香港食べ歩きで人間北京ダック一直線
日 時:2004年(平成16年) 04月16日~19日
場 所:香港
参 加:おかでん、ジーニアス(以上2名)
おかでんにとって最初で最後の海外旅行が、ジーニアスと一緒に行動した「アメリカ食い道楽で肝臓フォアグラ一直線」ツアーだった。他にも海外旅行への誘いというのは何度かあったのだが、国内旅行スキーなおかでんのため、実現に至っていない。
さらに、おかでんの財政難も海外というダイナミックな行動を抑止していた。これまで「貯金」という概念が無かったおかでんは、旅先で散財しまくっていた。使いたいだけ使う、それが信条だった。しかし、車を所有するようになってからは、「通常通り旅には出るが、旅先での散財癖がおとなしくなった」状態になった。さらに、今年1月から社員寮を出て、自己解決で家を借りるようになってからというものは、「旅すら控える」ようになってしまった。どんどん、身動きがつかなくなってきたのだ。
会社からは「住宅手当」が月に数万円支給されるのだが、なんとこの支給は6月と12月の年に2回のタイミングだったのだ。よりによって、1月に引っ越ししてしまったため、半年もの間住宅手当無しで生活しなければならない羽目になってしまった。これは大きな誤算だった。
こんな状態で、まとまったお金を必要とする海外旅行に行けるか?いや、行けない事はないのだが、気分的に乗り気になる訳がない。
と、ここまでが前置き。
どっちにせよ、アンタ香港に行って来たんでしょ、早く報告しなさいよ、っていう声が聞こえてきそうだ。
ぎくっ、何で僕が香港に行ったって事を知ってるんだ。親にも内緒で事後報告だったというのに。
いや、アンタだってこのページのタイトルに「香港遠征」って文字が入ってるじゃないの。
・・・ああ、そうか、なるほど。
事の発端は、ジーニアスから「またアメリカ行った時みたいに海外行きたいよな」と打診があったことだった。まあ、確かにあれは楽しい企画だったし、機会があればまた行ってみたいもんだ、ということで「そうだよな」と返事しておいた。
しかし、それからが急展開で、とんとんとーんと話が展開していって、香港行きが決まってしまった。おかでんとしては、香港なんて全くノーマークで、行きたいと思ったこともない場所だ。ジーニアスから提示されるアイディアに相づちをうっている間に、気がついたら旅行プランの外枠ができあがってしまっていた。「あれれ」とあっけにとられている間も無かった。
もう、決まった以上は無理矢理テンションを上げていくしかない。「地球の歩き方」を購入し、何やら受験勉強のような気持ちで現地情報を収集しはじめた・・・その矢先、ジーニアスから「もう自分の飛行機チケット買ったから、おかでんも早くチケット抑えておくように」なんて連絡が。「おいちょっと待て、こっちはココロと金銭的準備ってもんが」と抵抗する間もなかった。このままでは話が前に進まないと思ったジーニアスの作戦勝ちか。
航空券を確保した時点で、ようやく踏ん切りがついた。ああ、本当に香港に行くんだなぁ、と。いざ海外に行くことが決まれば、いくらお金が無いとはいえ工面はどうにでもなるもんだ。さあ、旅の準備でも進めていきましょうかね。
・・・と思っていたのだが。これが案外難航したんである。
地球の歩き方「香港・マカオ編」をひととおり読んでみたのだが、さっぱり頭に入ってこなかった。香港は、ご存じの通り林立する高層ビルと、看板の洪水に象徴される雑然とした街。即ち、街そのものが見所となっている。だから、ガイドブックには、それぞれの街について紹介記事がかかれているのだが、どれも同じように読めてしまって困った。普通のガイドブックといえば、やれ○○の滝だの、○○跡、といった名所旧跡が紹介されているものだ。しかし、この香港ガイドブックに関して言うと、「歴史」「自然」を感じさせるものはほとんど存在せず、今現在の香港の町並みそのものを紹介しているわけだ。わかりやすく日本に置き換えてみると、「池袋」「新宿」「渋谷」と、繁華街の紹介記事が延々と書かれているようなもんだ。
いざ現地に赴いてみたらきっと面白いのだろうが、ガイドブックからだとその街ごとの違いがよく理解できなかった。もっと言えば、「香港、本当に面白い街なんか?」という疑念すらわいてきてしまった。今回、3泊4日の行程を組んだのだが、本当にそんな日程が必要なのかどうかも、怪しく思った。
しかし、過去2回香港に行ったことがあるジーニアスは、自信を持って「面白い街だ」と断言する。「おかでんもきっと面白いと思うはずだ」とも。
結局、街そのものにはあまり理解できなかったので、ジーニアスと相談の結果今回の香港ツアーの趣旨は「A級からB級まで食いまくるぞ企画」という事で落ち着いた。なるほど、食べ歩き企画だったら十分におかでん自身のモチベーションを高める事ができる。
検討の上、現地ではこれは食べよう、という事を事前に決めておいた。
・ふかひれ ・あわび ・燕の巣 北京ダック ・四川料理 ・飲茶(2店舗) ・屋台料理 ・雲呑麺 ・粥 ・ガチョウのタレ煮 ・蛇スープ ・亀ゼリー ・スイーツ
フカヒレといったA級ものからデザート類、蛇スープといったげてもの系、そして雑然とした屋台でのB級もの。とりあえず香港の上から下までをどん欲に楽しんでやろう、というわけだ。
とはいっても、全日程3泊4日で、朝昼晩食べるとなると全部で9食しか機会がない。とてもじゃないが食べたいものを食べきれそうになかった。
「一回あたりの量少な目で、数をこなすしかないな」
とジーニアスは言う。そして、こっちをまっすぐ見据えながらこう付け加えた。
「おい、前回(アメリカ紀行)の時みたいに『残さず食べよう』なんてすんなよ。確実にパンクするからな。食べられるわけないでしょ、こんなにたくさん。注文しすぎないこと、量が多かったら残すこと」
「へーい」
しぶしぶ了解する。
そんなこんなで、迎えた4月16日。いよいよ、出発の日を迎えた。
2004年04月16日(金) 1日目
朝8時。成田空港第二ターミナル。大阪在住のジーニアスだが、今回はちょうど出張が絡んでいたため、おかでんと同じ成田から出発することができる。 出発ロビーにて待ち合わせ。
今回はJAL便ということで、前回のユナイテッドみたいな「悲惨な食事」は出てこないと聞く。それはそれで、少々物足りなく思ってしまうのはおかでん人生30年、いまだ大人になり切れていない証拠か。
「いや、だってさ、『有名シェフ、 マーティン・ヤンの作品です』なんて大げさな前振りで出てきた料理があちゃーッ、っていうあの落差。今でも鮮烈に覚えてるもん。せめて機内ではそれくらいのインパクトを与えてくれなくちゃ」
「馬鹿言うな、俺ヤだぞそんなの。何で金払ってまずい料理食わないといかんのよ」
「いや、別にまずい料理を食いたいって訳じゃないんだけどね、ほら、旅のスパイスというかなんというか、マーベラスな何かが」
「その点じゃ、JALは普通だぞ、お前ががっかりするくらい、普通だぞ」
「ああ、やっぱりそうなのか」
ここで飛行機をドラゴンエアにしておけば良かった、とか余計な事を考えちゃ、いけない。
最近はeチケットということで、空港にチケットを持ち込まなくてもOKなんですねぇ。感心しました。しかし、チケットの変わりになるPDFファイルを印刷したものをカウンタまで持参しなくちゃいけない訳で、結局紙媒体を持ち歩くという点においては何ら変わりがない。イマイチメリット感が薄いような。
「ホンマにこんな紙切れでチケットと引き替えてくれるんかいな」と疑心暗鬼になっていたが、ちゃんとボーディングチケットに交換してくれた。ま、当たり前か。手にしたばかりのチケットを手に記念撮影。
出国審査ゲートを通過したところで、日本脱出記念の写真でも撮っておこうか、と言うことになった。「おい、ガッツポーズして『今まさに通過してきました』って格好してみ」
「ガッツポーズしなくちゃいかんくらい難関だったんか、この出国審査は。僕ぁどんな悪い事したんよ、日本国内で」
「いいから、ほら、そこ立って」
しかし、この時おかでん所有のデジカメは調子を悪くしていた。海抜0mから3000m強まで常におかでんと行動を共にし、雨の時でも平気で三脚に据え付けられてセルフタイマーをやらされるデジカメだ、長持ちはしない。過去、大抵1年ごとに買い換えていて、早これで5代目を迎えている。
その5代目も、そろそろ終焉の時を迎えつつあるようだ。CCDの回路がイカレてきているようで、画像が全てピンク色になってしまう。人生バラ色、とは聞こえがいいが、せっかくの香港旅行だ。何が悲しくて全部の写真がどピンク色に染まらないといかんのよ。よりによって、旅行前日になって障害が発生してしまうとは何とも因果だ。
その壊れかかったデジカメだが、側面をコンコンと何かにぶつけてやると機能が回復される事が昨日からの経験則で分かっていた。まるで「ドラえもん」に出てくる野比家のテレビだ。右斜め30度でチョップを入れると、写らなかったテレビが回復するという・・・。
「まて、またデジカメの調子が悪い。ちょっと叩いてから・・・」
と、近くにあった壁にデジカメをたたきつけようとして・・・寸止めでストップした。
「危ない!あともう少しで、出入国管理官のいるブースにデジカメをぶつけるところだった」
「連行されるぞ、変な事やってると」
出発までまだ随分と時間があった。免税店は思ったより狭く、大して見るものはない。「コーヒーでも飲んでるか」という話になり、コンビニのような売店に向かった。
「ぬお。び、ビールがあるではないですか」
「そりゃそうだろ、別に珍しくないぞ。・・・飲むのか?」
「いや、飲まない。今飲まなくても飛行機の中で飲める」
「そうは言っても、飲みたいんだろ?飲んじゃえよ、まだ出発まで時間があるし」
「・・・。」
缶をむんずと掴んだまま、苦悩するおかでん。
結局、ビール缶を握りつぶしそうになるまで力んで苦悩して、「やめとく」と決断。何しろ、これから香港で食べまくらないといけないのだ。胃袋のキャパは全然問題ないが、体重が激増してしまうのは非常に悔しいところ。こんなところでビールを飲んで、余計なカロリーを摂取するのは得策ではない。ノンカロリーのブラックコーヒーを、渋い顔をして飲んだ。
飛行機に搭乗し、日本を後にした。ボーイング747型機で我々の座席は二階席だった。ジーニアスは言う。
「ツアー旅行だと絶対こんな席に座れないよな。エコノミーといっても、どの席も一緒って訳じゃないんだぜ、俺らみたいな正規料金を払ってるヤツの方がいい席に座れる。前の方で、窓側で。こういうの、すごく合理的でいいよな。会社にとってお金を落としてくれるお客さんには優遇する、っていう姿勢。」
非常にごもっともだ。確かに、二階席は快適だった。座席数が少ないので、フライトアテンダントのサービスも素早い。しかも、窓側に荷物を入れるボックスがある。
・・・とか感心しているうちに、各シートに用意されている液晶TVでは「ラスト・サムライ」の上映が始まった。しばらくそっちに気をとられ、無言になる。
さて、お待ちかねの機内食タイムがやってきた。はっきり言って、これ目当てで飛行機に乗っていると言っても過言ではない。
・・・それは過言だろう。香港に行くために飛行機に乗ってるんでしょうが。
うむ、まあ、そうなのだが。
まずは、ドリンクのオーダーがやってきた。さすがに朝9時45分発、現地13時15分着予定の便だけある。周囲の乗客は「お茶」だの「オレンジジュース」だの気合いが大いに欠如しとるメニューを注文していた。
アテンダントが「お飲物は?」とおかでんに聞いてきたので、自信たっぷりに「ビール、お願いします」と答えてやった。どうだ。
いや、別に「どうだ」って自慢されても。
隣のジーニアスは、白ワインを注文していた。お酒を注文した人には、おつまみの小袋が一緒に提供された。これ食って飯時までしのいでいなさい、ということか。
お酒がそろったところで、記念撮影をしておく。
「ううむ、いい画が撮れた」
多分、同じ飛行機に乗っている人で、こんな写真を撮った人は一人もいないんだろうな・・・。
おっと、忘れちゃいけない。外観の写真だけで満足しちゃいかん。おつまみの中身も撮影しておかないと・・・。
やりすぎか?
「そんなん撮ってどうすんのよ」とジーニアスから正しすぎる指摘があったが、なぁに旅の記憶ってのは案外こういう細かいディティールが重要だったりするのですよ。
数年後、ピーナツやおかきを食べるたびに甦る、香港旅行の楽しい思い出・・・
おかきで呼び覚まされるような旅の記憶って、何か安っぽくてイヤだ。
では、高度1万メートルの上空からコンニチハ、ってことで乾杯。
「これからの旅の安全を祈念して、乾杯」
ここで言っている乾杯の前口上は、格好つけるためだけにしか意味が無く、要はビール飲めればそれでいいっていう卑しい根性をオブラートでくるんでいるにすぎない。
「むむ、なかなか結構なお点前で・・・」
早くもご満悦。
「何しろ、トイレが近くなってもいいように、敢えて眺めの良い窓側じゃなくて通路寄りの席にしたんだからな、僕は」
「アンタそんなことまで考えてんの?凄いっすねえおかでんサン」
「今日はこれからの行程を考えてお酒をセーブするので、『通路寄り』の席にとどめているんだけど、帰りの便はセーブする必要がないのでお酒の量が増えることが予想されるんよ。だから、通路 すぐ脇の席を設定した」
「そこまでせんでも。アンタそんなに飛行機のただ酒に飢えてるのか、って感じだぞ」
白ワインをたしなむジーニアス。
「これ、あげる」
と、ぽんと自分のおつまみミックスをおかでんに投げてよこした。「どうしたんだ、一体」と聞くと、
「いや、これから先の事を考えると、今のうちに控えておかないと」
と先を見据えた堅実な発言が。
「ほぉー、計算尽くだねえ」
「だってよ、よく考えてみ。今日この後どれだけ食べる事になってるかわかってるのか?まず機内食だろ、そして香港着いてから今日はフカヒレ食べて、亀ゼリー食って、そして屋台で軽く何か食べようって話になってること忘れてないだろうな。こんなところでおなか膨らましていたら、とてもじゃないがこの後食べられんぞ」
「むぅ、なるほど。おかきごときで腹を膨らませるわけにはいかん、というわけか。言われてみれば、結構このおかきって腹にたまるよなあ・・・」
「ほら。悪いことはいわないからやめとけって、おかき食うの」
なるほど、と思って途中でおかきを食べるのはやめにした。しかし、手持ち無沙汰になってしまったので、ついつい「あともう一個」と食べているうちに、結局一袋食べきってしまった。少量の割には、結構おなかが膨れた。旅の初っぱなから失態。
さて、お待ちかねの機内食ターイム。
と、気合いを入れているのは機内でお前だけじゃ貧乏人、と自らを辱めるようなツッコミを入れつつ、メニューを眺める。
東京→香港便のお食事は以下のとおり
・かじきまぐろのグリル イタリアンソース 又は 牛肉とじゃが芋の旨煮 山菜御飯添え
・スモークサーモン シーフードマリネ ポテトサラダ
・フレッシュサラダ フレッシュドレッシング
・アロエヨーグルトゼリー
・ロール バター
・コーヒー 紅茶 緑茶
なるほど。「chiken or beef」じゃなくて、「fish or beef」なのだな。さあて、どっちにしようか・・・。飛行機に乗る前から空腹で、本当に機内食が楽しみだったのだ。物足りなかったら、お代わり注文してもいいだろうかしらん。
「何せ、昨日とくらべて体重1kgも絞ってきたからな、食事制限で。今朝も何も食べてないし」
「1日で1kgも痩せるって・・・。ゾウみたいに普段は食べてるのか、アンタは」
こちらはジーニアスが選んだじゃが芋の旨煮。
そしてこちらが、おかでんが選んだかじきまぐろ。
旨煮の方は御飯もので、こちらはパスタだった。
御飯にせよパスタにせよ、主食となる食材があるにもかかわらず、それとは別にパンが配膳されているのが面白い。各自の食事の嗜好に対応すべく、パンも付属させたのだろうか。
トレイ上部の中央にある小鉢がフレッシュサラダなのだが、レンコンが入っていてややびっくり。「フレッシュサラダ」と聞くと、トマトであるとかレタスといった定番の瑞々しい野菜を思い浮かべるが、蓮根というのはその連想の中には入ってこない。勉強になりました、今後は「フレッシュサラダ」の範疇にレンコンも入れておきます。
「どうだ、お味の方は」とジーニアスが水を向けてくる。
「いやぁ・・・どうだ、と聞かれて回答に困るくらい、普通だな。もちろん、そんなにおいしくはないんだけど、欠点が見あたらない。10点狙いの料理、というよりかは減点法でマイナスがつかないよう注意した料理、って感じ」
ジーニアスはパンを半分ほど食べたところで食事をフィニッシュした。
「当然でしょう、この後のおいしいものを、こんなパンの為に食べられなくなるなんてイヤだからな俺は」
ごもっともです。しかし、おかでんの手元にはきれいさっぱり食べきってしまった料理のトレイが。まあ、いいや。
食事ついでに、おかでんも白ワインを一本頂く。香港到着前からオーバーペース気味。
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