これは天災ではない、人災だ【西穂高岳】

この界隈の山の様子

12:30
北アルプス登山案内図。

馬蹄形に山脈が連なり、新穂高温泉はその真ん中にあることがわかる。

これを見ていると、これからの行程がわくわくしてくる。さあ、登るぞぉ。

・・・ただし、ロープウェーだけど。

いや、ロープウェーを卑下してはいかん。ロープウェーを否定するなら、松本から徒歩でここまで来てみろってんだ。バスや車使ったらダメだぞ。

一人で仮想敵を作り、一人で言い訳する。何を興奮しているんだ。

やっぱりロープウェー登山、というところに引け目を感じているんだろうねえ。

新穂高温泉アルペン浴場

12:31
まあ、ロープウェー登山のぜひは兎も角としてだ。

そういうルートを選択したことによって、「登山」そのもの以外でワタクシの行動パターンに幅ができたのは事実なんですよ。

それが何かというと、この新穂高のバス停の前には何やら公衆便所の巨大版みたいな建物があるわけですよ。何かというと「新穂高温泉アルペン浴場」。要するに、温泉施設だ。

この施設の秀逸なところは、ちゃんとした建造物の中にある風呂であるにもかかわらず、無料で入浴することができるということだ。寸志すら要求していない。ありがとう、地元の人。

そんなわけで、裏銀座を縦走して数日間風呂に入っていない人なんかは大変に重宝する。汗と埃でドロドロになっている登山客からすると慈母のような、なんとも素晴らしい施設だ。

下山ルートは焼岳、中の湯を想定しているので、このお風呂を楽しもうと思ったら今しかない。登山開始前に温泉というのはちょっと間が抜けているが、時間に余裕はある。せっかくだから入っちゃえ。

アルペン浴場の中

12:32
アルペン浴場は名前こそ聞き及んでいたが、実際に中に入るのは初めて。恐る恐る中に入ってみると、誰も入浴していなかった。ラッキー。さすがに正午過ぎ、こんな中途半端な時間にこのあたりをウロチョロしている登山客はあまりいないのかもしれない。一般の観光客は、まさかこんなところに無料浴場があるとは知らないだろうし。

湯船

12:33
もっと、人が2~3人入ればいっぱいいっぱいのごった煮状態になる浴室なのかと思っていたが、意外や意外、十分に広いお風呂がそこにはあった。非常に素晴らしい。

温泉はざばざばとかけ流されている。泉質は単純泉(弱アルカリ性低張性高温泉)。泉温64.5度で毎分600Lの湧出だから立派なものだ。

カラン

12:33
さすがにシャンプーやリンスは置いていない。当たり前だ。

体を本格的に洗いたいのであれば、持参すること。

途中で、バスの運転手さんが入ってきてさっと一風呂浴びて、また制服を着込んでバスに戻っていった。手慣れたものだ。それにしても、バスの折り返し待ちの間に温泉とはなんともぜいたくな話だ。

登山前に風呂に入る贅沢

12:40
「いやー、ええのう」

一体何をしにここまでやってきたのか、さっぱりわからない状態になって参りました。まさかこの後、標高2,385mの森林限界まで登山するとはお釈迦様でも気づくまい。

ただ、小心者のおかでんのこと、まだ時間に余裕があることは分かっていたものの、何だかこの先の行程をおもんばかるとソワソワしてきてしまい、あまり長湯はできなかった。湯温が高めだったということもあるけど。

恐らく、この湯温だと、日焼けして下山してきた登山客は「ひゃー」と情けない悲鳴を上げてしまうだろう。

奥飛騨温泉郷 総湧出量27,766[l/min]

12:44
「奥飛騨温泉郷 総湧出量27,766[l/min]」という表示があった。ものすごい湧出量だ。このあたりは巨大露天風呂のデパートだと言われるが、豊富な湯量のたまものだ。

奥飛騨温泉郷には6カ所の温泉地があるが、そのうち3カ所が単純泉、2カ所が炭酸水素塩泉、1カ所が低張性・弱アルカリ低温泉。

それにしてもこれだけの温泉が湧くとは一体水源はどうなってるんだ、と自然の神秘に対してあらためて不思議に思う。自分自身に置き換えてみると、ビール飲み放題のビアガーデンでぐいぐい2時間ビールを飲んだって、せいぜいお手洗いに頻繁に行って2リットル程度しかおしっこが出ないじゃないか。それを考えたらなんという規模感だ。

いや、比較対象が大きく間違っている気がするのだが、許せ。

人気の無い新穂高温泉

12:50
お風呂からあがり、「いやありがとうございました」となぜかアルペン浴場に柏手とお辞儀をし、ロープウェイ乗り場に向かった。

徒歩5分程度、車道の坂を登る。さっきお風呂に入ったばかりなのに、早速汗をかいてしまった。

周囲は、セミの声が聞こえるだけで人の気配が少ない。観光地、という印象すら薄い。

ロープウェイチケット

12:54
ロープウェイのチケットを購入する。標高2,100mちょっとまでぐいぐいと登るわけで、途中1回乗り換えがある。だから結構なお値段になるのではないかと思ったが、片道1,500円。思ったより安かった。

このロープウェイ乗り場周辺に人が少ないのは、乗り継ぎ駅である鍋平高原まで車が入ることができるからだ。鍋平からはロープウェイに乗る人の数が増えるため、なんと二階建てのゴンドラが採用されている。チケットに、笠ヶ岳をバックに颯爽と登る二階建てゴンドラが印刷されていた。これは興味深い。

ロープウェイは30分間隔の運行

12:56
改札には既に行列ができていた。30分おきの運行ということなので、慌てて行列に並ぶ。乗りそびれると30分後になってしまう。

ただ実際は、乗客数が多い時は臨時便が出るということで、ロープウェイは客がはけるまでひたすらピストン運行してくれるらしい。気が利いていて大変によろしい。

おっと気を付けろ、手荷物8kg以上のお客様は片道300円の荷物券が必要らしい。自分の荷物、ノートパソコンや電源コードが入っている関係で8kg越えていそうだなあ・・・。

「いや、この荷物小さいっすよ」ということをPRするために、空気で膨らんでいるザックのあちこちを押さえ、空気を抜いてザックを小さくしてみせた。いじらしい努力だ。

だが、結局計測は一切行われず、そのままロープウェイに乗ることができた。乗り継ぎ後の二階建てロープウェイ乗車時もそうだったから、実際はあまり厳格に管理されていないのだろう。

鍋平高原駅は人でいっぱい

13:04
「えええ?」と乗客が声をあげてしまうくらいの急上昇をし、数分後にロープウェイは乗り継ぎ駅である鍋平高原駅に到着。

到着してみたら、これから新穂高温泉駅に下山する乗客の行列ができていた。うーん、これだけの人があの狭いゴンドラに収まるのか。まるで、「電話ボックスに何人はいることができるか?」というギネスに挑戦みたいだ。でも人間うまくできているもんで、この人達は何も問題なくスムーズにゴンドラ内に収まった。人間って素晴らしい。

鍋平高原

13:04
ロープウェイ乗り換え、といっても、同じ建物内で乗り換えられる訳ではない。鍋平高原の美しい自然をお楽しみください、と言わんばかりに2分ほど外を歩いた先に次のロープウェイ乗り場がある。

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