那珂湊買い出し~三崎港買い出し、出産直前におけるおかでん家の旅

2021年03月06日(土)

いしは毎日せっせと散歩に勤しんでいる。「ちょっと歩いてくる」と言って家を出たら、2時間は帰ってこない。

僕がコロナ期間中でテレワーク三昧で家にいるため、彼女としては同じ空間に居づらいという事情もある。なにせ、一人暮らし用に購入した1LDKの家だ。ふたりとも外に働きに出て、夜になったら帰宅するという生活ならこの間取りでも問題ないのだけど、二人が1日中同じ家の中にいるには狭い空間だった。

僕は全然平気だったのだけど、いしのほうは「相手が仕事をしている中、邪魔にならないようにしていなきゃならない」という居心地の悪さを感じていたようだ。それもあって、散歩が彼女の気晴らしだった。

そして、彼女としては早く子どもを産みたいと考えているので、歩くことで出産時期の前倒しを狙っていた。もちろんそれだけでなく、出産に向けた体力づくり、股関節の柔軟性確保など様々な理由はあったようだ。

この日は、奥浅草と呼ばれるエリアを夫婦で散策することにした。特に目的地は決めていないが、ひとまず花やしきの裏手にある「ミスターデンジャー」というステーキハウスに行く。

有刺鉄線ぐるぐる巻きのバットをリングに持ち込むことで知られたプロレスラー、ミスターデンジャーこと松永光弘が営むステーキハウスだ。この男が「ミスターデンジャー」の名前をつけられたのは、後楽園ホールの2階から1階にいる敵めがけてダイブしたからだ。そんなことをやる奴はこれまでいなかった、ということで最大限の賛辞をこめてこの名前がつけられている。

ちなみに、看板に描かれている松永のおでこに3本の線が描かれているのは、実際に彼のおでこが傷だらけだったからだ。当時デスマッチ路線をひた走っていたW★INGやFMWに出場していたレスラーは、このようにおでこに深い傷を持っている人が多い。なにしろ、有刺鉄線バットを顔にこすりつけたりするのはザラな試合展開だったから。

そんなお店の名物メニューが1ポンド(450g)のデンジャーステーキセット。

プロレスファンだった青年おかでんが「いつかデンジャーステーキを食べてみたい」と思い続けて20年以上。ようやく念願がかなった。

でも、妻が臨月のときに「デンジャーステーキ」だなんて縁起が悪いと言う人がいるかもしれない。いや、関係ない。ミスターデンジャーのリングでの戦いっぷりを知っている身としては、あらゆる困難を乗り越えるエネルギーを頂く気分だ。

1ポンドの肉は食べごたえがある。食べている最中に、「まだ1/3しか食べていないぞ」などと考えるのも、幸福感を助長してくれる。ステーキって、そういう魅力がある食べ物だ。

一方、いしはハンバーグをオーダー。150グラムだったか200グラムだったか忘れたが、こちらもかなり食べごたえがある。ふたりとも大満足のお昼ご飯となった。

食後、奥浅草を歩く。

言問通りの北側界隈を指す言葉で、このあたりはマンションが立ち並ぶ一方で、ヒョイッと小粋なお店があるので面白い。

「奥浅草」という言い方は、どこかのグルメ雑誌か情報誌が名付けたんだろうと思っていた。しかし、都営バスのバス停にれっきと「奥浅草」という停留所がある。マスコミが流行らせようとして作った言葉ではなさそうだ。

そんな中に、「甘味処 梅むら」がある。年季を感じさせる、小さなお店だ。

「孤独のグルメ」の漫画第3話に登場し、孤独のグルメ好きからは「聖地」の一つとして畏敬の念で見られているお店。

豆かんてんが名物で、主人公の井之頭五郎もこれを食べている。

せっかくなので食後のデザートとしてこのお店で豆かんを食べていく。

豆かんの豆は、恐ろしいほどつやつやと黒光りしている。まるで金属の玉のようだ。それだけ、パリッと黒豆がシワ一つ寄らずに炊けているわけで、さすがプロだ。しみじみと豆かんと、かき氷をいただく。

奥浅草からふらふらと歩いているうちに、向島のほうまでやってきた。

「そういえば、言問(こととい)団子という有名な団子屋さんがあるぞ」ということで。さっき豆かんを食べたばかりだけど、この際だから思いついた甘味処を行脚だ。

言問団子がどれだけ有名なのかは、実は僕は全く知らない。「どうやら老舗の有名店らしいぞ」という程度の情報だ。それでも僕がこのお店のことを知っているのは、TBSアナウンサーの外山惠理氏の実家だからだ。TBSラジオをよく聞いている人にとっては常識レベルの話。

池波正太郎の「鬼平犯科帳」にも登場するという、言問団子を店内でいただく。

3色のお団子はまるで愛媛松山の坊っちゃん団子のようだが、あちらが「緑・黄・黒」の3色なのに対し、こちらは「白・黄・黒」の3色。そして何よりも、串に刺さっているかいないかという大きな違いがある。

言問団子のほうが串に刺さっていない分、おだんご1個あたりが大きい。

そして写真手前は鳩の形をした最中で、「言問最中」というそうだ。粒あんと白あんのペア。

面白いものを食べたね、と感心しながらそのまま僕らは歩き続けた。場所柄、手頃に引き返す場所がなかったため、えーいそのまま行っちゃえということで歩きに歩いて北千住駅へ。

この日は7キロくらいのウォーキングとなった。妊婦としては相当な徒歩だ。途中、いしのお腹が張ったり痛みがないかどうか、随時確認をしつつ数時間掛けての飲み食いウォーク、とても楽しかった。お腹の中の子も、元気いっぱいでグイグイ動いている。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 出産前の小旅行って行きたくなりますよね
    うちも安定期に入ってからこちらのサイトを参考にして広島に日帰り旅行に行きました
    (たしか、当時あったこちらの掲示板でいろいろ教えていただいたと思います)

    おかげで宮島、ますゐ、お好み焼きと堪能できたのをこの記事見て思い出しました
    あれ以来広島行ってないのでまた行きたいな~

  • GUYさん>
    子どもが生まれることで、自分の人生が大きく変わる!という節目の覚悟があるので、「さようならこれまでの自分」という気持ちで出産前に旅行に行きたくなるんですよね。

    ただもちろん、旅行中に母体が急変する可能性はゼロではなく、人様におすすめできる話じゃないんですけど。
    このサイトは殆ど誰も見ていないので、放火する人がいないですが、人気サイトだったら「子どもや母親に万が一があったらどうするんだ」などと焚き付けてくる人がぜったい出てくるはず。

    GUYさんは無事に旅行を満喫できて、なによりでした。
    出産前の旅行って、写真を後で見返して「ああ、僕ら家族もこういう時期があったなあ」としみじみ感慨に浸るものですよね。
    特に、子どもがいないときならではの夫婦の笑顔、っていうのが今となっては貴重。子どもができちゃうと、父親の顔・母親の顔になっちゃうから。

  • マタニティ旅行、っていう言葉、たまたま先日知りました。
    詳しくは調べてませんが、なんでも妊娠中なので、という理由で刺身盛3皿が売りの旅館に生もの変更してくれと頼んだら全部刺身こんにゃくだった、というツイート(いまはポストっていうんでしたっけ?)が話題になってたとかなんとか。
    ネットの反応としてはやや「否」寄りの賛否両論な感じだったので「炎上」というほどではない印象でしたが、旅館の名前を出しちゃうのはどうよ、とか旅館から一言くらい相談があってもよかったのでは、という意見とともに、妊娠中の旅行に対する賛否もたしかにありましたねえ。
    そういう意味ではたしかにリスキーさも内包した話題なのかもしれませんね。

  • 一平ちゃん>
    刺身こんにゃく話は僕も読みました。あれを笑い話としてネタに昇華できていればよかったのにね、と思う。
    僕はSNSの危なっかしさについていくのをやめ、もう殆どSNSの投稿はやらなくなった。Xは皆無だし、Instagramは毒にも薬にもならない食べ物の投稿を月に1度程度するかどうか。それで何も不自由はない。

    外界とのつながりが減ると楽に生きていけるけど、独居感が増す。本当にこれでいいのか、と思うこともあります。

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