俺のゆで汁いりますか?【奥州三大名湯めぐり】

2003年04月27日(日) 1日目

平泉

本当は、このGWは実家に帰省する予定だった。介護疲れの母親を慰労しよう、ということで兄貴とも示し合わせ、有給も確保して4連休の準備は万端だった。しかし、母親から「予定があわないのでまた今度にして欲しい」との連絡。さあ途方に暮れてしまったぞと。4連休もどうするのよ、と。

ならば、ということでかねてから行ってみたかった秋田県の「乳頭温泉」にでもお邪魔するかね、と宿にTEL。・・・人気高い宿故に、さすがにGWは空きは無かった。くそ、秘湯じゃなかったんかい。「乳頭」というコトバを辞書で調べて、ハアハアしている若造ばっかりがたむろしているんじゃないだろうなコラなんてココロでは思いつつ、己の準備不足を悔いる。

気を取り直して、日本で一番酸性の強い秋田県「玉川温泉」に電話をかけてみる。・・・ぐは、ここも人気があるだけあって、GW中は全然駄目。というか、GW以外も湯治客ばっかりで空きがないそうで。

東北温泉紀行なんていいよな、桜前線を追っかけながら温泉なんてたまらんよねなんて話をしていたのだが、さあこうなるとどうしていいのかさっぱりわからなくなってきた。錯乱したあまり、「北海道に行ってもいいかな」「あっ、石垣島行きの飛行機はまだ空きがある!」なんて、単に「行くことが可能」なだけで候補に揚げてしまったりして、ますます収拾がつかない羽目に。

結局、東北行き、温泉満喫という基本路線ははずさないで行こう、というコンセプトとなった。しかし、北東北にある魅力的な温泉地はGWということもあってどれだけ宿が空いているかわからない。今回は飛び込みで宿を見つけなければならないということもあって、ある程度は規模が大きい・・・駅前に観光協会や宿泊案内所があるような・・・温泉地をターゲットにしなくては、という事になった。

では東北で有名な温泉地とはどこか?という事になり、あれこれ調べてみたら東北には「三大名湯」と呼ばれている場所があるらしい。曰く、「鳴子温泉(宮城県)」「秋保温泉(宮城県)」「飯坂温泉(福島県)」。・・・うーん、東北の地理に詳しくないせいもあるが、鳴子以外は聞いたこともなかった。どこだ、それ。

まあ、それは兎も角、「東北三大名湯めぐり」なんて企画にすればそこそこ愉快な旅になるのではないか、という事になった。しかし、3カ所のお湯を頂戴するだけでは面白くない、ということでさらに「三大高湯」も追加。合計六湯巡りの企画にふくれあがった。

ちなみに、三大高湯とは「蔵王温泉(山形県)」「白布温泉(山形県)」「高湯温泉(福島県)」だそうで。「高湯」とは、湯温が高い温泉を指しているのか、標高の高いところにある温泉地を指しているのか、わからないままでの突撃だ。いや、現に今こうして文章を書いている時点でも理解できていなかったりする。

本当は4月26日(土曜日)からスタートする予定だったこの企画だが、肝心のおかでんが疲労困憊してしまい朝起きたら吐き気がするありさま。結局、半日行動開始を遅らせ、さらに後にその日程を半日ずらし・・・結局1日遅れの4月27日(日曜日)からスタートすることになった。

「1日ずらした方が、GWの雑踏から逃げることができるって!」

と強がりを言ってみる。

さて、早朝東京を出発して、まず目指したのは奥州平泉。温泉企画とは全く関係がないのだが、せっかくだから行ってみたいという兄貴のリクエストに応えたかたちとなった。東京を朝6時に出発して、平泉着が11時過ぎ。約5時間かかったことになる。

北上川を見下ろす

中尊寺は、 小高い丘の上にある。参道を歩きながら眼下の景色を愛でる。

眼下には、北上川が作った平野と、川に沿って作られている東北本線が見える。

「ここに立つと、辺りを支配した気になるな。野心家だったら、この景色でムラムラしてくるはずだよ」

「その割には奥州藤原氏はあっけなく滅ぼされたけどな・・・」

「ううむ、権力を持つものの悲劇。では小市民であるおかでんはあんまりムラムラしないでおこう」

中尊寺携帯の桜

中尊寺境内では、桜が満開だった。ゴールデンウィーク中に桜が咲く地域というのはちょっとだけ羨ましい。

観光客の多くがここで記念撮影をしていた。

おかでんも、大して花に興味があるわけでもないくせに、一枚ぱしゃり。

・・・デジカメにもかかわらず、写真を撮る時の擬音に「ぱしゃり」を使うあたり、オッサン臭いよなあ。

でも、代わりの擬音って何がある?

中尊寺本堂

中尊寺本堂。

ここに来る人は金色堂「だけ」を見に来ている人なので、アワレなことに本堂は全然人気が無かった。観光客は境内入り口の門に掲げられた「中尊寺」という看板の前で記念撮影をし、その後本堂を覗き込んで「ふーん」とか言って、お賽銭あげないでそそくさと金色堂方面に去っていった。

ここのお寺の面白い点は、一本の「幹線道」に相当する参道の両脇に、軒を連ねるようなかたちで寺社施設があるということだ。普通、本堂の裏手に○○堂があって、その横に○○院があって、という造りになっているのだが、このお寺は横に並んでいてえらく横長な構造だ。

・・・その結果、本堂がスルーされるという可哀想な事にもなっているわけだが。

讃衡蔵

讃衡蔵(さんこうぞう)。

ふー、漢字を拾ってくるのに苦労した。面倒くさい名前だ。

この中に、3000点にも及ぶ中尊寺の国宝・重要文化財が収められ、展示されている。博物館のような場所だ。

早速中に入ってみる。当然、写真撮影は禁止だ。

○○像(重要文化財)  ほー。

○○絵巻(国宝)    おおおおおおー。

絵や像の凄さに驚くというよりも、もっぱら「国宝」や「重要文化財」というコトバに驚いている始末。それにしても、重要文化財当たり前、国宝も平気な顔をして陳列されているというこのありさまはすごい。さすが、金色堂のような成金建造物を造るだけある。奥州藤原氏、やるじゃん。

中尊寺金色堂

さて、こちらが写真でおなじみ、中尊寺金色堂。大体、どの写真でもこのアングルからの撮影になっている。この角度から撮影しないと、建物がちゃんと写らないので仕方がない。よって、われわれもありきたりな構図で写真撮影。

もちろん、この建物そのものが金色堂なわけはない。これは単なるコンクリートの建物だ。金色堂そのものは、この建物の中に納まっている。これまたもちろん写真撮影は禁止だ。

金色堂内での兄弟の会話

「何だこの金ぴかな建物は。悪趣味だな」
「いくら何でもこれは相当修復をしているだろ?きれいすぎるぞ」
「そりゃそうだ、昔はこれが野ざらしだったらしいからな」
「修復したんだったらした、って歴史年表に書き加えればいいのに。なんだかすごくうそくさいぞ」
「成金のオッチャンが札束積み上げて作りました、って言われても何ら不思議じゃないもんな」
「きれいすぎてな。歴史が感じられない」

・・・ありがたみが全然ない会話だ。

昔使われていた「金色堂の覆い」

金色堂の近くに、昔金色堂を覆っていた建造物が残されていた。さすがにコンクリート造りではなく、木造だ。

これはこれで非常に立派なのだが、横ががら空きな建物であるため、豪雪や横殴りの雨のときには金色堂本体にも影響があったのではないだろうか。

「ほらー、こういう建物の方が、中に入っている金色堂もありがたみが増すってもんだけどなあ」「確かに、木造の方がいいな」

棒がぶら下がっている

建物の中は、こんな感じ。天井が非常に高い。

真ん中には、何やら卒塔婆みたいなものが突き刺さっていた。

「何て書いてあるんだ?」
「ええと?金色堂を無断でよそにもっていくのはやめてください。金色堂はここが元祖です。最近、コンクリートの建物という類似品が出回っており大変迷惑しております。観光客の皆様におかれましてはだまされないようご注意ください」
「どこにそんな事が書いてあるんだよ。藤原秀衡800年忌、って書いてあるぞ」
「あれっ?」

変わった形のしめ縄

境内のすみにあった神社に参拝。

しめ縄が輪になっていて、不思議な感じがする。

きっと、大祭のときにはここに火をつけて、虎やライオンが飛び越えたりするに違いない。

しめ縄をくぐり抜けると非常にありがたい気分になったので、お賽銭をちょっとだけ多めに献上。

泉橋庵

中尊寺の駐車場には、わんこそば屋が軒を連ねていた。わんこそば、という食べ物は盛岡市オンリーのものかと思っていたので、やや意表をつかされた。本来この旅の企画は、乳頭温泉をはじめとする「北東北地方の温泉に浸かる」事を目的としていて、その一環として「盛岡でわんこそば挑戦」も考えられていた。しかし、結局南東北温泉巡り企画になったため、わんこそばは持ち越しになっていたのだが・・・。

こうもわんこそば屋が多いと、チャレンジしないわけにはいかないでしょう。

しかし、こんな観光地でのわんこそばってどうなんだろう。本当に後ろにおねーさんが控えていて、次々とお椀にそばを盛ってくれるのだろうか?客数が多すぎて、とてもそんな事ができる雰囲気ではない。

ということで、何軒か物色して、一番「後ろにおねーさんがついてくれそう」な店を選んで入ってみた。

がらがら。

引き戸を開けた瞬間「あー、やっぱり」。

やっぱり、おねーさん付きのわんこそばなんて無理な希望だったようで。目の前に展開されているのは、そばが小さなお椀に盛られたものがずらりお盆2段重ねで並んでいる、「セルフわんこ」を食べる人たちだった。

詳細な報告は、「蕎麦喰い人種行動観察」にて行います。

厳美渓

さて、平泉から南下開始だ。平泉を北端とし、ここから南下しながら温泉に浸かり歩く事になる。

今日の目標地点は、宮城県鳴子温泉を予定している。2泊3日の行程で6つの温泉を巡らなければいけない事を考えると、初日に1カ所しかいけないのは既にマズいという気がしなくもないが、まあなんとかなるでしょう。

観光ガイドを眺めていたら、平泉の近くに「厳美渓」という名勝があることに気が付いた。天然記念物だという。

「何、天然記念物か。だったら見ておかないと損ではないか」

ということで急きょ予定を変更して厳美渓に向かった。「国宝」と聞いておおおーっ、と感心するのと一緒だ。レッテル張りされているか・いないかで物の価値を判断している大馬鹿野郎だ。

で、何がどう天然記念物なのか、写真の一枚も見ないで現地に到着してみたところ・・・あれれっ、何だこれは。

何の変哲もないのどかな風景の中、急に土産物屋などの観光客目当ての店が並びだし、その間をすぱっと流れる川。それが厳美渓だった。写真の光景を見ると、「ああ周囲は山々に囲まれた場所なんだろうな」と思うだろうが、実際は平地の中にこの景色があるから面白い。用水路でも掘ったかのように、いきなりゴツゴツとした岩と共に川が出現していて面食らう。

これは楽しい。

団子販売

厳美渓の岩の上にあずまやが立てられている。ちょっとした休憩にちょうど良い。しかし、その割にはやけに人が群がっているような・・・と思って近づいてみると、おや?みんな団子を食べているぞ。

ここでは団子販売をやっているのか。

しかし、あずまやの周囲を見渡しても、団子屋らしきものは存在しない。では、どこかから買ってきたのだろうか。それが一番可能性が高いが、その割には団体客でもないばらばらの人が、それぞれここで団子を食べている理由がよくわからない。

おや、中にはやかんからお茶を汲んで飲んでいる人がいる。何なんだ?

ふと顔を上げると、そこにはこんな看板があった。

「向かいの茶店に、赤い旗が出たときは、ダンゴが売り切れです」

だんご300円のザル

わ。看板の横に大きなザルが置いてあるぞ。底には「だんご300円」と書いてある。そして、お茶が入ったやかん、どうやら300円をここに入れろ、という意味らしい器もくくりつけられている。

そして、そのザルはワイヤーでつり下げられていて、そのワイヤーの行き先を見ると川向こうの建物に吸い込まれていっていた。どうやら、このワイヤーでダンゴを空中輸送するつもりらしい。

なるほどねー、と感心しながら様子を見ていたら、観光客が次々と300円を投下している。単なるダンゴでも、「空飛ぶダンゴ」なのでついつい財布のひもがゆるんでしまうようだ。

対岸の茶屋

ある程度希望者が出そろったな、という頃合いを見計らって茶店の人がひもを引っ張る。すると、ワイヤーを伝ってザルがしずしずと引き上げられていった。その距離、50m強といったところか。

そして、引き上げられて1分ほどしたところで、ものすごい勢いでザルがこっちに戻ってきた。まさに、空飛ぶダンゴだ。

ザルの中には、ダンゴがいっぱい入っていた。お金を払った人は、すごくうれしそうな顔をしてザルからダンゴを取り上げ、そして大事そうに食べていた。単なるダンゴなのにねえ、何て無粋な事を言ってはいけない。「空を飛ぶ」だけでも十分に価値がある。観光地ならではの価値の創出だと思った。

くりはら田園鉄道

厳美渓から鳴子温泉に移動する道ぞいに走っていた、「くりはら田園鉄道」。「乗って残そう」というキャッチコピーがあるように、相当経営は厳しいようだ。

三菱マテリアルの細倉鉱山が採掘をしていたころは、貨物運搬用として使われていたらしいが現在は閉山。「細倉マインパーク」というなんだか楽しげな名前のテーマパークに化けてしまったので、廃線の危機に瀕しているらしい。

ローカル線なのに電化されていてすげぇ、と思ったのだが、後で調べてみたら在籍車両の老朽化の結果、ディーゼル車に切り替えてしまってこの電線は使わなくなったらしい。新しい電車を買う金がなかった模様。

そりゃあそうだよなあ、こんな田園風景広がる場所、普通だったら車で移動するわけであり、電車に乗ろうとは思わないもんなあ。

でも、貴重な路線なので、これからも頑張って欲しいものです。(ちょっと社交辞令的)

山上湖

「夕方5時までには宿を確保せよ」というのが至上命題となっていた。17時以降に宿を押さえようとしても、大抵は「夕食の準備はできませんが、よろしいですか?」と言われてしまう。それは悲しいので、わっせわっせと鳴子に突撃。無事、16時30分到着。

鳴子は、「温泉郷」と言われているだけあって中山平、鳴子、車湯、赤湯、東鳴子、川渡、中野という温泉地が密集している地帯だ。いろいろ試してみたいが、今回は大本営である鳴子温泉そのものズバリを体験してみることにする。

鳴子駅構内の観光案内所で宿の手配。「1万円程度で1泊2食つき2名でお願いしたいんですけど」と告げると、「ああ、では扇屋ですね」と即答。

「おい、普通こういうのっていろいろな宿を提示して、サテその中からどうする?って選ばせるんじゃないのか?選択肢無いのか、この案内所は」
「いや、たくさん旅館パンフレットが置いてあるし、そんなはずはないのだけど」
「1万円程度で泊まれる宿なんてねーよコラ、って事なのだろうか?」
「そんな馬鹿な、湯治客だって泊まるんだろ?」

・・・などと、ひそひそ声で話す。

念のために、ということでその扇屋なる宿のパンフレットを見せてもらった。

「・・・わからん。とってもきれいそうに見えるけど、こういう宿のパンフって写真と現実が全然違う事がよくあるもんなあ」
「結局パンフでは判断できないって事か。しゃーない、まあいいんじゃないの。あ、ここでお願いします」

結局、扇屋という旅館にお世話になることになった。

そのままチェックインするのはもったいなかったので、鳴子温泉の裏山にある山上湖、潟沼に行ってみることにした。

日本一の強酸性湖

潟沼は日本一の強酸性湖です・・・だそうな。

周囲は硫黄の臭いがゆるやかにする。ひょっとして温泉?と思って湖面に手をあててみたが、当然のことながら単なる水だった。しかし、若干手触りが普通の水と違う。なるほど、強酸性、か。

日本一の強酸性温泉「玉川温泉」に行きそびれたので、この潟湖で仇を取ったという事にしておこう。

ちなみに、PHは現在1.7だそうだ。間違ってこの水を飲んでしまったら、喉から胃まで焼けただれそうだ。

しばらく、神秘的な火口湖を眺めて過ごす。

鳴子峡案内図

さて、山の上でしばらく静寂を楽しんだところで・・・

すいません、うそを今つきました。先ほどの潟沼、すぐ近くにクレー射撃場があったために頻繁に「ぱーん」「ぱーん」という射撃音がしておりました。

ええと。

そう、山の上でしばらくくつろいだところで、下山して今度は川を楽しむことにした。古来、日本の暗号は「山」「川」と決まっているもんだ。幸い、鳴子の近くには鳴子峡という「鳴子最大の景勝地(観光ガイドによる)」があるという。

深さ100mの断崖絶壁があったり、獅子岩といった奇岩がごろごろしているらしい。そりゃ楽しみだ。

松尾芭蕉も通過したという尿前の関近くに車を停め、川沿いまで下る。

鳴子峡

・・・おい、このどこが渓谷だ。

単なる川沿いのハイキングコースではないか。

さすがに、いきなりクライマックスは見せられないらしい。ちっ。

しばらくコンクリートの護岸壁の上を歩いてみたが、景色が変わる気配は一向に無かったので諦めて退却した。約1時間のハイキングコースらしいのだが、駐車したところまで戻ろうとすると往復2時間かかってしまい、日没までに間に合うわけがない。

真っ暗な中で絶景を見たって何がなんだかわからないわけで、まあ名誉の撤退ということにしておこう。

岩下こけし資料館

鳴子峡(の導入部分)の帰り、「岩下こけし資料館」に立ち寄ってこけし見物。鳴子といえばこけしが名産だ。

・・・名産、って言い方をするのも「子消し」の由来を考えると薄ら寒いモノがあるが、まあ、純然たるお土産であると割り切って考えれば名産、なのだろう。

入り口には、どうだ、と言わんばかりの巨大なこけしがそびえ立っている。ちょっと怖い。夜になったら目がらんらんと光る、とかいうギミックがあったら相当怖い。

昔はおかでん家にもこけしが置いてあったが、最近はみかけなくなった。北海道土産の「鮭をくわえたヒグマの彫り物」同様、定番の土産だったのだろう。しかし、核家族化が進み一軒あたりの床面積が狭くなっているこのご時世、かさばる土産物はウケないのだろうか。おかでん家に限らず、家にこけしを飾っている家庭ってあんまりないような気がする。

こけし資料館の中には、ずらりとこけしが並んでいた。こけし資料館なのだから当たり前なのだが、どれも無表情かうっすらと笑みを浮かべている顔であり、可愛いのだがやっぱり怖い。伝統文化だから、斬新な顔にするのは難しいのだろうか?例外なく、全員が童の顔だった。今風に、イケメンな奴があったりガングロがあってもいいような気がするのだが。いや、そんなこけしがあっても僕自身は買わないが。

店の人曰く、「鳴子のこけしは首が回るのが特徴ですからね。他のこけしで同じ事やっちゃ駄目ですよ、首が折れてしまいますから」

首が折れたこけし・・・非常に怖い。

扇屋

さて、本日のお宿に到着。扇屋。鳴子温泉の外れに位置する。1泊2食付きで10,000円。

「あれ、パンフレットの写真と大差なかった」
「そうだな、それほど違いは無いみたいだ」

扇屋室内

手元のパンフレットの写真を見比べながら、感想を述べあう。ひでぇところだと、この外観時点で「おい、全然違うじゃねーかよ」という宿があるわけであり、恐らく10年以上前に撮影した写真を使ってるなこりゃぁ、という事に気付くわけであり。

しかし、このお宿の場合はそうではなかった模様。

滝の湯無料入浴券

荷物を置いて、夕食までの間に共同浴場の「滝の湯」に浸かってくる事にした。

フロントの人が、「あ、滝の湯にいかれます?だったら券がありますから、それ使ってください」と言う。

何事かとおもったら、ぽん、とスタンプを押した紙を手渡してくれた。無料入湯券だ。なるほど、鳴子温泉に宿泊している客は、無料で入浴することができる仕組みになっているらしい。

滝の湯

滝の湯効能

さて、旅館から歩くこと10分、鳴子温泉滝の湯に到着。

滝の湯は鳴子温泉の中心地にあり、JRの駅からも近い。周りには、近代的な巨大旅館が並んでいて、ちょうど夕暮れ時という事もあって宿泊客のお出迎えの職員が各旅館の入り口で慌ただしく働いていた。

鳴子温泉は源泉が多いため、宿ごとに泉質が異なっているのだが、滝の湯は・・・えーと、長いな。

酸性含硫黄ナトリウムアルミニウムカルシウム轍硫酸塩泉、だそうで。

どうやら、「美人の湯」ということらしい。

名湯に染まる郷

中はすし詰め状態で、とても写真が撮れる状況ではなかった。温泉地の夕暮れ時なんて、大体こんなもんだ。夕食まで中途半端に時間が余るので、では近場を散歩してくるか、って事になる。

しかし、非常に風情がある造りで、写真が撮れなかったのは非常に悔しい。

ということで、JR東日本が作成した鳴子温泉のポスターにて我慢することにした。題して、「名湯に染まる郷」。

おかでんが鳴子温泉という名前を意識するようになったのは、このポスターを駅で見かけたからだ。結局JRにはビタ一文収益にはならなかったかもしれないけど、鳴子温泉にしてみればPR効果は十分に出た、ということではないだろうか。

滝の湯は、外から中に向けて突き出た木造の「とい」から、じゃばーと豊富にお湯が滝のように湯船に落ちているのが特徴。だから「滝の湯」と呼ぶのだろう。

源泉の配給設備

滝乃湯裏手にあった、源泉の配給設備。

ここから、奥にある滝の湯へといが延びていて、じゃばーっと滝のように温泉が供給される仕組みになっている。辺りは温泉独特の臭いが充満している。

「わ、わ、こういうのって面白いな、滅多に見ることがないからな。写真撮影しておかなくては」
「気を付けろよ?一歩間違えると、女風呂を覗いているみたいに見えるぞ?」
「いやー、男風呂から、外のこの設備が見えたから『ひょっとすると外からも中が見えるのかな』と思って来てみたんだけど。よしずみたいなものが張ってあるんで、中から外は見えても外から中は見えないや。だから大丈夫だって」
「実際は覗いていないかもしれないけど、中から見たらさも覗いているみたいに見られるぞ、それだと意味は一緒だろう」
「やべ、それは考えていなかった。退散」

滝乃湯入り口にて

滝乃湯入り口にて記念撮影。

おかでんは、「温泉街といえば浴衣と下駄でないと」とフル装備だが、兄貴はわざわざ着るこたぁない」と普段着のまま。風情がわからん奴め。やっぱりここは、下駄をからんころんいわせながら、ややガニマタ気味に温泉街を闊歩しつつ、手は丹前の中に突っ込んでいないと。

おかでんの身長は178センチなのだが、過去一度たりとも丈があっている浴衣を着たことがない。今回も、例に漏れずスネ丸出し状態。あんまりガニマタで歩くと、すそが割れてイヤーンな状態になってしまうので、ちょっと内股気味に。格好わりー。

下駄優先通り

鳴子温泉街のあちこちには、このように「下駄優先通り」と書かれた看板が掲げられていた。

下駄を履いていれば、店によっては優待があるらしい。

面白い試みだ。こういう形で、街全体を一つのテーマパークっぽく仕上げていくというのはこれからの温泉街のあるべき姿なんじゃないだろうか。

さらに突き詰めていけば、「宿泊客は下駄履き・浴衣着用でないと外出は駄目」とか、そういう強制力を持たせるというのもあっていいかもしれない。そんな事やってられっか、と言われるのが怖いかもしれないが、案外今の人間ってそういう強制力のあるシチュエーションって面白がると思うのだがな。

ついでに、町中に車の持ち込みは一切禁止にして、その代わりに人力車や大八車が街の中を走る、という事にする(もちろん無料)とか、温泉街の入り口に「関所」を作って、そこでお代官様が入場を吟味するとか(実際は、温泉街内にある全旅館のチェックイン機能を持っていたり、宿泊場所を決めていない客用に旅館の斡旋をしたりする)。

それから、今後旅館を増改築する際は木造建築物以外は認めない、なんて事にするとそれはそれで面白い。巨大ホテルのご時世は既に終わったわけであり、だったら味のある旅館を作った方が集客力あるでしょ。

扇屋夕食

さて、旅館に戻っての夕食。こんな感じでした。

「いやー、こんなに山奥でも、やっぱり魚介類がたくさんでてくるこの現実」
「でも、冷蔵輸送技術が発達しているんだから、別に山で魚が食べられたっていいのでは?」
「そりゃそうだけどさ、皿数でいったら山のものより海のものの方が多いってのはどういう事よ?」
「それだけ海のものってのは安いってことか」
「『山の物』っていったら、山菜、肉、川魚・・・ってイメージになっちゃうけど、どうしても旅館料理としては地味になるのかな?海魚だったら、そこそこ見栄えがよく調理できて、陳列して良しって事なんだろうか」
「そうか?何か違うような」
「ところで、今日のメインディッシュは何だ?陶板焼きって事になるのか?」
「・・・そういえば、メインディッシュと呼べる料理って無いな」
「思い返してみると、旅館料理ってメインディッシュって無いような気がする。4番打者になりそこねた6番打者くらいの選手が並んでいるって感じ。あと、なぜか茶碗蒸しが付いている。これはコーチャーズボックスにいるコーチといった風情か」

内湯

旅館の内湯。

ここは、先ほどの滝乃湯と源泉が違うため、臭いも肌触りも全然違った。

屋上には、貸し切りの露天風呂があるらしい。明日の朝は試しに貸し切ってみよう。・・・もちろん、一人でだ。兄貴と一緒に貸し切りにしてうふふ、なんて御免だ。