
13:10
せっかく眺めの良い千両山が見えたというのに、登山道は標高を下げ、茂みの中に入ってしまった。
そうだった、鳥越峠を越えていかないといけないのだった。
そこからの登りがキツいキツい。だいたい標高150メートルくらいを一気に登らないといけない。本当に恨めしい。
やった!千両山だ!と思ったあとなので、この仕打ちには本当にまいった。

13:40
鳥越峠から30分かけて、ようやく千両山に着いた。あれだけ近そうに見えたのに、こんなに時間がかかるとは。
ようやく、富士見台高原的なのどかな笹野原に着いたというのに、気持ちはまったく満たされない。

あまりにしんどくて、肩で息をしているおかでん。
一気に老けてしまい、60歳を越えたおじいさんに見える。
この時点で当初計画から50分遅れ。とはいえ、さすがに体力が続かないのでここで一旦休憩をとる。
バッファがどうたら、とか標準コースタイムうんぬん、というのはこの際もうどうでもいい。厳然たる事実として、15時にはロープウェーで山麓まで下りていて、送迎バスに乗れないとアウト。残り、あと1時間20分。やっべえええええええ。

13:44
ここから、神坂峠を目指さず、南に向かう尾根道を歩く。ヘブンス展望台を目指すためだ。
神坂峠に行ったってバス便はないし、時間の無駄だ。自力で展望台まで歩いていかなければ。
ここからしばらくは、まるで牧場の中を歩いているかのような快適な道。
家族や友達同士で歩いている、ハイカーを何組も見かけた。富士見台高原散策に続いて、この道を歩いて一日を過ごすのもきっと愉快だろう。
でも僕にはそんな余裕がない。早歩きで、先を急ぐ。

13:51
尾根道は1,689m峰を避けるように直角に曲がり、一気に下って車道にぶつかる。

さあ、ここからはバイパス道と思え。足場が良いのだから、体力の限界まで前へ前へ。
2本のストックを、ノルディックウォーキング用のポールのように使ってどんどん体を前に押し出していく。

13:57
「やあ、カラマツ綺麗だなあ」と記号的に褒めて、写真を撮って、そのまま歩き続ける。心底綺麗だなんて思ってない。思う余裕がない。

14:01
車道の分岐。右に曲がる道があるが、ゲートが閉まっていて車は先に進めない。
後で知ったのだが、このゲートが閉まっている林道の先をずっと進むと、広河原登山口につながっている。
このため、神坂峠に車を停めて恵那山山頂を目指し、広河原ルートで下山したのちに林道を歩いて神坂峠に戻るというやり方があるらしい。
広河原登山口から神坂峠まで、決して近くはない。でも、あるきやすい林道だったら随分時間の省略ができるのだろう。
または、僕のような公共交通機関利用者なら、広河原登山口に下山して、ヘブンス展望台に向かうというのもありだ。
いずれにせよ、広河原登山口がちゃんと通行できれば、の話だが。2022年時点では、公式見解としては通行止めだったので無理だった。

林道分岐の先、やや上り坂になる。最後の最後で試練を与えるなぁ。

14:09
分岐が現れた。
右の砂利道は、昨日バスで通った道だ。道を通れば間違いはない。
しかし、左の、上り坂を伴うルートの方に「ロープウェイ リフトのりば」の看板が置いてある。さあ、どっちを信用しよう?
疑心暗鬼になりながら、左のルートを取った。

14:10
あ、そういうことか。
左のルートをちょっと進むと、そこはまさにヘブンス展望台だった。
この展望台のすぐ直下が、リフト乗り場。
やった!ようやく文明の利器で移動できる場所まで戻ってきた!

14:14
リフトに飛び乗る。
リフトで良かった。これがケーブルカーとか大型のロープウェーだと、「20分間隔で運行」なんて呑気なダイヤで、随分イライラするところだった。
リフトのなにがいいって、30秒に1本くらいの高密度ダイヤだということだ。

リフトに乗ったからには、あとは文明の利器に身を委ねるしかない。もう、これ以上時間の短縮のしようがない。
バスの出発まで残り45分。
一応、当初計画では「山麓からのロープウェーは所要時間30分、リフト2本で合計30分と想定して合計1時間」という試算にしていた。しかし実際はそこまで時間がかからないので、残り45分ならギリギリ間に合いそうだ。本当にギリギリだけど。
ヘブンスそのはらのセンターハウスあたりが見えてきた。

14:21
間髪いれずに2本目のリフトに乗り換える。
まだ14時。のんびりとした昼下がりでくつろぎたい時間帯だというのに、なんで僕はこうも焦っているんだ。

14:25
おい!このリフト、すごく遅いぞ!
隣の遊歩道を歩いている人の方が先に進んでいくじゃないか。しまった!
疲れた足にはこの休息時間はありがたいんだが、もう大詰めの場所まで来ているんだ。休んでいる場合じゃない。はーやーくーしーてーくーれー。

14:29
リフトを下り、ロープウェー乗り場にやってきた。よかった、まだあと30分ある。
そして、ロープウェー乗り場に待ち行列がない。すぐに乗れるぞ。
これが週末だったら、長い行列ができていて、その結果間に合わないことになりそうだ。今日が月曜日で良かった。

14:32
ロープウェーに乗車。残り28分。
乗って、早速バスのチケットをスマホで決済する。園原から名鉄バスセンター行きの高速バスだ。予約は済んでいたのだけど、決済は万が一の予定変更を想定して直前に行うつもりだったからだ。
しかし、富士見台高原界隈では携帯電話の電波が殆ど入らなかったことから決済ができず、ようやくロープウェーに乗った時点で電波が安定した。
で、いざ決済しようとしたら、もう時間が過ぎているので決済できない、というエラーメッセージが出たので顔が青ざめた。しまった。これだと、15時の送迎バスに間に合っても、後続の高速バスに乗車できなくなってしまう。
慌ててバス会社に電話をし、事情を説明したら「大丈夫でございます」と力強く返事をもらえた。車中で決済はできる、とのこと。ああ良かった。
ちなみにこの手の高速バスって、県をまたいでの運行なので複数のバス会社の共同運行便となる。なので、困ったときにはどっちのバス会社に電話をすればよいのか、一瞬困る。

14:39
これでようやく一段落。
あとはロープウェーが途中で止らないことを願うばかりだ。
背中に3本もまだ背負っていた、ノンアルコールビールの1本を取り出し、祝杯を上げる。ギリギリ、間に合ったっぽい。

14:54
よかった。約20分でロープウェーは山麓駅まで僕を運んでくれた。15時の送迎バスに無事間に合った。
最後、ロープウェー乗り場前で禁煙撮影。
記念撮影をしている間に、送迎バスの運転手さんが「バスに乗る方ですよね?」と僕に確認をするため、近寄って来た。僕が最後の乗客だったらしい。

14:55
送迎バス出発5分前、到着。
本当にギリギリだった。どこかでペースを落としたり、どこかで休憩を長く取ったりしていたら間に合っていなかった。あと、ロープウェー乗り場が混んでいなかったのも助かった。
千両山からヘブンス天文台までの道は、我ながら脅威のスピードで歩き、標準コースタイム(YAMAP基準)の2.1倍のペースで歩いたことがわかった。そこまでオーバーペースにならないと、時間に間に合わなかったはずなので、最後の最後で馬力が出て本当に助かった。
(つづく)
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