
サービストンカツ(ライス付)がやってきた。これぞ、ますゐの象徴。そして、今回、350円から380円に値上がりする品。
「たった30円の値上げ」で、地元新聞で大々的に記事にされたり、東京に住む僕が慌てるくらいの存在。リビングレジェンドと称しても過言ではない。
「あっ、ポテトサラダじゃなくてマカロニサラダになっとる!」
誰かが気がついた。トンカツの裏に隠れているけれど、見逃せない存在。
「ほんまじゃ!確かサービストンカツってポテトサラダじゃったよのう?」
「ああ、言われてみれば・・・」
僕でさえ、「言われてみればそうだ」ということなんだけど、案外大事なことだ。
「これも値上げの余波だろうか?」
「どうしたんじゃろうねえ」
みんなであれこれ邪推する。
で、後で桝井専務に話を聞いたら、単にポテトサラダを切らしてしまったので代用で、ということだった。ああびっくりした。年明け初日の営業だったので、いろいろ品切れが起きていたらしい。
このほか、何だったか忘れたけど、レギュラーメニューもあれこれ品切れになっていた。そりゃそうだ、今日は1月4日だもの。なんでもかんでも潤沢に揃っていると思うなよ?

昔のますゐ詣では、カメラを意識してふざけていたせいもあって、もっと「うひょー!楽しいぜ!うまいぜ!」という写真が多かった。しかしさすがに我々昭和48年度生まれは、もういい加減大人になってしまった。
これを「老けた」「活力が衰えた」などと言うのは簡単だ。でも、敢えて言おう、熟成であると。
なお、ガッツポーズしているような写真は全くないけれど、現場では話が止まらない止まらない。クラシックの話になったり、政治経済事情の話になったり、無節操に会話が飛びまくっていた。

写真左がひでくさん。
さらに左にひでくさんの奥さんがいらっしゃるのだけど、写真からは見切れている。
web掲載OKだったかどうか、当日お伺いした筈だけど忘れてしまったので、一応写っていない写真を使ってる。
とにかく、毎度のことだけど、ますゐ詣ではワチャワチャだ。会話がゴチャゴチャだし、料理はどんどんやってくるし、頼んでないメニューはなんだっけ、とか、ちょっと待てその料理の写真を撮らせろ、とか、カオス状態だ。そのとき何を口約束したかとか、全然覚えていない。
万が一、この場に詐欺師がいて、「儲け話があります。ぜひこの契約書にサインを」なんて紙を持ってきていたら、僕ぁうっかりサインしてしまうかもしれない。それくらい、ワチャワチャ。
なお、ひでくご夫妻は高校時代の同級生なのだそうで、それを聞いた一同「おおおう」と地響きのようなうなり声を上げた。アワレみ隊は男子校出身だからだ。「同級生に女性がいる」という想像がまったくできない。一生の友を得た代わりに、青春を見失った人達だ。

「誰や、これ頼んだの」
ウインナー(680円)がやってきたとき、思わずそんな声が上がった。
そりゃそうだ、わざわざますゐに来てまで頼むものじゃない。もちろん、ますゐがウインナーを出すのだから、まずかろうわけがないのだけど。
これを頼んだのは僕だ。
「たぶん・・・これまで食べたことないと、思うんだよなあ」
と言いつつ。はっきりと自信がないけど、たぶんそうだ。

そして、一口ギョウザ(450円)。
そりゃあ、酒のつまみとしてはいいと思うんですけどね、なんでますゐなのか、と言われると困る。
しかもこれ、なんか昔食べたことがあるような気がする。調べればわかるんだけど、面倒だからもう調べない。いいの、今日新鮮な気持ちで食べられるんだから。

鶏の唐揚げも頼んじゃったよ、750円。
ますゐはカツについてはあのますゐソースという必殺技があるけれど、それ以外は結構普通だ。
精肉店としては、鶏は一段下がる扱いかもしれないけど、鶏の唐揚げというのは僕を含め愛好家が多い料理だ。何かますゐならではの工夫を加えて、「ますゐならではの鶏の唐揚げ」を食べてみたい。

肉のますゐには、マッチがまだ置いてあるのです。
「すき焼き」と書いてある。レトロだ。今時、こんなお店のマッチを用意しているところって、ずいぶん減ってしまった。なにしろ分煙・禁煙の時代だから。
ただ、ますゐの場合は、自動着火機能のないガスコンロを鍋用に使っているので、こういうマッチがあると火が消えた際に便利だ。

一口ギョウザとかウインナーとか、このままだとますゐっぽさが足りない。
折角なので、やっぱりカツを頼んで、ますゐソースを堪能しないと。
というわけで、あれこれ楽しめる大人のお子様ランチ、「特ランチ」900円。
カツレツ(牛)、ハンバーグ、プレスハム、オムレツがついてくる、ニッコニコな一皿。もちろんますゐソース付きだ。サービストンカツと食べ比べをするのは、楽しいひととき。ますゐソースがどの肉のどのような料理に合うのか、よくわかるからだ。

あと、比較用としてこちらも。
特上トンカツ。1,080円。
ご飯みそ汁が付いていないとはいえ、「特上」と冠されたトンカツが1,080円だぞ。安すぎるだろう、良心的すぎるだろう。東京の有名とんかつ屋だと、この値段じゃチキンカツくらいしか食べられなかったりするぞ。

あっという間にもう閉店時間が迫る。お会計、しめて26,160円。
お酒を飲む人飲まない人、あれこれ頼んだりもしたけれど、とても安いと思う。一人3,000円程度。

今回のますゐ詣でのために特別に作った、「ますゐTシャツ2019-フォーエバー・サービストンカツver.-」。右側のおかでんが着ているのが、それ。そして左の一平ちゃんが着ているのが、2006年に作った初代のTシャツ。新旧そろい踏みだ。
そして真ん中にいらっしゃるのが、元社長の次男で現在は専務の桝井さん。三人並んで閉店後の店内で記念撮影をさせてもらった。
「値上げにはずいぶん悩んだんですよ」
と言う桝井専務に、
「馬鹿いっちゃいけません、なんであともう一声、400円にしなかったんですか。いや、500円でも良かったのに」
と言うと、
「そう言って貰えれば、苦渋の決断をした甲斐があったと思います」
と答えてくれた。とはいえ、アンタお人好しすぎだってば。380円にせっかく値上げをしても、今年の秋には消費税が8%から10%になるんですぜ。そのとき、値段はどうするのだろう?
(ますゐの値段は、税込み価格)
宴会途中、僕は一人抜けて1階の厨房に向かって「すいません、サービストンカツにかかっているソースをください」とお願いしていた。ますゐTシャツを着て。
むしろ堂々としていればよいのだけど、こういうのはものすごく恥ずかしい。折角のTシャツなのに、絵柄が見えないようにうつむき加減になってしまったくらいだ。しかも、厨房側でソースのお持ち帰り用の対応がまだできておらず、10分近く待つ事になった。その間、まるで罰ゲームを受けているような気分で、ずっとお店の隅っこに立っていた。
店員さんも、「見て見ぬ振り」をする人が多く、それがますます恥ずかしい。中には「あっ」とか反応してくれる人もいるのだけど、キモいと思われたかもしれん。やー、本当に隠れたい。
厨房と客席の境のところに、値段表が貼ってあるというのを今回初めて発見した。メニューに書かれている料理の値段だけでなく、事細かに個別注文が入った際のバラ売り価格が書かれていた。店員さんだけが知る値段だ。
そこには、ソースについては「二合:590円、一合:390円、小:200円」と書かれていた。あんまりソースのバラ売りはお店としては望ましくないかもしれないけど、こっそりと買いたければどうぞ。
なんで10分近くも待ったのかというと、どうもソースを少し冷ましていたらしい。なにしろ、鍋でぐつぐつ煮てあるソースだ。それをお持ち帰り用のプラ容器に入れると、プラ容器が溶けてしまう。そうならないように、少し間を置いていたっぽい。厨房の中で、プラ容器と、ソースを注ぎ込むための漏斗と、ひしゃくを持ったまま途方に暮れている職人さんがいた。
(つづく)
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