11:09
硫黄山と三俣山のふもとに、採石場のような工事現場のような広い盆地がある。これを「北千里浜」という。ここで野球をやったらさぞ爽快だろうな、と思うが例の立ち入り禁止看板の先に位置するため、その願いはかなえられない。
盆地であるが故に、火山ガスが滞留しやすいはずだ、危険度は高いと思われる。あの激しく吹き出ている噴煙が消える日が来るまで待て。
それにしても、西千里浜があって北千里浜があって、坊ガツルがある。このあたりは標高の高い山中だというのにどうしてこうも平野が多いんだろう。何か神秘的なものすら感じる。
・・・すまん、うそです。神秘的なものは特に感じなかったが、初心者向けの登山としては眺めが良いしそれほどキツくないし楽しいだろうなあ、とは思った。同級生10名で久住に行こう!なんて企画、良いんじゃないでしょうか。やっぱりね、山ってのはキツいだけじゃダメよ。眺めが良くて時には楽させて貰わなくちゃ。
その点、おかでんが育った広島というのはなかなか魅力的な山が無くってねぇ。冠山とか十方山とか恐羅漢山などを登ったが、「ここが山頂です」「えっ?樹林帯で何も展望が開けてないんですけど。というかここに来るまでもほとんど何も見えなかったんですけど」っていう山ばっか。標高が低い上に、樹林がびっしりで眺めが良くないんですね。カタルシスが無い。だから、大学に入るまでは山登りってだいっきらいだった。意味無い事するだけ無駄、と信じて疑ってなかったなあ。以上余談でした。
11:11
久住分かれ避難小屋に戻ってきた。
避難小屋、横から見ると案外奥行きがない。ここで宿泊できる人数は限りがある。のんびりと日没近くになって行ってみたら「もうスペースありませんよー」という事になるかもしれない。まあ、避難小屋で巨大なものなんてのは滅多にないので、全国共通だけど。
正面の崖を登っていると、北欧系の顔だちをした金髪の白人さん御一行がぞろぞろとやってきた。おお、ワールドワイドだな。「こんにちは」とあいさつしようか、「ハロー」とあいさつしようか一瞬戸惑ったが、「こんにちは」と大きくニコヤカにあいさつしてみた。すると向こうからはイントネーションがおかしいものの「コニチハー」と返答あり。
ここで一番負け犬な選択は、日本人のくせに外国人の発音っぽく「コニチハー」と言うことだ。それだけは避けた。
11:20
西千里浜。
広大な平野をてくてく歩く。
写真だと今にも雨が降ってきそうな天気と明るさに見えるが、実際はもっと爽快な感じだ。日差しが強すぎて、デジカメの絞り調整がおかしくなってしまったらしい。もの凄く暗い写真に仕上がっている。これでも明るさ補正をかけているくらいだ。
要は何が言いたいかというと、とても気持ちよかったということだ。
11:26
風力発電の風車が見える。
風車が全てこちらを向いているということは、九重連山方面から良い風が吹くということなのだろう。ここにいても特に風は感じないけど。
この近くには八丁原地熱発電所があるので、地熱、風力と自然の力を活用した電気づくりに力を入れていることになる。エコロジー・・・なのかなあ。最近エコのつもりが実はエコじゃなかった、というものがたくさんあるから、安易に「エコロジー」って言葉が使えない。
11:32
「おお」と思わず声をあげてしまった。
西千里浜が終わって、沓掛山に向けて尾根伝いの下りにはいっていくのだが、その尾根がずっと見渡せる。逆Cの字を描きながら、ゆるやかにくだっていくのがみえる。写真だとちょっとわかりにくいかな・・・。
11:35
この頃になると、後発組とも言える集団がたくさん牧の戸峠から登ってきていた。恐らく、朝自宅や宿を出て、車でここまでやってきてさあ登ろう、お昼は山でお弁当を食べよう、というプランだろう。おかでん達のような早立ち組と入れ違いになるかたちだ。
この時間帯の登山者は家族連れが多い。ちびっこがうんしょ、うんしょと登っている。おーい大丈夫か。頑張れよ、先はまだ長いぞ。
本気で山頂まで登る気だろうか?それとも適当なところで区切りをつけてやめるんだろうか?謎だ。僕が子供の頃、島根県の三瓶山に家族で登ったときは泣いて中止をせがんだもんなあ。「なぜこんなつらい思いをしなければならないのか」という説明が一切ないんだもの。だから、子供には山登りの楽しさって理解できないものだとおかでんは思っている。子供がわさびを苦手とするのと一緒。大人の味ってやつだ、登山は。
・・・しかし、頑張って登ってるんだよなあちびっこ諸君。そもそも、峠からの最初の急坂を文句言わずに登ってきたんだから偉い。よく頑張りました、と言わざるをえない。ひょっとするとするするとこのまま山頂まで登っちゃうのかもしれない。眺め良いもんね、楽しいもんね、お父さんが側に居てくれるもんね。頑張れ少年少女。
11:44
はるか向こうに、双耳峰の山が見えた。
特徴的な形をしているので、「ネコミミ山」と勝手に命名した。
後で家に帰ったら地図で調べよう、正式名称が何なのか。
・・・と思っていたのだが、どっちの方向にあった山なのか、方角を確認するのをすっかり忘れていた。おかげで、地図で調べようがない結果に。
もういいや、アンタ今日から「猫耳山」で決定。
※後注:このあと読者さんからの指摘で、猫耳山の正体は由布岳であることが判明しました。
11:57
尾根をずっと下りつつ、時には微妙に登りつつ、進んでいく。
すると、眼前にハシゴがあるピークがあった。おお、例の「下り専用道」というやつだな。
・・・どうしようか。下り専用、の意味がよくわからんのだが、行きに通らなかった道だから通っても良いだろう。
「このはし渡るべからず」のトンチの気分だが、どうとでも解釈できる以上間違っていても許してもらえるだろう。それ、下り専用道に突撃。
11:59
行きの時に下ったハシゴは1カ所だけ、数段のシンプルなものだった。しかしこちらの「下り専用道」は複数箇所(数は忘れたが1カ所だけじゃなかったぞ)あって、しかも長い。
中には、写真のように鎖まで備えている斜度のきついハシゴもあったりして。
一体どこに連れて行くんだ、目的地は牧の戸峠で共通のはずなのに、この行きと帰りのギャップは何なの。
12:00
ありゃ。
沓掛山 1,503m と書かれた棒がささっている場所に出てきたよ。ということはここが沓掛山山頂か。
行きの時は素通りしちゃって、「あれ?山頂には行かないんだ」と思っていたが、まさかこんなところでお目にかかるとは。
・・・あんまりうれしくないなあ。
登りの時にこの地に到達したら、「おお、まずは最初のピークを踏破だ」と感慨ひとしおだ。一休みしようかという気持ちにもなる。しかし、下山時に「沓掛山でござーい」と登場されても、全然うれしくない。「余計な体力使わせやがって!」と非難を浴びる始末。
損した気分になりながら山を下りると、行きに通った道とさりげなく合流。特に「沓掛山山頂 こっち→」といった案内標識は無かった。意識しないと素通りしてしまう分岐になっている。
どうやら、「下り専用道」は「久住山からの下り」専用ということで解釈は正しいようだ。状況がそうだとおかでんにささやきかけている。
12:05
コンクリート舗装の道があらわれた。そろそろ九重連山と戯れるのは終わりが近づいてきたということだ。
12:16
登山口に戻ってきました。
最後のコンクリート階段は、勢い付けてどしんどしんとおりたら確実に膝が壊れるので、慎重に靴底を着地させるように注意した。
4時間ちょっとの登山、これにて終了。お疲れさまでした。
寒の地獄温泉で「おひとつどうぞ」となっていたのでおひとついただいてきたゆで卵。せっかくなので、博多で会う人へのお土産にしようと思って食べずに残していた。本当は博多の人も寒の地獄温泉で一緒に一泊するという話があったからだ。
しかし・・・さすがに山歩きをしているうちに殻にひびがはいってしまった。さすがにこれはお土産にできない。自分のお昼ご飯代わりにしよう。
この後の予定は、15:30までに熊本市街中心にあるレンタカー営業所に車の返却。16:10の高速バスで博多を目指し、18:00到着。知人と合流ののち焼き鳥。21:15福岡空港から羽田行き。
車の返却まであと3時間ある。温泉・・・。うーん、難しいな。温泉に浸かるとなると30分は余計に時間をみないといけない。あと、熊本市街で信号が多かったり渋滞する恐れがある。そういうリスクを勘案すると、ちょっと温泉に立ち寄るのは危ない。
仕方がないので、洗面所の流しで、濡れタオルを使って体を拭いた。汗をかいたまま放置すると臭くなるから、早めに対処しておかなければ。まだ昼の12時だ、今日一日はこの先長いぞ。
まだ「ひょっとしたら温泉に行けるかも」という夢を諦めきれずに、とりあえず車を発進させた。
緑の草原に囲まれながら車は進む。とてもドライブに適した、素晴らしい環境だ。
こういうときにクーラーはいらない。窓を全開にして風を直接感じよう。
・・・クーラーをかけると、エンジン回転数が跳ね上がってやかましい、という理由もあるけど。
ルートからほど近くにある一の宮温泉センターを見過ごし、そして車は阿蘇山の北麓を走っていた。
目の前の青看板、右に行けば内牧温泉があると記されている。ううーん、行きたい。でもリスクが・・・
と悩んでいるうちに素通り。
びっくりした青看板。
「熊本44km 大津22km」
滋賀県の大津がこんなに近いところに。
ローマ字表記を見ると、「Ozu」になっていた。おおづ、と読むらしい。
阿蘇の外輪山がとても美しい。
ぐるーーーーりと、ひたすら丸く阿蘇山(内輪山)を取り囲んでいる。そして内輪山と外輪山の間には広大な平野が。
今日は平地を満喫しているな。西千里浜も楽しかったし。
カーナビ画面には、この先「湯田巻狩温泉」の文字が見えた。ああ、温泉かぁ。もう諦めたけどね。
ナビによると、目的地まではあと35.4km、到着予定時刻14:55と表示されていた。渋滞や給油の時間を考えたら、15:30までに到着の予定というのはちょうどタイミングが良さそうだ。
熊本市街から阿蘇山に向かう主要道は一本なので、混雑する。
実際、上り線も下り線も車がいっぱいだった。のろのろ運転となる。余裕見た時間配分しといて良かったぁ。
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