2005年01月21日(金曜日) 2日目
二日目の朝。日本から時差2時間なので、少々体内時計が狂っている。
そんな体内時計を修正するのが、メシですよメシぃ。昨晩に引き続き朝もバイキングなので、さて一体どんな料理があるか楽しみ。まさか、昨晩と同じタイスキが朝にも!なんてことはあるまい。
朝食会場は欧米人率多し。高級ホテルゆえに、地元タイの人はあまり泊まらないようだ。そのせいでか、トラディショナルな料理はあまりなく、西洋風な料理率高し。で、欧米の方たちはパンとかベーコンとかそんなのばっかりお皿に盛っている。せっかくタイに来たんだから、それっぽいものを食べればいいのに、と思う。案外欧米人って食に対しては保守的。その点、日本人は節操なく・・・と言ったら言葉が悪いが、大抵のものは好奇心とともに食べる事ができる。そういう点では日本に産まれて良かったと思う。
写真はおかでんセレクトの朝食。朝から食べすぎだ。いや、これでも自省した方デスヨ?本心を言うと、ビュッフェ形式だったら全種類取らないと気が済まない性格なもんで。
一応、タイ風といえば米の麺と魚団子が入ったスープに唐辛子ぶっかけ、という料理程度。パクチー取り放題だったら、それだけで一皿盛っていたところだが、そんなナイスな料理は存在しなかったのが惜しい。
おや。
ここにもJCBのロゴが。閉店のお知らせ札にもJCBとは。
よっぽどJCB信仰が篤いようだ。
トイレの便座のロゴマーク。「COTTO」だって。
多分これ、TOTOを意識したな?
ガイドさんのお迎えを受け、二日目の行程開始。
これまでの時間、今日何をするか把握する余裕は十分にあったはずだが、相変わらずおかでんは何にも予習できていない。目の前に広がるタイワールドに圧倒されており、それを脳内で咀嚼するのが精いっぱい。とてもじゃないがこれから先のことなんて見通せない。
しまったなあ、事前に予習しておけば良かったなあ、とぼやくが後の祭り。
朝、通勤ラッシュなのか道路は大渋滞。いや、通勤ラッシュだろうがなんだろうが、バンコクは常に渋滞しているのだが。
面白いのが信号で、青-黄-赤という3色信号と思わせておいて、実は赤信号でも進むことができるのだった。そのかわり、矢印が表示される。非常に紛らわしい。そうかー、右ハンドル左車線ということで日本と同じ、と油断していたが、こういうところはさすが異国。
リバーシティ、というショッピングモールのようなところで車を降りた。これから水上マーケットを見に行くのだという。
ほー、水上マーケットか!船に売り物をたくさん積んで、売っている光景はテレビで見たことがある。タイだったか別の国だったかは覚えていないが。なるほど、だから朝イチでそこに向かうのだな。昼下がりじゃマーケットはきっと終わっているだろう。
ここからは船に乗って現地に向かう、ということだが、まだその船が来ていない。しばし川辺で待機。
リバーシティにシーフードレストランがあり、そこの水槽には手長海老がいっぱい。しばし手長海老とジャンケンして遊ぶ。10回やって10回勝てる。ちょろい相手だぜ。でもこの細長い手で、一体何を食べてきたんだ?まさか、溺死体を食べてたりしないだろうな。ガイドさんの話を思い出すと、やや薄気味悪い。
バンコクを分断するように流れるチャオプラヤー川。非常に濁っておりあまりきれいな川ではない。そこをやたら細長い船が頻繁に行き来している。船は細長くないと駄目、という法律でもあるかのようだ。
川の対岸に、ところどころ超巨大な建物が建っている。ガイドさんに話を聞いてみると、あれらはすべて高級ホテルだという。どうやらバンコクにおいては、リバーサイドまたはリバービューの立地が好まれ、そこに高級ホテルが建つらしい。バンコク中心部からやや離れてしまうが、それを差し置いても魅力的な場所なのだろう。
おっと、しばらくしたら船がやってきたぞ。これも細長い船で、雨避けの屋根付き。側面には水しぶき避けのビニール完備。
てっきり乗り合い水上バスに乗るのかと思ったが、わざわざわれわれ用に貸し切りとなっていた。すごいぜいたくした気分。いや実際ぜいたくだけど。ツアー客が他にいないってなんて素敵なんだろう。
タイ人は信仰が篤いからか、花が好きなのかわからないが、やたらと花輪をあちこちに飾る。車のルームミラーにぶら下げたりするし、船には舳先の部分に掲げてある。多分お守りの意味があるのだろう。
造花かと思ったら、生花だというのでちょっとびっくり。頻繁に買い換えなければいけないではないか。この国、花屋さんは繁盛する商売だろう。
チャオプラヤー川沿いにお寺がたくさんある。船着き場からそのままお寺に入れる作り。今でこそ車が交通機関の主流だが、昔は水運がメインだったんだな、というのがよくわかる。
「ほら、あっちにも」「こっちにも」
と右から左からお寺が出てくるので、なんともせわしない。どれも見応えがある景色。
神社仏閣に恵まれている日本人でさえ「おおおう」と思う景色なのだから、西洋人が見たらさぞかしエキゾチックに見えることだろう。ちょっと嫉妬。東京にこんなフォトジェニックなところがたくさんあればいいのに。
京都はその点神社仏閣に恵まれているが、こうやって川をボートで進みつつあれもこれも、というわけにはいかない。
タイ風の派手派手とんがりまくりの寺院とは違う、玉葱のような建物も発見。
「あれは?」
「あれはイスラム教のお寺ですねー」
そうかー、イスラム寺院もタイ寺院に倣って川沿いに作るのかー。
なにやら、立派な倉庫のようなものがある。よく見ると、金色の紋章もある。すわ、水戸黄門か?
聞くと、あれは水上警察の艇庫なんだと。へー、そんなものがあるんだ。
日本だとさしずめ海上保安庁ということになるのだろうが、川の治安を守る組織があるというのは日本とは大違いだ。水上交通が盛んな国なので、川の専門部隊がいないといけないのだろう。日本にはそういう発想はないなあ。
日本の笑い話として、溺死体が川を流れてきて、その川がちょうど県境だったものだからお互いの県警が棒で相手側に押しやって、自分の県で処理しなくて済むように頑張ってた、というのがあるが、ここタイではそういうのはないのだろう。
船はしばらく走っていくとチャオプラヤー川の支流に入っていった。
そこから先は、民家が川にせり出しているような風景が続く。今にも川に落っこちそうだ。・・・いや、違う、川の上に家が建ってるぞ。ウッドデッキの上に建つリバーサイドハウス、といえば聞こえは良いが、そんなハイソなイメージとは異なる、庶民的民家。
多分、「大地の上に土地を買って家を建てるのは金がかかる。だったら金がかからない川の上に家を作っちゃえ」という発想なのだろう。「作っちゃえ」で本当に作っちゃったんだからすごい。で、それを取り締まらない行政もすごい。タイ的には有りなんか、これ。
時間の経過とともに、土台となるウッドデッキが朽ちてしまい、家がずどんと川に落っこちそうだが大丈夫か?補強するにしても結構面倒だぞ。
「トイレはどうしているんですかね?」
「そのまま川にしてますよ」
ああ、やっぱり。
そりゃあ、天然の水洗トイレではある。ではあるが、排泄物垂れ流しの川というのは日本人の感性からいったらあまり気持ちの良いものではない。でも、そんなこと言ったらこの国の何割が「天然水洗トイレ」を使っていることやら。あまり深く考えるのはよそう。魚料理が食べられなくなる。
それぞれの家には階段がついていて、そのまま川に下りることができるようになっていた。どうやらここに船を横付けして、すいすいと移動自在というわけだろう。なるほど、こういう家がたくさんあるからこそ、「水上マーケット」という商売が成り立つのだろう。大地に住んでいる人がわざわざ船に乗って水上マーケットに行く、なんて面倒なことはしない。
じゃあ、もうそろそろ目的地の「ワットサイ水上マーケット」到着かな。
われわれの乗る船の速度が落ち、ゆっくりと水上民家の様子を眺めていたら、予定調和のように岸から船がやってきた。すわ、海賊か。
その海賊船は、なんの抵抗も受けずにわれわれの船に横付けし、「さあいろいろいいものがあるよ」と商売を始めた。
えっ、これが「水上マーケット」っすか?
いやいやいや。
売られているものは観光客向けの土産物ばかり。可愛くない人形、微妙なストラップ、箸、絹の手ぬぐいのようなもの、その他諸々。
これがリアル水上マーケットだとしたら、この地域の人は土産物を今晩のメシにでもしているというのか?違うだろ。おかでんがイメージする水上マーケットとは、狭い川いっぱいに船が並び、果物売っていたり肉や野菜売っていたり、中には麺をその場で調理して提供していたり・・・というものだ。でもこれ、明らかに観光客相手であり庶民感覚ゼロ。
築地市場が朝早くに活気があるように、ここも早朝に来ればまた違った光景なのかもしれん。われわれは出遅れたか。だとしても、せめて観光客受けするように「それっぽい演出」してくれよなあ。後にも先にも、この一艘とあともう一艘来ただけ。これじゃあ、日本でも「観光川下り」をやっているところでよく見かける光景だわ。あっちの方が、まだ甘酒売ってたりお菓子売っていて楽しいわ。
後で知ったのだが、このワットサイ水上マーケットは数あるタイの水上マーケットの中でも駄目な部類に入るらしい。もっと楽しい水上マーケットはタイから数十キロ離れたところにあるとのこと。そこは政府の肝いりで力を入れており、結構楽しめるらしい。ただし、そのツアーに参加した場合、朝6時過ぎに集合だったり、バスで1時間以上揺られたのちに小舟に乗り換えて現地入り、と結構ハードとのこと。
しょーもない土産物なんて売らないで、ちょっとつまめる食べ物を売ればいいのに。
おっと、食べ物、あったぞ。食パン?いらんいらん、なんでこんなものを売ってるんだ。朝早くホテルを出たでしょうから、これで腹を満たせって?いやもう僕ら十分朝はビュッフェで食べてきてるから。
と思ったら、ガイドさんがそのパンを丸ごと一個お買い上げ。2斤くらいあるけど、どうするんだそれ。朝ご飯食べる暇が無かったのだろうか。でも、食パンだけ食べてもきっついぞ。喉に詰まらせてガイド昇天、取り残されたおかでん一家は・・・というシチュエーションは困る。
横を通り過ぎていく船。
なんだありゃあ。エンジンが剥き出し。しかも、大友克洋が大好きそうなメカメカしたデザイン。あれ、船用じゃないだろ明らかに。
「自動車のエンジンを取り付けてますよ」
あ、やっぱりそうですか。それにしてもむちゃすんなあ。船頭さんが手にする舵に直結しているじゃないか。エンジンのごつさと舵が全然釣り合っておらず、面舵いっぱーいってやったらぽっきり折れそうだ。
モーターボートに取り付けてある小型のエンジンで十分なんだが、あんなものを取り寄せるより車をバラした方が早かったようだ。やることがワイルドすぎる。一体あれで何馬力でるのだろう。海上暴走族になれるぞ、あれだと。ドラッグカーならぬドラッグシップ。
しばらくしたら、船は一軒の水上建築の船着き場に停泊した。
「ここで休憩にします」
とガイドさんは言う。中に入ってみたら、うへー、想像したとおりで、お土産屋でござんしたよ。船が出発するまでの15分間はここでみっちりと店員さんの勧誘を受ける羽目に。何せ逃げ道はないもんなー。これ、日本だったら特定商取引法違反か何かになるんじゃないか。本人の意に沿わない形で密室で商売やったらアウト。ああ、でもマルチ商法じゃないからその法律は適用にならないか。
チキンおかでん、ついついここでお香を買ってしまう。まあ、お香は好きなので悪い買物ではなかったけど、なんかえらく高い金払った気がする。多分、相当ふっかけられたに違いない。
結局、水上マーケット見学という話だったが、単なる土産物船2艘と土産物屋立ち寄りだけというウソ丸出しなツアーでございました。まる。でも、チャーター船でチャオプラヤー川を遡上できたのは素直に楽しかったのでこれはこれでオッケー。それだったらさぁ、余計なこと言わないで、「船の上からバンコクの町並みをお楽しみください」とでも言っておけばよかったんだよ。
さて、帰り道、ガイドさんが先ほど買った食パンをごそごそと取り出した。
「このあたりは王様の土地なので、魚を捕まえることが禁止されていマス」
と言う。で、食パンを適当にちぎって川に投げ込むと・・・おおお、水面がわさわさと波打ちだした。何か黒っぽい魚がパン食い競争やっとる。
ガイドさんからパンをもらい、おかでん一家も投げ込んでみたら、あっという間に数十匹の生き物が殺到してきた。船が転覆しそうな勢いだ。
なんの魚だ、と思ったら、これ、ナマズ。ナマズ、パン食うんか。雑食だなー。
でも普段はアレだろ?人間の排泄物を・・・やめた。余計なことを考えるのはよせ。
お寺は大抵川に向かって建立されているが、ここのお寺は大仏様があっち向いてる。川からは背中しか見えない。「男は黙って・・・」と背中で語る職人気質。それにしても金ぴかで、目立ちたいのかそうでないのかどっちなんだ。
日本における仏様、というのは黒かったり青かったり、とにかく地味だ。年季が入って表面の塗装がはげたせいだが、こうやって金ぴかな仏様を見ると目がチカチカする。
水上マーケット(?)往路では素通りしたお寺に立ち寄り。
ワット・アルン。通称「暁の寺」。「ワット」が寺という意味で、「アルン」が夜明け、という意味になる。
さっき見た金ぴか大仏寺院などと明らかに作りが違う。タイ式ピラミッドというようなとんがり塔複数で構成されている。このお寺が建立されたのはアユタヤ王朝時代であり、なるほど古いわけだ。って、アユタヤ時代っていつだ。ええと、歴史の授業で習った「山田長政」がシャム(現在のタイ)で活躍してたのがアユタヤ王朝の時だから、ざっと400年くらい前、なのかな。
タイを代表する寺院ということで、これを見ずしてタイから帰るべからず、といって良いほどらしい。なるほど確かに非常に荘厳だ。
われわれの船はこのワット・アルンの前にある船着き場に停泊し、ここで船とはお別れ。お寺の中に入る。
入場料は200B。うへー、たっけぇ。完全に足下を見た価格設定。200Bがどれだけ凄いかというと、店によっては2時間マッサージが受けられるくらいの値段。この近辺の寺院が10B~20Bの拝観料であることを踏まえると、とんでもない値付けであることがわかる。まあ、それでも中に入るんですけどね。というか、ツアー料金の中に拝観料は含まれているし。
入場門から入ってすぐのところに、蛇使いの人がいた。「蛇を首にかけてみないか」と勧めてくる。は虫類とはあまり仲良くしたいとは思わないのだが、熱心な勧誘と「せっかくだから」という旅行者心理で、その申し出に応えてみることにした。一家を代表して、おかでんが挑戦。
そのときの写真がこれだが、ずしりと重い2mはある蛇を首に巻いたために顔がこわばってしまい、とてもじゃないが「良い旅の記念」の写真にはならなかった。顔が引きつってる。
で、さらに顔が引きつったのが、写真撮影が終わったところで「じゃ、200Bくれ」と言われたこと。おーい、金とるんかい。いやまあ、ちょっと考えれば無料なわけねーじゃん、と気づく訳だが、なにせ「ひゃー、ワット・アルンだ!」と感嘆しながら入場して舞い上がっているところに話しかけられたらうっかり口車に乗るわい。
しかも、こういうときに限ってガイド氏は何も助言をしないのだった。タイ人同士、観光業でメシくっている仲間意識があるのかもしれん。油断ならんな。んで、お金を要求する場面になって、ちゃんとそこは通訳するんだからもう。可笑しくってかなわん。さすがにこのお金はツアー料金に含まれていないので、自腹で。
人間どうしてこうも「とんがった建物」を建てたがるのかねえ。
エジプト、メキシコ、そしてタイ。文化の発展は別々でも、似たようなとんがり建造物を作る。日本はその点あまり尖ったものは作らない。せいぜい五重塔くらいか。木造建築が建物の基本だったせいもあるだろうし、台風がくる気候というのもあるのだろう。
それにしても大丈夫か、これ。ワット・アルンのあちこちが尖っている。強風が吹いたらぽっきり折れてしまいそうだ。先端恐怖症の人がいたら、あのとんがりを見ただけでおしっこちびるかもしれん。
遠目でこの建物を眺めていると、どうも目がチカチカする。何でだろう、と思って近づいてみると、壁一面に陶器が貼り付けてあるのだった。どうも、この寺院用にわざわざ陶器を焼いたものではなく、そこら辺にあったものをぺたぺた貼り付けました、といった感じ。それでも、遠目から見ると立体感ある仕上がりになっているのだからすごい。
もともと割れやすい陶器のこと。時間の経過とともに、あちこちが割れたり欠けたりしている。でも、少々欠けても全体の眺めにはほとんど影響しないという「細けぇことはいいんだよ!」作戦でこのお寺は成り立っているのだった。
コメント