ジンギスカンの夕食後、今晩の宿となっている「月形温泉」に向かう。食事をとっていた建物から目と鼻の先だ。というか、月形の町の中心部はここから歩いていける程度の距離に集中している。
「広大な大地、車中心の社会」だと、お店も役所も宿もバラバラなところにありそうなイメージがある。しかし実際は、利便性という観点からある程度狭いところに集まってきてしまうらしい。
月形温泉がある敷地内に、我々が先ほどお邪魔したトマト栽培の温室があって、多目的アリーナがあって、学校給食センターがあって、老人ホームがあって、日帰り入浴施設もある。
道路を挟んだ向かい側には池があって、そのほとりにキャンプ場がある。
この月形に限った話ではなく、石狩川流域を地図で眺めていると、川の流れが蛇行した産物としての三日月湖があっちこっちにある。その周囲は一面の田んぼだけど、この三日月湖を干拓してまで農地を拡張しようとは思わなかったらしい。なにせ土地はいっぱいあるから。
北海道は、本州で生まれ育った僕にとっては常識が通じない町や道路、そして自然のデザインになっている。だからGoogleマップなどで航空写真を見ると本当に飽きない。不思議な形をした自然がいっぱいだ。
もっと面白いのが、そのまま地図を北に持っていき、サハリンとかカムチャッカ半島を観察することだ。さらに不思議な、日本人の常識から外れた景色が見られる。一度訪れてみたいものだが・・・。
大きな看板が掲げられている、月形温泉。
いちいちこういうのに感心させられる。スケールがちがう、と。
というのも、北海道の広大な大地と見晴らしの良さ、そして車移動が当たり前の世界観においてはデカい看板が正義だからだ。ラスベガスのホテルが、ストリップと呼ばれる通り沿いに発展した「車から見られることを意識した派手な作りの看板と建物」なのと一緒だ。
これが僕が普段住んでいる東京界隈だと、こうはいかない。看板がデカすぎる。こんな大きな文字にすると、むしろ見づらくなる。
月形温泉の館内図。
本館に5室、別館に15室ある。
日帰り入浴施設の「ゆりかご」の大浴場も使うことができるが、宿泊者専用風呂もある。
「ゆりかご」のほうは遅い時間や早朝には営業していないので、夜更けにお風呂に入りたければ宿泊者専用風呂の利用となる。
入浴&食事のセットで1,100円は安いな。
この黒板のフォント、ドン・キホーテをなんとなく彷彿とさせる。
本館から、「別館」に通じる廊下を歩く。
もともと別の用途の建物だったものを廊下でつないだものだろう。別館には、現在は使われていない大きなエントランスがある。
大浴場、10時から22時までだった。
只今の時刻、22時20分。やっぱりだめだった。
僕の部屋は207号室、バラ。
くもりガラスの引き戸で、ちょっとびっくり。へえ、こんな部屋があるのか。
温泉宿泊客用というより、おそらくこれは合宿施設かなにかだったものだろう。
室内の様子。
今日はもうお風呂に入って寝るだけ。
月形町の名物が紹介されていた。
月形メロン、「ゴジラのたまご」「北海カンロ」「ダイナマイトスイカ」という名前のスイカ、「まんまるトマト」という名のトマトジュース、月形まんじゅう、先ほど食べたジンギスカン、そして樺戸とうふ。
メロンとスイカは季節性が強い食べ物なので、秋冬春にかけては、右のページが特産品というわけだ。
月形樺戸博物館、という施設が近くにあるらしい。
もともと集治監(いまでいう刑務所のこと)があった場所、ということで、往時のことを説明しているものだ。これは面白そうだ、見てみたい。北海道の場合、開拓と囚人収容というのは密接に絡んでいる。はるか昔、網走監獄を訪れた際もとても興味深く展示を見たものだ。
それにしても、こんな場所に集治監があったというのはまったく知らなかった。
23:26
お風呂に入る。宿泊客専用のエリアだ。
おっ、湯の花が浴槽を舞っているのか。
温泉地でよく見かける張り紙だけど、これって温泉宿側はたいへん誇らしく貼り出しているよな。「お客さんが誤解しちゃって、困るんですよねーもー」という感じではない。
それにしても、近くに荒々しい火山があるわけでもないこの平野で、湯の花が舞うような温泉が湧いているとは意外だった。
泉質を調べてみたら、「ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉(弱アルカリ性低張性低温泉)」と記されていた。なるほど、要するに塩水だ。
源泉温度が31.8度なので加温している。
あと、動力揚湯で毎分800リットル、という記載が先ほどの資料に書いてあったが、「温泉資源保護のため」ということで循環ろ過と塩素消毒を行っている。さすがに800リットルをドバドバと湯船に注ぐのはやりすぎだから節制した、ということか。
(つづく)
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