ふじおかで衝撃を受けたわれわれは、しばらく車中で「なんだったんだ今のは」と語り合った。それくらい強烈だった。凄い、と聞いていて、それでこの衝撃。だったら、何も事前知識がない状態であのお店に行っていたらどうなっていたんだろう。おしっこちびっていたかもしれん。
いや、安心しろ、何の事前知識もない状態であんな僻地の蕎麦屋には行かないよ。
なるほど。
さて、一軒目にしておなかが膨れてしまったので、今日はあまり食べ歩く気がしなくなった。しかも、ふじおかを超える蕎麦がこの後出てくるとは思えないし、食べれば食べるだけふじおかの記憶が薄れてしまいそうだ。
とりあえずもう一軒は行っておこう、ということで、若月というお店に行く。お店の前には「霧下蕎麦」の暖簾と看板が。若月、という標識はどこにもなかったので、お店を間違えたのかと思ったくらいだ。
そのときの様子はこちら。
食後、腹ごなしと観光を兼ねて野尻湖に行ってみる。
「・・・ナウマン象、見えるか?」「いいや、見えないねぇ」「何でだろうねえ」
以上おしまい。
早い時間ではあるが、今日の宿を取る予定である野沢温泉に移動した。おなかがいっぱいで、これ以上食べる気がしなかったためだ。一軒目のふじおかで、野菜やら漬け物やらぜんざいやら、いろいろなものを食べたからな。
あと、早い時間に野沢温泉入りしたのは、宿をまだ確保していないからという理由もあった。これまでの経験則から、16時までに宿を決めないと宿側の受け入れ体制が整わない事が分かった。夕食の準備とか。だから、15時には宿探しをしたいところ。
旅館紹介所で、一泊二食8,000円程度の宿を探してもらったら、紹介所すぐそばの「さかきや」という宿を紹介してくれた。有り難くお世話になることにする。
宿に入ったら、お年を召したご主人がゆっくりと出てきたのだが、
「9,000円で連絡してくれた方?」
と聞いてきた。微妙に金額がちがう。「あ、いえ、ちがいます。8,000円です」と訂正したら、「はあ、そうですか・・・わかりました」となんだか落胆しちゃってる。大丈夫か、おい。なんか悪い事しちゃったような気がする。
「9,000円の部屋だぞ、おい。1,000円高いぞ」と部屋に入って喜んでみる。もちろん1,000円ちがうくらいでは部屋のグレードが変わるはずがない。一応形式的に、だ。でも、先ほどのご主人の落胆を見てしまったので、ちょっと自粛しつつ。
さて、野沢温泉は今朝まで滞在した渋温泉よりも温泉街の範囲が広く、かつ、外湯の数が多い。全部で13もの外湯があるから、日本有数の外湯天国だ。
もちろんスタンプラリー的なものが大好きなアワレみ隊、「行けるところには片っ端から行こう」ということになった。まずはできるだけ街の中心地から遠い外湯から順番に。
さすがに13全部を一晩で巡るのは無理だと判っていたので、「行ける範囲内で」という条件付きだ。
四つのお湯に浸かった後、宿に戻る。
夕食は部屋食。われわれの居住部屋の隣の部屋が食事専用部屋としてあてがわれた。そういえばこの日この宿に泊まっていたのはわれわれ一組だけだった。
16時頃に予約が入って、18時過ぎの食事時までに二人分だけの食材を用意して調理するというのは結構大変だったと思う。何しろ、食事2時間前までは「今夜は客がいない」と思っていた訳だから。恐縮してしまう。
「1,000円分の差は、寝る部屋の隣でわざわざ食事部屋が用意されたってことかな?」
「そんな馬鹿な」
まだ1,000円にこだわる。
今日は蕎麦屋を2軒しか行脚していないので、ご飯がうまい。ビールもうまい。
・・・という発想は、なんだか既にゆがんでしまっている。朝しっかり食べて、お昼として2食食べているんだから。それでもなお、「今日は2軒だから(量が少ない。)ご飯がうまい」なんて言ってるんだから。
食後も引き続き外湯巡りを続ける。渋温泉とちがって移動範囲が広い分、オリエンテーリング的な楽しさがある。地図を片手に外湯探し。
ここにも「大湯」と呼ばれる外湯の総元締めみたいな親分があるのだが、さすがに作りが立派。大湯としての威厳を誇っていた。
「あ・・・」
外湯巡りをしている最中、発見してしまったもの。
「蕎麦屋!?」
「どうするよ、おい」
どうするもこうするもないのだが、目の前に蕎麦屋が。こういうシチュエーションに立たされたら、「だってお店があるんだからしょうがないじゃん」となるのがアワレみクオリティ。思わず、財布を持ち歩いているかどうか確認してしまった。おかでんはやる気だ。
しかし、しぶちょおが
「ごめん、やっぱやめとこうや。ここで食べてもきっと幸せじゃないぞ」
と言ったので、それまでの勢いがへなへなになってしまった。そうなんだよなー、きっとどころか、絶対、幸せじゃないぞ。さっきまでしこたまご飯食べてビール飲んだじゃないか。
結局、渋々納得、という形をとりつつこのお店はスルーした。危ないところだった、一人きりだったら、きっとこのお店に入ってたはずだ。
2000年11月24日(土) 3日目
三日目朝。さすが9,000円の宿(?)だけあって皿数豊富。一体何杯ご飯を食べればこのおかずがちょうどなくなるというのか。考えただけで恐ろしい。
おっと、「いっぱいで十分だぞ、その代わり盛るからな」というのは無しだ。さすがに今日はおかでんのお茶碗にも平和が訪れていた。しぶちょおに懇願してご飯の盛りは普通にしてもらった。
ゴゴゴと効果音が鳴りそうなまんが盛りのご飯だが、あれはあれで食べがいがあって良いものだ。しかし、残念な事にその自らの重さに耐えるため、コテコテにご飯を押しつぶさないといけないのだった。潰れたご飯は大層残念な風味になるので反対。もし、「ふっくらしたご飯のまままんが盛り」ができるんだったら、オラ二杯でも三杯でも食う。多分。おそらく。我思うに。
「河原を掘るとお湯が沸く。河原のどこでもmy温泉」という切明(きりあけ)温泉が野沢温泉の山向こうにあるという。ならばそこに行ってみよう、ということにした。今日は蕎麦モードではなく、観光モードだ。昨日のふじおかで達成感を得てしまったので、もう蕎麦はいいかな、というわけだ。
しかし、山越えの道は「冬期通行止め」になっていて先に進めなかった。うそ?11月下旬で「冬期」なんだ。さすが長野。
とはいっても、こっちとしてもひっこみがつかない。ロードマップに、印刷ミスじゃないかというくらいうっすく書かれていた道を発見。そこを使って信州の秘湯・切明温泉を目指す事にした。
が、道はあっという間にダートロード。
「おい、この道で本当にいいのか」
「でも他に道がないからこれだろ」
「この状態でずっと先まで行くのか?」
「いずれ道がよくなるかもしれん」
なんていい加減な会話をするおかでんと、車の所有者故に心配になってくるしぶちょお。
我ながら頑張ったな、というくらい道がほとんど無くなったところでさすがにギブ。しぶちょおが「もうこれ以上先へは進めないぞ」と言ったことで諦めがついた。
どうする?今日は切明温泉で河原のお湯を楽しむつもりだったんだけど・・・。
結局野沢温泉に戻ってきて、蕎麦屋巡りを再開させたのだった。仕方が無い、他に思いつく事が無いんだもの。
今だったら、小布施観光だとか、いろいろ手段が思いつくが、当時は長野に対して無知だった。で、手元にあるのはグルメガイド本だけ。蕎麦食べるしかないでしょう。
温泉街はずれにある「そばしげ」が今日の一軒目。そのときの様子はこちら。
引き続き、二軒目。
飯山市外にある蕎麦屋「源」。このときの様子はこちら。
じりじりと最終目的地点(すなわち、おかでんとしぶちょおの解散場所)である長野市に向けて退却しつつ、それでもなお蕎麦食べ歩きの勢いは衰える事知らず。この日三軒目の蕎麦屋「そばしげ」に突撃。
今日一軒目のお店も「そばしげ」だったっけ。一日で二回も同じ名前の店で蕎麦を手繰る経験は後にも先にもこれくらいしかないと思う。
そのときの様子はこちら。
須坂まで退却したところで、さらにもう一軒。今日4軒目、そしてこの旅トータルで10軒目となる蕎麦屋「たけの春」。
このときの様子はこちら。
最後、須坂から山に向けて突入していった先にある五色温泉で日帰り入浴。もう夕方。いい加減帰らないと明日からの仕事に支障が出る。
五色温泉の内湯と露天風呂。どちらもいい湯だった。できればここで一泊してみたいものだ。蕎麦尽くしで体が蕎麦臭くなりそうだったのを、洗い流してくれた。
おかでんはこのとき、蕎麦喰い人種行動観察にこう書き残している。
第一回:松本、安曇野、戸隠
第二回:長野、須坂、小布施、飯山、野沢、黒姫ときたので、第三回目は東信地区・・・上田、小諸、軽井沢方面を攻めてみたいところだ。
この数カ月後、予言通り第三回目の信州新蕎麦包囲網が開催され、そして東信地区を狙い撃ちにすることになる。
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