2005年02月25日(金) 2日目
さてこの日からボランティア業務開始だ。初日は朝9時集合という事だったので、比較的ゆっくりとした朝を過ごすことができた。
スノーシューイング会場となっているオリンピックスポーツパークは、野沢温泉スキー場のゲレンデから離れたところにある。よって、歩いていくのはやや面倒な場所であり、その結果村内移動用のボランティア用シャトルバスが走っている。ここにも輸送部隊がいるのか!
村内巡回バスは1時間に1本のペースで運行されている。これまたものすごい体制だ。
宿の食堂で朝食をおいしく頂く。
われわれボランティア軍団の食卓の脇には、何やらカラーの新聞らしきものが積んであった。何かと思って見てみると、
「スペシャルオリンピックス公式新聞」
と書かれていた。驚いた!ボランティアが宿泊している宿には、毎日新聞が届けられるのか!
ここでもまた、今回参加している大会の規模のデカさにくらくらした。一体どこまでいろいろなものを巻き込んで企画されているんだ、この大会は。
今回のSO世界大会には地元紙「信濃毎日新聞」が協賛しているので、その配送網を活用したのだろう。それにしてもご苦労様です。
紙面は、昨日起きた出来事をあれこれ紹介している。速報性の観点からも、手抜き無しだ。町内会の壁新聞なんかとは訳が違う。ちゃんとした記者が、ちゃんとした体制のもと取材をして記事にしている。ま、要するに「カネかけてる」ということだ。紙面の半分は英語版で、半分が日本語版だ。英語版は日本語版の翻訳、ではなく、ちゃんと別の記事だ。紙面は全部で8面の構成。
この日のトップ写真は、中東のアスリートが「産まれて初めて雪を見て、大はしゃぎでソリで斜面を滑った」というものだった。冬季世界大会に出場するとは思えないシチュエーションだが、とても微笑ましくてよろしい。
開幕式は明日、2月26日だが選手団は既に数日前から長野入りを果たしていた。これは、「ホストタウンプログラム」と言って、各地の自治体が選手団を受け入れて、地元の人たちと交流する、という期間を設けているからだ。長野をはじめ、新潟、山梨などに分散して、各選手団は地元文化とふれあう事になる。先ほどの「ソリで滑った!」というのはそのときの模様らしい。他にも、ユカタを着せてもらって喜んでいる黒人のアスリートの写真も掲載されていた。
ちなみにこの新聞が「第一号」だった。今日創刊で、明日以降毎日配達されるらしい。
白い公式ジャケットを着たボランティアがてんこもりのシャトルバスに乗り、オリンピックスポーツパークを目指す。
「そういえば、昔バスであちこちを彷徨う白装束宗教団体ってあったよな」と思い出した。
しかし今回のわれわれの白装束は、右腕のところにばっちり「UNIQLO」と書かれている。さすがはスポンサーだ、自社ブランドの市販製品にさえ表示しないロゴマークを、ばっちりとでかく表示している。
到着したオリンピックスポーツパークは、非常に立派な施設だった。さすがは長野五輪の時に作っただけある。ここ野沢温泉は、長野五輪の際にバイアスロンの競技地となった場所。バイアスロンといえばそれほど有名ではない競技だが、それでもここまで立派な施設を作っちゃうあたり、五輪というのは恐ろしい。
んで、どう考えてもこんなの五輪が終わっちゃうと維持費かかって大赤字でしょうに、と思うが、五輪を前にしてしまうと目がくらんでしまうんですかねえ。まあ、今回こうしてSOで活用できてとりあえずは良かった、ということか。
てっきり、スキーゲレンデの中にプレハブをおっ立てて運営本部とし、カラーコーンを並べてゲレンデ内で競技をするものだとばかり思っていたので、この専用施設にはびっくりだ。
朝9時、全体ミーティング。会場責任者から、「やらされているボランティアだけにはなるな、自ら率先してやるボランティアになって欲しい」と激励される。
そのあと、ヘルプデスク班4名と班長との間で細かいミーティング。「長野の本部との間を結ぶ回線が現在やや不安定で・・・」と気になる発言あり。
ヘルプデスクのお仕事の管轄は、会場内外に設置されているPCの維持管理ということになるのだが、そうはいっても数は限られている。運営本部、GMSが置いてあるタイミング室、メディアセンター、インフォメーションコーナーの4カ所が大会会場内のわれわれのテリトリー。そして、会場外に3カ所。野沢温泉村の中に2カ所、「連絡所」があり、周辺の選手団宿泊施設をコントロールしている場所がある。そこにもPCやFAXが置いてあるので、問題があったら会場を飛び出して現地に向かわなければならない。それから、あと1カ所は「SOタウン」と呼ばれるところ。野沢温泉アリーナという体育館や温泉プールがある施設があり、そこが野沢におけるアスリートと地元の人たちとの交流場になっている。ここにもPCが置いてあるので、何かあったら対処が必要。
ヘルプデスク班は分担して、2名が大会会場、2名がSOタウンに詰めるということになった。
スノーシューイング競技といっても、知らない人が多いかも知れない。山登りをやる人にとってはスノーシューという器具は認知度高いし、「いずれ買いたい」という人も多いだろうが、一般的にはほとんど知られていない。早い話、スノーシューとは西洋かんじきの事を指す。ニンジャが水の上をすいすい走る時に使うような、丸い輪状のものだ。本来足の裏にかかる体重が広い面積に分散されるので、柔らかい雪の上でも足がめり込むことがない。
和かんじきとスノーシューの決定的な違いは、和かんじきがつま先からかかとまでかんじきに固定されるのに対し、スノーシューはかかとがフリーであるということ。クロスカントリースキーと似た感じだ。これにより、走ることも簡単にできるようになる。
今回の競技では、短いもので25m、長くなると5kmもの距離を走る。
ボランティアにはお弁当が支給される。
お弁当の外箱は、ちゃんとSOのロゴが入ったものだ。凝ってるなあ、と思うが、何しろ運営スタッフ含めて毎日1万食くらいが消費されるわけで、これくらいのロゴ入り箱作ることは造作のない事なのだろう。
ちなみに、飲み物はコカコーラ、お菓子はロッテとスポンサー三昧。ロッテは気合いを入れすぎて資材提供しちゃったみたいで、お菓子が倉庫に山積みになってしまい、消費仕切れないありさまだった。ホカロンもロッテからの提供で、寒い会場においては大いに有り難かったのだが、それも数が多すぎだった。
お昼ご飯後、会場外にあるヘルプデスク班管轄の連絡所、SOタウンに顔を出してみる。PC等の設定やケーブル配線のチェック。
ネットワークは各地で二種類用意されていて、ケーブルの色も分けられている。VPNルータをかまして、長野のデータセンタとやりとりする回線と、VPNルータなしで、お気楽な回線の二種類。VPNルータなし回線につなげられたPCはフリーで使えるようになっていて、選手団のコーチやファミリーがweb閲覧やメールを送受信するのに使って良いようになっている。今日び、大きなイベントをやる際にはこういうネット環境を整備して開放するのは必須、ということなのだな。
さて写真はSOタウン。体育館と公会堂を足して二で割ったような作りになっているが、体育館部分の一部にずらりとテレビが置かれていた。何事かと思ったら、テレビにはMicrosoftのX-boxが置いてあった。なるほど、これで自由に遊べ、ということか。Microsoftがスポンサーということで、こういうところで微妙に自社製品のPR。
ひととおり外回りをしてから会場に戻ってみると、会場設営はほぼ完了していた。明日夕方に開会式があるが、スノーシューイングの場合日程の関係で明日午前から予選が開始となる。
それにしても立派なトラックだ。真っ平らなので、走りやすいだろう。
午前中は突貫工事中だった表彰台も、既にできあがっていた。
非常に横に長い、独特な表彰台だ。8位まで台上の人になれるように作られている。
これで、リレー競技の表彰式なんてやった日には、一体どれだけのアスリートが表彰台に登る事になるんだろう?ぜひ見てみたい光景だ。
この日は午後5時から、SOタウンの開村式・・・というか、「タウン」だから開町式、になるのか・・・?が開かれるという。野沢温泉に到着した世界各国のアスリートたちが多数参加するので、ボランティアもぜひ参加して盛り上げてください、との周知があった。
SOタウンに向かう。
聖火が到着しました、ということで外を見てくださいとアナウンスが流れたので、SOタウン正面のゲレンデに目をやると、何やら赤い服を着た人たちが集団で滑ってきた。手には、聖火がともったトーチがある。
アスリート達はSOタウンのロビーからガラス越しにこの光景を眺めていたのだが、おかでんは写真撮影をしたかったので外に出ていた。すると、何やら赤い服を着た人たちの悲鳴が聞こえてきた。
「あっ、やべ!火が消えた!」
「うわあ」
おいおい、大丈夫か。大切な聖火消しちゃったらマズイっすよ?
「いいからそのまま行け!」
「うわあ、こっちも消えた!」
などという楽しい悲鳴を聞きながら、華麗に滑降してくる様を眺める。
多分会場内で見ている人たちには、「たいまつを持った人たちが降りてきた」という格好いい光景にしか見えないだろうが、声が聞こえるおかでんのポジションから眺めていると、なんともコメディだ。
最後、SOタウンの前に全員整列して、たいまつを高々と掲げてフィニッシュ。危ない!火が残っているのはほんの僅かしかいないぞ。
たいまつを掲げると同時に、バーンと「ようこそ!野沢温泉へ」という垂れ幕が国旗掲揚台に掲げられた。お後がよろしいようで。
その後、会場内では太鼓の演奏があったり、メイヤー(要するにこの会場の名誉責任者)のあいさつがあったりして、開村式は進行していった。
司会者の横には通訳の人がいて、日本語で話をする都度、英語で翻訳されていた。英語が通じない国から来ている場合、どっちにせよ何を言っているのかさっぱり理解できない状況だが、仕方がない。
こういう光景を見るにつけ、とりあえず英語はできないといかんなぁという気になる。
会場後方で、盛り上げ役兼ギャラリーになっているボランティアたち。白いユニフォームは雪だらけの会場においては保護色となり、目立たないかと思ったが案外目立った。
理由:寒い場所においては、普通の人は白い服を着ない。
この日も外湯巡り。同じ宿にいた大学生のボランティアと仲良くなり、二人で遠征。「僕も全部制覇しますよ、外湯を!」と鼻息が荒い。やはり、13という外湯は微妙にチャレンジしがいがある、(人によっては)やる気を猛烈に感じさせる数だ。
この日は、「せっかくだから一番遠いところに行こう」ということで、「滝の湯」と「真湯」に行った。
外湯に出かける前、夕食を宿で食べたのだが、昨日はビール1本だったのに今日は2本に増えてしまった。やはり、ヤドメシを前にしてしまうと飲まずにはおれんかった。馬脚を現した、というのはまさにこのこと。
ボランティア仲間たちは、なぜかほとんどお酒を飲まない連中ばかりだったので、一人で手酌してぐいぐい。
お酒飲んで、風呂入って、その後12時過ぎまで「今日のボランティア模様」を各自報告しあって、「じゃあ明日から本番なんで頑張りましょう」と前向きな発言で締めくくって、お休みなさい。
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