違えてお誘いしてしまいました。申し訳ありません、アナタは対象外です」と言われるんじゃないか?と不安になった。
なので、「あのぅ、零細サイトなんですけど、お誘いがもし間違いでないならば参加します。良いですか?」とオドオドしながら事務局に返事を返した。
事務局からは特に何も訂正や否定がなく、僕の事前メディア体験会への参加が決まった。事務局も仕事なので、「いえいえー、零細サイトだなんてとんでもないです」と、僕の謙遜をフォローするような言葉はなく、ちゃんとした1メディアとして対応した。
どういう意図で僕に声がけをしたのか、オタフク及びPR事務局は一体何を僕に期待しているのかは不明だ。もちろん記事化してほしいということに尽きるんだろうが、だとしてもなぜアワレみ隊OnTheWebを??
少なくとも、メディア各社に声がけする際にPR事務局はリストを作成しているわけで、そこに何らかの理由で当サイトが抽出されたことになる。最近じゃGoogle検索でも滅多に引っかからなくなった「アワレみ隊OnTheWeb」。誰だよ、このサイトを探し当てたのは。
もちろん、僕はお好み焼き、特にオタフクソースとの繋がりはある。
広島出身なのでお好み焼きを愛しているのは当然として、オタフクソース主催のお好み焼き開業予定者向けの講習会を受講し、1日じっくりとお好み焼きの焼き方や店舗運営、機材について教えてもらったことがある。それ以降、しばらくお好み焼きを家で焼きまくっていたものだ。
そのときの記事は以下にまとめてある。

このページ以外にも、このサイト内では時々お好み焼きが話題としてでてくる。
おそらくこの記事を何らかの嗅覚で見つけたPR事務局?オタフクソース?が、「このサイトにもメディアとして声がけしてみよう」と思ったのだろう。どれだけ懐が広いんだよ。
事務局から送られてきた事前案内によると、
「撮影場所は ①ムービー ②スチール ③記者様 の順に、当日受付先着順にてご案内します。」
なんて書いてある。あれっ、インフルエンサー大集合!のユルい会なのかと思ったけど、ガチなイベントらしい。
こうなってくると、「お好み焼を焼く体験」そのもののレポートより、どういうイベント運営がされていて、どういうメディアが集まっているのかが気になる。
当日は、単にお好み焼きを焼いてきました!美味しかったです!では済まさず、もう少しイベント全体を俯瞰して観察してみようと思った。
・・・が、結論から先にいうと、「記者」としての経験が皆無の僕はイベントを俯瞰することができなかった。「お好み焼き最高!」で終わり、幸福感と満腹感、そして「しまった、こんなはずでは」という困惑を感じながら帰路についた。
イベント会場(JR総武線両国駅 3番線ホーム)
両国駅の3番線ホームは、今は使われていない総武線のホームだ。昔、浅草橋ができるまでは房総半島方面の玄関口が両国駅だったので、その名残としてこの駅はホームの数が多い。
2024年4月、ここで味の素が自社の冷凍餃子をPRするイベント「超ギョーザステーション」を開催し、大盛況となっている。

使われていないホームとはいえ、「鉄道駅のホームで食事をする」というのは一般の人からするととてつもなく貴重な体験だ。すぐ横を黄色い総武線が走っている様子が見える中、餃子を焼いたりお好み焼きを焼くというのは、一生ものの思い出になる。
こんなすごい場所だが、持ち主であるJR東日本が積極的に企業に貸し出している様子はない。大々的に貸し出せば、連日イベントが埋まりそうだけど、JR東日本は場所賀しビジネスで儲けることはあまり考えていないのかもしれない。

3番ホームを2番線から見下ろしたところ。背後には両国国技館。

広島の町並みでは大変おなじみの、お好み焼き屋さんののれんがずらっと並び、オタフクのロゴが入ったお好み焼ののぼりが並ぶ。「おっ、何事だ?」と通りすがりの人たちの耳目を集めるには十分な、インパクトある光景。

江戸東京博物館、東京スカイツリーなども見える。
こんな場所でお好み焼きを焼くのだから、痛快だ。自分で手を動かして調理する、という主体性とこのシチュエーションはよく馴染む。これが「出来上がったお好み焼きがテーブルに運ばれてくるイベント」だったら、すごく味気ない。
だから、このホームを夏の間はビアガーデンにします!ということをやったら手っ取り早く儲かるだろうが、せっかくの貴重なシチュエーションが勿体ない。ここは餃子を焼くとか、お好み焼きを焼くとか、ハンドメイドな料理との相性がいい。

改札から3番ホームに上がってくる階段の裏手がイベントのバックヤードになっていて、業務用冷蔵庫が据え付けてあった。
このバックヤード部分のホームからそのまま外の車道に繋がる道があって、荷物を運ぶ車がホームすぐ脇まで寄せることができるようだった。便利だ。

両国駅の改札から入ってすぐが3番線に通じる長い廊下。赤い絨毯が敷いてあってスペシャル感がある。
総武線を利用する乗降客は1番線・2番線に向かうため、この「お好み焼道場」という看板とお好み焼きののれんを目の当たりにする。「何が始まるんだ?」と注目することだろう。

今日は事前メディア体験会のため、人の数が少ない。
しかもメディア体験会はこの日2回開催され、僕は2回目の方に参加した。おそらく、速報性を求めるメディアは1回目の方に多く参加したはずだ。僕は本業がサラリーマンなので、仕事が終わってからの参加だ。
なお、10月10日からの一般公開だが、公式サイトで予約受け付けが開始されるとほぼ瞬殺に近い状態で全枠予約が埋まってしまったようだ。僕は今回のメディア事前体験会と別に、記者という立場ではなく個人の立場で家族同伴でこのイベントに参加しようと思っていた。お好み焼を焼く楽しさ、というのを妻子に知ってほしかったからだ。でも、ちょっと出足が遅かっただけで満席。さすがの人気だ。
東京の人は、この手のイベントに飢えている。お好み焼き好きがこの手のイベントにエントリーするだけでなく、「イベント好き」がイベントに参加してくる。でも、そういうノンポリのイベント好きが、「案外お好み焼きっていいじゃん」と思ってファンになったり拡散してくれる。「映え目当てのやつは来るな!」とは言えない。

長い廊下には、いろいろなパネルが設置され、商品や企業の紹介、レシピの紹介が並んでいた。
「ほう」と思ったのは、「関西お好み焼」と「広島お好み焼」のレシピ紹介パネルが並んで仲良く設置されていたことだ。
「広島のお好み焼きは広島焼きだ」と言われて広島人が怒る(広島の人は、地元のお好み焼きこそがお好み焼きであって、広島焼きという別の料理名にするな!というプライドがある)、という定番ムーブが存在するが、それに配慮した作り。
オタフクソースは広島の会社で、広島のお好み焼きの発展に深く寄与した会社だ。でも、全国規模のソース会社であり、もちろん関西エリアのお好み焼き文化も大事だ。なので、「両論併記」という形を取っているし、「広島風・関西風」という言い方をしていない。
「広島お好み焼き・関西お好み焼き」という表現、僕は初めて見たが、波風が立たなくて済むのでこの表現は良いと思った。「風」がついた時点で、それをつけられた側は「マネをしたと思われた」と感じ、気分を害するものだ。
受付、そして会場であるホーム上へ

メディア用受付では、「お名刺を頂戴します」と言われたのだが、あいにく名刺をつい先日全部廃棄してしまったので手持ちがない。そのせいで名前を名乗ることになったのだが、恥ずかしくて小声&早口となってしまった。すると受付の方は聞き取れず、「もう一度お願いします」と言われ、もう一度恥ずかしい思いをすることになった。
百年に一回くらいはこういうイベントへのお誘いがあるかもしれないから、「アワレみ隊OnTheWeb おかでん」の名刺は作って持っておいたほうが良さそうだ。
恥ずかしい思いをしたが、いざプレスパスを受け取ると僕はれっきとしたメディア様の扱いを受けた。
マイクを持って説明する主催者のすぐ目の前の席に案内された。「写真など撮りやすい場所をご自由にお選びください」と言われ、恐縮する。これまで隠し撮りに近いようなことをずっとやってきたけど、堂々と人様にカメラを向けて撮影し、しかもそれを公開して良いという体験はなかなかない。
一方で、ずいぶんと離れた末席のところに人が集まっている。あちらはなんだろう?と思ったら、オタフクソースの公式ファンクラブ「オタフクラブ」の会員らしい。今回、オタフクラブにもメディア体験会に参加できるよう、声がけしたようだ。
https://otafuku.commmune.com/view/home
そのかわり、メディア優先なので、僕らメディア席と随分距離が空いている。
肝心のメディアだが、僕含めて7名だったと思う。7名程度で「・・・と思う」と記憶が曖昧なのは、とにかく目の前のお好み焼き体験に夢中になってしまい、周囲を冷静に見られなかったからだ。
この「たぶん7名」のメディアの方々を見ても、どういう素性の人なのかまったくわからなかった。同じテーブルに着いた人に「アンタ、誰?」と聞いてみればよかったのだけど、ビビって聞けなかった。というか、お好み焼きを自分で焼くよ!その後は試食だよ!オタフクソースの人と話ができるよ!ということをやっていたら1時間はあっという間で、メディア同士の探り合いをやっていられなかった。相手も取材中の立場なので、僕が雑談を持ちかけてよいのかどうか、わからなかったし。
ただ、テレビや新聞といった大手メディアの人はいなかったように見えた。おそらくそういうメディアは第一回目のメディア体験会に参加したのだろう。または、お客がたくさん押し寄せてお好み焼きを焼いている、という絵が欲しいので10月10日の初日に取材に入るのだろう。
一眼カメラを持ち込んでカシャカシャ撮影しているのは僕だけで、コンデジ1名、残りの人はスマホで写真を撮影していた。僕同様、何らかのwebサイトを運営している人たちなのだろうか?

味の素の「超ギョーザステーション」と根本的に違うのが、ここは「お好み焼道場」というスタンスであること。
超ギョーザステーションがホットプレートを前に、飲んで食べて楽しく1時間!というスタイルだったのに対し、今回のイベントは調理場と試食場が別。焼きながら食べる、ということになっていない。
そのかわり、オタフクソースのお好み焼き課長(マジでそういう部署があって、そういう課長がいる)をはじめとするオタフクソースの社員による手ほどきを受けながら、お好み焼きを焼く。出来上がったお好み焼きを食べるのはあくまでも「試食」という扱いであり、ストイックだ。
なので、会場内には「有料ドリンクメニュー」なんて気の利いたものはない。食べたら帰ってくれ、というシンプルさ。

テーブルにはデニム生地のエプロンと紙のハット、小さなお好みソース、そして午後の紅茶無糖が一人一つずつ置いてあった。
デニムのエプロンはノベルティとして持って帰れるわけないよな・・・さすがに。
お好み焼き屋の店員さんは、熱い鉄板の前で1日中仕事をする。そのため、汚れや熱に強いデニム生地のエプロンは仕事をする上で使い勝手がとても良い。なので、お好み焼き屋さんがこのオタフクのエプロンをつけている姿を見かけることが結構ある。

ランチョンマットがわりに紙が敷いてあって、「お好み焼き決まり手 三手」と書かれていた。
一、キャベツ無双 キャベツはたっぷり 1枚150グラム
一、二センチ焼き 厚さは2センチ 中火で焼こう
一、ふたのせ 豚肉をのせて ひっくり返したら 次は蒸し焼き
なるほど、今まで適当にお好み焼きを家で焼いていたけど、今回は「道場」なのだからきっちりとプロのノウハウに沿って焼いてみよう。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
ちょっと調べてみただけでも10月10日って、物凄い数の記念日が制定されてるんですね。
ひとつの日付に対して、申請して、認定されればいくつでも設定できるってことなのか。今さら知りました。
「今日は〇〇の日なんだって~」って気軽にトリビアを語ろうとすると大変なことになりそうですね。
ちょっとおかしかったのは「TOTOの日」で、まあ字面を見れば一目瞭然なのだけど、日本における記念日なんだから旧・東洋陶器株式会社の方かと思ったら、アメリカのバンドの方だとか。なんだそりゃ。
一平ちゃん>
同じ日にいくつも記念日が設定できるなら、わざわざ記念日協会におカネを払って記念日登録する意味がない気がする。
勝手に「◯月◯日は△△の日」と名乗っても、結果的に一緒なのでは?
勝手に名乗ったからといって、記念日協会や同じ日の他業界から「権利侵害だ!」と訴えられることはないだろうし。