日光そばまつり2016

お店

信州ぼくち蕎麦 石田屋一徹@長野県飯山市

写真だと、閑散とした風景のように見える。でもこれは雨が降っているから。客もお店の人も、屋根があるテントの下に身を縮めて入っているからだ。晴れていれば、もう少しテント周辺にぼんやりと人がいたり備品が置いてあったり、おおらかな雰囲気になる。決して不人気なイベントでも、不人気なお店でもない。

さてこのお店は紫色の看板が目立つ。飯山市からやってきた、「石田屋一徹」だ。

飯山といえば長野県の北東の端に位置する場所で、アワレみ隊でも「蕎麦集落」めぐりをしたことがある(富倉地区など)。山奥に忽然と現れる蕎麦屋、というシチュエーションにワクワクしたものだ。

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この界隈は、上田や小諸あたりの蕎麦とも、松本あたりの蕎麦とも違う独自の文化があって面白い。

信州ぼくち蕎麦

「これぞ!信州そば!」と力強く記された「信州ぼくち蕎麦」。飯山界隈の蕎麦は、「オヤマボクチ」と呼ばれるヤマゴボウをつなぎにして打つ蕎麦として知られている。知られてはいても、「幻の蕎麦」といわれるくらいで、食べられる機会はなかなかない。

ゴボウといっても、使うのは葉っぱ。根っこではない。その葉っぱをバラしたり叩いたりあくを抜いたりして、さんざんこねくり回したあげくに作った繊維をつなぎに使う。小麦粉が潤沢になかった時代からの名残りだが、「オヤマボクチの繊維を確保すること」がとても面倒なので今じゃほとんど行われていない製法だ。

そんなに面倒ならつなぎを小麦粉に変えればいいじゃないか、と思うが、小麦粉だと蕎麦の味が薄まるけどオヤマボクチだと薄まらないというメリットがあるそうだ。なるほど、そういうことなのか。単に伝統芸能的に生きながらえてる文化じゃないんだな。

折角だから本日の一軒目はこのお店に決めた。オヤマボクチの蕎麦を食べるのは随分久しぶりだ。

おやまぼくち

おっ、噂のオヤマボクチが鉢植えとして店頭に置いてあった。へええ、こんな植物なのか。初めて見た。

思わず写真を撮ってしまう。オヤマボクチの写真をわざわざ撮っているのは変だろうか?

こんな何の変哲もない葉っぱから繊維を取り出し、蕎麦を打とうだなんて、昔の人はチャレンジャーだったんだな。ウニを人類初で食べた人よりすごいと思う。ホヤを食べた人並みにすごい。

食券

もりそばとかけそば(各500円)を購入。食券には「ざるそば」とかかれいてるのはご愛嬌。蕎麦業界、「もり」と「ざる」、および「せいろ」というのはややこしい。全く同じ意味である場合もあるし、違う場合もある。

ちなみに「ざるそば」の食券には「21」の番号、「かけそば」の食券には「60」の番号が記されていた。おそらく本日の通し番号だと思うので、かけそばの方が3倍売れていると思われる。寒いから、「ざるの方が蕎麦本来の味がわかって良い」なんてきれいごと言ってらんねーよ、というわけだ。そりゃそうだ。

厨房

お店の厨房。

テントの中はものすごい湿気でむっとする。常時大釜で蕎麦をゆでていて、もうもうと舞い上がる湯気がテントの中に満ち溢れているからだ。メガネが一瞬曇る。

そんな中、厨房には大勢の人が忙しそうに働いていた。

これだけの人が働いていたら、本丸である地元のお店はどうなっているんだろう?イベント期間中は閉店しているのだろうか?

「いや、うちら日雇いでやとわれてるんです。普段から日光に住んでます」なんていわれたらびっくりだ。まさかそういうことはあるまい。手馴れた動きだ。

かけとざる

かけともり。両方ともオヤマボクチで練ったぼくち蕎麦だ。

ざる

もり。

独特の歯ごたえ。そして強い蕎麦の風味。見た目は使い捨てプラ容器で安っぽいけど、味は上等。

これがぼくち蕎麦なのかッ!とあらためてしげしげと眺める。「小麦粉を割り粉にした蕎麦は味が薄い」というのは、ぼくち蕎麦を食べるとよくわかる。十割蕎麦の素っ気ない食感、歯切れと比べてやたらと弾力があるのに、味が濃い。唾液がよく分泌される。

ああ美味いなあ、蕎麦っていいなあ。にっこり。

かけ

弾力がある麺なんで、温かい蕎麦にも向いている。ヘロヘロした麺だとすぐに伸びてしまうけど、ぼくち蕎麦ならしばらく持ちこたえそうな気がする。

あー、あったかいなあ。寒いときは温かいものが最大のご馳走だな、と一瞬思ったが、それを口にしちゃいかん。それだったらわざわざそばまつりに来た意味が揺らぎかねない。

お店

会場巡りを再開しよう。

やぶ定・下の家JV@日光市

建築現場で、ゼネコン同士の「JV(ジョイントベンチャー)」というのはよく見かける。でも、蕎麦屋のJVって初めて見た。

「日光あおい蕎麦」というブランドの蕎麦粉を使って蕎麦を打つらしい。

それぞれの蕎麦屋台は、緑と白のとんがり屋根テントが支給されている。それでは不足、という屋台については、自前でテントを持ち込んで設営するのは自由のようだ。このお店の場合、自立式のタープを店頭に置いてお会計カウンターを設けていた。

お店

会津磐梯そば道場@福島県磐梯町

会津地鶏そば、というのぼりが寒風の中はためいているのが目立つ。この屋台は、蕎麦粉のブランドを売りにするのではなく、具となる「会津地鶏」を売りにしている。

そういえばさっき、鶏肉を使った「祝言そば」を売るお店があったな。福島県は鶏肉を使った料理が盛んなのかもしれない。僕の印象としては、会津若松で食べた馬肉なんだが、あれはさすがに特殊か。

お店

北海道そば@北海道紋別市

この屋台も結構よく見かける気がするのだが、あらためて店名を見るとかなり大胆だ。「沖縄そば」がいわゆる「蕎麦」とはぜんぜん違うものであるように、「北海道そば」も別物っぽい印象を受ける。でも決してそういうわけではない。

お店は紋別にあるというのだから、遠路はるばるよくぞ来てくれた、と思う。この屋台はいつも北の大地と海の幸を天ぷらにして蕎麦のトッピングにしているのだが、いい加減蕎麦食べ歩きでしょっぱいツユにうんざりしているときには最適だ。蕎麦を食べ続けるというファイティングポーズはとり続けながらも、お口直しができる。

ただし、ノーマルの蕎麦が500円なのに対し、天せいろ/天ぷらそばは1,000円。さすがにカニ、エビ、カボチャの天ぷらをつけるとなると値段は倍になってしまうか。

お店

那須手打ち蕎麦倶楽部@那須塩原市。

ナスの天ぷらが載った蕎麦ってうまいだろうなあ、なんてぼんやり考えていたが、このお店は「那須だから茄子」という安直なことをせず、朝鮮人参の天ぷらを振舞うのだという。

お店

会津山都蕎麦 蕎邑@福島県喜多方市

ここも蕎麦イベントの常連。うまい蕎麦だったと記憶しているが、今回は「シンプルにうまい蕎麦」っていうのはいまいち食指が動きにくい。「会津のかおり」という福島産の蕎麦粉はきになるけれども。

お店

江戸流手打ちそば 青山学舎@東京都港区

天ぷらそばを高らかにうたっている。お店の看板よりも天ぷらそばののぼりの方がデカい。

「学舎」を名乗っているので不思議に思って調べてみたら、ここは蕎麦打ち教室だった。我孫子を拠点に、青山、白金などで教室を定期的に開催しているらしい。一回いくら、という形で単発参加できる教室のようなので、気軽に体験できそうだ。ちょっと興味が湧いた。

で、その蕎麦打ち教室の成果発表会という感じで、秋にはあちこちのそばまつりに遠征しているというわけだ。なるほど、そういうのも楽しそうだなあ。

お店

日光手打ちそばの会@日光市

ここも「日光あおい蕎麦」を使った蕎麦を提供している。

この屋台に限った話ではないが、テントはビニールカーテンで覆われているし、店頭には傘をさした人が群がっている。「お店の様子を伺ってから、イイカンジのお店に入る」っていうのは到底無理だ。

でも、せっかく日光に来たわけだし、地元日光の蕎麦とやらを食べてみるのもよろしかろう。よし、二軒目はここにしよう。イロモノともいえる派手な蕎麦を食べて味覚がもっていかれる前に、オーソドックスなうまいやつを食べておこうという算段。

メニュー

もり、かけが500円。天ぷらそばが600円。そしてさすが日光、「日光湯波そば」があって700円。

「日光あおい蕎麦」の名前の由来が、このメニュー表でわかった。ああ、「葵の御紋」の「あおい」からきているんだな。

食券

もりそばを頼んだら、紙に「もり1」と書き込んで手渡してくれた。あと、キーホルダーのようなものも。

「もりー」と語尾を延ばしているように見えてちょっとほっこり。

厨房

このお店も厨房は大忙し。

蕎麦の仕上がりを待つお客さんがどんどん列をなすのだけど、雨にぬれたくないものだからグイグイ中につめてくる。そのおかげで厨房前はぬかるんだ地面のところに人がみっちり。

寒いし、ぬれているし、足元はぐちゃぐちゃだし。早く蕎麦を出さないとお客さんがいらだつ!急げ!とばかりに厨房はフル稼働。

そば

で、「日光あおい蕎麦」使用のもりそば。

ここは使い捨て容器ではなく、ちゃんとした器を用意していた。細い麺が特徴。

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