激辛グルメ祭り2013

2013年8月某日(開催X日前)

激辛グルメ祭り、というイベントが新宿で開かれる・・・

この情報をキャッチしたとき、おかでんはやや戸惑いがあった。激辛なものから遠ざかって久しいからだ。今でも辛いものは好きであることには変わりないが、そういえば辛いもの、最近食べてないなあ。日常的に欲しても、いない。

今までなら、問答無用でこのイベントに突撃しただろう。でも今はどうだろう?正直、このイベントに自分はどう臨めばよいのか、測りかねた。

「でも、やっぱり行っちゃうんだよな。『激辛』が、『祭り』なんだから。見捨てるわけにはいくまい」

祭りの開催を告げるwebサイトを見ながら、ひとりごとをつぶやく。

お酒をやめて以来、あれだけ「辛党」を自負していたおかでんの味覚に変化が訪れている。あろうことか、目の敵にさえしてきた「甘いもの」がだんだん好きになってきているのだった。くっ、悔しいッ!・・・屈辱ッ!と思いつつも、「かき氷を毎週一回は食べ歩こう」とかやり始めたんだから本格的な転向だ。

正直、今思えば辛い物を食べていたのはストレス発散の意味合いが強かったようだ。仕事が忙しい時、問題を内面的に抱え込んでいる時にこそ辛い物欲求が増えた。それはビールの欲求も同じ。ストレス発散を飲食に頼った結果、僕はついにビールを一生飲めない体になってしまった。

では今、辛い物を率先して食べなくなったのは、僕のストレスが消失したからなのか?というとそういうわけではない。これまでにない強いストレスにさらされ続け、体重が5か月で17キロ減ってしまったところから、その状態はうかがい知れるだろう。でも、ビールをやめたことにより、「ストレスを何か飲食で晴らす事の虚しさ、無駄っぷり」を悟った感はある。その結果、辛い物を食べなくなった。

そんな中でのこのイベント。忘れかけた「心の中にたぎる激辛への情熱」が奮い立たされた。やっぱりおかでんはあくまでもおかでんだった。もう一度、激辛を食べてみよう。今までの僕の嗜好は気の迷いだったのか?それを証明したい。

激辛グルメ祭りの開催を告げる広告

激辛グルメ祭りは、8月22日(木)から9月1日(日)までの結構な期間、歌舞伎町の大久保公園を借り切って開催されるイベント。全部で9店舗の激辛自慢のお店が軒を連ね、激辛料理を提供するというものだ。

全部で9店舗?

そうか、9店舗か。

手ごろな数だな。多すぎず、かといって少なすぎず。

あっ、お前、何を考えてる?

はい、全店舗制覇しようかなあ、と。

やっぱりおかでんはおかでんだった。こんにちは通常運転のおかでんです。ごきげんよう。

各店舗は、ご丁寧に提供料理の辛さ調整が自由にできるようになっている。「小辛、中辛、大辛」といった感じで。なるほど、だったら今回の企画は簡単だ。「9店舗、全店舗で『このお店で一番辛い料理を出せ』と言い、出てきた料理をクールに食べる」ということをすればいいんだな。わかった、やろう。(即答)

日程としては、3日間に分けて、会社帰りに足しげく通う事にした。一日3軒ずつ。一度にたくさん辛いのを食べるので、体調に支障がでないかやや心配ではある。

2013年8月某日(開催前日)

9店舗がその激辛を競い合うのだ

公式サイトを見ながら、訪問計画を立てる。どのタイミングで、どのお店の激辛料理と対面するか・・・。これは、知的なゲームだ。単に「空いているブースに、当日飛び込めばいいじゃん」というわけにはいかない。大して辛そうでないものとマジやばいものを組み合わせてみたり、料理同士がバッティングしないように事前の配慮が必要だ・・・と思う、少なくとも全メニューを食べる予定の僕にとっては。なにしろ、「カレー」は3店舗あるし、「タイ料理」は2店舗ある。そのほか、ご飯ものや麺類といったものも、できるだけ各訪問日に均等に割り付けたい。

思案の末、作り上げたプランは次のとおり。

【1日目:8月22日(木)】
◎FONDA DE LA MADRUGADA(メキシコ料理)
牛フィレ肉と野菜のチレ煮込み(プンタス・メヒカーナス)〈Sサイズ〉
900円
スペシャル

◎ソウルフードバンコク(タイ料理)
冷やしトムヤムクンラーメン
900円
大辛

◎マンダラ(インド料理)
チキンバターマサラ+ナン
900円
激辛

【2日目:8月23日(金)】
◎京華樓(四川料理)
本場の四川麻婆豆腐 〈Sサイズ・ごはん付〉
900円
激辛

◎蒙古タンメン中本
辛し肉肉麺 〈Sサイズ
600円
5辛※1、2、3辛は通常の麺、4、5辛は特製の唐辛子麺となります。特製辛みソースをMAXまで増やしたい方はお気軽にお声がけください。

◎ダクシン(南インド料理)
シーフードカレー+ナン
900円
激辛

【3日目:8月25日(日)】
◎幸永(韓国料理)
旨辛ホルモンMIX
900円
二辛

◎ムアン・タイ・なべ(タイ料理)
春雨のサラダ(ヤムウンセン) 〈Sサイズ〉
900円
大辛

◎エチオピア(カリーライス専門店)
チキンカリー 〈Sサイズ〉
600円
70倍(激辛)

各店舗、複数のメニューを用意しているが、その中で「これ」といったものをチョイスしてみた。辛さはもちろん、全店舗一番辛いものを。

セブンイレブンで食券を買う

さあ、メニュー選びが終わったら、食券の購入だ。

このイベントは食券制度が導入されており、全店舗、メニューは「600円」「900円」「1,200円」の3通りしかない。来場者は、自分が食べたい料理の値段の食券をあらかじめ購入しておく必要がある。

もちろん食券は現地でも買えるのだが、このイベントの秀逸なところはセブン・イレブンでも事前購入ができる、ということだ。しかもそれだと、各食券ともに50円引きという太っ腹。つまり、600円の食券だと、550円で買うことができるのだった。これはぜひ、あらかじめセブン・イレブンで買っておきたい。

計算してみたら、僕に必要な食券は「600円2枚、900円7枚」ということが分かった。そこでさっそくセブン・イレブンに行ったのだが、購入はひとまず7枚にとどめておいた。つまり、2枚は保留だ。なぜなら、当日の体調や気分で、注文する料理が変わるかもしれないからだ。その時のために自由度を持たせるため、あえて2枚はまだ買わなかった。リスク管理までしなくちゃいけないのが、激辛に対峙する人の常。

2013年8月22日(開催1日目)

開催当日。新宿駅から会場である大久保公園に向かう。ざっくりいうと新宿コマ劇場跡の裏手方面にあるのだが、ディープ歌舞伎町と呼べる場所であり、この辺りはバッティングセンターに行くくらいしか用がないッ場所だ。

大久保公園

目的地の大久保公園は、高いフェンスと城門に囲まれた場所だった。ホームレス避けのためなのだろうか。訪れたのは18時前だったので、まだ来場者の数は少ない。こっちは単身乗り込んでいる身。団体客が会場にあふれているシチュエーションは正直つらいので、とっとと食べて、とっとと退却したい。会場が混雑する前に。

ようこそ、激辛の世界へ

入口に立ちふさがる、店舗と料理の紹介看板。来場者はまずここで自分の体調と相談しなければならない。何しろ、「激辛」のイベントだ。食べる時はみな、気分はアスリート。心技体が伴ってこそ、おいしく食べることができる。今日の私は何を、どれだけ、どこまで(どの辛さまで)食べることができるかな?・・・そういう自問自答に答えを見出して、食券を買い求めることになる。

食券売場

食券売り場は、プレハブ小屋の中にあった。あれっ、自動券売機だ。こういうイベントの食券って、手売りするものだと勝手に思い込んでいたけど、最近じゃ自動食券機を使うようになったか。まあ、そりゃそうだよな。初期投資はかかるけど、こっちの方が楽だ。3パターンしか食券はないのだから、食券機の設定はとてもシンプルだし。

お酒がめっぽう安いのには驚いた

シンプルな食券機だが、アルコールのボタンも用意されていた。

生ビール(プレミアムモルツ)300円、角ハイボール200円。

安い!これはお得だ。昔の僕なら、辛い物そっちのけでビールばっかり飲んでしまいそうだ。

お酒がよく売れていた

これだけ安いのは、ハッピーアワーだったからだ。18時になると、通常料金に戻ってこの倍額になる様子。半額で飲めるってぇんだから太っ腹だ。辛い物だらけのイベントなので、ビールがさぞや売れることだろう。確かに、客席を見渡すと、男性はビール、女性は角ハイボールを飲んでいる人が多いような気がした。

客席

客席。公園を覆い尽くすようなテントの下に、長机と長椅子。これだけ大きなテントが設営されていれば、この時期よくある夕立にも対処できるだろう。

ただこの長椅子がくせ者で、椅子の端に座ると、シーソーのように椅子の反対側が跳ね上がった。そのせいで何度か倒れそうになった。今後殺人椅子と呼ぼう。

ずらりとお店が並ぶ

プレハブ建物がずらりと並び、お店が軒を連ねる。縦一列に9店舗が並ぶ。プレハブの中では実際に鍋や釜がセットされ、調理が行われていた。辛さ調整が自在、ということはそれだけ調理の手間がかかるということでもある。お店側はちょっと大変だと思う。まさか、「辛さ調整は、唐辛子を入れるスプーンの杯数で決まる」ってわけではあるまい。

これは伏兵、かき氷のお店もあった

おっと、かき氷のお店もあるのか。これもまさか激辛・・・なわけ、ないな。激辛かき氷なんてこの世の中に存在しないはずなので、もし開発したら唯一無二の存在として注目されるだろうに。でも多分ウケないとは思うけど。

せっかくだから、全9店舗を食べ終わった後、ご褒美というかデザートとして、このかき氷を食べることにしよう。さて、ここにたどり着くことはできるかな?

1軒目:FONDA DE LA MADRUGADA(メキシコ料理)

FONDA DE LA MADRUGADA

栄えある一軒目は、メキシコ料理を選んでみた。煮込み料理というのに惹かれたからだ。どんな味なのか、他の店舗と比べて想像がつきにくい。だから、全店舗の中で一番興味があった。

FONDA DE LA MADRUGADAのメニュー

・牛フィレ肉と野菜のチレ煮込み(ブンタス・メヒカーナス)
S:900円 M:1,200円
辛さ→ミドル、スペシャル
・サルサ&ワカモレチップス 600円
・チキンタコス 600円
・チキンタコス&ワカモレ 900円

血気盛んな昔だったら、「Mサイズ!」と叫んでしまいそうだが、今ならSサイズで十分。食が細くなったんで。あと、良く考えろ、各店舗で1,200円なんて料理を食べ歩いたら、全店舗巡り終えたときには1万円以上の出費だ。食べ歩きは、コスト意識もないとダメだ。

牛フィレ肉と野菜のチレ煮込みSサイズ

店員さんに「煮込み、スペシャルで」と注文したら、にやっと笑って「スペシャル!」と反復してくれた。お店としてはしてやったり、なんだろう。そりゃ、せっかく「激辛グルメ祭り」に出店したんだ、「極力辛くないようにしてください」などというオーダーなんて聞きたくないだろう。「スペシャル」、これぞお店が望んでいる姿。そして僕も望む姿。

さほど待たずにでき上がったのがこれ。

牛フィレ肉と野菜のチレ煮込みSサイズ <スペシャル> 900円。

煮込みに、トルティーヤがついている。

これで900円は正直高いとは思うが、イベントなんだからこんなものだろう。セブンイレブンの取り分、主催者の取り分を考えると、お店に入ってくるお金は600円以下か。であれば妥当ともいえる。

具だくさんで結構うまい

ただ、さすがに「いわゆる縁日の屋台料理」とは格が違う。実在するお店の看板背負ってやっているだけあって、具はしっかり、味もしっかり。おいしい。すがすがしいチレの辛さが心地よい。アクセントとして入っている香草もさわやか。トルティーヤはもそもそして美味いもんじゃないので、バゲットの上に載せて食べたいものだ。これはワインが欲しくなる味。この際白でも赤でも可。

辛さはというと、「スペシャル」というには物足りないものだった。ピリ辛程度。・・・ということは、普通の人が食べたらやっぱり「激辛」なんだろうな。僕の味覚は激辛に関しては全くあてにならない。

やや汗ばむおかでん

「こんなん余裕だよ、飲み物すらいらない」

と言いながら煮込みを食べていた僕だが、写真を見てみると額に汗が浮き出ている。なんやかやいって、やっぱり辛いらしい。本人にはあまり自覚がないけど。

水、お茶、共に売り切れ

煮込みをおいしく食べ終わったところで、飲み物を買うことにした。今さっきの煮込みだと、確かに飲み物はいらなかった。しかしこの後どうなるかはわからない。「あっ、辛い!」となってから慌てても遅いので、辛さと遭遇する前に飲み物は買っておかなければ。だいたい、一軒目の前にあらかじめ買っていなかったのが不注意なんだ。

このイベントでは、アルコールのブースはあるもののソフトドリンクは売られていない。ただ、公園内に臨時の自販機が設置されているので、欲しい人はそこから購入することになる。

「うへっ」

自販機の前に立って、思わず変な声を出してしまった。よく見ると、お茶、水の類が全部売り切れていたからだ。やっぱり、みな考えることは同じか・・・。

「ノンカロリーの飲み物以外は、基本的に飲まないんだけどなあ」

とぼやきながら、かろうじて売れ残っていた「GREEN DAKARA」を買う。多分この商品も、この後全部売り切れるんだろうな。で、あとは缶飲料しか残らないという。

2軒目:ソウルフードバンコク(タイ料理)

ソウルフードバンコク

飲料をしっかり確保したのち、2軒目となる「ソウルフードバンコク」を訪れた。「ソウル」なんだか「バンコク」なんだか紛らわしい。

ここでは数名の行列ができていた。麺料理を出す店なので、どうしてもゆで時間のために行列ができてしまうらしい。待っている間、鶏もも肉をあぶったもの(ローストチキン)を爪楊枝で試食させてくれた。

この日は風が時折吹き抜けたのだが、その風のせいで鶏もも肉の試食皿が吹き飛ばされた。その時、接客をやっていたタイ人たしき女性店員さんは、「オーマイガッ」と声を上げていた。あれっ、仏教徒じゃないのか。

ソウルフードバンコクのメニュー

・冷やしトムヤムクンラーメン 900円
辛さ→小辛、中辛、大辛
・グリーンカレー
S:600円、M:900円
辛さ→小辛、中辛、大辛
・タイのローストチキン(ソース付) 600円

トムヤムクンは大好きな料理のひとつなので、「冷やしトムヤムクンラーメン」を選んでみた。他の店が全て暖かい料理なのに対して、この料理だけが冷たいものだったというのも理由の一つ。

辛さはもちろん、大辛だ。

行列の前に並んでいた女性は、「小辛と中辛の間」と注文していた。一体どうしたいんだ。それだったら中辛にいっちゃいなよ。

■厨房は忙しい人と暇な人がいた

ローストチキンを焼く厨房。ただし、見る限りローストチキンはあまり売れていなかった。そりゃそうだ、激辛のイベントなのに、辛くないチキンを食べるってのは「箸休め」的な意味しかない。どうしてもマイナーな売り上げになってしまう。

一方、テボがいくつもセットされているゆで釜の担当の人は忙しそうだ。トムヤムクンラーメンがよく売れていたからだ。グリーンカレーよりも、やはり多くの人はトムヤムクンラーメンを選ぶ模様。

唐辛子とナンプラー

お店の前には、唐辛子とナンプラーがセットされていた。お好みに合わせてかけてくれ、ということらしい。ナンプラーの中には刻んだ唐辛子が沈んでいる。辛さに飽き足りない人はこれをかけろ!ということらしい。それはぜひご相伴にあずからないと。もともとの辛さはわからないけど、ここは一発。

・・・と、でき上がった料理に唐辛子をかけようとすると、店員さんに

「もともとがかなり辛いから、もっと辛くなりますよ?後悔しますよ?」

とやんわりと「やめとけ」と言われた。そういえばさっき店員さん、

「今回の店の中でウチが一番辛い」

と談笑してたっけな。そうだとすれば、確かにこの唐辛子は無謀だ。でも、飾り程度には使わせてもらった。一体この唐辛子、何のためにあるんだ?