上海紀行2(その1)
節電大陸日本。2011年の夏は、節電が高らかに叫ばれ続けた時期だった。3月11日の東日本大震災の影響を受け電力会社の発電量が減少。そのため、「総量規制」の名のもと、企業は一律15%消費電力のカットすることが政府から命令された。
その影響で、おかでんの所属する会社でもあれこれ節電対策を行った。自動販売機のジュース類が常温になったり、社員食堂のメニューが減ったり、照明が消され、その代わりに各自の机にLEDライトが配備されたり。
その一環が「オフィス不使用」であり、「フロア閉鎖」であった。本社ビルに関しては、輪番制で「この一週間はオフィスを使用しないこと」という週が設けられ、仕事に甚大な影響を与えた。
おかでんのオフィスがあるフロアの場合、7月海の日三連休がある直後の一週間がその「フロア閉鎖」に該当し、強制的にそこが夏季休暇ということになった。お盆の時期に実家に帰省しようとするなら、別途有給休暇を使えということだ。節電のためにお盆に帰省しづらくなるとは、ご先祖様もびっくりだ。
というわけで、夏休みをとる気分になるにはちょっと早い時期の、夏休み。さてどうしたものか。本当だったら山に登りに行くなんてのがナイスなのだろうが、最近のおかでんはへたれまくっており、なかなか泊で山奥まで分け入るガッツがない。北海道あたりに避暑に行っても良いのだが、こんな変則的な夏休みに対応できる友達や彼女などいるわけもなく、ちょっと難しい。
しばらく思案した結果、上海のコダマ青年のところに頼ってみるのはどうか、という考えに至った。コダマ青年だったら快く迎えてくれそうな気がする。ためしに打診してみたら、大丈夫だとのこと。上海だったらマイレージを使って行けるし、宿はコダマ青年のところにお世話になるし、コストがかからなくていい。あと、コダマ青年に同行してもらえれば通訳にもなってくれる。気軽に行ける海外だ。
この話がまとまったのが旅行当日からさかのぼること一週間前。おおよそ海外にいくにはギリギリの状態だったのであわててチケットなどを手配。旅の準備を進めた。

さてここで恒例の「救援物資」タイム。異国の地に住むコダマ青年が欲してやまないものを日本から持ち込みますよ、というものだ。前回上海訪問時には、北方謙三の三国志全巻、とか結構な荷物量になったが、さて今回はどうか。おかでんとしては買いだしもあるし、運搬もあるし、税関突破というハードルがあるし、なかなかに面倒なことではある。しかし、「ほぅ、上海に住む駐在員はこんなものをほしがるのか」というのが面白く、こちらとしては喜んで「救援物資」の購入につきあっている節がある。
今回頼まれたのは以下の物品。
- 洗剤(銘柄指定あり)×2
- 梅干し
- インスタント味噌汁
- 米
- 本2冊(別途指定)
- サプリメント各種
- 免税店でたばこ×2カートン
なんか前回よりもハードルがあがっている気が。もちろんコダマ青年は「可能ならば・・・」という遠慮気味スタンスをとっているのだが、だとしてもこのリクエストはすごい。米ってなんだよ。ついに主食まで運搬することになったか、オレ。離島に物資を運ぶ人みたいになってきたぞ。
あと、さりげなく洗剤二つというのも重いしかさばる。洗剤なんて現地で買えるだろ・・・と思うが、お気に入りの銘柄が日本にあるなら仕方があるまい。
「パシリ」にしてはモチベーション高くこれら商品を調達していった。本はamazonで、サプリメントはアメリカから急きょ個人輸入で、その他物資はドラッグストアやスーパーをハシゴして。インスタント味噌汁、何を買えばコダマ青年に喜んでもらえるだろうか?なんて考えながらあれこれ買う自分はちょっと夢見る乙女気分。
結局あれこれ買った物をスーツケースに収めてみたら、案の定めいっぱいふさがってしまった。よって、今回もスーツケース+リュックサックで旅行に挑むことにした。自分の荷物よりも「救援物資」の方が多くなるとは。これが帰国時ならまだわかる。お土産いっぱい買いました、ということがありえるからだ。しかし、出国時に自分のもの以外の荷物が多いというのはちょっと不思議な光景。
2011年07月16日(土) 1日目

出発の日の朝。日暮里から昨年開業した「スカイアクセス線を経由するスカイライナー」に乗る。普通運賃1,200円に特急料金1,200円の合計2,400円。新幹線以外の電車では最速の時速160km/hで成田まで行くというのが売りだ。日暮里→成田36分。凄い!36分だぜ!とばかりに宣伝されているが、36分もかかってしまうのが現在の成田の現実。首相、ここはスカッと気持ち良く20分程度でなんとかならなないスか。
実際乗ってみると、京成本線の線内を走っている間はちんたらと加減速を繰り返して、大変に時間が勿体なかった。複雑な路線構成であり過密ダイヤの京成線を走る以上仕方が無いのだろう。成田新幹線ができなかったのが悔やまれる。でも、新幹線ができたら乗るか?と言われたら微妙だけど。いったいお値段はいくらになっていたのだろう?相当お高くついていそうだ。

なんだか航空業界っつーのは日進月歩なんすなあ。前回の海外旅行が2009年の上海なわけだけど、今回の旅行までの間に新たに、「搭乗券まで自宅で発券しちゃう」というのが実現されていた。今までもインターネット上でチェックインできるという制度はあったが、eチケットお客様控えの発券までがやっとだった。しかしそれが、搭乗券までどどーんと出しちゃおうじゃないか、出し惜しみなしにしようじゃないか、というわけだ。ええいややこしいな。何が一体どうお得なんだよ。
成田空港で一連のお作法をやってみて納得がいったのだが、この搭乗券を持っていたら、手荷物預けがなければそのまま出国手続きをとって搭乗口までまっすぐ行ってよろしい、というものだった。なるほど、本当にこの紙切れ、搭乗券なんだ。当たり前だけど。
ただ、実際のところ、海外に観光旅行に行くのに手荷物預けがないということは通常ありえないので、大抵の場合チェックインカウンターに行く事になる。そうなると所要時間としては普通の時とあまり変わらないような気がする。

そのチェックインカウンターも進化してらぁ。成田限定だとは思うが、自動チェックイン機がどの窓口にも設置されていて、てめぇら自分でチェックイン作業と座席指定をしやがれ、となっている。前の客が手荷物預けをやっている間、次の客が自動チェックイン機でチェックインをするという効率的運用。でもこれ、乗客からすると「自動チェックイン」じゃないよな。「手動チェックイン」だよな。


保安検査場を抜ける。おっと、忘れるところだった。まだ調達しなければいけない「救援物資」があるんだった。頼まれていたマイルドセブンを2カートン買う。ここの免税店は親切で、お会計の際にわざわざ搭乗券のチェックをする。何が親切なのかというと、国によって免税の範囲が違うので、アドバイスをしてくれるのだった。たとえば中国の場合2カートンまでが免税なので、お客さんが3カートン買おうとすると「免税範囲を超えますけど大丈夫ですか?」などと聞いてくれるらしい。
ちなみにマイルドセブン1カートンのお値段2,500円。たばこを嗜まない人間にとってはそれが高いのか安いのかいまいち実感がわかない。
さらにちなみにだが、お会計はSuicaが使えてびっくり。Suicaが空港、しかも国際空港の制限エリアでも使えるとはさらにびっくり。


飛行機は定刻通り離陸。大きく旋回して、一路西へ。眼下に富士山がよく見える。やあ、今日は快晴なので登山日和だ。山頂にはたくさんの人がいるんだろうな。バーカバーカ。
意味もなく挑発してみる。

一方南アルプスは、どれがどの山だかよくわからない。森林限界を超えた山は山肌が茶色になっているので、それなりに高い山なんだろうと分かるのだが、それ以上の事は分からなかった。

おっと。あっという間に機内食だ。
メニュー (NH 919,959) LUNCH COURSE
前菜 季節の前菜の取り合わせ
メインディッシュ (7月16日 - 31日)海の幸のクリーミーバジルソース
和風味
デザート
コーヒー または 紅茶
飲み物はどうするか、と聞かれたのでビールを注文。ビール、ぬるいやら高度の関係で泡が立つやら、褒められたものじゃなかった。うーん、機内でビールを飲むのはあまり賢くないのかもしれない。今までは「おかでんといえばビールだろ。ビール万歳!」と無条件でビール一辺倒だったが、今後は考え直した方がよさそうだ。また、もし飲むなら缶から直接、の方が良いだろうな。コップに注ぐと泡ばっかりになる。
食事はとてもおいしかった。ANAだから、とも言えるが、「機内食はまずい」時代というのは過去になりつつあるのかもしれない。蕎麦がワイヤーのように固まっているかと思ったら、しっかりとほぐれているのにも感心。
それにしても前菜があるのがビール飲みからしたらうれしいな。前菜だけでビール一本空きそうだぜ。もう一杯いかがですか、と聞いてくれないだろうか。そうしたら二本目を・・・・やめとけ。今回のフライトは、上海浦東空港に11:55の着。その後でコダマ青年と合流するわけだが、ちょうど「お昼を食べるべきか、食べないべきか」という微妙な時間なのだった。コダマ青年が「昼メシ食いにいこうぜ、昼メシ」と言ってきた場合、どうなるか。もちろんおかでんに断るなんて言葉は知らないので、「おう、メシ食うぞメシ」としれっと言うに決まってる。食い地獄だ。機内食はおとなしめに食べておくのが吉だ。ビール二杯?冗談言ってはいかん。

航路は太平洋ベルト地帯をなぞるように進んでいった。窓側の席の人ラッキー。特に右舷側を選んだ人はなおさら。風光明媚な景色をずっと楽しめる。


おお、眼下に見えるは我が故郷広島ではないか。上空から見たのは初めて。そうかー、やっぱり地図と同じような地形なんだな。当たり前だけど。ではお父様お母様頭上から失礼いたします。さようならいってまいります。

これは米海兵隊岩国基地。上からみるとわかるが、立派な滑走路を持っているなぁ。

上海浦东国际机场に着陸。
前回上海を訪れた時は虹桥国际机场だったので、ここは初めての空港となる。
さすがに新しい空港だけあって、広くてきれい。
前回の訪問時は空港が古ぼけていて、その後にのったバスもくたびれていたので「ああ、中国ってこんなところなんだな」とネガティブな印象を持ったものだ。まだまだ発展途上中だなと。しかし、こっち(浦东)から入国すると全然印象が違う。しかもこのあと、磁浮(リニアモーターカーのこと)に乗るのだから、なおさらだ。
さて、まずは入国手続きだが、検疫所のところには放射能測定機と疑われるゲートが設置されていた。まさかここで反応するとは思えないが、万が一があったらいやだなあ・・・とおそるおそる通過してみた。当然のごとく鳴らなかった。セーフ。運悪く鳴ってしまうような人は前後数十人を見る限り一人もいなかった。そりゃそうだ。
入国審査では、パスポートの写真と自分自身の顔が同じ人のものかどうか、コンピュータで認証する装置が導入されていた。審査窓口の脇に機械が設置されており、内蔵カメラで顔認証を行う。僕の場合、往路は良かったが復路でなかなか認証しなかったので困った。10年パスポートの欠点だな、現在の顔付きと若干ズレができてしまうので、機械ではうまいこと認証できないようだ。

最大の難関、税関での手荷物検査。米なんて食料品は没収されるんじゃあるまいか?とヒヤヒヤしながらターンテーブルから荷物を受け取る。しかし、あれれ、ターンテーブルから歩いて行くと即出口だぞ。荷物を検査するような場所がない。この空港は通関がザルになっているらしい。虹桥机场の時はX線検査まで行って徹底した検査をやっていたというのに。空港によって方針が違うようだ。
なんだか拍子抜けしすぎてびっくりしちゃった状態で、てくてく歩く。
この空港の建物は第一ターミナルと第二ターミナルが並行に並んでいて、その間を連絡通路が結ぶH型の構造になっているのだが、その「H」の「横棒」の中間部分にバスや電車の乗り場がある。今回はいろいろある選択肢のうち、「磁浮列车」、つまりリニアモーターカーで移動することにした。
上海には世界初の超高速リニアモーターカーが存在する。日本が数十年かけて研究を続け、いまだにサービス開始していないのとは大違いだ。日本側は言う、「日本のリニア技術と上海のリニア技術は違うものだ」と。それはともかく、時速430キロも出すリニアが早々と開業してしまった中国のパワーは相当なものだ。素直に凄いと思う。
片道50元(1元=12.2円とすると、610円)。
往復券を買うと片道40元になる。また、当日の搭乗券を窓口に提示することでも40元になる。知らないと損する話だ。
リニア、と聞くと非常に高い料金がかかりそうだが、この程度の料金で乗れるのだから安い。もっとも、公共交通機関の料金が安い上海においては、乗り物で50元というのはアホみたいに高いのだが。
おかでんは往復乗車券を購入。乗車券はICカードになっている。

これが上海リニアの往復乗車ICカード。ちなみにこの日、一つだけ設置されている自動券売機は紙幣を受け付けない故障。結局窓口での購入となった。まあ、「Double(往復)!」と告げれば話は通じるので、窓口購入も全然ハードルは高くない。
このICカードは使い捨てではなく、使い終わったら自動改札機に回収されてしまう。記念に貰って帰ろう、とか、窓口に持っていったらデポジット代がなにがしか返ってくる、ということはない。

改札のところにX線検査機が設置されていた。科学技術の象徴であるリニアなので、テロの対象にされるかもしれない、ということか?でも、
「今からこの列車はハイジャックだぁ!爆破されたくなければオレの言うことを聞け。いいか、まずこの列車の進路を北京に・・・」
「無理っす」
だし、
「ハイジャックしたぞ。われわれは民主解放同盟のウンタラカンタラで、目的はチンタラカンタラで・・・」
「すんませんお客さん、終点に着きましたので降りてください」
になるな。少なくともハイジャックは無理だ。自爆テロでもやらないと。死ぬのはイヤだ。勘弁してくれ。
ところでX線検査って何を見ているんだろ。爆発物だとモニタ上で目立って表示されるとか、刃物や拳銃といった類は人目で見抜くぜ、という目利きさんがずっとモニタを監視しているとか。
いずれにしてもご苦労様です。
ここで「そこ!米の密輸!」なんて指摘されたら税関で油断した分相当びっくりだが、さすがにそういうことはなかった。難なくスルー。一体何を見ているんだろう。本当に不思議だ。

上海リニア。通称マグレブ。
なんか拍子抜けなデザインで、こんなのが430キロも出すとは思えない。日本だと、300km/h程度で、天狗のように長い鼻を伸ばしまくってるというのに。なにこのしまりのないシルエットは。
それもこれも、全区間トンネルゼロの路線だからなんだろう。トンネル突入時の騒音と衝撃を防ぐために、日本の新幹線やリニアはトンガリ鼻になっているが、トンネルがないんだから不必要、というわけだ。
多分日本人エンジニアだったら、「もっとノーズを尖らせた方が空気抵抗が減って消費電力が抑制できる」とかなんとかいって複雑怪奇なデザインにしていたことだろう。凝り性の国民性と、そうでない国民性の違いがこのデザインから分かる。
でも、このデザインにはあまり近未来的な夢を感じないんだよな。もうちょっと子供のオモチャになるくらいカッコイイ形にできなかったものか。


車両の間には電光掲示板がついている。秒単位で表示される時刻はちょっと面白い。
時刻表では12時30分発のこの列車だったが、さて本当に12時30分0秒に出発するかな・・・と思ったら、4秒前くらいにブルブル車体が震えだし、2秒前にスタート。おい、フライングだぞ。
ご丁寧に、フライングした2秒はすっ飛ばして12時30分0秒に時刻修正がされてやんの。時刻が正しくなかったのか、本当にフライングしたのか、謎。
スピードメーターがついていて、時速表示を常に見る事ができる。
加速は一気に。まったくストレス無く、優雅かつ力強く加速していく。新幹線の加速とは質が違う。リニアに加速していく。リニアだけに。もっとGがかかるのかと思ったら、普通だった。新幹線とほとんど差はない。
それもそのはず、速度が300km/hに達したところで巡航速度に入ってしまった。あれ?430km/hは?どうやら、430km/hはほんの一瞬で、それ以外は300km/hで運行されるらしい。
とはいえ、あれれ、スピードが一気に下がってきたぞ。急カーブでも曲がるのか?いや、待て、でもそれにしては減速しすぎ。あああ、100km/hを下回ってきたぞ・・・え?終点?うそ?
乗っていた時間、7分ちょっと。短かー。そうか、こんなに短期決戦だとは知らなかった。もっと「地球の歩き方」を読み込んでおけばよかった。
後になって気がついたこと。地球の歩き方によると、430km/hに達するのはほんの7秒程度らしい。どうやら窓の光景を見ている間に見そびれたのだろうか。ちぇー。
最初、チケット買った時は「帰りもリニアはつまらんな。帰りは大回りでもバスや地下鉄で空港に向かってもいいな」と考えてはいた。でも、こうなったら帰り、きっちり430km/hを確認しないと。往路の敵は復路で討つ。

前回訪問時気づかなかったが、マクドナルドって「麦当劳」と中国語では表現するんだな。なんだか麦飯弁当みたいな名前だ。ピンインだと「mai dang lao」になるので、日本語風に発音すると「まいだんらお」となる。えー、「マクドナルド」とも「マクダーナル」とも似ていないぞ。発音重視よりも、意味を重視したのだろうか。
あちこちにあるマクドナルドを見ると、デザート類だけを専用に売る小さなカウンターが店頭にある店が多かった。そこでソフトクリームやジュースを買っていく人多し。国が変わればサービスも変わる。でも、McCafeという方向性は世界共通らしい。上海でもやってるんだな、McCafe。
意外だったのが、いたるところで見かけたのがケンタッキーフライドチキンだった。「肯德基」(けんでぁじー)のロゴとともにあのカーネルサンダースがほほえんでいる。それが空港や駅、町中あちこちにあった。こっちの人、メチャ鶏肉が好きか?
コダマ青年に後で聞いてみたら、「ケンタッキーはお粥とかも扱っているんだよ。だから人気がある」んだそうだ。へー、なるほど。さすがにチキン一本で勝負は避けたか。日本のミスタードーナツがお粥売っているのと一緒だな。

ここから地铁2号线、すなわち地下鉄2号線に乗り換えて上海中心部へと向かう。
リニアの終着点は「龙阳路(龍陽路)」で、結構中途半端なところにある。本当はもっと延伸して、最終的には上海中心部を横断して虹橋国際空港まで達したいという願望があるらしい。しかし、ここから先は民家や建物が密集しており、さすがに「土地はすべて国家のもの」という中国であっても立ち退きがうまくいかないのだろう。あと、せっかくだからここにも、あそこにも駅を作って・・・となると、リニアのスピードの恩恵が受けられない。そんなわけで頓挫したまま今に至る。その結果、おおよそターミナル駅らしくない「龙阳路」駅がマグレブと地下鉄の乗り換え地点になっているのだった。
やや。地下鉄でも荷物検査やるのか。ええい面倒だな。自動改札の前にX線検査機を据え付け、そこで手荷物を片っ端からチェックしている。ポーチくらいだったらOKのようだが、ちょっと大きい袋を持っていたら呼び止められ、検査機にかけるように係員に促される。
よくやるよ、ホント。朝のラッシュ時なんてどうするんだ・・・。
これがリニアとの接続駅だからこそやっているのかと思ったが、地下鉄全駅で実施されていたのでびっくり。コダマ青年によると、上海万博の時からこういう警備体制になったらしいが、万博が終わった今でも検査は続けているらしい。暇なのか?
地下鉄の始発から終電まで、365日、すべての駅で実施・・・なんちゅー金と人をかけているんだ。すごいぞ、上海。・・・でも、一体何をチェックしているんだろう。謎だ。なにせ、荷物は猛烈な勢いでどんどん機械に押し込まれる。一つ一つ見るだけでも大変だ。

ドリンクの自動販売機を見て、「あれ・・・」と思った。値上がり、してる。
今まで3.5元だったペットボトル飲料が4元になっていたり、微妙に値上がりしているのだった。万博開催によって物価が上がったのか、それとも万博に関係なく自然に物価が上がったのか。
ちなみにタクシーだが、2009年6月だと初乗り11元だったのに、2011年7月時点では14元になっていた。こちらは随分な値上げだ。

コダマ青年と合流。コダマ青年は以前住んでいたサービスアパートメントを引き払い、別のサービスアパートメントに移り住んでいた。そのアパートメントだが、屏風のようにそびえ立つビルがぐるっと輪のような形で取り囲んでいるというもの。輪の内側は居住者のみのプライベート空間で、外の喧噪を忘れさせてくれる・・・ことはないな。相変わらずやかましくプープー車がクラクションを鳴らしている。
ちなみに家に入るまでは3重のセキュリティ。この中庭に入るのにまず一段階、自分の住む号棟の入口でもう一段階、最後に自分の部屋でもう一回。
10号棟くらいまであったと思うので、このサービスアパートメントマンション群だけで数百人、いや、千人以上が住んでいる事になる。ぜいたくな人がいるもんだ。ちなみにお値段を聞いてみたら、数十万円だそうだ。
数十万円。それを聞いて、ピンとこなかった。
「え?え?それは月額の家賃ってこと?」
「そう」
「日本円?」
「日本円。」
「うそー!?」
駐在員の財布事情ってのは全くもってよくわからん。こういう家に住めてしまうんだから。じゃあ待て、「家賃が高くて退去した」と言っていた以前の家はいくらしたんだよ。「100万円・・・は大げさかもしれんけど、まあそれくらい」
ありえん。
もうね、こうなると羨ましくないんだ。全然。別世界、別次元の話になっちゃってるから。
コダマ青年の家は2LDKであり、これは以前の家と一緒。でも、サービスアパートメントなだけあって、あんまりあれこれ個人でカーペット買ったりタンス買ったりするということがない。生活感が若干乏しいような印象を受ける。
「アレ買ったり、コレ買ったりしようと思わないの?」
と聞いたら、
「契約するときに付けて欲しいサービス(家具など)をリクエストしてあるんで、後から付けるということはあまりないな」
ということだった。
ということは、この枕も、布団シーツも、すべて「契約の範疇」ということか。なんだかサービスアパートメントって薄気味悪いな。契約解除時には全部やり変えることになるのだろうから、結構大変だ。
どうしてこういう家を探し当てられたんだ、しかも新築で入居しているとは、といぶかったら、コダマ青年が勤めている会社に出入りしている不動産業者がいるそうだ。日本語OKで契約交渉をしてくれる。なるほど、駐在員がいる会社には当然のごとくそういう業者さんがいるわけなんだな。妙に納得。

コダマ青年の家で「救援物資」に引き渡し。梅干しが反乱をおこし、コダマ青年向けの手土産(救援物資とは別枠)にシソ臭い汁をひっかけてしまった以外は特に問題なし。
さて、ここで何をするか困ってしまった。今回のおかでん、「上海で●●をしたい」というリクエストがあるわけじゃない。「暇だから上海に来ました」というだけに過ぎない。しかもタチが悪い事に言葉が全くできないので、コダマ青年におんぶにだっこだ。早速初日にして、コダマ青年とおかでん二人そろって「さて・・・何する?」と首を捻ってしまった。
上海の主立った観光スポットは前回既に訪問済み。残るは魯迅のナントカだとか、孫文がどうたらといった歴史に絡む史跡程度だが、あんまり魅力に感じられない。さて、何する?
とりあえずこの近くにコダマ青年がお気に入りのマッサージ店があるということなので、行ってみる事にした。
裏道を通ってお店に向かう。でも、裏道だからといって呆けていてはいけない。ここでもスクーターが頻繁に行き交っており、「注意!邪魔だ!」とピーピーうるさい。うっかりしていると接触事故になるので気が抜けない。
たちが悪いことに、こちらのスクーターは電動スクーターが多い。これが電動故に全く音を出さないため、後からすーぃと近づいてきていきなりピーピー!とクラクションときたもんだ。びっくりするわ。
日本では多分道路交通法でアウトなのだろうが、こちらはOKらしい。ガソリンスクーターを電動に改良したもの、もともと電動のもの、そしてフル電動自転車なんてものも町中を走っている。フル電動自転車は、当然ペダルがくるくる廻ることはない。中には電動大八車なんてものまであって、びっくりさせられた。
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