半径50mの世界食べ歩き(その4)
2010年11月20日。
また世界征服する日が来てしまった。世界を股に掛ける男・おかでん、東京外国語大学に見参。
2005年、2006年に訪問した東京外国語大学の学祭、「外語祭」。悪のりしたおかでんは2006年に「半径50mの世界食べ歩き」と称し、26語学学科の飲食店ブースすべてを食べ歩く、ということをやってみた。それを今年も2010年バージョンでやろう、というわけだ。
過去の記事を読んでいない人のために説明すると、東京外大には日本語を含め26言語の学科が存在している。英語、中国語などのメジャー言語からはじまって、どのようなニーズがあるのか不思議に思えるウルドゥー語やチェコ語などの学科まで幅広く取りそろえられている。そんな26学科が、それぞれ飲食ブースをこしらえて各国の名物料理を提供しているのが、外語祭のメインイベントとなっている。
ペルシア料理を右手に、左手にラオス料理なんていうトリッキーな事ができるのは日本広しといえどもこの外語祭しか不可能だろう。
東京外大には通算4度目の訪問。今回も、2006年同様全世界制覇を目標とする。趣旨に賛同してくれたたっぴぃさん夫妻が同行してくれたので、3人による食べ歩き企画となった。
11月下旬ということで、屋外にいると寒い。防寒対策は過去の経験を踏まえ、徹底的に行った。ぽかぽか陽気の一日だったが、着ぶくれするくらいの格好で現地入り。なにせ、世界各国のビールをあれやこれや飲むので、体の中からも冷えが回ってくる。やり過ぎるくらいがちょうどいい。
・・・と思ったら、本当にやり過ぎてしまった。冷え込むかと思った天気が、予想以上に温かかった。ホッカイロを仕込んでいたたっぴぃ奥さんは汗をかいてしまったくらいだ。まあいい、それくらいがビールが一番美味いんよ、と開き直る。
「あれっ!何だあれは」
毎年、キャンパス入り口で外語祭のパンフレットを売っているブースがあるのだが、今年はその横に「アルコールパスポート」と書かれた机も並んでいた。
お酒を買う方はココでアルコールパスポートをお受け取りください 年齢確認にご協力ください
だって。なんだそりゃ。
2006年に訪問した際も、お酒の飲み過ぎに対する勧告が掲示されていた。2005年にはなかったと思うので、何かお酒がらみのトラブルが2005年にあったのかもしれない。で、注意喚起はしていたものの、今やアルコールパスポートときたもんだ。きっと、こうでもしないと収まりがつかない「何か」があったのだろう。
そもそも、お酒は二十歳になってから、だ。しかし肝心のお酒を売っている学生さんたちはまだ二十歳未満だったりするわけで、量飲んで暴れた、ということだけでなく未成年飲酒についても問題になったっぽい。
パスポートをもらう。
もらう際、机にある「20歳以上」「20歳未満」のどちらかを指さしてください、と言われた。ここで20歳未満、というところを指さしたら最高に格好いいのではないか俺、と思った36歳男性独身おかでんだが、面倒なのでそういう冗談はやめておいた。
もらったパスポートは写真のとおり。
どうやら、1日に8杯までお酒が飲める、ということらしい。350mlのビール瓶だったら8本買える。まあ、常識的な範囲で飲んでいる限りはこの枠が全部埋まってしまうことはない。たとえわれわれが「全学科(全世界)制覇」を謳っていても、大丈夫だ。
度数が高いアルコールを買った場合は2マス埋まる、というルールがあるところが面白い。そういえば2005年の時にはスピリタス(度数96度)なんてのを売る店があったもんな。
このパスポートでどれだけ抑止力になるのかは不明。
各曜日ごとに8杯まで購入できるので、8杯×5日=40マスあるのだが、お持ち帰りの場合はそれとは別に8マスあるのが興味深い。つまり、日付関係なく、お持ち帰りの場合は合計8本までしか認めない、ということだ。ぱっと見抑止力になっていないパスポートだが、お持ち帰りに関しては明確な歯止めをかけているようだ。何があったのだろう。邪推したくなる。
会場に入ったところに掲示されていた、外語祭MAP。
赤い円形のところが渡り廊下のようになっていて、そこに26学科がブースをこしらえて世界大戦の真っ最中。やめい、ものども静まれい、これからわれわれが一軒ずつ吟味しちゃるけん、しばし落ち着け。
他の大学の学祭事情についてはとんと疎いのだが、ここまで飲食ブースがクローズアップされている学祭って他にはないのではないか?
ゴミ捨て場。
会場のあちこちに臨時でこしらえており、学祭実行委員が常に2名体制で張り付いていた。その裏方稼業には頭が下がる。すぐにゴミ箱がいっぱいになるので、結構忙しいポジション。
今年訪れてみて真っ先に気がついたのは、瓶のデポジットをやっていないということだった。瓶もその他ゴミ同様、このゴミ捨て場に廃棄する。昔は、デポジットセンターがあって、そこに瓶を持ち込めば50円返金があったものだ。あの制度、なかなか気が利いていると思ったのだが、今年度時点では廃止になったらしい。残念。
さらに残念なのは、各学科のビールの値段はデポジット代除いて50円引き、となっておらず、どこも割高料金のままになっていることだった。昔は「世界のビールが安く飲める、外語祭」だったが、今や「世界のビールは飲めるけど、値段は相応」に落ち着いてしまった。これもまた、「飲み過ぎ抑止」策の一環だろうか?
「半径50m」の様子を、パノラマ映像で。
思ったより大して面白くない写真になってしまった。しっぱい。
これで240度の範囲。
時刻はまだ10時ちょっと過ぎ。昼時になれば大行列になる各ブースも、まだまだのんびりとしている。今が仕入れのチャンス。3人で手分けして食糧およびビールの調達に向かう。
2006年の時は、参加者3名がバラバラに仕入れてきたので、この料理がいったいどこの国のものか、というのが判別不能になってえらい目にあった。最終的に整合性を合わせたが、苦労させられたもんだ。そんなわけで、今回は各自に
「指定された国を、順序正しく購入していくこと。料理のフルネームを覚えていなくても良いけど、最初の一文字くらいは覚えておくこと」
とお願いしておいた。
三人が円形広場にバラバラに散らばったところで食糧争奪戦開始。バーゲンセールの買い物のように両手いっぱいになるまで、買いまくれ。
まず一軒目、インドネシア語学科。バリ島にいかなくてもリゾート気分だぜへっへー。
ナシゴレン 350円
サテ 150円
ピサンゴレン 200円
コピ・スス 150円
ビルピンタン450円
サテ150円+ビルビンタン450円を購入。
うお、串を手渡しか。一軒目にして両手がふさがってしまった。世界制覇の陰謀を打ち崩そうとしとるな。怪しからん。
サテは焼き鳥にトマトソースがかかったもの。ううむ、このままかぶりつきたい。でもこれで150円はやや高い。
ビル ビンタン450円は、確か昔デポジット(50円)制度があったころと値段は変わっていないような。つまり、50円値が上がっている。チクショーっ。
インドネシア語でビールのことは「ビル」というのだな。「ビルビンタン」と発音すると、「ビルピンたん」と聞こえてちょっとだけかわいい。きっと気のせいだけど。
次もまた東南アジア。今度はビルマ料理。
どこも空いているのでサクサク買い物ができてうれしい。そして、売り子の学生さんも、まだぐったり疲れておらずフレッシュ。「今日を楽しみにしてたんですよ」なんて言うと、「ホントですか!」と心底うれしそうにしてくれる。
パゴダってなんだ。調べてみたら、ミャンマー式の仏塔のことを言うらしい。
そういえばここは「ミャンマー語学科」ではなく、「ビルマ語学科」なんだな。ミャンマーという言い方をしているのは、アウンサン・スーチーさんを拘束していた軍事政権であることから、昔ながらの「ビルマ」を意図的に名乗っているのかもしれない。
メニューを見ると、5日間の会期のうち2日目であるにも関わらず値段表記に訂正が入っている。しかも値引き。初日、肝がすくみ上るほど売れ行きが悪くて、早くもたたき売りを開始したのか。それとも看板作製係と会計係との意思疎通がうまくいっていなかったのか。どっちにせよ、値段が安いというのはうれしい。
モヒンガー 350円
サムサ 1個:120円 2個:200円
サヌイマネン 180円
ビルマビール 450円
紅茶 70円
ここではサムサ2個200円とビルマビール450円を購入。
サムサ、ご自由におかけくださいと受け取りカウンターにはスイートチリソース完備。適当にかけておく。
サムサは油をじっくりと吸い上げました、という風情。なんともハイカロリーかつ体に悪そうな揚げ物。でもジャンクな食い物ほど無性にうまい、という法則はここでも発動され、ぱりぱりの皮も相まってとてもおいしくいただいたのでした。むう、食欲と味覚というのは理不尽だ。
一方、「ビルマビール」として売られていたビールは「ミャンマー」と缶には書かれていた。国名を関したビールというのはなんとも迫力がある。しかし、南方系のビールにありがちな「華やかな香りはするんだけど妙に水っぽい」を地でいっており、うまいか?と言われるとあんまうまくないっす、という回答に落ち着いてしまうのだった。
2か国集めたところでおかでんはいったん陣地に戻る。陣取り要員も必要なので、あとは2名に任せて買い集めてもらった。
こちらは朝鮮語学科。「コリコリ」という名前が楽しい。
プルコギピタパン 300円
ビビンバ 350円
ホットック 180円
トッポギ 250円
チヂミ 200円
チゲ 250円
眞露の烏龍ハイ 220円
マッコリ 250円
梨ジュース 120円
OB LAGERビール 400円
Hite ビール400円
韓国ブースにて購入されたのはトッポギ250円。これが結構本格的にピリ辛に作ってあって、辛党のおかでんも「おおう、これはイカす」と満足の一品。最初は「トッポギみたいなデンプン料理、ビールにあわないだろ」となめてかかっていたのだが、すんません知見が足りなかったっす。
各自が何を買うかは自由裁量。だから、おかでんだったらこれを買うのに・・・そうか、それを選んだか、というチョイスは多々あった。だがむしろそれが面白い。
ちなみに、このブースを選んだたっぴぃさんは「マッコリとか最初から選ぶのもどうかと思って、お酒は何も買わなかったですよ」と報告してくれた。
「そうだよなあ、韓国でビールって全然聞かないですよね。韓国料理店行っても、日本のビールしか置いていない」
なんて会話をその場でしたのだが、後でメニューをよく見直すと、ちゃんと2品も韓国のビールが売られていたのだった。しまった!
こういうのは多々発生する。なにせ、四方八方が情報の渦になっている学祭。そんな中で、各ブースに押しかけて瞬時に注文する品を選ばないといけない。とっさにベストな判断なんて、できるわけがないのだった。「目についたものを、注文」しちゃうのが現実。
ところでなんで韓国のビールって日本じゃほとんどお目にかからないのだろう?あらためて不思議だ。まだ、台湾の台湾ビールのほうが入手しやすいんじゃあるまいか。
ウルドゥー語学科。
ウルドゥー語ってどこの国の言葉だ?と質問したら、たぶん答えられる人はほとんどいないと思う。おかでんもまたしかり。ただ、「パキスタン料理」を銘打っているところをみると、どうやらあのあたりの国の言葉らしい。
ウルドゥー語学科のお店の前に、チョコバナナの売り子をしている金髪和服姿の学生がいて、違和感ありまくり。海外のコスプレイベントの一風景、のようだ。毎年、弓道部がチョコバナナを売るのは外語祭の定番。ちょうど弓道部に金髪碧眼の青年が入部していたらしい。
この時間帯は各ブース暇らしく、売り子として円形広場のあちこちに出没し売り歩いていた。
ウルドゥー語のメニュー。
スィーフ・カバーブ 200円
ボーティ・カバーブ 200円
チャーエ 100円
ラッシー 100円
キール 100円
さあ、シシカバブ系の登場だ。この26語学科をざっと見ると、羊肉を扱っている店が多いことに気が付く。羊肉って広く愛されている肉なのだな。それに比べて日本じゃ、ジンギスカンで食べるくらいで、スーパーでもあまり大々的に売られていない。このギャップは何?
いずれ、ご当地B級グルメの中で「焼き鳥ならぬ焼き羊」を標榜するところが出るに違いない、と予言しておこう。
パキスタンということでさすがはイスラム圏、お酒の取り扱いは無し。
ボーティ・カバーブ200円。メニュー解説によると、「スパイスたっぷり羊のステーキ」なんだそうだ。ステーキが串に刺さっている不思議。ステーキの定義っていったい何なんだろうね?
マレーシア語学科。
マレーシアと聞いて思い浮かべるのは首都:クアラルンプールと第二次世界大戦における「マレーの虎」くらい。外語祭に足を踏み入れるということは、己の知識の浅さを再認識させられるきっかけとなる。
マレーシア語学科のメニュー。
田舎風ナシゴレン 400円
13種類の野菜スープカレー 400円
魚のかきあげ 200円
バナナボール 150円
お好きなジャムのせもっちり南国クレープ 200円
タピオカとフルーツ果肉入り紅茶 150円
マレーシアもイスラム教国なので、アルコールの取り扱いなし。
田舎風ナシゴレン400円。
ナシゴレンはインドネシア語学科でも売られていたので、うっかりそっちでも買っていたら「ご飯ものだらけでおなかいっぱい」になるところだった。危ないところだった。
「田舎風」の定義がよくわからんが、田舎ではこんなナシゴレンが出てくるのだろうか。
食べてみたら、パラパラの域を超えて米がパサパサになっており、これはあまりビールのお供にはならなかった。
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