
09:43
ほぼ恵那山山頂からの眺め。
岩の上に立って、かろうじてこの眺望。
視界の端から端まで広がる山脈の眺望は素晴らしいのだけど、背が低い子どもなら目の前の木が邪魔をして、大して何も見えない。
恵那山は、道中の眺めが素晴らしい割には山頂の眺めがちょっと残念だ。標高2,200メートル弱だと、まだまだ樹木の勢いが旺盛で視界を妨げる。
僕は神坂峠から尾根伝いで歩いてきたので、眺めを楽しみながら歩くことができた。しかし、広河原登山口からほぼ直登で登ってくるルートだと、あまり眺めは楽しめないと思われる。眺めを楽しみたいなら、神坂峠ルートに限る。しかし、アップダウンがあるわ、水平距離は長いわでキツい・・・。

ここが山頂ではないことは事前知識で知っていたが、これ以上の眺めを撮影する場所は多分もうない。登頂記念の写真を今のうちに撮っておく。
そのため、満面の笑みというより、若干微妙な笑みだ。
それもその筈、もう下山予定時刻を遥かに過ぎており、お尻に火が着いている状態だからだ。急がなくては。

09:43
記念写真を撮った岩のすぐ下が、やや平らな場所になっている。そしてそこに赤い屋根の山小屋があった。

岩を慎重に下り、山小屋の正面に回る。
恵那山山頂小屋、という木の看板が掲げられていた。
山小屋というのは正しくなく、正確には避難小屋だ。
避難小屋にしては相当立派な作りをしている。

煙突がでているな?と思って中を覗いてみたら、薪ストーブが設置されていた。
寒さを凌ぐには便利だ。ただし、薪を持ってこないと当然火がつかないので、周囲で薪拾いをしなければならない。
幸い、この周囲は国立公園ではないので、落ちている枯れ枝を拾って使うくらいなら構わないのではなかろうか。(こういうの、どこまでがOKかNGかはわからないので、断定は避ける)
小屋の中は石畳と、木のベンチだけ。なので、快適に眠れることを期待してここを訪れてはいけない。装備の持参が必要だ。ただ、道中がとても長い恵那山なので、ここで一泊して2日がかりで登下山するのはゆっくり快適な旅になりそうだ。

小屋からやや先に、枯れた池のような場所があった。そこだけ笹が生えていない。
看板が設置されていて、読むと「汚水を放流しないでここで自然浄化させている場所だ。立入禁止」という趣旨のことが書いてあった。
ここでいう汚水、というのはすぐちかくにあるトイレのことだ。なるほど、それは立ち入らないほうがよさそうだ。


09:50
ここから片道10分で、恵那山山頂標識がある場所となる。
さっきから、どうしようかなあ、やめておこうかなあ、と逡巡している。
たかが片道10分。それでも、往復20分が必要になる。既に今のままだと、バスに乗り遅れることが確定しているので、この20分はとてつもなく重たい。
あと、山頂標識があるところに行ったとて、そこが恵那山の最高地点というわけではない、というのも悩ましい。
本当の最高地点は、さっき気が付かないで通り過ぎてしまったどこかにあるらしい。
じゃあ、この先にある山頂標識は何のためにあるのか?フェイクか?というと、それはそれで間違っておらず、三角点がある場所だ。
三角点という石の目印ごときを見るために、自分を露頭に迷わせてよいのだろうか、と真剣に悩む。
でも、悩むってことは半分以上行く気になってる、ってことだ。「急げ急げ」と独り言をつぶやきつつ、山頂標識を目指す。

09:52
ここにも祠。
時間がないので、お参りは省略。富士社、だったかな。

ここにも。登山道沿いに2つ。

09:54
標識を見ると、恵那神社本社、と書いてあった。
慌てて立ち止まり、ご挨拶をする。
何が祀られているのかと思ったら、イザナギとイザナミだった。

09:54
恵那神社本社を過ぎてすぐのところが、広場になっていた。真ん中にやぐらが建っている。その周囲にはベンチ。
どうやらここが、もう一つの山頂であり、僕が目指していたゴールになる。

これだよこれ、三角点。
こいつのために往復20分。あーあ、ちゃんとバスに間に合うかなぁ。

09:55
一応記念写真を撮っておく。眺望が何も無い山頂標識。
そういえばさっきの岩場には山頂標識は(当たり前だけど)なかったので、ちょうど良い記念になった。
「恵那山」と書いてあるけれど、その下に「胞山(えなさん)」とも書かれていた。ああ、なるほど、「えな」ってそういうことか。
死産した赤子や、胎盤といった出産前後に母体から出てくるものを「胞衣(えな)」と呼ぶ。僕が昔住んでいた家からそう遠くないところに、この胞衣を処理する工場があったので記憶に残っている。
工場の中は当然見えないのだけど、規模が小さく、近代的な建物とは言い難い外観だ。どうやら、焼却するのではなく薬品で溶かして処理するらしい。
それはともかく、ここに建っているやぐらには僕は足を踏み入れなかった。時間があまりに差し迫っているのと、やぐらの上に別の登山客がいたからだ。
この登山客は見慣れないので、どうやら広河原ルートからやってきたっぽい。通行止めだと聞いていたが、どうにかして広河原からでも登ることはできるようだ。

10:02
「平地はできるだけ小走りでいこう」
と言いつつ、山頂標識から山小屋のところまで戻ってきた。
この地に建つもう一軒の建物は、トイレ。

天照大神の胞衣をこの地に収めたので、「恵那山」という名前がついた、という由来が改定あった。

10:03
山小屋前の広場。ピクニックでお弁当を広げるにはもってこいの場所だ。
さあ、今から猛烈な勢いで下山しなくては・・・と思うのだが、そのためのエネルギーが足りない。ついでに、ザックを軽量化したい。
時間が惜しいけど、ここでお昼ごはんを食べよう。今後のためにも、栄養補給をしておかないと。

で、矢場とんのわらじかつ弁当ですよ。
いやぁ・・・こんな疲弊しているときに、これかぁ。
わらじかつは大好きだけど、今ここで食べたいわけではない。

苦笑いをしながら、食べる。
食べても食べてもなかなか減らないのには、閉口した。急いでいるんだよ、おい!
しかも食べ終わったら、これから厳しい運動をするにもかかわらずお腹いっぱいだ。弁当チョイスを間違えた。まさかこうなるとは思っていなかった。

10:24
水も捨てよう。まだ水筒には紅茶がある。水は端的に荷物を重たくする存在なので、いらないものを持ち歩きたくない。
ばっさり、プラティパスの水は全部廃棄した。
万が一、水筒の紅茶でも足りないということになったら・・・?大丈夫、まだノンアルコールビール350ml缶が3本もある。
荷物が多すぎだ。トレーニングをやっているみたいだ。

10:28
当初計画より約55分遅れで、下山を開始する。
遅くとも、あと3時間40分後にはヘブンス展望台についておきたいが・・・下山でどれほどペースを上げられるかどうか、次第だ。
(つづく)
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