デジャブな旅【岡山/広島旅行】

台湾人の友人、Fishが言う。「倉敷と広島を旅したい」と。

なんで?と聞くと、ちょうど航空会社のマイレージが4月末に有効期限切れとなるので、それまでに使ってしまいたいからだ、という。まあ、よくある旅行の動機だ。

でもなぜよりによって「倉敷」と「広島」?どちらもおかでんにとって非常に縁もゆかりもあるところだ。「出身地は広島」と言っているおかでんだが、生まれは倉敷。本籍地も倉敷だ。つまり、倉敷と広島というのはピンポイントでおかでんの「庭」を観光する、ということに他ならない。

ただ、逆に言えばおかでんにとっては知り尽くした場所であり、フレッシュな気分で観光することはむつかしい。正直、おかでんにとってはどうモチベーションを高めるかが難しい場所だ。

「恋人同士だったら『自分の出身地を案内する』ということで旅の動機付けになるけど、僕ら友達に過ぎない関係だよな。それなりのお金をかけて行く場所としては、ちょっとテンション上がりにくいんだよねえ」

とぼやくおかでん。するとFishは

「その気持ちはわかる。無理しなくていいよ。おかでんが一緒に行かないなら、別の友達誘っていくから」

と言ってきた。

そう言われると、なんとなく悔しい。俺の庭先をウロチョロするなら、コーディネートは俺に任せろ!俺がイイところ全部案内しちゃる!という気持ちになってきた。そんなおかでんに追い打ちをかけるように、

「今日の昼までに結論出してください、連絡がなかったら友達に声を掛けるから」

と通告があった。ぐずぐず検討する余地、なし。

結局、慌てふためいて「行きます、行かせていただきます」と回答し、倉敷・広島旅行決定。おかでんは旅先案内人として、知り尽くした町を改めて訪問することになった。

話は戻るが、なぜ「倉敷、広島」なのか。Fishに聞いてみると、

「倉敷は古い町並みがあって日本風だから。広島は世界遺産が二つあるから」

ということだった。国連未加入の台湾は、当然ユネスコとも縁がない。だから、ユネスコが公認している世界遺産は台湾には一つもない。そんなわけで、Fishとしては世界遺産の地を訪れるのは憧れ、なのだった。

基本的な旅程プランはおかでんが作成し、Fishがそのプランを修正する、という段取りで行先を決めて行った。概要を説明すると、

1日目:岡山空港から岡山へ。日本三名園である後楽園散策。午後、倉敷に移動、街並みを見てまわる。泊・倉敷。
2日目:午前中、大原美術館。昼、新幹線で広島に移動。宇品のかき小屋で焼きがき。原爆ドームを見る。夜は自由行動。泊・広島。
3日目:アンデルセン本店で朝食。その後宮島観光。夕刻、広島空港。羽田到着後解散。

という流れ。2泊3日だ。

Fishが「日本三名園」を知っているなんて驚きだったが、驚きつつもプランに組み込んだ。

2012年04月21日(土) 1日目

飛行機の上

7時25分羽田空港発のANA便で岡山を目指す。岡山、広島といった場所は、東京から新幹線を利用するのと飛行機で行くのと、時間と費用が拮抗している場所だ。ただ、今回は「溜まったマイルを使う。」という大義名分があるので、もちろん飛行機を利用している。

しかし、Fishは国内線の飛行機を使ったことがほとんどない(ひょっとしたら皆無?)ため、7時10分近くになって空港に姿を現すという大物っぷりを見せつけてくれた。先ほどから頻繁に「ご搭乗の最終案内」というアナウンスが流れていたので、こちらとしては肝が相当冷えた。出発時刻15分前に、まだ保安検査場を通過していないというのは羽田空港を甘くみているに違いない。ナイス度胸。結果的に搭乗できたから良かったが、地上職員さんから「おかでん様とFish様ですね?お急ぎください!」と急かされたのはちょっと恥ずかしかった。

岡山ご当地グルメマップ

岡山空港着。出口付近にあった「岡山ご当地グルメマップ」というのが面白かったので写真を撮っておいた。「津山ホルモンうどん」「ひるぜん焼きそば」「日生カキオコ」の3つが表示されていたが、10年前までは知る人ぞ知る、という料理ばかり。B-1グランプリの影響がこんなところにも表れているとは。

昔だったら、岡山のご当地グルメといったら、ブドウや桃などの果物や「ままかり」となっていたはずだが、時代は流れる。

岡山駅前の噴水

岡山空港から岡山駅まで直行便のリムジンバスに乗る。お値段740円。

岡山駅でFishの荷物をコインロッカーに預ける。コーディネーターおかでん、コインロッカーの場所まで事前に確認してあるので、スムーズに事は進んだ。こういうところ、微細なところまで調べる性格は持って生まれたものらしい。おかげで、今回のタイムスケジュールも分刻みで計画が立てられているありさま。「気ままに旅」とは真逆の旅行。

ただ、そのタイムスケジュールを順守することばかり考えて、イライラしていたらダメ。相手に悟られないよう、微妙に急かしたり微妙にテンポを落としたりしなければならない。

岡山市街をはしるおかでん

岡山市街には路面電車が走っている。これに乗って後楽園を目指す。運賃100円。安い。

広島にも路面電車がたくさん走っていて、今回は岡山、広島二種類の路面電車が楽しめる、テツな旅行でもある。

ちなみにこの電車の愛称は「おかでん」。非常に親近感を覚えるネーミングだ。ただ、別にこの電車の名前を拝借する形で、僕が「おかでん」を名のっているわけではないので念のため。

Fishは首にマフラー、手にはいつでも羽織れるようにダウンジャケット・・・と、完全防寒の体制。4月下旬でこの出で立ちはちょっと大げさじゃありませんか?てっきり僕はジャケットをコインロッカーに預けるものだとばかり思ったが。

「まだまだ寒いよ。暖かいところ(台湾)に住んでいたから、これくらいの気温でもまだ寒い」

なるほど。でも、来日してもう7~8年経つだろうに。それでも慣れないものなんだろうか。

「慣れないね~」

そんなもんなんだ。そういえばFish、冬になると毎年決まって風邪をひいて、1か月以上咳き込んでいる。これも日本の風土に慣れない結果なのかもしれない。

岡山城

後楽園に行く前に岡山城へ行く。

岡山城は三層六階の天守閣があるお城。

入場料は300円で、後楽園とセットの入場料は560円。まあこれくらいのお金だったら払ってもいいかな、という気になる。どうせ後楽園には行くわけだし(後楽園単体の入場料は400円)。

しかし、あいにくこの日は常設展示のほかに特別展示があるとのことで、入場料が800円に跳ね上がり、しかも後楽園とのセット券は販売中止となっていた。さすがに800円払ってお城のてっぺんに登る気はしなかったので、パス。

月見櫓

月見櫓。国の重要文化財。お城としては一番のメインイベントである天守閣は、修復して鉄筋コンクリートの建物になっている。だから、文化財としての価値は天守閣よりもこの月見櫓の方が上、ということになる。

「といっても、月見櫓の中に入れるわけでもなし、さりげなさすぎる」

外からなんとなく眺めて終わり。

ちなみに岡山城の天守閣は建物内にエレベーターが備え付けられているのだった。ご時世ですな。現在、全国のお城の中でエレベーターが設置されている場所はそこそこあるが、エスカレーターが設置されているのは見たことも聞いたこともない。いずれはエスカレーター付きの天守閣ができるかもしれない。

旭川

岡山城から後楽園へと移動する。後楽園へは、岡山城の脇から一本の橋でつながっているので移動は楽ちん。旭川を渡り、対岸の後楽園へ。

岡山後楽園の入口

岡山後楽園の入口。日本三名園といわれる後楽園だが、入口は至ってこじんまりしている。

これは、こことは別に正門があるからで、別に不思議なことではない。

後楽園内部

岡山はおかでんのルーツ、といっても、おかでんが跋扈するのは盆と暮の倉敷だけだ。実は岡山をまともに散策したことは殆どない。だから、後楽園を訪れるのもずいぶんと久しぶりだ。えーと、最後に訪れたのは四半世紀近く前だな。

その20数年前の訪問時の記憶としては、とにかくつまらない場所、というものだった。そりゃそうだ、当時は中学3年生の頃で、そんな若造が庭園の良しあしなんてわかるはずがない。ひたすら退屈であり、そそくさと退出した思い出がある。

今回はどうだろう?良くも悪くも歳を重ねて、少しは庭を楽しむ余裕ができただろうか?

後楽園1

後楽園2

後楽園3

後楽園4

驚いた。案外庭園散策が楽しいんでやんの。外国人であるFishが傍らにいて、彼女がガイジン目線で日本庭園を楽しんでいるから、というのも理由の一つだろう。でも、それを除いても、自分自身で結構楽しめる。歳とったからかな?

後楽園の中央部分は芝が広がっており、日光がさんさんと照りつけている。夏に訪れたら汗だくになりそうだが、ちょうど今の季節(4月下旬)、ちょうど良いお天気具合。

流店1

流店2

流店3

流店(りゅうてん)、という珍しい建物に出会った。板張りの床で、能舞台のようである。しかし、真ん中に水路が通っていて、足湯でも楽しめるかのような造りになっている。全国的にも珍しい建物らしい。休憩所として主に用いられていたとのこと。歩きづめでほてった足を水で冷やしたりしていたのだろうか。

僕だったら、水路のところにビール缶を突っ込んでおいて、冷えたやつをぐびり、と楽しむという事を絶対やるだろうな。でも、水自体はそれほど奇麗なものではないだろうから、それでおなか壊しちゃったりして。

石灯篭

いろいろ園内を見て回る。一つ一つ解説をしだすと、きりがないくらい歴史やいわれがあるのだろうが、あいにくおかでんは殆ど園内のことを知らない。解説無しで、五感を頼りに園内を散策する。

カメラは基本的にFishに持たせ、写真撮影は任せておいた。おかでんが撮影するより、より観光客目線で撮影できるだろうから。

日傘が水没

大きく広がる池。「沢の池」、と言うらしい。その池を見とれていたら、突然突風が吹いた。その瞬間、Fishが手にしていた日傘が吹き飛び、そのまま池の中へダイブ。写真だと、真ん中あたりにうっすらと日傘が沈んでいるのが見える(くらげみたいな色形をしたものが日傘)。あーあーあー。

慌てて園内整備の作業員さんを呼び、日傘をサルベージしてもらうことにした。

作業員さんに沈んだ日傘を取ってもらう

作業員さんは舟に乗り、そろりそろりと傘に近づいていく。これはこれで風流というか、なんかいい光景。Fishが後で「舟から傘を拾うところを写真撮っておけばよかったかな?」と言っていたが、それはさすがにやめて正解。せっかくご多忙中のところ、日傘拾いに来てもらったのに、それを「いい記念になる」と写真撮っていたら不謹慎だろう。

※Fishは冗談で「写真撮っておけば・・・」と言ったのであって、本気で言ったわけではない。念のため。

丹頂鶴

後楽園の一角が動物園になっていた。檻の中にいるのはタンチョウ鶴。正月になると、庭に放鳥され、観光客を楽しませてくれる。岡山県内では、お正月のニュースとして定番の素材。普段はどこで飼われているのかと思ったら、ここだったのか。

どうでも良いことだが、タンチョウ鶴の焼き鳥ってどんな味がするのだろう・・・。脂身が少なそうなので、あまりおいしくない予感。ダチョウの肉と似ているかな?とまあ、そんなことを考えつつ鶴を眺める。

Fishはこの鳥が珍しいらしく、興奮気味に何枚も何枚も写真を撮影していた。そうか、台湾にはいない鳥だよな、これって。

しだれ桜

しだれ桜が咲いていた。奇麗だ。

これにて後楽園散策終了。1時間ちょっとの時間だった。ここに半日いろ、と言われるとしんどいけど、1時間の散策だと思えば非常に楽しい場所だと思った。うん、今回の旅行は予想以上に楽しくなるかもしれないぞ。

まっ黄色の山陽本線

岡山駅まで歩いて戻る。行きは路面電車(おかでん)だったが、帰りは徒歩。徒歩でも十分歩いていける距離。

これで岡山市は終了。ここからJR山陽本線で倉敷に向かう。本当は岡山市街にある「コンテンツカフェ」でピオーネのパフェを食べたかったのだが、ちょっと時期が早すぎる。一週間前くらいに、新聞記事で「岡山でようやくピオーネが出荷され始めました」というのを読んだばかり。まだカフェのメニューに載る時期ではなさそうだ。ピオーネパフェは諦めた。

岡山界隈のグルメといえば、「ばら寿司」「ままかり」が有名。お店に行って食べようかとも思ったが、駅弁でも買えるものなので、駅弁を買って電車内で食べることにした。

岡山駅で、三好野本店の「桃太郎の祭ずし」(1,000円)と、「まんま借り借りままかり鮨」(700円)を購入。

桃太郎の祭ずしパッケージ

桃太郎の祭ずし弁当箱

「桃太郎の祭ずし」は、ピンク色で桃の形をした容器に入っているのが特徴的。横川の「峠の釜めし」みたいに、食べ終わった後に容器は家にお持ち帰りする・・・なんてことをするのもよろしいかと。ただ、荷物がいっぱいな状態の我々、さすがにお持ち帰りはやめた。

桃太郎の祭ずし中身

桃太郎の祭ずし。ばら寿司、というのは岡山におけるちらし寿司のことだ。えび、しゃこ、穴子、たこ、さわら・・・と駅弁にしてはえらく豪勢に具が載っている。さすが1,000円するだけある。いや、もともと駅弁というのは割高な商品なのだから、1,000円払ってこの内容だったら、むしろお得なんじゃあるまいか。

ばら寿司は、かつて岡山藩主が出した倹約令「食膳は一汁一菜とする」に対して、いろいろな具を乗せても「一菜」とした庶民の知恵から生まれたという説がある。トンチがきいているな。

おかでんはばら寿司を食べたことがあるかというと、実は岡山風のものはばら寿司に限らず、殆ど食べたことがない。紺屋の白袴、というやつだ。

こういう旅行だからこそ、食べられる味。「地元を観光するなんて楽しくないだろ」と思っていた当初の考えが少し改まった気がする。観光客目線で訪れるからこそ、地元の名物にありつける訳だ。

おかでんが感心する一方で、肝心のFishは渋い顔。「おいしくない・・・」と嘆く。どうやら、酢でシメた魚介類の味、というのが全く口に合わないらしい。かといって食べなければお腹がすくので、しぶしぶ錦糸卵とご飯を食べているありさまだった。

そうか、台湾人にとって、酢でしめた食材はあまり馴染みがないのだった。

Fishはこの「祭ずし」のことを「まずいずし」と言い換えてぼやいていた。でも、三好野本店の名誉のために言っておくが、おかでんにとっては十分においしい料理であり、大満足した一品だった。

地元ならではのものを出せば、客人は喜ぶ・・・というのは安直な考えだ。口にあう・あわないがあるのだから、ちゃんとそこは考えないとな。反省。

ままかり寿司

一方こちらはままかり寿司。ままかりとは魚の名前で、食べたらあまりにおいしいから「まま(ご飯の事)」が進んで進んで仕方が無く、隣の家にご飯を「借り」に行く羽目になるから「ままかり」。

嫌な予感がしたが、こちらもFishの口に合わず。

そりゃそうだ、ままかり寿司も先ほどの祭ずし同様、酢でシメたままかりが酢飯の上に乗っかっているのだから。結局Fish、お昼ごはんを殆ど食べられずにこの日を過ごす羽目になってしまった。

おかでんはというと、おいしくままかり寿司を食べた。よく考えると、この料理を食べるのは生まれて初めてだ。地元だからこそ普段食べない料理というものが世の中にはあるわけでして。

やあ、いい経験させてもらってます。こうなると、どっちが案内役で、どっちが観光を楽しむ役なんだかわからなくなってきたぞ。