半径50mの世界食べ歩き(その2)
食欲の秋、とはよく言ったものだ。
昨年、東京外国語大学の大学祭「外語祭」を知って以来、つくづくそう思う。
1年前、外語祭に初潜入し、その豊富な世界料理の種類に驚き、見たこともないビールに酔い、そして死んでいった。
・・・いや待て、死んではいない。
とにかく大満足の一日を過ごしたのであった。胃袋の皮が引っ張られる快楽と、知的好奇心を満たしてくれる快楽と、そしてアルコールによる快楽。一発で虜になっただけでなく、「これは来年も訪れなければ」と、早くも来年の開催を心待ちにするくらいの満足度だった。
そんなわけで、季節は巡って今年も秋。食欲の秋、というよりも食い意地の秋、という気もするが、おかでんは今年も外語祭に乗り込む気満々なのであった。自宅から片道1時間以上かかる場所にあるキャンパス(東京都府中市)だが、そんな障害は大したことはない。
とはいってもこの時期おかでんは業務多忙。というか誰か労働基準監督署に密告してくれ、というくらいのひどいお仕事っぷりだった。終電で帰ることができればラッキー。というか、終電で帰ろうとすると「もう帰るのか?仕事終わったのか?」というプレッシャーを受けるというありさま。心身ともに疲れ果てていた。今年の外語祭はオフ会形式にして人数を集め、複数名による「全世界料理制圧」を目指すつもりだったのだが、アワレみ隊BBS上に告知記事が掲載できたのは、開催予定の15時間前だった。
795: 名前:おかでん投稿日:2006/11/22(水) 20:35
半径50mの世界食べ歩き2006[概要]
「胃袋至上主義宣言」に以前掲載した、「半径50mの世界食べ歩き」企画続編。
東京外国語大学の大学祭「外語祭」に潜入し、世界各国の料理とお酒を短期間に、多種多様に、しかも廉価に摂取する。[外語祭]
外語大学にある26語学学科それぞれが、その国の料理を提供する模擬店を出店している。円形サークル型のキャンパス内広場にこれらのお店がぐるりと並んでおり、
食べ歩きには最適。
「モンゴル料理」だとか「ラオス料理」といった、普段ではあまり見かけない料理に積極的に手を伸ばそう。[やること]
参加者全員で手分けして、各国料理とお酒を買い集める。その後、少量多品種の料理で世界巡りを敢行する。[決行日]
2006年11月23日(木・祝)。雨天決行。[スケジュール]
12時、外語大学正門(多磨駅側)入り口にある、TUFSというアルファベットが複雑に絡み合ったオブジェの前で集合。
その後、各国料理を食べ歩き。途中、食休みとしてベリーダンスのショウ(必見)などを楽しむ。
食べて飲んで、適当なところで三々五々現地解散。[最小催行人数]
3名以上。やはり人数がある程度いないと、食べ歩きは難しいので。時間があまりないですが、当日朝9時時点で3名集まっていなければ中止。[参考資料]
半径50mの世界食べ歩き(2005年の記録)[交通]
JR中央線武蔵境駅から西武多磨川線に乗り換え、2駅「多磨」駅下車すぐ。
もしくは
京王本線飛田給駅から徒歩で15分程度かしらん。
東京都府中市朝日町3-11-1以上

そんなわけで、結局募集人数に到達しなかったので、当日はオフ会開催を断念。自分自身も、たまの休みをゆっくり自宅で過ごして体力温存しておこうと思っていたのだが、何となく訪れちゃいました、外語祭。
一人で訪れても返り討ちにあいそうなくらい、お店と料理の数が多いんだけど・・・ええい、あたって砕けろだ。

今年も円形広場に足を踏み入れた。広場を取り囲むように、ぐるっと各語学学科の模擬店が並んでいる。
正面玄関すぐのところには、昨年同様ドイツ語学科が陣取っていた。昨年同様、結構な行列だ。このお店、一日を通じて最も行列ができていたお店だった。売っているものはビールとソーセージなのだが、なぜここまで長く行列ができるのだろう。

ざっと見渡すと、必ずしも昨年と同じ場所で同じ学科がお店を出しているわけではないようだ。ドイツ語学科が一番目立つところを二年連続で確保しているのは、たまたまくじ運が良かったからだろうか?
昨年同様、モンゴル語学科はゲルを広場の片隅に設置しディスプレイしていた。昨年は「蒙古飯」というなんともイカした男らしいネーミングでお店を開いていたのだが、今年は「モン流」というパンチ力ではやや劣る店名になっていた。
他のお店も、昨年同様の店名というところはないようだ。店名は代々引き継がれるものではなく、毎年変わっていくのだろう。

円形広場をたこ焼きに例えると、たこ焼きに突き刺さっているつまようじの位置関係にある歩道。ここも、両側にびっしりと出店がある。こちらはサークルや留学生会が中心でお店を運営していた。
大学祭というのはどこもそうなのかもしれないけど、特にこの外語祭は学生のエネルギーが飲食店に注がれている。なるほど、だから「文化祭」ではなくて「大学祭」と呼ぶのだな。

今回の目標は円形広場のお店完全制覇だったのだが、あらためてぐるりと会場を見て回ると「とてもじゃないが、一人じゃ無理だ!」ということに気づいた。気づくのが遅すぎだが。
「わ、わ、どうしようどうしよう」
こうなると取捨選択するしかないわけだが、急につきつけられた現実を前に右往左往するしかなかった。あまりに目移りしてしまい、一体何を食べれば良いのかさっぱりわからない。
そんな状態の時、段ボールで作った壷のような形の看板を持った人に呼び止められ、熱烈勧誘を受けた。何だ、これ。
看板の裏からみたら、弥生式土器に見えた段ボール看板だが、表から見たら大根をかたどったものだった。大根?
お店の看板を見ると、「台湾屋台街」と書かれている。

あー、大根餅のことか。
このお店、台湾人留学生会が運営する大根餅屋だった。「台湾屋台街」とどかーんと銘打っているが、取り扱っているのは大根餅とタピオカミルクティの2種類限定。
せっかくの勧誘なので、俺的外語祭今年のオープニングセレモニーはこのお店で開催することにした。
大根餅200円。
タピオカミルクティとセットで400円だが、タピオカが現在品切れのため大根餅単品で注文。
それにしても、「お得セット」って北京語?では「超値組合」って言うんだな。何だかすごい値引きの達人たちが集まっているような印象を受ける名前だ。

台湾から運び込んだという大根餅をフライパンで炒める。それに特製だというソースをかけて、できあがり。
フライパンのサイズの制約もあって、大根餅のできあがりを待つ行列が結構あった。

さて、大根餅ができあがるまでの間、ビールを調達してこないと。
台湾屋台街では酒類の取り扱いが無かったのだが、ちょうどお店の向かい側が「ビールに恋して」という独ビール専門店だった。4年ドイツ語学科有志がやっているとのこと。
聞き慣れないビールが数種類、瓶で売られていた。店員さんに「大根餅にあうビールください」という、非常に難題なオーダーを出し、店員さんを大いに悩ませた。結局、あれこれ相談の上決めたのは「JEVER(イェバー)」というピルスナービール。400円+デポジット保証金50円。

これが本日一発目のお食事。
大根餅+独ビール。
まずは、一人で乾杯。
うーむ、11月下旬ということもあって、寒い。今日の天気予報は雨だったが、現在かろうじて降らずに済んでいる状況だ。こんな中ビールというのは結構ずしりと寒さが体に侵入してくる。
と、いう状況を今度はでき立ての大根餅で緩和。
うん、おいしいです。ほっくりしていて。
でもこんなのを最初に食べていたら、あっけなくおなかいっぱいになっちゃいそうだな。

イエヴァービール、とてもクリアな味わいなんだけど豊かで、結構好きです。というか気に入りました。苦みも適度にあって、飲みやすいけどうまいビール。
裏を見ると、ちゃんと日本語で品紹介が書かれているラベルが貼ってあった。ドイツから直輸入したのではなく、しかるべき業者を経由して入手したものなのだろう。
それにしてはこの400円というお値段、安い。
いや、たかが330mlのビールで400円というのは、国産ビールと比べれば当然高い。しかし、デパートで売られている外国ビールってどれも値段がお高くて、1,000円近くしても驚いちゃあいけません、っていうイメージが強い。「そうかぁ、複雑な流通経路を辿ると、外国産ビールって高くならざるを得ないんだろうな」と理解していたんだが・・・。実際は、外語祭ではどの国のビールも安く売られていた。「安いビール」ばかりを選んで売っているからだろうか、それともデパートがもうけすぎているのだろうか。謎だ。
ちなみにこれらのビール、お土産として持ち帰る人も結構多いようだ。だから、どのお店でも瓶ビールを頼むと、「栓を抜きますか?」と確認が入った。持ち帰る人は当然、栓を抜かれては困るからだ。確かに、いろいろな国のビールを廉価で買い集めてお土産にすると、自宅の夕食が華やぐことだろう。

さてこのビールだが、「400円」と値札にはかかれているにもかかわらず450円の請求がきた。何で?と店員さんに聞いてみたら、今回の学祭ではデポジット制をとっているのだという。
聞くと、デポジットセンターに飲み終わった空き瓶を持参すると、そこで50円が返金されるんだそうで。なるほど、時代ですなあ。
試しに飲み終わった瓶をデポジット受付所に持参してみたら、なるほど50円が返ってきた。何だか凄く得した気分。気のせいだけど。
この制度だと、家にお土産としてお持ち帰りした人は瓶代を取り返せないので、キャンパスで飲むよりも50円割高ということになる。
いや待てよ、逆に家にある空き瓶をたくさんここに持ってくれば一もうけできるんじゃないか?という悪い考えが頭をよぎる。しかし、それについては主催者側もちゃんと考えていて、お店で売られているビール瓶には必ずシールが貼られていた。キャンパス内で売られていたものですよ、という識別のためだろう。

大根餅という想定外なスタートを切った今年の外語祭。26語学科全ての制圧を狙っていたはずが、学科が存在しない「台湾」の料理を食べてしまった。うまかったから大満足なのだが、いかん、今回の主旨とはちょっと外れてるぞ。
気を取り直して円形広場に戻る。
どのお店も大行列。これがイヤで、大根餅に流れてしまったという事なのだが、それにしても相変わらず列が短くなる気配なし。ちょうど昼時ということもあるが、よくもまあここまで人が集まるもんだと感心する。
見ていると、地元民のお昼ご飯、学校帰りのお嬢さんのスナック、といった感じで皆様お集まりのようで。きっと地元に愛されている学祭なんだろう。
「食べたいものを食べよう」という、しごく当たり前な事を考えているのだが、そうはいってもこれだけお店があると目移りしてどれを選んで良いのかさっぱりわからない。とりあえず、行列が比較的短いお店に並ぶことに決めた。
ぱっと見る限り、ラオス語学科が比較的空いているようだ。ここのお世話になろう。
昨年は「コイスーラオス/恋するラオス」というタイトルでインパクトを残していたが、今年は特にそういうのは無しらしい。もったいない、良い名前なので今年も引き継げば良かったのに。

今年はやけに「ラオス風おしるこ」を推奨しているようだ。カウンター用の長机にもびっしり「ラオス風おしるこ始めました」という紙を貼り付けていた。
恐らく、ここ最近急速に寒くなったこともあって、暖かい料理が売れる!と踏んだのだろう。その狙いは正解だと思う。
・・・ただし、酒飲みである僕にとって甘味は全く無縁の世界だ。残念だったな、ラオス。

昨年と比べてみると、ほんの僅かにメニューに改変があるようだ。
えーと、とりあえずヨウチュン2個とビアラオのセット(Bセット)500円をください。

おや。
昨年は瓶だったビアラオだけど、今年は缶になったのか。ちょっと風情に欠けて残念。
おつまみは、ヨオチュン。ラオス風あげ春巻き。

・・・そういえば、昨年も全く同じ組み合わせで食べたなあ・・・。ヨオチュンを見て、ようやく思い出した。気づいていれば、昨年とは違うものを食べたのだが。
あと、気になって自宅に戻って昨年の写真と見比べて見たのだが、昨年はヨオチュン+ビアラオセットが450円だった。おっと、今年は50円値上げか。ただ、その分ヨオチュンのサイズはデカくなった模様。
さすがに屋外の臨時厨房で揚げているせいか、揚げ色にややむらがある。でもそれもまた良し。

第二ラウンド開始。
かーん。
ぐいー
ぷはー、やっぱいろいろな国のビールが飲めるっていいねえ。
寒いけど、ちょっとだけ幸せな気持ちになる。毎日仕事が忙しくて深夜タクシー帰りな日々だったわけだけど、ちょっと癒された気になる。・・・きっと気がするだけだけど。アルコール摂取でますます疲弊している予感が少しするが、まあ忘れておこう。今日だけは。今だけは。

ヨオチュンの断面図。
粘りけのあるあんが中に入っているのが特徴。きくらげや春雨?が入っている。
スナックとして食べられるので、ビールに良く合う!よーしよーし、がぜん盛り上がって参りました。
一人でハッスルする。

ビール2本飲んでちょっと盛り上がってきたので、行列を覚悟してdせも「ビールにあうつまみ」を選ぶことにした。
やっぱりビールのつまみといえばシシカバブでしょ。
急にそういうことにした。たった今決めた。
シシカバブは何カ国かのお店で取り扱っているので、それらをなんとなく眺めながら歩いていたら、がぜん食べたくなったのだった。よーしよーし、次は羊肉だ。
目についたのは「ムスタファケバプ」という、「どうだ、シシカバブ売るぞ」というやる気満々なネーミングのお店。えーと、ここはトルコ語学科すか。

ケバブ(ラム) 300円
ケバブ(牛) 250円
レンズ豆のスープ 150円
ライスプディング 100円
トルコアイス 300円
トルコ紅茶 80円
チェリージュース 120円
エフェスビール 300円
おや、イスラム教国のトルコなのに、ビールがあるのか。
後で調べてみたら、トルコは確かにイスラム国家だが、なぜか禁酒制度が無いそうだ。
それは大変にありがたい。ではトルコのビールを賞味してみることにしよう。
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