芋煮会2014

肉食人種行動観察会(その8)

10月にバーベキューオフを開催し、「いやあ、楽しい!」と今更ながらバーベキューの楽しさを満喫した我々。しかしバーベキューというのはノウハウの塊だ。年に一回だけ、と言わず、二回三回と似たメンツで繰り返しやれば、それだけスキルが蓄積され、より楽しく・旨いメシが食える会へと発展していく。・・・そう確信したので、この手の野外炊事イベントを継続していくことにした。

とはいっても、バーベキューオフ自体が10月の出来事であり、もう既に季節は秋から冬に向けて加速を開始していた。「四半期に一度、くらいは定期開催したいよね!」とか言ったところで、寒さに耐えられる自信がない。バーベキューって、案外その場でじっとして動かないものだ。だから、ちょっとした風でも猛烈に体が冷える。なので、バーベキューはさすがに諦め、代わりに「芋煮会」を開くことにした。

芋煮。東北地方でよく食べられる鍋であり、山形と宮城が特に知られている。里芋を煮込んだ鍋なのだが、山形あたりでは特に好まれ、秋にもなるとあちこちの公園や河原で大小さまざまな芋煮会が開かれるという。

山形県の芋煮は「醤油ベースで、牛肉を用いたシンプルな具の鍋」で、宮城県の芋煮は「味噌ベースで、豚肉を用いていろいろな具が入る鍋」という大きなくくりがあるようだ。しかしもともと地域に根ざした料理なので、必ずしもこのようにすぱっと二極化しているわけでもないようだ。しかし、この「山形と宮城の芋煮文化の違い」はよくネタにされ、お互いの県民が自分のところの芋煮が一番だ、と自慢する様はおもしろおかしく紹介される。

そういうのは基礎知識として知っていながらも、じゃあ芋煮なるものをどれほど食べたことがあるかというと、案外ないものだ。大学時代に河原で作ったことがあるなあ、とか遠い目で思い出すくらいで、所詮その程度の認識な、「メジャーなるマイナー料理」なんだろう。だからこそ、今回作ってみようと思う。

2014年12月06日(土)

荷物いっぱい

場所はバーベキューの時と同様に都内の舎人公園とした。舎人公園は「手ぶらでバーベキュー」ができるという点で利用価値が高い施設だが、さすがに芋煮会用の鍋やら食材の取り扱いはない。冬でも頑固一徹、肉を焼け、というスタンスだ。だから、鍋なんぞは家から持参しなければならない。とてもじゃないが「手ぶらで」とはほど遠い状況だが、これはもう仕方がない。最近の公園は火気厳禁の場所がほとんどであり、荷物持参だろうがなんだろうが、野外調理ができるだけでも幸せな環境だ。

前回バーベキューは「極力手ぶらで」をキーワードにしていたために、食材の買い出しは公園近くのスーパーを活用した。「あれを焼こう」「これも焼いちゃえ」とみんなでわぁわぁ言いながらの買い出しはとても楽しく、まさにバーベキューの醍醐味!という感じだったが、今回はあくまでも芋煮。煮るべき食材はあらかじめわかっているので、事前に現地に持ち込む食材や機材は参加者全員で割り振りをし、下ごしらえ等をあらかじめ済ませておくことにした。「手ぶら」の対極。前回からえらく違う展開になってるけど、まだまだ試行錯誤中。

・・・ってなわけで、おかでんの持参品は鍋をはじめとしてかなりの量に。スーツケース1個には入りきらず、買い物袋一つ余計に持たないといけないくらいのサイズにふくれあがってしまった。何しろ、飲み物2リットルをはじめとし、調味料だとかなんだかんだ。「えーい、どうせスーツケースを利用するなら少々荷物が増えても一緒じゃー」とやけくそになり、コーヒー関連器具一式も詰め込んだ。やるなら徹底してやるぜ、と無駄に鼻息を荒くして、ドリッパーとペーパーフィルターにとどまらず、豆をひくためのミルまで用意する有様。さすがにこれはやりすぎたかもしれん。

紅葉がきれいな舎人公園
霜がおりている寒さ

舎人公園は初冬の雰囲気を乗り越え、既に完全な冬へとシフトチェンジしていた。きれいに色づいた木々がお出迎えしてくれるのだが、足元を見れば地面には霜。この光景を見て、参加者一同苦笑してしまう。

「まじかよこんな中でやるのか」
「大丈夫、芋煮を食べれば心も体も温まるはずだから」

芋煮さえあれば万事うまくいく、と自分たちを鼓舞しながらバーベキュー場へと向かう。そしてそれは、あらかじめ各自が買いそろえた食材のずっしりとした重みが裏打ちしていた。里芋1.5キロ、牛肉1.5キロ。芋煮の主要具材だけで、これだけの重量感だ。今回は5人参加なので、単純計算しても一人600グラムは芋煮を食べないといけない。このほか、こんにゃくやら汁やらシメのうどんやら食べたら、一人1キロくらいは食べる単純計算になる。

「芋煮だけ、でこれですよ?他にも食べるものあるんですよね?・・・いやまあ、なんだかんだで食べられるんだと思うんですけどね」

参加者の一人、おーまさんがうっすらと笑みを浮かべながら指摘する。「そんなん、食べられるわけないじゃないですか」とか「無理して食べたっておいしくないですよ。腹八分目でいいじゃないですか」といった物わかりのいいことを言わないのが素敵だ。彼もまた、「共犯者」の一人。今回の参加者全員が、「誰だよこんなに食材買ってきたのは」と口では文句を言いつつ、この状況を楽しんでいる。そして、最後やっぱり「ああ食べ過ぎた」と文句を言う。もちろん、ニヤニヤしながら。

「シメのうどん、辿り着かないかもしれないぞ。どうする?うどん食べないから持って帰ってくれ、って言ったら」

一同笑。

実は、うどんを持参する担当のよこさんは現在遅刻中。生の水沢うどんを入手したのだが、そのうどんを茹でるのに案外手間取ってしまい、集合時間に間に合わなかったのだった。事前の打ち合わせの際、「うどんをあらかじめ茹でておいたら伸びてしまうだろうか?」とよこさんは心配していたのだが、その結果彼女が導いた結論は「集合時間ギリギリにうどんを茹でる」ということだったらしい。しかし生うどんの茹で時間を甘く見積もってしまい、遅刻するという結果に。

そこまでして大切に茹でられたうどんを、「食べきれないから今日はうどんはいいや」なんて言ったら、一体どんなことになるやら。怖くてとてもそんなことは言えない。口が裂けても言わないかわりに、腹が裂けるまでうどんを食べよう。そう心に誓った。

豚まんとおでんが売られているバーベキュー場

バーベキュー広場の売店に到着してみたら、店頭で豚まんが売られていた。おっと、おでんも売っているらしい。都営の施設だけど気が利いてるな。とはいえ、バーベキューしにやってきて、果たしておでん食べたりする人がどれだけいるのだろうか。

極寒の1月2月でも営業している舎人公園バーベキュー場。冬なのでこういう温かい食べ物も用意しました、ということか。でも、アイスキャンデーの冷凍庫に「おでん」の掲示って、ギャップがすごいな。

バーベキュー場

レンタル機材を受け取って、指定された場所へと向かう。この日借りたのは、炭火用グリル、テーブル、椅子5脚。タープも借りる手配をしていたのだが、受付の人から「今日みたいな天気だったら、タープはない方がいいと思いますよ。日陰があると、寒くなりますから」と指摘され、取り消しにした。なるほど、冬の野外炊事というのはタープはむしろ邪魔なのだな。実際、日が差しているうちは温かい屋外でも、ちょっとでも雲で日が陰ったら急に寒くなった。タープなんて設置していた日にゃもう、最初っから最後まで寒くて凍えてたわ、きっと。

周囲を見渡すと、さすがにこの季節なので満員御礼とはなっていなかった。ハイシーズンは予約受付開始から即完売御礼となる人気スポットなのだが、今日はちらほら空きがある。

「他の人たち、やっぱりこの季節でも肉を焼いてるの?こんなに寒いのに?」

僕らが鍋の仕込みをやりながら、そういってキョロキョロ周囲を見渡してみる。うむ、やはり見渡す限り全部のグループが肉を焼いているようだった。

「肉が焼けたらすぐに食べないとね。取り皿の上に肉を置いてたら、脂がすぐに白く固まってしまうぞ」
「むしろそれはヘルシーかもしれん、余計な脂は食べなくてもすむから」

なんてひそひそ話をする。それにしても、早いグループは10時半過ぎには既に肉の香ばしい臭いが周囲に立ちこめていた。施設が利用できるのは10時からなので、たった30分で肉が焼けるまで準備できたということだ。早い!!

早いついでに言えば、今日はみなさん退却も早い早い。12時過ぎに退却する人がいて嘘だろーッ?と思ったが、その後も三々五々引き上げていっていた。本当に、ご飯食べたら即撤収、という感じ。バーベキューをやったときは夕暮れ時までぐだぐだ時間を過ごすグループがほとんどだったことを考えればまるきり行動パターンが違う。でもそれは正解だった。14時を過ぎたあたりでぐっと気温が下がり始めたからだ。なるほど、冬の野外炊事はちゃっと始めてちゃっと終わる、というのが大事なのだな。

マットを敷いて荷物を置く

シートを地面に敷いて、かばん類の荷物置き場にする。現地でテーブルを借りるので、ついつい荷物置き場については考慮を忘れがちだが、テーブルはあくまでも食材とかお皿を置く場所。または調理をする場所。荷物置き場は別に確保する必要があるので、レジャーシートの類は持参必須だ。

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