「さわやか」でハンバーグを食べたあと、カーシェアを返却する。今回の静岡旅はそろそろ終わり。
帰りの新幹線までの間、最後の一押しとして静岡駅の北側に向かう。
ざざっと静岡について調べたとき、屋号が「ななや」の丸七製茶が面白そうだったからだ。
お茶屋さん?
「せっかく静岡なんだから、お茶をお土産に買おう」とでも思った?
いや違う、そういうことではない。
台湾や中国に旅行した際、「せっかくだからお茶を買って帰りたい」と思ったし、実際によくお茶を買ったものだ。でも、静岡や京都に行って「お茶を買いたい」と思ったことはない。
それを思うと不思議だよな、外国でお茶を買いたくなる気持ちって。
この「ななや」を訪れたのは、7種類の濃さから選べる抹茶ジェラートが売られているからだ。
えっ、抹茶ジェラート/アイスクリームというのは理解できるけど、な、7種類も?
「濃い」と「ふつう」の2種類くらいならば想像の範疇だけど、抹茶だけで7種類の濃さがあるのは思いもよらなかった。
「抹茶ラテ」「抹茶フラペチーノ」みたいに微妙に亜流なものをメニューに加えて数を稼いでいるのかな、と思ってショーケースを覗いてみたら、本当にスレトレートに「抹茶ジェラート」が7種類も並んでいて笑ってしまった。
あいにくこのとき、急な夕立が降り始めて暑い湿気ムンムンの状態。そのため、ジェラートのショーケースが結露しまくって中がよく見えない。
なのでメニュー写真で7種類の違いを見よう。
へえー。No.1からNo.7まで本当にちょっとずつ色が違う。
単に「数字が大きくなるにつれてどす黒くなっていく」わけではない。No.7でも美しい緑だ。モスグリーンだ。
7段階あるうち、抹茶ジェラートNo.6は「抹茶好きを唸らせる抹茶」と書かれている。
静岡県藤枝産お点前抹茶使用、とのこと。茶道で使われるレベルのお抹茶が使われているのだから贅沢な話だ。お茶は嗜好品なので呆れるほどピンキリの幅が大きい商品だけど、お抹茶は10グラムあたり500円くらいはする。
このお店がスイーツ屋ならともかく、本業はお茶屋さん。なので、「抹茶好きを唸らせる」と言うからにはホンモノなのだろう。むしろこれまで僕らが食べてきた抹茶アイスって、単に緑色の「何か」なのかもしれない。
一方、一番濃い抹茶ジェラートNo.7はもっとすごいキャッチコピーだ。
「プレミアム」と銘打っているだけあって、「ななやが、世界一と豪語する究極の濃さ」と自信満々だ。世界一、という言葉がこんなにあっけなく登場するとは。そんなにすごいのか。
でも待ってほしい。なんでも「濃ければ良い」というものではない。チョコレートがその例だ。カカオ72%くらいまでは美味しく食べられるけど、95%まで行くと「健康のために食べてます」感が出てくる。
とはいえ、ここまで挑発されて食べないわけにはいかない。No.7、お願いします。
ちなみにNo.7だけは値段が急に高くなる。正確な金額は覚えていないが、確かそれ以外のジェラートが380円なのに対してNo.7だけ580円、くらいの価格差があったはずだ。
値段を見ると「いやぁ・・・それだったらNo.6でやめておこう」と考えてしまうが、それでも気になるNo.7。
ココ壱で6辛以上のカレーを頼むと割増料金が必要になる。10辛のカレーを頼むと思って、ここはNo.7を頼もうじゃないか。たとえが支離滅裂だけど。
1つのカップに2種類のフレーバーを入れることができる、「ダブルカップ」で頼んでみた。
これで2人で4フレーバー。
ダブルカップを4つ頼めば、抹茶ジェラートNo,1からNo.7まで全部食べ比べられる!と一瞬頭をよぎったが、さすがにいしに「4カップ買おう」とは言い出せなかった。でも2カップでとどめておいて正解。だってどんどん溶けていくんだから。
右から、No.7、No.3、No.5、藤枝ハイボール・・・だったかな?
ダメだな、写真を撮っておきながら何を頼んだのか記憶にない。これじゃ何のための食べ比べなんだ?
4種類とも抹茶ジェラートにせず、「藤枝ハイボール」という別なものが混じった。これは、「いやー、さすがに4種類全部抹茶フレーバーにしても訳がわからなくなるでしょ」と思ったからだ。似たようなものばっかり食べていたら、味覚が麻痺しそうだ。なので、お口直し。
で、食べてみた。
うん、No.7、確かに濃い。
濃いけど「苦い」「口当たりが悪い」といったことはなく、無理して濃くした感じではない。なるほど。
でも、ほかの抹茶ジェラートも十分においしい。なので、わざわざ結構な追加料金を払ってまでNo.7の濃さを求める必要ってないんじゃないか?と思えた。
少なくとも、「本場四川の麻婆豆腐」を出すお店で、「200円追加で、四川から取り寄せた香り高い花椒を使った麻婆豆腐になります」と言われて「うーん、200円かぁ」と悩むよりも簡単だ。このお店の抹茶ジェラート、お金が気になるならNo.6で十分だ。なぜならそれでもおいしいから。
ちなみにNo.7を食べた後にNo.3を食べると、さすがに別物に感じた。世の中、何かと比較しないほうが幸せってことはいっぱいある。No.3単体なら十分美味しいのに。
外は土砂降り。降り注いだ雨が地面にたたきつけられ、水しぶきが跳ね上がるほどの勢い。
ななやから地下道まで「ひゃー」と言いながら全力で走る。
静岡駅は立派なおみやげ物屋(グランドキオスク)が新幹線改札口目の前にあるので素晴らしい。
新幹線の発車時刻ギリギリまでお買い物ができる。
そのお店を見ていたら、先ほど見かけた抹茶ジェラートが売られていた。あ、こういう形で駅でも売っているのか。さすがに7種類の抹茶ジェラート、というわけにはいかないが、「抹茶」と「濃抹茶」の2種類が売られていた。お店に行けない場合はここで買って食べるのもよさそうだ。
後日、浅草の浅草寺裏手にななやの抹茶ジェラートを扱っているお店を発見。東京でも静岡と同じ抹茶を食べることができることを知った。その際もやっぱり「ついうっかり」No.7を頼んでしまった。1度食べれば十分、と食べた当時は思っていても、しばらく時間が経てばまた頼みたくなる。そんな魅力がNo.7だ。
それはともかく、コロナの間隙を縫って実家に帰省できたのは良かった。このあとGoToトラベル、GoToイートという政府主導の施策のせいもあって2020年年末から2021年年初にかけて、「第三波」と呼ばれる感染爆発が起きる。
僕の歳ともなれば、帰省は水物だ。こっちのスケジュール都合だけでなく、親の体調も配慮しなければならない。自分が年を重ねた分だけ、親も等しく老いていくからだ。どんどん「会おうと思っても会えない」日が増えていくので、会えるときに会っておかないと。
(つづく)
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