日が暮れてきた。タイ滞在二日目夕食のお時間。
なんだかいろいろイベントが立て込んでいて、「あれ、もうメシか」という気分。そもそも、朝バイキング、昼食べ放題ときたので、途中間食なしでも全くおなかが空かないのだった。たらふく食べることは大好きだが、こりゃ旅が終わったら相当太るぞ。
夕食の店は、「ソンブーン」というお店。店の建物にはカニの看板が掲げられている。ここでは「トムヤムクンやカニカレーなどのタイ料理(パンフレットの言)」を食べるのだという。へー、ほー。カニカレーって何だ。
店内は割とカジュアルでお客さんいっぱい。おい、まさかわれわれの席はないんじゃないのかと心配になってしまったくらいだ。なんとか席が確保されて問題解決。
壁には、小泉純一郎元首相が来店した時の写真が飾られてあった。なんでも2003年のAPEC首脳会議の際に来店したんだと。どうやらタイでは有名な店らしい、ここは。
後で調べたら、観光客も駐在員もよく訪れる店だと判明。そのため、「ソンブーンに行ってくれ」とタクシーにお願いしたら、ソンブーンまがいの店に連れて行くという「店と運ちゃんがグルになった詐欺」事件が横行するくらいだとか。そんなに美味いんか、ここ?
小泉さんが来るくらいだから、タイとしても自信を持っておすすめできる店なんだろう、多分。その割には、繰り返して言うけどカジュアルな雰囲気だけど。
ソンブーンで食べた料理の数々。
もちろんツアー料金の中に含まれているので、お任せのコース料理。
写真先頭の赤黄色い食べ物が、このお店の看板メニューである「プーパッポンカリー(蟹のカレー炒め)」。カレー味のソースと殻付き蟹を炒めたものに玉子をかけて和えたもの。この玉子を入れるという一工夫がソンブーン大躍進のきっかけになったんだとか。へー。
確かに美味い。玉子がいいかんじで蟹の旨味を吸い込んでいい。いいのだが、殻付き蟹がなんともやっかい。実をほぐすのも面倒だが、かといて放置するのもなんだし。結局このあとわわわっと別皿が出てきたので、蟹の身はほとんど食べられずに放置された。
単品メニューだと、「殻なし」のプーパッポンカリーも存在しているのだそうだ。やはり誰しも同じことを考えるんだな。
蒸し海老、空心菜、チャーハン、揚げつみれ、トムヤムクン、白身魚の香草煮と続いてデザート。3人で食べるには多かったけどどれもそれなりにおいしかった。いや、もうね、食べるのに必死だし、おかでんは各料理の写真を撮りたいし、慌ただしくって味なんてさっぱり。
魚を煮込むのを卓上でやるのはちょっと面白かった。新鮮な魚をほら、ご覧ください、この場で調理しちゃいますよ、というのをPRしたいからだろうか?魚食民族日本ではこういうパフォーマンスはやらないよな。
うっかり、「魚の半分しか煮えないから魚をひっくり返して・・・」とやろうとしたら大変なことになりそうだ。それだけデカい。これはそのまま放置すれば火が完全に通るのかね。
家族一同、こわごわと魚を眺める。見たことがない魚って、どうしてこうもまずそうに見えるのだろうか?
本来のスケジュールではこの夕食後、先ほど訪れたスワンルン・ナイトバザールに行く予定だった。しかしわれわれはここで送迎のバスに乗り、予定外の行程へ。そのために、間の抜けた営業開始前のナイトバザールに行ったわけで。
目指す先はムエタイの本場、ルンピニー・スタジアム。今日お昼、移動中にガイドさんから「ムエタイ、楽しいですよ」と水を向けられたのだった。
プロレスが好きなおかでんとしては見てみたい。
「でも申し込んでないですからねえ。自分たちだけで行くのも勝手が分からないし」
この旅の企画段階から検討に参加していれば、ぜひともムエタイ観戦をオプションツアーに組み入れていただけに、残念。するとガイドさん、
「大丈夫ですよ、今からでも申し込めます。日本円でも払えます」
だって。まじですか。それ、日本の旅行代理店通さなくてもええんか?でも多分その辺はうまくやるのだろう。ふむ。ではお願いしよう。本場のムエタイなんてそうそう見られるもんじゃないぞ。
日本円で払える、と言われたが、レートは日々変化するのに提示された金額は非常にきりの良い数字だったのでこれまたまじですか状態。いくらだったかは忘れたが、一人5,000円だったか6,000円だったか、それくらい。これが高いのか安いのかはこの時点ではよくわからない。
ルンピニー、といえば日本では幼稚園でよく見かける名前。多分仏教用語だと思う。それがここでは拳やら足やらで殴り合う場なのだから面白い。日本にある「ルンピニ幼稚園」でもぜひ殴り合いを指導し、年に一度チャンプを決めて欲しいものだ。
送迎バスには、われわれ以外の日本人観光客が何組か乗っていた。今まで付き添ってくれていたガイドさんは同行せず、別の日本語をしゃべるガイドさんが引率になっていた。
ムエタイはタイ全土で行われている競技だけど、「聖地」と呼ばれる場所はここ「ルンピニー・スタジアム」ともう一つ、「ラチャダムヌン・スタジアム」の二カ所だという。聖地って何だ。日本におけるプロレスやボクシングの聖地が後楽園ホールなのと一緒なのだろうか。
この二つのスタジアムは交互に興業が開催されており、今日は「ルンピニー」の方で開催だという。さっき寄ったナイトバザールのすぐ隣がルンピニー・スタジアム。ではいざ中へ。(今は移転して、バンコク郊外にある)
中に入ると、「タイボクシング I.Y.O.BOXING」と書かれた服を着た人がお出迎え。よくわからないのだが、ここは大相撲における茶屋のようなものだろうか。このI.Y.O.ボクシングなる人がリングサイド席まで案内してくれた。他にも同様の座席仲介会社?は存在する模様。大相撲におけるお茶屋さんの位置づけだろうか?
会場内に入る際は、I.Y.O.ボクシングの名がプリントされたシールを渡され、これを胸に貼るように指示された。
シールとともに渡された、ムエタイの解説リーフレットと、なにやら書かれた紙。よくわからんのだが、どうやらこの紙は本日の試合の対戦者が書かれている模様。
リーフレットの表紙になっている絵は、おそらく昔のムエタイを描いたものだろう。それを見ると、手にはバンテージを巻いただけで戦っているからすごい。拳一発で相手は卒倒だろうし、殴った方も骨折しそうだ。しゃれにならん。
あと、「Amazing MUAYTHAI」と記されたキーホルダー。
リングサイド席、しかも最前列のスペシャルリングサイド席がわれわれの席だった。当日予約であっけなくこんな良席が取れるってどういうことだ。・・・と分不相応な境遇に恐縮して左右を見たら、なんだかこのリングサイド席、白人を始めとする外国人だらけだった。どうやらこのリングサイド席の多くは観光客らしい。
試合は既に始まっていた。遅れて到着してもったいない・・・と思ったが、そういえばさっきガイドさんが
「最初の試合は若手によるもの。5試合目がメイン。その後も試合は続くけど」と言ってたっけな。意味不明。
後日ムエタイの試合について調べてみたところ、だいたい試合は5試合で構成されているのは間違いなかった。しかしその5試合より前には2試合程度ダークマッチとして若手の試合が組まれているし、メインイベントの後にも同様に格落ちの選手の試合があるそうだ。それを知ってあらためて取組表を見直すと、確かにその通り。前座2試合、後座(?)3試合。なるほど。
・・・と知ったのは、これを書いている2010年秋。観戦から既に5年が経ってからの話。当時は全く状況が掴めず、「最初の試合を見そびれた」のが残念だったし、5試合目が終わったらそそくさと会場を後にしてしまったことも残念に思っていた。今考えるとそういう観戦方法は間違っていなかった、というこった。ややこしいな。興業全体で見て、ウォーミングアップとクールダウンに相当する試合があるなんて。
会場はリングを囲むようにすり鉢状になっていて、まさに古代ローマのコロッセオ状態。一階はわれわれガイジン達が優雅に試合を眺めているのだが、二階席部分との間にフェンスがあり、通行を遮っている。なんかその無骨なフェンスが、フェンスで囲われたリング内で戦う総合格闘技的であり、アンダーグラウンド感を醸し出していて素敵。二階席はどうやらベンチ席のようだ。
さらにその奥にもフェンスがあり、ここはオールスタンディング。三階席は人が鈴なりで、もう何がなんやら、大きな声を上げまくっている。観客のテンションがリングサイドに近づくほど落ちていく、不思議な構造。
試合中、スタンディングで盛り上がっている人達はしきりに手を右!右!と払いのけるような仕草をしていたり、また逆に左側に手を振る人もいる。あれは一体なんだ、と翌朝ガイドさんに聞いたら、賭けで、どっちが勝つかというのを意思表示しているのだという。まるで電子化されていない証券取引所の立ち会いだ。で、その右だとか左といった手さばきを観察している胴元らしき人もいる。この国って賭けは合法なんか?
それにしても、赤コーナーと青コーナー、どっちが勝つかを意思表示するのは良いのだが、賭け金を胴元は回収していない。この人混みの多さで、一人一人回収なんて無理だ。そもそも、誰がどっちに賭けたかなんてどうやって判断するんだ。
「だいたい賭けをやっている人はいつも決まっているので、顔を覚えているんですよ」
だって。胴元すげー。遠方にいる人の顔を覚えている上に判別できているんか。
リングサイドにはわれわれガイジン客の他に、楽団もいるのだった。
この楽団が試合中ずっと独特のクネクネした曲を演奏する。チャルメラみたいな楽器が旋律のようなそうでないような独特の音を紡ぐ。タイ人からしたら、その音楽が闘志をかき立てるのだろう。国が変われば音楽に対する認識も変わる。
多分日本人だと、太鼓の音が一番闘志に火が付くと思う。
さてこの楽団だが、ラウンド間の休憩時間や、試合と試合の間といた時にはお休みタイム。普通の興業とは逆だ。普通だったら、休憩時間にこそ音楽を流すものだが。面白い。
場内のアナウンスは、タイ語、英語、日本語で行われていた。
ムエタイの起源やら試合をどのように観戦すべきかみたいなことをアナウンスしてくれていた。われわれ観光客向けに、わざわざデモンストレーション試合をやってくれる親切っぷり。多分リングサイドに陣取るわれわれ観光客は非常に貴重な収入源なのだろう。
試合は3分5ラウンド。試合開始前に、ワイクルーと呼ばれる踊りを二人とも踊る。土下座をしたり、片膝ついて手をくるくる回したり。なんとも不思議な踊りで、日本では類似する踊りは存在しないと思う。これは儀式としても重要だけど、それ以外にどっちに賭けるかを検討する上でも重要なのだとガイドさんは教えてくれた。競馬におけるパドックと一緒だな、さては。
ワイクルーが終わって、頭にねじりはちまき状態で巻いているモンコンというものを取り外して、いよいよ試合開始・・・なのだが、ここからしばらくヌルい展開が続く。すわ、できレースか無気力試合か?いやいや、まだ馬たちはパドックから出ておりませぬ。最初の2ラウンドくらいは、全力で戦わず「お手並み拝見」させることで賭けをする人たちの検討材料を提供するというわけだ。ここまで潔く賭け主導型のスポーツ競技って世界的に見ても珍しいんじゃないか?
会場にある電光掲示板。
表示がちょっと変わっている。
上の段が「TIME」。「3」という表示は、「あと3分ですよ」という意味。これが2、1とと減っていって、ラウンド終了。
次の段の赤字は「EVENT」。現在第何試合なのか、を表示している。
で、最後の表示は「ROUND」。これは言うまでもない。5ラウンド制なので、数字がどんどん増えていき、5と表示されれば最終ラウンド。
ムエタイの試合を見たのはテレビ含めて始めてなのだが、もっと烈しい打撃戦が展開されるのかと思っていた。タイ人の体質なのか、みな一様に身長が低くて体重も軽い。蝶のように舞い、蜂のように刺すといった試合が連発なのかと。
でも、実際は首相撲率高し。何でも、相手の蹴りを腕でガードした、というのもポイントの対象になるのがムエタイなんだそうだ。パンチを放つ際に、その蹴りで受けたダメージは影響を受けるでしょ?だから相手にポイントー、というわけだ。なるほど理に適っている。
ただしその結果が首相撲でもそもそと試合が膠着する。3ラウンドまでパドック状態なわけであり、実質試合として機能するのは4、5の2ラウンドしかない。たった6分なのに首相撲だとあっという間に試合が終わってしまうのだった。
でも、総合格闘技が、マウントポジション一つとっても高度な攻守のせめぎ合いがあるように、ムエタイでも首相撲の技術ってのがあるようだ。素人目にはよくわからないが、どうやら凄いらしい。
んで、「なんだ、ムエタイってスカっとするKO勝ちはないのか。ポイント優勢勝ちだけかよ」と油断していると、いきなりKOがあったりするからびびる。なにせ、膝とか肘がOKな格闘技。そんな堅くてとがった部位で頭蓋骨を揺すられたら、一発でKOだ。そんなわけで、結局リングから目が離せないのだった。
5試合目、赤コーナーの選手が飛び膝蹴りで華麗なるKO勝ちを収めたところでI.Y.O.ボクシングの人が「こっちへ来い」と手招きする。
え、もう帰るの?まだ試合は続くし、せめて5ラウンドの余韻をもう少しだな・・・と重いながら指示に従ったら、なんと先ほど勝ったばかりの選手が写真撮影会を開いていた。どうやら、リングサイド席の人はこういう特権が与えられるらしい。もちろん写真撮影は無料。
まだ汗もひかないような勝利選手とともに、ファイティングポーズをとるおかでん兄弟。なぜか兄弟そろって得意満面。肝心の選手は淡々と写真撮影に応じていたけど。
ルンピニースタジアムのチケット売り場。
ルンピニースタジアム認定のチャンピオン写真が並ぶ。どうやら現在11名のチャンプがいるらしい。
おっと、RINGSIDE1500、書かれているぞ。どうやらリングサイド席は1,500バーツ(4,500円)らしい。現地物価を考えたらべらぼうに高い。こりゃ外国人じゃないと足が踏み込めない場所だわ。
その他のチケットについては、タイ語の数字で記載されているので値段が分からず。
ガイジンさんは無条件でリングサイド席へどうぞー、というわけだな。実際、安いからといて三階席なんてガイジンが行こうものなら、鉄火場の中なわけで、何かトラブルが起きかねない。悪い事はいわんからリングサイドへどうぞー。
帰りはムエタイツアー観戦者が泊まっているホテルを経由しながら送迎バスで帰る。
今日の行程はこれにて終了。やれ、どっと疲れが出たぞ。
飲み物が欲しかったので、ホテルから少々歩いてセブンイレブンへ。セブンイレブン、タイにもあるのだな。どこでも同じロゴとカラー。いずれnanacoが使えるようになるかもしれん。いや、多分ないだろうけど。
セブンイレブンで買った鮮茶。
ちゃんと漢字で書いてあるぞ。しかも、「せんちゃ」とルビまで振ってある親切さ。
「煎茶」ではなく「鮮茶」としたのは、だじゃれなのかどうなのか。
日本以外の国ではお茶に砂糖を入れる、という話を事前に聞いていたので、それ対策としていかにも日本風なものを選んでみた次第。これなら大丈夫だろう。
・・・あああ。やられた。砂糖入りだ。
おかでん人生初の体験。砂糖入りのお茶。
意識せずに飲むが故に、ダメージでかい。そういう飲み物だ、と分かって飲めばまだ大丈夫なんだけど・・・でも、やっぱ駄目だ、「お茶」というレッテルを貼ってしまった以上、こう甘いと耐えられない。
家族三人、結局誰もこのお茶が口に合う人がいなかった。紅茶だったら砂糖入りは当たり前なのに、全く不思議な話だ。
ホテルの部屋にある電源コンセント。
さすがにインターナショナルな高級ホテルだけあって、いろいろな国の形状に対応できるよう複雑な形をしていた。
2005年01月22日(土) 3日目
3日目朝食。
今日もバイキングを食べるよー。種類が多いので機能と違うもの選んでもまだ選びきれないよー。
やっぱり今日も朝から食べすぎ。
今日はアユタヤへ行くという。その途中、離宮?宮殿?に立ち寄るのだそうで。
バンコクから北へと向かっていく。
すぐにのどかな光景へと景色は変わる。
途中で見かけた現王様のプミポン国王の肖像画。
これは本当にあちこちに見かけられた。公立の施設に限って肖像画があるのかと思ったが、民間のビルなどにも掲げられているし、よっぽどこの国の人は王様を敬愛しているらしい。絵にして飾っちゃうくらいだから相当なものだ。日本のように、女性週刊誌の誌面を賑わせるようなゴシップ皇族記事とは次元が違う。
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