おかでんさんちの年末年始2020

新型コロナウイルスの影響で、今年は帰省もせず静かな年末となった。

実家に帰省しない正月は、いつ以来だろう?殆ど記憶にないくらい、僕の年末年始は実家だ。

はっきりと記憶に残っている、僕が実家に帰省しなかった年末は1996年だ。年まで覚えている。というのも、このとき新日本プロレスのプロレスラーだった馳浩(現・自民党衆議院議員)が新日を離脱し、ジャイアント馬場率いる全日本プロレスに移籍したからだ。

これは当時プロレス者だった僕にとっては衝撃だった。四天王(三沢、川田、小橋、田上の4トップ選手)プロレス全盛だった全日本プロレスに、コテコテの新日レスラーである馳浩がやってくる。これは初登場を生で見なければ!と即決した。

全日本プロレスは、1月2日に後楽園ホールで「新春ジャイアントシリーズ」を開幕させる、というのが当時の恒例だった。1月2日の試合を見るためには、帰省なんてしていられない。

そこで僕にしては珍しく、親に嘘をついた。「学校の論文作成が大詰めで、年末年始もやらなくちゃいけないことがあるんだ」と言って、帰省をしなかった。罪悪感よりも、「全日に馳が襲来!」という歴史的瞬間を見る昂りのほうが上回ったことは、今でもはっきりと記憶に残っている。

当日はもちろん後楽園ホールに行った。全日本のファンは、「よくぞ我々のリングにやってきてくれた」という歓迎ムードが大半でありつつも、「とはいっても、新日から来た以上はよそ者なので、一応ブーイングはするぞ」という優しい空気だったと記憶している。「返り討ちにしてやれ!キングオブスポーツとか言ってる新日なんてなんぼのもんじゃ!王道プロレス万歳!」みたいな感じではなかったと思う。

なお、馳浩はそんな全日のファンに対して見せつけるように、アントニオ猪木の十八番、卍固めを相手レスラーに決めてみせ、案の定ブーイングを受けていた。

でも、馳浩の代名詞ともいえるジャイアントスイングをやりはじめると、会場は「いーち、にー、さーん!」と回転数を合唱したっけ。今でも思い出せる、懐かしい記憶だ。

それはともかく。

2020年の年末、夫婦で家にいるということになったので、正月がらみのことはできるだけ自己解決することにした。鏡餅にしても、おせちにしても、お雑煮にしても。

「買ってくれば早いじゃない」というものばかりだけれど、コロナで翻弄された2020年をしっかり記憶に留めるためにも、手を動かしてあれこれ作ってみよう、と思った。

コロナというのは、地震や戦争のように「追悼日」というものが存在しない。精神科医の斎藤環氏がそう指摘していた。気がついたら流行しているという状況なので、未来になってこのコロナを振り返る際の明確な目標となる記憶の軸がない、という。確かにそうだ。

5年後、10年後、もしコロナが過去の話になったとき、僕らは一体何を思い出すのだろう?緊急事態宣言が発出された日、というのは「遅きに失した感」があるので、コロナを振り返るにはあまり向かない気がする。

じゃあ、せめて僕ら家族だけでも、「コロナがあった2020年はこんな年だったね」と思い出せるようにしたい。語り継げるようにしたい。

だから、まずは餅だ。餅からはじめよう。

コロナに限った話じゃなく、ここ最近は毎年鏡餅を作っている。でもまあ、いい。ことしはコロナスペシャルだ。

もともと、わざわざ鏡餅を作るようになったのは、自宅にあるホームベーカリーを有効活用させたいからだ。ケチくさい性分の結果、むしろ生きていくためのハードルが上がっているという状況。

毎年、3合の餅を2回ついて、合計6合の巨大鏡餅を作っている。というのも、売っているもち米が2kgの袋なので、できるだけ鏡餅で消費したいからだ。しかし、さすがに今年は分別をもって、3合で鏡餅の上下をこしらえることにした。つまりサイズは半減だ。

ホームベーカリーで餅をつくと、ざらついた仕上がりになる。臼と杵でついて作ったものではないので、どうしても粒が残る。でも、グルグル回る小さな羽がついているだけのホームベーカリーで、よくもまあ餅が作れるものだ。もち米って不思議だ。

まな板の上に片栗粉をふりかけ、そこにデンと餅を置く。これで、もち米3合分。

できたてなので、まだ柔らかい。この餅玉を使って、大食い・早食い大会をやったら、あっという間に死人が出ると思う。ピースフルな外観だけど、毎年大勢のお年寄りの命を奪う、凶悪な食べ物だ。取り扱い注意だ。間違っても早食いなんてやってはいけない。

餅が熱いうちに、手早く丸めていく。どんどん表面が細かくひび割れてくるので、写真なんて悠長に撮ってられない。

今回は、鏡餅の下を丼、上を椀で作ってみることにした。

それぞれの器に、くっつき防止用の片栗粉を振りかける。

そこに、2つにわけたお餅を入れる。

この状態で数時間放置して、まずは半円形の形を作る。

そのあと、器から取り出した餅をオーブン用の網の上に乗せ、乾燥させていく。

出来上がったのがこちら。おかでん家鏡餅2020。

みかんやだいだいは家にないので、今年は昆布を挟んでみた。こういう流儀はたぶんないと思うけど、おめでたいっぽいので。

黒い板状のお皿の上に乗っけてみると、白黒くっきりでなかなか引締まった見た目になった。なのに、丸いシルエットは愛嬌があって、いい。

せっかくなので、新潟県松之山温泉の名物「鳥こけし」を横に置いてみた。縁起もへったくれもないけれど。

キクイタダキの鳥こけしが、興味津津で鏡餅を眺めている図。

鏡餅

どこにディスプレイしようかと考えた結果、GreenFarmの中に入れることにした。

屋内で水耕栽培ができる、水槽のようなツールだ。

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ちょうどこのときは休耕中だったので、そこに鏡餅を入れてみた。本来なら野菜の光合成に使われる強力なLEDの光が、鏡餅に注がれる。なんとも神々しかった。

しかもこのGreenFarm、LEDが点灯する時間はタイマーで設定できる。朝7時にLEDが点灯し、夜11時に消灯するようにしたら、随分都合が良かった。一晩中明るいのは、眠るのに邪魔だし。

(つづく)

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