京橋 恵み屋 本店(01)

2004年03月04日
【店舗数:155】【そば食:277】
東京都中央区京橋

十割石臼もり大盛り

京橋恵み屋

この日、「よし田」「ぎんざ田中屋」と蕎麦屋をハシゴしてきたが、どうしてもひっかかる事があった。「小諸そば」の存在だ。銀座をうろうろ歩いている間に、二軒ほど小諸そばの横を通り過ぎたからだ。

以前、小諸そばの訪問記をこのコーナーに掲載したことがある。そのとき、結構な悪口を書いたせいもあって一部蕎麦好きからは批判された経緯がある。確かに、その批判が気になってあれこれ小諸そばについてwebを調べてみたが、そのどれもが一様に「小諸そばは良い」と評価されている。ならば、もう一度訪問して、再評価しなくてはなるまい。

ということで、ぎんざ田中屋から小諸そばに歩き始めたのだが・・・途中で面倒臭くなってしまったので、100mほど南下したところでギブ。

だってー、小諸そばの場所が会社と逆方向なんだもーん。もうおなかいっぱいだしー、あんまり面倒な事したくないんだよねー。

だったら2軒も蕎麦屋に行くな。そりゃあおなかいっぱいになるわい。

成る程確かにそれは非常に興味深い指摘事項ではあるが、私のようなビジネスマンにとっては情報のハブである会社にいかに早く帰還できるかがビジネスの上で重要であるわけで

だから、言い訳すんなって。もう一度言うぞ、だったら2軒も蕎麦屋に行くな。

ううむ。

結局、「京橋恵み屋」に行くことにした。

おい!やっぱりもう1軒行ったんか。

小諸そばは断腸の思いで断念した(相当脚色ある表現)のだが、銀座一丁目の地下鉄駅に向かっている最中にふと思い出したんですよ、「そういえば京橋にうまい蕎麦を食べさせてくれる という立ち食い蕎麦屋があったっけ」ってぇ事に。

小諸そば(立ち食い蕎麦屋)が駄目なら、その代替に京橋(やっぱりこっちも立ち食い蕎麦屋)で、ってことで。

代替、じゃねぇよまったく。結局、たった1時間しかないお昼休みだというのに3軒目の蕎麦屋に突入だ。 蕎麦屋の場合、ささっと食べることができるので、お昼休みのような短時間でもハシゴができてあらお得。

いや、お得じゃなかった。散財しまくり。ううむ。

このお店、「立ち食い蕎麦屋にしては勿体ない蕎麦がでてくる」と一部では評判が良い。前から興味があったので、銀座でお酒を飲んだ帰りに立ち寄ってみたことがある。しかし、どうやらここは「昼は立ち食い蕎麦、夜は立ち飲み屋」という「がんぎ」的二毛作店舗らしく、お酒を抱え込んだオッチャンたちが狭い店内にひしめき合い、しまいにはお店からこぼれ落ちているありさまだった 。だから入店を断念した経緯がある。

さすがにお昼に訪問すれば、立ち食い蕎麦屋だから回転は良いだろう。さて、どうかな、と。

京橋恵み屋メニュー

記憶を辿りながらあるくことしばし、京橋恵み屋に到着。おっ、ちょうど店に入る人がいるぞ。彼らの後ろにくっついて行って、このお店の流儀を見させてもらうことにしよう。

客席スペースは、一辺3m程度のほぼ正方形の形をしていた。壁沿いと、スペースの中央にカウンターが設置されていて、そこでみんな蕎麦をすすっている。店内は人でいっぱいだ、肩と肩がぶつかりあっているぞ。満員電車なみの混雑、といって過言ではない。

このお店の場合、もりそばがメインメニューだ。普通の立ち食い蕎麦屋のように、つゆもののそばがメインというわけではない。店内のお品書きには、かけそばなど書かれているのだが、店の外にある看板にはもりそばメニューしか書かれていない。

だから、必然的にみんなもりそばを食べているわけで、暖かい蕎麦のように「どんぶりを手に、外で食べよう」なんて人はいなかった。もりそば故に、カウンタの上にそばを乗せておく必要がある。だから、カウンター大混雑 。

ええと、食券機は・・・ないのか。すばやく店内を見渡し、この店のシステムを把握する。

前の客の挙動を細かく観察する。レジカウンタが店の奥にあって、なるほどあそこで注文して、精算して、そして蕎麦を受け取るのだな。ははーん。

行列して食事をするのは嫌いだが、今回のように初めて訪れたお店の場合は行列があった方が気が楽だ。

ひとりずつお会計して、蕎麦を出して・・・とやっているので、一人のお客をさばくのに1分程度時間がかかっている。立ち食い蕎麦屋としては結構のんきだ。お店の人は、レジ担当と厨房担当の2名。 夫婦だろうか。

待っている間、狭い店内では「ずずずーっ」「ぞぞぞぞぞ」と蕎麦をすする音が響きわたる。ううむ、何やら気味の悪い空間かもしれない。考えてみれば、これだけ狭いスペースで、みんなもりそばをすすり上げているのって他にあまり例が無いと思う。立ち食い蕎麦屋では、大抵が「天ぷらそば」とか暖かい蕎麦を食べているからだ。道理で、麺すすり上げ音が不気味なわけだ。

ぷしゅー

・・・ん?何だ今の音は。何やらプレス機が空気を圧搾したような音が、今「ずぞぞぞぞ」という蕎麦吸い込み音の中から聞こえてきたぞ。

ぷしゅー

ほら、まただ。厨房からだ。

待ち行列が前に進んだとき、ようやくその音の正体がわかった。それは、「蕎麦マシーン」と呼ぶにふさわしい機械だった。

麺をゆでる釜の上に、その機械は据え付けられていた。オーダーが入ると、ご主人はおもむろに黒っぽい団子・・・蕎麦を練った生地を小さく団子にしたもの・・・をその機械に装着した。まるで、エスプレッソメーカーにコーヒー パウダーを装着するような感じだ。そして、フタを締めてスイッチオンで・・・あああ、ところてんのように蕎麦がにょろにょろと垂れてきた!そしてそのまま釜のなかに吸い込まれていく!

数秒麺が垂れたところで、ご主人はナイフのようなもので麺をすぱっと切る。そして、また数秒間蕎麦が垂れたところで、もう一度すぱっ。なるほど、これはよく考えたもんだ。

「挽きたて・打ちたて・ゆでたて」

がおいしい蕎麦の「3たて」と言われているが、「打ち立て」「ゆでたて」は確実に食べられるという算段だ。「蕎麦団子」から「生そば」になり、そして「ゆでたそば」に変遷していくわけだけど、「生そば」としてこの世に生を受けた時間はわずか1秒。そのまま、「おぎゃあ」と泣く暇もなく、熱湯にざぶんとつかるのだから人生はかないもんです。 ただ、これを「打ち立て」と呼ぶにふさわしいのかどうかは、怪しいが。

見ていると、ところてん式蕎麦ひねりだし口は何種類かあるみたいで、注文された蕎麦に応じて使い分けているようだった。更級はこっち、石臼はこっち、と。ま、そりゃそうだ、前の蕎麦の残りが一緒になって出てきて、「一本で二色蕎麦」なんてのは笑えない。それにしてもうまくできたマシンだ。感心するしかない。

感心してしまったので、ついつい自分のオーダーが来たときには「え、ええと、石臼もり大盛りで」と頼んでしまった。3軒目にして大盛り頼むなよ。

厨房にオーダーが通って、ご主人は「恵みもり」よりも数段色黒な蕎麦玉を取り出してきた。しかも、1個ではなく、2個を機械に装着。そうか、大盛りは普通盛りの2倍なのだな。

ぷしゅー

麺を切るナイフ(のようなもの)が、一定のリズムを刻みながらきらめく。しゃっ、しゃっ。

しゃっ、しゃっ

・・・あの、一体いつまで麺が出続けるんでしょうか。だんだん不安になってきた。えらく量、多くアリマセヌカ?

そりゃ大盛り注文したんだから、量が多くて当たり前だ。

石臼もり大盛り

出てきた「石臼もり大盛り」がこちら。

うわ、これは量が多い。なにしろ、容器がどんぶり・・・というよりもこね鉢じゃないか、これは。豪快!というより、もうここまでくるとやりすぎ!といったかんじ。いや、もちろんうれしい悲鳴なんですがね。

三軒目にするんじゃなかったなあ、もう少し早くこの店の事を思い出していたら、一軒目にしていたんだけどなあ、と思いながらそばだけすすってみる。

ずるずる。

ん、これは確かにうまい。立ち食い蕎麦屋ではじめて、蕎麦の香りと味がしっかりするものに出会った。というか、何だこれは。立ち食い蕎麦屋で出すレベルの蕎麦ではない。いやあ、いい蕎麦に出会った。

と、べた褒めしたかったのだが、なんだか独特の食感なんである、これが。「堅い」とか「腰がある」では語れない次元で、食感が堅い。ガチガチに堅いというわけではなくって、敢えて表現するなら・・・銀紙もしくは紙きれを間違えて食べちゃったような感覚。歯ごたえが、キシキシした感じがするのだ。歯ぬかりする、という表現はちょっと違うのだが、一瞬「あれ?乾麺生ゆで?」と勘違いしたくらいの感覚だった。おそらく、繊維質が多いのだろう。だから「紙を食べている」感覚になったのかもしれない。

非常に量が多い蕎麦を平らげている最中、最初は驚異!蕎麦の香りがするぞ!と大喜びだったのだが、徐々に「キシキシ」感が気になりだして、喜びが「何だろう、この食感は?」という疑問に変わっていき、結局、食べ終えた時には「不思議な蕎麦だったなあ」という印象になってしまった。

おいしかった。確実においしかった。アンタ立ち食いでやるのは勿体ないよ、と思うが、逆に「立ち食いでもうまい蕎麦がある」と立ち食い業界の底上げに貢献する意味から、今のままのスタイルで頑張ってもらいたい。

大盛りとはいえ、立ち食い蕎麦屋にあるまじき価格である「750円」を今日は支払った。しかし、それに見合っただけの蕎麦を満喫させて頂いたので、何一つ文句はございませぬ。ますますのご発展とご清祥を祈念いたしまして、乾杯の音頭をとらせて頂きます。それではご唱和ください

あれ、話がずれた。なんで結婚式のスピーチになってるんだか。

でもホントそう思いますよ、このお店、ぜひチェーン展開するなりして、広くうまい蕎麦を普及させて欲しい。

おお、オチ無しか。えらく今日は素直だな、おかでん。

ということで、四軒目の蕎麦屋に向かうのであった。

待て、それはさすがに冗談だよな。

・・・冗談です。お昼休み、時間切れになりました。というより、胃袋も容量オーバーです。胃袋の中が、蕎麦いなりか蕎麦寿司のようになっている状態・・・ううう、さすがに食べ過ぎた。