後立山連峰といえば、白馬岳という名前が真っ先に思い浮かぶ。八方尾根という非常に著名なスキー場があるし、大雪渓を踏みしめながら登っていく登山もとても有名だ。この「へべれけ紀行」でも、過去に登山記を掲載したことがある。
そんな山のお隣山・・・じゃなかった、お隣さんに、「五竜岳」という山がある。別に五流というわけではないが、比較的知名度は低い山かもしれない。五竜岳のすぐ脇から延びる遠見尾根の裾野に、「白馬五竜スキー場」というゲレンデがあるので、まだ一般大衆にはPRしているとは言えるが。
とはいっても、長野方面からオリンピック道路を使って白馬に向かう場合、山道からぱっと平野部に躍り出た際に真っ先に見えるのが五竜岳だ。連絡バスに乗っていると、この瞬間乗客が「おお」と声をあげるのを時々耳にする。ごつい山容。堂々としていて、白馬方面の番人のように見える山だ。
なぜ今回この山に登ろうと思ったのか。それは、数年前に白馬岳に登り、昨年は鹿島槍ヶ岳に登ったからだ。日本百名山だけで山を考えるのは愚だとは思うが、白馬と鹿島槍に挟まれた百名山がここ、五竜岳だった。これは登っておかないと、随分と収まりが悪い。気になってしょうがない。
と、いうわけだ。案外、登山の動機というのは単純なものだ。
あともう一つ、2005年は全然山に登ることができなかったということも理由として存在する。
週末はボランティアなんぞに時間を割いていたこともあり、この夏は全然自分の時間が取れなかった。そのため、山に登らないままシーズンオフに突入しかかっていた。これは非常にまずい。慌てた僕は、
「交通の便がとても良いこと」
「できれば、登山口と山頂をピストンではなく、登山口と下山口が別に設定できるな山」
「山中1泊のボリュームがあるけど、そんなにキツくない山」
という条件のもと対象となる山の絞り込みを行ったのだった。何しろ今年初の山歩きだ、体力だって未知数なのでむちゃはしたくないし、モチベーションが下がるようなキツい行程だと尻込みしてしまう。
その検討の結果、浮上したのが五竜岳だった。
長野まで新幹線で行き、そこから白馬行きバスに行けばアプローチできるという至便さ。
八方尾根から登り、遠見尾根から下ると言うルートをとれば、地図上ではコの字型に登下山でき山歩きを満喫可能。
八方尾根にも、遠見尾根にもスキー用のゴンドラが設置されており、山の中腹まで一気に高度を稼げること。
今回求めていた条件がぴったりと当てはまった。素晴らしい、ここに行くしかあるまい。
2005年9月18日。「いやー、久しぶりだな」と、何だかちょっと照れつつ、五竜岳へと向けて僕は旅だった。
2005年09月18日(日) 1日目
長野新幹線には比較的頻度高く乗っているが、その大半が始発電車だよなあ、と思いつつ長野駅に到着。始発で行けば、長野には朝8時過ぎに到着できる。
今までだったら、いかにも「へべれけ紀行!」って感じで、行きの電車から気合い入りまくりの「よーしよーし飲むぞぉ」な事になっている。しかし、今回・・・というか最近は、イベント開始直後から飲むような事は無くなった。一日の酒量が減ったわけではないのだが、お酒を飲むと疲れやすくなったのは事実。さぁこれから、という時に景気づけに飲むのはちょっとしんどい。
うわ、老けてきたな、俺。
老けた、というか、昔は体重管理がいい加減だったので、「飲みたいときに飲む。朝でも飲む。」ということがまかり通っていたのを、最近ちょっと厳しくしただけだ。飲んだ分きっちりと太るからなぁ。
朝の長野新幹線車中、そんなことを考えながら長野に向かった。新幹線はあっという間に長野駅だ。
長野駅に到着するたびに必ず毎回思うことがある。「あっ、気温が低い」。今回もまさにそうだった。新幹線を降り立った瞬間に感じる地理的な変化。そして、その直後に「山の上はもっと寒いんだろうな」とこれからの行程に思いを馳せる。リュックの中に防寒具どれだけ入れてあったっけなぁ、なんて考えつつ、中身を確認するようにリュックを左右にゆすってみる。
さて、朝8時過ぎに到着した新幹線にちょうど接続するかのように、白馬行きと信濃大町行きのバスは長野駅のバスターミナルを出発する。これは非常に便利が良くて助かっている。今回もそのバスに乗ろうとしたのだが・・・
あれ。乗り場が発見できない。
以前、白馬、大町方面に用事がある度に乗っていたバスは、西口のバスターミナルから発着していた。しかし、どうにもこうにも、探しても見つからない。
バスに乗り遅れると、次は1時間以上待たないといけない。手頃な代替手段が存在しないので、ひたすら待つしかない。山登りにおいて、初動が1時間遅れるというのは致命的なダメージだ。昼過ぎに発生しやすい落雷のリスクを背負うし、何かトラブルがあった場合山小屋に到着できなくなるおそれがある。
ひょっとして東口に乗り場が移動したのか?
頭の中に、ほぼ確信に近い推測が出てきたとき、ちょうど目に入ったのがこの看板。
特急 白馬・栂池高原行 大町・扇沢行 →東口へ 駅舎を通り徒歩5分
でたー。
いつのまにか、乗り場が変更になっとる。よりによって、駅を挟んで反対側じゃん。思わずのけぞってしまった。さっきまで「新幹線との接続時間が絶妙で便利じゃのぅ」なんて呑気な気持ちでいたのに、絶妙どころか間に合わないじゃん、俺。
08:25
山登りに使う体力まで全部ふりしぼって長野駅構内を全力疾走。
横を通り過ぎた女子高生がスカートのすそを「いやん」と押さえるくらいの勢いで(こういう危機状況においても妄想だけはわすれないおかでん)、東口にかけつけた。
バス乗り場に到着したら・・・あー、まさに目の前で上高地行きのバスが出発していくぅぅ。
「待て!停まれ!」と、思わず叫んでしまったが、数百メートル離れている乗り場に聞こえるはずがなく、ましてやドライバーに聞こえるはずもない。停まるそぶりも見せずに、するするとロータリーを抜けていってしまった。
この「みせしめ」のごとく目の前で旅立っていくバスを見るのは、何だかドラマの1シーンのようだった。
「ドラマじゃん、俺!」
と、諦め気分の中、妙なことで感動する。
近くに停まっている車に向かって「警察だ!車をちょっと借りるぜ」とハンドルを奪うことをも考えたが、それはハリウッド映画チックで大変に「ドラマな俺」であるが、犯罪なのでやめとけ。
08:41
で、途方に暮れるわたくし。
乗り場近くの日陰に座り込んでしまう。次の便は1時間後。
あー。
帰っちゃおうかなぁ。
「バスに乗り遅れて、意気消沈して、新幹線で長野を往復しただけで帰る」
うわ、格好悪ぅ。
いやいやいや、ダメだダメだ。登らなくちゃダメだ。
08:52
がっかり感を払拭するためには、暖かいご飯を食べることが一番だ。
満腹は全ての人を幸せにする。
というわけで、訪れたのは「長野駅前食堂」。そのまんまな名前だ。
このお店、1年前までは存在していなかったと思うので、つい最近できたのだろう。「まいどおおきに食堂」という呼称のチェーン店で、お店の立地条件にあわせて店名が変わるのが特徴だ。たとえば銀座店の場合は、「銀座二丁目食堂」という名前。
昔からの食堂スタイルで、鯖塩焼きとか冷や奴といったお皿がずらりと並べられていて、その中から好きなものをお盆に載せて最後にお会計、というビュッフェだ。
「とりあえず、ご飯は大で!」
何がとりあえずだかさっぱりわからんが、まあこういうもやもや感のあるときはガツンとどんぶり飯に限りますよ。ええ。
10:06
1時間後、食欲が満たされて再度モチベーションを無駄に高めつつ、あらためて白馬行きのバスに乗り込んだ。
よーしよーしよーし、登るぞぅ。山頂よりも高いところまで登るぞぅ。
いや無理だってば。
山頂でジャンプして、山頂よりも1センチでも高いところに自分を追い込むぞぅ。
ああ、やっぱり食事というのは重要です。
長野駅前食堂、ありがたいね。朝早くから駅前で食事ができるという利便性は非常に助かる。マクドナルドや立ち食い蕎麦以外に選択肢ができたことは賞賛に値する。
と、長野駅前食堂を賛美しつつ、バスは気が付いたらもう白馬の近く。いやー、空は晴れているし、こりゃ絶好の山登り日よりってやつですよ先生!
とはいっても、少し雲がでてきたかな・・・。午後になるとさらに雲が増えそう。1時間の遅延が、天候の影響を受けなければ良いのだが。
10:17
バスは八方のバス停に到着。下車したのは僕だけだった。他の乗客も山に登るような格好はしているのだが、どうやら栂池でハイキングでもするのだろう。
ホテル群の合間から、後立山連峰が見える。
ホテル街はスキーシーズンでもなく、夏合宿シーズンでもないためがらんとした感じだった。その中を、一人てくてく歩く。
「ここで気合いを入れて歩かないと!どうせゴンドラの中では休憩できるんだし!」
変な打算も交えつつ、早足でゴンドラ乗り場まで歩く。バス停からはちょっと距離がある。
10:26
えーと、ゴンドラ乗り場どこだったっけなぁ。
冬の八方のイメージしかないので、雪が一つも無い今だと、ちょっと道に迷いそうだ。
おー、あったあった、なんだかとってもさりげなく、ゴンドラが勢いよく山の上に発射されているぞ。
濃い緑の中に溶け込んでしまいそうだ。
10:28
「八方アルペンライン乗車券」を購入。
そうか、ゴンドラに乗ることを「乗車」と言うのか・・・と、山に登りに来て日本語の新たな一面に感心するわたくし。
では、リフトの場合も「乗車」と呼ぶのか?そもそも、ゴンドラにしろ、リフトにしろ、「車」と呼べるところってどこだ?謎はつきない。
その謎を解明すべく、ひたすらゴンドラに乗り続けるわけにはいかない。さっさと山の上に登ってしまおう。
お値段は片道1,400円。なかなかなお値段だが、これでゴンドラ1つ、リフト2つに乗り継いで一気に高度を稼ぐ事ができる。
10:30
発射ー!
ごとん、という音と共にゴンドラは八方尾根へと旅立って行った。
いやー、文明の利器っていうのは凄いねえ。「山登り」を楽にするために車や馬、場合によっては籠を使って高度を稼ぐっていうのは昔からあったことだ。しかし、今や空中を飛んで登っていくんだから。
いずれ絶対、「山頂行きヘリコプター」なんてビジネスがでてくるぞ。一気に山頂まで連れて行ってあげます、なんてやりゃあ、足腰は既に弱っているが登頂への意欲いまだに衰えず、なお爺様お婆様方がこぞって利用しそうな気がする。片道10万円くらいしてしまうかもしれないが、それでも払う人って絶対いるだろうな。特にアプローチが悪い裏銀座とか。
そういう登山って不健全だとは思う。しかし、今こうやってゴンドラ使って距離と高度を稼いでいる自分も似たようなもんだ。
じゃあ、ヘリコプターが不健全なら、タケコプターで登るのはどうか。
いやもう知らん。勝手に妄想してなさい。
10:30
見よ我が軍の圧倒的な技術力を!
たった10秒そこいらでここまで高度を稼いでしまった。
スキーに訪れたときは辺り一面銀世界。あまり高度感は感じない。しかし、こうやって地面が露出し、木々が覆い繁っているのを見ると結構な急角度で登っている事が分かる。高所恐怖症の人はアウトだ。
こんなにぐいぐいと短時間で高度を稼いでいるんだったら、気が付いたら山を通り越して反対側の黒部渓谷に降りてしまうんじゃないか、と思えてくる。それくらい、力強い。
「ああ、僕にもこれだけの脚力があったら。」
理想とする対象を間違えているような気がするが、でも強いものに憧れるというのは古今東西誰しもがやることだ。
10:32
さてこのゴンドラを起点とする高度稼ぎルートだが、まずはゴンドラリフト「アダム」で標高1,400mの兎平まで登る。所要時間8分。素晴らしい、居眠りすらする暇がない。
そこからアルペンリフトで標高1,680mに行き、もう一回リフトに乗り換えて、最終的に第一ケルン近くの標高1,850mに到達する。
標高1,850mっていったら東京タワー約6個分の高さか。
・・・例えてみたが、「だからどうした」という例えだった。しっぱい。
乗換時間を除くと、20分で1,850mまで到達できるのだから凄い。八方尾根のどん詰まりにある唐松岳の標高が2,696mであることを考えれば、後立山連峰の稜線との標高差は700mもないことになる。ああ、これはお手軽だ。
「軟弱者!」という声が聞こえてきそうだが、でも今時下界からえっちらおっちら、足を使って登ってくる人はそうざらにはいるまい。
10:38
おっと、そろそろ兎平到着だ。後ろに見える小高い山に、これからリフトを使って登っていくことになる。まだまだ「公共交通機関」の乗り換えは続く。
10:39
兎平でゴンドラを下りる。
スキーだったらそのまますぃーっと進んでいくであろう、黒菱平行きのリフト乗り場へてくてくと歩く。
それにしても結構な人の数だ。夏山でゴンドラを運航して、ちゃんと採算が合っているのか?と不思議だったのだが、なるほどこれは十分採算に合う来客だ。
太陽がさんさんと照りつけるので、女性にとっては脅威の場所ではある。とはいっても、青い空、緑の山、眼下に広がる雄大な景色は魅力。
そういえば、以前職場の秘書さんが日焼けしていたので、「どこへ行ったんですか?」と聞いたところ「八方尾根に行って来たんです」という回答が返ってきたのでびっくりしたことがあったっけ。彼氏との初の遠出デートだったかなんだったか、で行ったのが八方尾根なんだと。軽く嫉妬心を感じつつ、いやそんなことはどうでも良いのだが、とにかく「ええ?山に登らないで中腹で折り返してきたんですか?もったいないと思うんですけど、それ?」と不思議で仕方がなかった記憶がある。
「あー、二人の気持ちは頂点に達しているから、別に山のてっぺんに登らなくても良いわけね、ふーん」という親父臭いひとことを発しかかったのだが、ぐっとこらえたというのは今でも強く記憶に残っている。7-8年前の話かな?若かったなあ、僕も。
ええと、話がそれた。
兎も角、デートコースとして使えるのがこの八方尾根だという事を只今身をもって確認中。なるほど、これは確かに心地よいです。ゴンドラやリフトを乗り継いで高いところに行く、というのもアトラクションっぽくて楽しい。
ここで、「只今身をもって証明中」と言えないところが独り身の楽しいところだ。あっはっは、とりあえず笑っとこう。
10:41
いやー、リフトは満員御礼ですぜ、これ。ご覧の通り、空きリフト無し状態でお客さんを輸送している。
客層を見てみると、老若男女問わずだ。子供連れの家族も居るし、熟年夫婦もいるし、男友達同士、女友達同士というのもいる。服装だってばらばらだ。それなりにトレッキングする格好をしている人、ごく普段着の人。近くにやってきたので、「ちょっと山の上まで行ってみるか?」感覚なのかもしれない。
そんな中、僕一人だけ結構な装備なんですけど。ザックをさも仲むつまじいカップルのように自分の傍らに抱きかかえ、リフトに乗り込む。
10:42
次の目標地点は標高1,680m。
途中、リフトの支柱の陰にビーチパラソルを広げてカメラをこちらに向けている人がいる。すわ、盗撮か?
前のリフトの人に、「こっちむいてくださーい、撮りますよぉ」なんて声をかけているのが聞こえた。ああ、なるほど、あれだな、遊園地のジェットコースターにあるような、記念撮影。戻ってきたときには写真が用意できていて、1枚1000円程度のちょっと高いお値段を払えば、良い記念としてプリントアウトしてくれる。こんな山の中でもやっているとは意外だったな。でも、リフトに乗っている光景ってなかなか写真撮影する機会がないし、欲しい人はお金払ってでも欲しいだろう。目の付け所が大変によろしいかと。
「いや、でも僕は下山口が違うからなぁ。写真撮られても、その写真を確認のしようがないんだけどな、困ったな」
と思っていたら、写真屋のおにーさん、
「あっ、山に登るんですね?じゃあ片道ですね、お気を付けて!」
と僕をスルーした。愛想の良さは素晴らしかったが、写真を撮ってもらえなかったので無意味に残念な気持ちになった。
「おい、その『片道』って、ひょっとして僕は山で遭難すると意味か!?」
なんてイチャモンを頭の中で想像しながら、リフトはぐいぐいと高度をあげていった。
それにしてもさすがはプロ。ザック姿の一人旅とくりゃ「あ、この人は写真買ってくれない人だ」ってすぐにわかるんだね。
10:43
プロカメラマンが撮影しないのであれば、ということで対抗意識を燃やしてしまい、アマチュアカメラマン(要するに自分のことだ)によるセルフポートレート写真を一枚。
三脚をうんと伸ばして、セルフタイマーをセットして。
うん、どんぴしゃな撮影だ。「アワレみ隊日本三大の旅」で開発されたこの手法、どんどん熟達していく自分がちょっとだけ愛しい。
後ろのリフトから、そんな光景を見てくすくすと笑っている声が聞こえたので、開き直って後ろを振り向いて手を振ってやった。
10:50
黒菱平とうちゃーく。
さすがに「平」という名前がつくだけあって、平らだ。
前方右手に、五輪マークが描かれた、「鳩時計の鳩小屋」みたいな木造建築がみえる。どうやら、長野五輪の時の大回転等の競技のスタート地点に使われた施設らしい。
今は雪がないので、スタート地点から勢いよく飛び出したら、そのまま4メートルほど落下して大けがだ。夏の今だと、まるで鳥人間コンテストの プラットフォームだ。
10:50
この黒菱平は夏の間湿原になっているらしく、木道が整備されていた。
その木道の先には、「八方岳・唐松岳方面行グラートクワッドリフト」が控えていた。
まだまだ登っていくぞぅ。
10:50
グラートクワッドリフト乗り場から振り返ったところ。
池塘(ちとう)が、青空を映していてきれいだ。
ここで一日のんびり過ごしてもいいや、という気になってくる。
10:51
いや、待て!のんびりしている場合じゃないぞ。
リフト乗り場にはこんな警告が出ていた。
おっと、夕方から雨か雷雨の予報か。天気予報は当然家を出発する前にチェックはしていた。白馬地方の天気は晴れのち曇り、となっていたのだが、さすがに山岳地帯では下界と同じようにはいかないようだ。
こういうことがあるから、山には早く登らなければいけない。1時間の出発遅延が命取りになりかねない、というのはまさにこういう事を意味する。何も遮るものがない稜線で落雷にあったら、人間避雷針の一丁あがりだ。
電撃ショック、なんて言葉じゃ済まされない。「僕は彼女の姿を見たとき、そのあまりの可愛さに落雷にあったかのような衝撃を受けた」なんて比喩表現を使うことがあるが、実際そんなことがあったら即死だ。
10:55
言われてみれば、さっきよりも雲が増えてきたような気がするなあ。
五竜岳方面を眺めているのだが、山頂の姿は全く見ることができなかった。
今山頂に登っている人は、濃い霧のため視界が限られていることだろう。大変ですなあ。
・・・おい、人ごとじゃないぞ。さっさと登るぞ。今日はこのまま八方尾根をよじのぼって、時間に余裕があるなら唐松岳をピストンして、稜線歩きで五竜山荘に到着しなくちゃいけない。五竜山荘は・・・あの雲の中なのかなあ・・・。いやぁ、大変ですなぁ。
何しろまだこちらはリフトという文明の利器に頼りっぱなしの状況。自らの足にむち打っているわけでないので、何となく緊迫感に欠けるんである。夏山の草原って良いねぇ、なんていう感じ。周囲のお客さんがみんなハイキング客だから、というのもある。
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