那珂湊から、阿字ヶ浦に向けて海岸線を車で走る。
この界隈の海岸線は、白亜紀の地層が見えるという特殊な場所だ。
普通、古代の地層というのは川沿いの崖などに断層があって、そこで見ることができるものだ。しかしここは、その断層がほぼ横倒しになっていて、岩礁として海水面よりも高い場所に残っている。なので、言われなければ気が付かないけれど、言われて見るととても不思議な光景を眺めることができる。
この海沿いの道路は「大ちゃん通り」と名付けられているようで、看板が出ていた。
妊婦・いしと「大ちゃん通り」の看板とで記念撮影をする。というのも、お腹の中にいる子は「大ちゃん」と呼ばれているからだ。
妊娠がわかって以降、実家の母親と連絡を取り合うことが増えた。おかでん母、まさか70代半ばになって新しく孫が生まれるとは思っていなかったので大喜びのウキウキだ。そんな母との会話の中で、母は「お腹の赤ちゃん、なんだか大ちゃんという名前が似合ってる気がする!」と言い出し、それ以降ずっと「大ちゃん」と呼ぶようになった。
僕らも母に倣って、「大ちゃん」と呼ぶようになって今に至る。なので、まさにこの「大ちゃん通り」というのは臨月の我々にぴったりの看板だった。
とはいえ、通称名・大ちゃんの場合、本名をどうするかが悩ましい。今、まさに「どうしようどうしよう」と夫婦で悩んでいるところだ。僕のパートナーは職業柄とても多くの人名に触れてきた。そのため、「この名前はどうか?」と案を出しても、「あー、それだと◯◯さんのお子さんと同じ名前だー」とか「△△さんを思い出す名前になるなぁ」という回答が返ってくる。
なるほど、キラキラネームが流行るのは、単に「カッコいい名前をつけたいから」という理由ではなく、知人その他の名前と重複したくないから、という回避の結果なのか。
阿字ヶ浦界隈にやってくると、ユーモラスな方向指示看板がお出迎えしてくれる。
「磯崎駅」の文字には、漢字の一部にサツマイモが描かれているし、「阿字ヶ浦海岸」はアンコウの絵が入っている。
訪れたのは、「酒列磯前神社」。「さかつらいそさきじんじゃ」と読むので、一度では覚えきれない難読神社だ。
ちなみに、地名は「磯崎」と書いて「いそざき」なのに、神社の名前は「いそさき」というのもややこしい。
この神社は、鳥居から拝殿までの間に300メートルにも及ぶ参道がますぐ伸びている。
参道の両脇から、まるで商店街のアーケードのように空を覆うかたちで木々が茂っている。椿をはじめとする複数の樹木が混じっているのだが、この参道を歩くのがとても神秘的で、心が穏やかになって心地よい。本当に素晴らしい散歩道だ。
しかし、鳥居のすぐちかくには駐車場がない。このため、拝殿近くにある駐車場に車を停め、わざわざ鳥居のところまで歩いていってからこの参道を歩く。
酒列磯前神社、拝殿。856年創建。
大洗の海上に神様が現れたので、それで神殿を作って祀ったという話らしい。なるほど、だから「磯前」なのか。
ちなみに大洗にも「磯前神社」はある。
阿字ケ浦駅。
JR常磐線勝田駅を起点とする、ひたちなか海浜鉄道の終着駅。無人駅なのでここに来ても何かあるわけではないが、そこにローカル路線駅があるとなるとどうしても立ち寄ってしまう。たぶん、男性ならそういう思考回路に賛同する人は結構いるのではないか?
阿字ヶ浦、という漢字が楽しい。
数年前、この阿字ヶ浦に一泊したことがある。冬場の宿泊だったのだけど、宿飯がアンコウ鍋だし、温泉はあるし、景色はいいし、かなり満喫した。良い場所だと思う。
阿字ヶ浦海岸はその昔、「東洋のナポリ」と呼ばれていたそうで、砂浜では海水浴客で賑わっていたそうだ。上野から常磐線がこの阿字ヶ浦まで直通する季節列車も運行されていたというから、ずいぶんなにぎわいだ。
その名残で、今でもこの阿字ヶ浦駅のホームはやたらと長い。首都圏から特急列車がやってくる駅だったからだ。
列車が阿字ケ浦駅にやってきた。ここで終点。
ローカル路線という存在は全国各地で廃線が取り沙汰されるものだが、このひたちなか海浜鉄道は阿字ケ浦駅からの延伸をずっと狙っている。あと1キロちょっと線路を伸ばせば、国営ひたちなか海浜公園があるからだ。音楽フェスの会場としても有名だし、ネモフィラが咲く季節になると大勢のお客さんがやってくる。
あと1キロ伸ばせば・・・でも工賃はかかる・・・国や自治体からの助成金は期待できるかどうか・・・?と日々葛藤していることだろ。
そんな阿字ヶ浦駅のすぐちかくにちょっとした丘があり、そこに「掘出神社」という神社があることは知っていた。
この近辺がさつまいもやほしいもの産地であることを思えば、「掘り出し神社」という名前はとてもご当地感があって面白い。
一度訪れてみたいと以前から思っていたのだけど、なにせこの界隈はどこも駐車スペースが乏しい。なので諦めていた。
しかし今回、地図を見ていたらこの掘出神社の脇に「ほしいも神社」なるものがあることに気がついた。なんだそれ。現世ご利益にもほどがある。
これはもう、車の駐車はなんとしてでも行ってみよう。
神社の前に駐車スペースがあったので、そこに車を停めてから掘出神社をお詣り。
さすがにクワとかの農機具をモチーフにした建物や装飾品ではなかったが、質実剛健な印象の立派な神社。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (6件)
出産前の小旅行って行きたくなりますよね
うちも安定期に入ってからこちらのサイトを参考にして広島に日帰り旅行に行きました
(たしか、当時あったこちらの掲示板でいろいろ教えていただいたと思います)
おかげで宮島、ますゐ、お好み焼きと堪能できたのをこの記事見て思い出しました
あれ以来広島行ってないのでまた行きたいな~
GUYさん>
子どもが生まれることで、自分の人生が大きく変わる!という節目の覚悟があるので、「さようならこれまでの自分」という気持ちで出産前に旅行に行きたくなるんですよね。
ただもちろん、旅行中に母体が急変する可能性はゼロではなく、人様におすすめできる話じゃないんですけど。
このサイトは殆ど誰も見ていないので、放火する人がいないですが、人気サイトだったら「子どもや母親に万が一があったらどうするんだ」などと焚き付けてくる人がぜったい出てくるはず。
GUYさんは無事に旅行を満喫できて、なによりでした。
出産前の旅行って、写真を後で見返して「ああ、僕ら家族もこういう時期があったなあ」としみじみ感慨に浸るものですよね。
特に、子どもがいないときならではの夫婦の笑顔、っていうのが今となっては貴重。子どもができちゃうと、父親の顔・母親の顔になっちゃうから。
マタニティ旅行、っていう言葉、たまたま先日知りました。
詳しくは調べてませんが、なんでも妊娠中なので、という理由で刺身盛3皿が売りの旅館に生もの変更してくれと頼んだら全部刺身こんにゃくだった、というツイート(いまはポストっていうんでしたっけ?)が話題になってたとかなんとか。
ネットの反応としてはやや「否」寄りの賛否両論な感じだったので「炎上」というほどではない印象でしたが、旅館の名前を出しちゃうのはどうよ、とか旅館から一言くらい相談があってもよかったのでは、という意見とともに、妊娠中の旅行に対する賛否もたしかにありましたねえ。
そういう意味ではたしかにリスキーさも内包した話題なのかもしれませんね。
一平ちゃん>
刺身こんにゃく話は僕も読みました。あれを笑い話としてネタに昇華できていればよかったのにね、と思う。
僕はSNSの危なっかしさについていくのをやめ、もう殆どSNSの投稿はやらなくなった。Xは皆無だし、Instagramは毒にも薬にもならない食べ物の投稿を月に1度程度するかどうか。それで何も不自由はない。
外界とのつながりが減ると楽に生きていけるけど、独居感が増す。本当にこれでいいのか、と思うこともあります。
ちらっとデカフェの珈琲の話が出てますが
あれはコーヒーと思って飲むものじゃないですね。なんか香ばしい飲み物(コーヒーとは違うもの)として飲むと美味しく飲めたりしますが。これはこれでアリなんじゃない?って思える人なら問題ないんじゃないかと。
と言ってる私も積極的に選びはしないんですけどね(笑
余談ですが、アメリカンを専用ブレンドに「乾燥大豆かよ?」ってくらいの焙煎具合の豆で出す
地元コーヒー豆卸の直営喫茶がありまして。
これはこれでなかなか美味しいんですよね。
ティータさん>
デカフェの珈琲、珈琲豆には違いないのになんでこんな「別のマメの煮汁味」になってしまうのか、面白いですよね。かといって、カフェイン抜きだけど珈琲みたいにまったりできる飲み物ってそうそう存在しないのが悩ましい。