日本の中のブラジル【群馬ブラジリアンタウン】

カウンター1

「さあ盛り上がってまいりました」
「何がですか?」
「胃袋が」
「もうおなか一杯ですか?」
「あ、いや、表現が間違っていた。胃袋はペチャンコなので気分が盛り上がってきたということで」

飽食の時代だからか、歳をとったせいか、最近「腹減ったーッ!メシ食わせてろォォォ!」と思う機会がめっきり減った。というかほとんどない。一食抜いたくらいではさして空腹感はない。「メシ時になるからメシを食う」というだけであって、「腹が減るからメシを食う」ではない日常だ。今だってそう。

ではなぜ「胃袋はペチャンコ」なのかというと、ビュッフェ!というこの戦場を前にすると、精神的に胃袋がペチャンコになるからだ。「精神的に」ってなんだよ、というな。感じろ。わかれ。つまりはそういうことだ。

「さあて、何を食べるかな・・・」と料理全般を俯瞰し、手元のお盆やお皿のサイズを見比べ、テーブルのサイズを確認する。たぶんビュッフェで一番楽しいのはこの瞬間だ。「さて、皿に盛るぞ!」となる直前が気分のピークだと思う。いざ料理を盛りつけると、ついつい盛りすぎてこ汚い見た目の皿になってしまうし、おなかいっぱい食べると、案外「満足感」よりも食べ過ぎてテンションが下がるものだ。

料理

ありがたいことに、僕には好き嫌いがない。「この料理はどんな食材を使っているのだろう?」とか「味付けが口に合うだろうか?」などと心配しなくてよいので、目の前に広がる料理の海すべてが食べるターゲットとなる。「お前ホンマに食えるの?」といかがわしい目つきで料理を吟味する必要がないので気が楽だ。

ビュッフェにおいて、もっとも気にすべきは「皿に盛りきれるかどうか」ということだ。何度もテーブルと料理カウンターを行き来するのは面倒だし、はしたない感じがする。なので一皿で盛りきりたい。しかし、そうともなれば「汁気のあるものをどうやって盛るか」とか、悩ましいことは一杯ある。

ビュッフェは知的なゲーム。お仕着せの定食なんて家畜のエサに過ぎんのですよ・・・と無茶なことを考えてみる。

ブラジル人の主食って何だろう?と思って調べてみたら、煮込み豆(フェイジャン)やご飯(アホス)らしい。へー、南米でも米を主食にするのか。ジャガイモと豆ばっかり食べているイメージだった。

炊飯器って、ローカライズすれば世界各地でもっともっと売れるんじゃないか?と一瞬思ったが、今の日本の炊飯器ってガラパゴス化著しい。炭の削りだしの釜です、とか日本中の米の銘柄が30以上も登録されていて、その米に合った炊飯をします、とか、1.2気圧ですとか0.04秒刻みで加熱しますとか。笑ってしまうのが、アンケート機能付きの炊飯器。炊飯の都度「今回のご飯はどうでした?」ってアンケートが画面に表示されるという。「かたい」とか「粘る」とか回答していくのを何度もやっていると、「ははーん、お前んちのご飯の好みはこんなんやろ!ほれ!」と我が家好みの炊飯を自動的に学習していくという。すばらしすぎる。

料理

なんか見慣れないものがさりげなくある。とりあえず全部食べないと。ブラジル料理=シュラスコ、という先入観があるので、肉肉しい料理という印象があるが実際は違う。かなり野菜比率が高い。そりゃそうか、1,000円以下で食べ放題なんだから、肉をホイホイと提供するのは無理がある。

料理

お手製と思われるプリンも置いてあるのが素敵。プッチンプリンとは違った重量感あるやつ。ただし、これを食べまくられるとお店としても困るので、「2枚まで」と一人当たりの数量制限が指定されてあった。

盛り付け例

というわけでこの日のランチ。

ご飯茶碗を左に置いて、汁気が若干あるフェイジョアーダを右に置く。こういうところが、和食の発想だ。ここはあえてブラジル料理なんだし、茶碗を右に!とやるのも良かったかもしれない。それでこそ非日常だ。

ご飯茶碗の右左で「日常かどうか」を語るっていうのはなんともスケールが小せぇ話ではあるが。

この写真に写っているもので、すべての料理が写っていると思う。これくらいの品揃えはあるということだ。肉だってもちろんある。安い。群馬県だから、ともいえる。東京だったらこれでいくらだろうか?1,400円は最低でも必要か?

一品一品については、何があったかもう覚えていない。写真のとおりでございます、としか言いようがない。

さくさく

食事の途中、パステウが揚がったということで店のおばちゃんが持ってきてくれた。ブラジル風の揚げ餃子。噛むと油がじわっと出てくるのが素敵。おかずにして良し、酒の肴にしてもよろしかろう。

そんな食事の最中、鳥手羽をかじった際に骨を噛み砕いてしまい、前歯が折れてしまった。おかでん急速にテンションだだ下がり。その前歯は、2ヶ月ほど前に苦労して保険適用外の治療をしたばかりのものだったからなおさらだ。前歯が折れたといっても歯茎の中でひびが入った状態なので、外観には支障がなかった。でも、ずるずる・・・と時間とともにだんだん下に落ちてくるので、この日の夕方にもなれば、フガフガしてろれつが回らないし、歯が気になって気になってテンション下がりっぱなしだし、かなりなものだった。つい10分15分前に「ビュッフェ!いいぞォ!」とサンバでも踊りだしそうな気配だったのが嘘のようだ。

珈琲

このお店のクーポンを印刷してきていた。クーポンを提示すると、コーヒーが一杯サービスされるのだという。店員さんに見せたところ、店員さんはクーポンの字が読めず理解できないようだった。「コーヒーが無料のクーポンです」と口頭でも伝えたけど、やっぱり理解できていない。

へー、もう当分の間新規ブラジル人の流入はなくなっていて、今ここにいるブラジル人というのは日本生活が長い人ばっかりだと思っていた。しかし実際には、まだ日本語が流暢ではない人もいるのだな。この店員さん(女性)、最近日本にやってきたのだろうか?

それとも、10パーセント近くもブラジル人同胞がいるなら、あんまり日本語を学ばなくてもある程度の生活はできてしまうのかもしれない。いや、それでもやっぱり日本語ができないとしんどいか?

「料理は満足だったし、コーヒーが飲めなくてもまあいいか」

と思ってこのクーポンは諦めていたのだけど、しばらくしたらオーナーさんらしき人が現れ、このクーポンを見てコーヒーを出してくれた。「ブラジルのコーヒーです」と一言添えて。ああそうか、ブラジルは世界一の珈琲豆生産国だった。

かなり満足して、お店を後にした。贅沢な料理ではないけど、気軽な感じで食べるブラジル料理としては値段を考えてもすばらしいと思う。

1 2 3 4 5 6 7 8 9

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください