2020年12月19日(土)
今年も、この時期に「ばんや」を訪問した。
自分が住んでいる場所とは違う他県の飲食店で、ここまで通っているお店は他にない。振り返ってみると、初回訪問は2002年の家族旅行だった。そこから順調に、男女問わずいろいろな方をご案内し、時には泊まり込んで、ばんやを満喫している。その数、今回で16回目。
様々なコネクションを使って、いろんな人とここを訪れているのは、
(1)一人で行くには、微妙に遠い場所にある。車を持っておらず、レンタカーを借りるならなおさらだ。
(2)せっかくばんやを訪れるからには、あれもこれもメニューを頼みたい。
という理由があるからだ。そういえば、単独行動を好む僕でさえ、この地を一人で訪れたことはないはずだ。それくらい、「ガツンと食べるぞ!」と気合が入る場所、というわけだ。

年末になると、ばんやが恋しくなる。
「ばんやに行った」という実績は、自分が今年もアクティブに動けるだけの気力体力があった証だ。
これが単に「ばんやに行った」という絶妙な距離感なのが、いい。外国に行ったレベルになると、「散財しちゃったなあ」という罪悪感を伴うけれど、ここならばそれがない。
気がついたら、今年は3月に続いての二度目の訪問となった。
ただ、新型コロナウイルスが蔓延中で、遠出は避けたいところだ。緊急事態宣言前の3月よりも、事態は深刻だ。食欲につられて遠出した結果、感染する(させる)というのは、社会生活を営むシチズンとして駄目なので、気をつけたい。
だからこの日は、行きも帰りも、道の駅に立ち寄らず、トイレ休憩さえも立ち寄らず、自宅と目的地との往復だけの日帰り旅行となった。ストイックだけど、これくらいしておかないと。
2020年12月。都心を8時前に出発。9時20分過ぎにはばんやに到着した。ちょうどばんやの入り口では、名簿に名前を書いた順に客席に客が案内されているところだった。
ばんやは、9時半前だというのに盛況。

1組ずつ、名簿から名前を読み上げられて客席へ向かっていく。
着席はできるけど、オーダーはまだだ。オーダーが解禁になるのは、このお店の営業開始時間である9時半からだ。それまでは、既に掲示されているメニューボードや、卓上にある紙のメニューを眺めながら、あれこれ作戦を練ることになる。
相変わらず、このお店の最大のワクワクポイントである「ものすごい量のメニューを、ディスプレイで表示する」機能は停止している。運用上の問題があったのか、もう復活することはなさそうだ。残念。
目の前でメニューがソールドアウトしたり、新メニューが爆誕したり、リアルタイムで変動するので面白かったんだけどなぁ。今は、そういうリアルタイム性は不要なだけ魚の在庫を確保するようになったのだろうか。
ずらりとならぶホワイトボード。その左端に、「売り切れ」という真っ白なボードが用意されている。売り切れたメニューは、随時ここに掲示されていく。
ホワイトボード方式の良いところは、「本日大漁につきおすすめ品」など売り文句を書き込めることだ。文字のサイズや、色を変えることだって簡単だ。僕なんかは「ありきたりで、つまらない」と思うのだけど、お店にとっては安上がりで確実な運用だ。

ばんやは、人気店ゆえに「これって、本当に(お店の目の前にある)保田漁港で水揚げされた魚?」というものが混じっていることがある。バリエーション確保のために他の港から仕入れているのではなかろうか。邪推だったら申し訳ないけれど。鮭とか、マグロとか。
そんななか、「ほう!?」と驚いたのが、イケスに「保田漁港直送 タカアシガニ」というメニューがあったということだ。タカアシガニといえば西伊豆の特産品だと思っていた。
急に水深が深くなる駿河湾ならではの、深海生物。だけど、保田漁港でも水揚げされるんだな。
アワレみ隊は、わざわざこのタカアシガニを求めて西伊豆を旅したことがある。

巨大なタカアシガニを前に、一同大興奮したものだ。独特の癖のある味で、タラバやズワイと比べると味は劣ると思うが、とにかく腹いっぱい食べられるのは最高だ。

そのタカアシガニ、イケスの中でジタバタしていた。
脱走を企てているというよりも、大きな足を完全に持て余してしまい、どうにもならんという状態らしい。
その窮屈な籠から救出してあげたい(=食べる)けれど、今回はやめておいた。タカアシガニは貴重だけれど、これを食べるとさすがに一発で満腹ゲームオーバーになってしまう。

刺し身盛り合わせや寿司などのネタ一覧。
人気の品である朝獲れ寿司。今日のネタは
イナダ、スズキ、タチウオ、コショウダイ、サワラ
だった。イナダとスズキは重複ありで、7カン。
最近の僕は、まったく寿司は頼まなくなった。シャリが機械で握っているのだけど、それがあんまりおいしくないからだ。ギュッと握られていて、おにぎりのようだ。これだったら、お刺身にご飯単品を注文した方がまだいい。

相変わらずメニュー数は多く、面白いお店だ。
しかし、バーンとメニュー一覧が壁に掲示されていて、焼き物、煮物、揚げ物・・・とジャンルごとに分けられていて、目移りするという体験がやっぱりよかった。
今こうやって紙でずらずらとメニューを書かれても、「どうしよう?どうしよう!」というドキドキがあまりない。
この日、初めて見たメニューは「鯵くらべ」というものだった。ダジャレのネーミングだけど、鯵の料理を三種類楽しめる。なめろう、たたき、アジ刺し。
「なめろうと、たたきって味がどう違うんだろう?」
という素朴な疑問に応えてくれる、ナイスな組み合わせ。1,500円でそれなりの値段だけど、青魚が好きならぜひ頼んでおきたい。

おすすめが多すぎて、困惑する。逆にいうと、ここに載っていないメニューはおすすめではないのか?と思ってしまうくらいだ。
「限定5食」や「7食」といった貴重なものもある。こういうのは早いもの勝ちだ。限定に目がない人は、9時半の開店よりも前にお店に到着し、店頭のウェイティングリストに名前を書いておくといい。というのも、9時半になってお店はオーダーを取り始めるけれど、それはリストの順番通りだからだ。
とはいえ、たとえば「限定10食」のナマコポン酢が、いくら限定とはいえドドドと注文が入るとは思えない。限定だからといって、必要以上に身構えなくても大丈夫だと思う。

とりあえずメニューの写真は全部撮影しておく。
今回は、というか今回も、「刺身六点盛り」と「ミックスフライ」は頼むことにする。
いつも、こういう盛り合わせには出てこない、もっとマニア心をくすぐる魚を頼みたい!と思っている。だけどこれ以上は無理だ。少なくとも2名での訪問ならば。
アジやイカ、サバといったフライなんて今更なんで食べるのか?と聞かれそうだが、新鮮な魚を揚げたフライというのは絶品だからに決まってる。鮮度がギュッと閉じ込められ、加熱されていても美味いんだ、これが。

いちいち解説はしないで省略。
そうかー、スルメイカ刺身があるなら、頼んでおかないとなぁ。新鮮なイカ刺しというのも、いいものだ。

スズキの味噌焼、というのはちょっと面白いが、今日はもう無理。断念。
「お持ち帰りにすればいいじゃないか」という発想もあるのだが、それを際限なく許可すると後で大変なことになる。やめておこう。限定5食で、600円。
(つづく)
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