17:22
ワインセラーに並ぶワイン。
買う人いるのかな、と思ったら、いるんだなこれが。
確かに、鶏肉や豚肉の煮込み料理をつまみに、赤ワインなんぞを傾けるってのはいいと思う。ちゃんとワイングラスも用意されており、優雅な夕食を楽しんでいるグループがちらほらと。そういう山小屋の夜ってのも、いいよな。値段は相当高いけど。1本3,000円。
こんなのは下界から自分で担いで登ったほうがお得だ。でも、それを言い出したら、何から何まで自己解決したほうが安いに決まってるわけで、あんまり「高い・安い」を山で議論するのは不毛だ。
17:26
この日、本能に任せてお皿によそったおかでんのお皿。
デザート2種は切り捨て。残り6種類、特にメイン料理である肉2種を盛ることに注力した作品。
ご飯は炊き込みご飯、汁ものは豚汁だった。こういうところがちょっとだけ豪勢だ。
登山の直後は食が進まないので、ふりかけ持参・・・という中高年齢層の人は結構いるが、そういう人はちゃんと食事ができただろうか?食は進んだだろうか?バイキングなので、自分の状況に見合った量を盛り付けることができるので、それは良いことだ。
味はなかなか良かったと思う。というか、いちゃもんつけようがない料理というか。好きなだけ食べられるし、満足度は高かった。
18:08
食後、外に出てみたら、南方に富士山が見えた。
屋外にいた人たちはみなカメラを取り出し、富士山の撮影にいそしんでいた。
やっぱり、写真撮り甲斐がある山だよな、富士山って。遠くからでもしっかりとそのシルエットを確認できるので、撮影しやすいし。
18:14
赤岳天望荘の場合、docomoの電波は不安定。入ったり、入らなかったりする。ぎりぎりのところなので、場所によって状況はかわる。稜線上で見晴らしが良い場所だとはいえ、携帯の基地局ってのは山の上まで想定していないアンテナの向きに設定されているので、電波は入りにくい。
「山などの僻地にめっぽう強い」docomoでさえこれなんだから、auやsoftbankだとどうなんだろう。
18:55
談話室の隅っこに陣取り、「うまいすしをつくる」を読んで過ごす。
くつろぎ用に、下界からジュースとポテトチップを持ち込んでいたのだが、そもそも間食する習慣がないおかでんにおいて、これらを飲み食いするということはなかった。そうか、ビールを飲むときにつまみは必要だけど、ビールを飲まないならこういうスナック菓子は不要だったか。
19:41
談話室はグループが会話に花を咲かせている。しかし、時間の経過とともにぽつりぽつりと人が減っていった。まだ時刻は19時過ぎ。でも、夕ご飯が17時台なわけで、この時間にもなれば山小屋では「そろそろ寝なくちゃ」モードに入ってくる。
そっと談話室を抜け出し、外の様子を見てみた。
先程来ずっと、ガスが立ちこめたり晴れたりを繰り返している。風もそこそこ強い。星は全く見えない。
南側を見ると、小淵沢方面だろうか、町の明かりを見る事ができた。
山から見下ろした時の町の夜景で印象的だったのが、白馬山荘に泊まった時だ。白馬の町は、寒々しい蛍光灯の色ではなく、暖かいオレンジ色をしていた。ああ、人の営みがあそこで行われているんだな、と何か懐かしく感じたものだ。
20:05
乾燥室があったので、中を覗いてみた。
別に何か面白いものがあるわけじゃないんだけど、性格上、「山小屋の中にあるものは全て見てコンプリートしておいたい」から。
ウェアやタオルといった、濡れたものが干してあった。明日の朝までには乾くのだろうか?一応オイルヒーターが設置されてはいるのだが。
20:13
この山小屋における消灯時間は21時となっている。
おかでんは消灯時間ギリギリまで起きているのが常なのだが、さすがに20時を過ぎたあたりから就寝準備にとりかかり始めた。
何しろ、寝床が気になる。
全く寝床の様子を見ていないのだが、混雑している今日のことだ、隣の人に領土を侵略されているのはほぼ間違いないだろう。消灯してから「その土地を明け渡せ」と隣の人とゴソゴソやるのは得策ではないので、早めに動き始めた方がいい。
と、その前にお手洗い・・・。
豆知識。
山に登ると、トイレに行きたくなることが多い。これはおかでんに限った話じゃなく、一般的な話として。
なぜなら、気圧が低くなるので、おなかの中のガスが膨張するからだ。ほら、ポテトチップスの袋を山の上に持っていったら、袋がパンパンにふくれあがるのと一緒。あれと同じ事が、おなかの中でも起きる。
で、富士山なんかは1回200円とか300円の有料トイレなわけで、せっかくお金払って中に入ったのに、出てきたのはおならだけだった・・・という哀しい、楽しい話は枚挙に暇がない。300円払っておならだけしかできなかったというのは残念すぎる。
さて、ちゃんと思惑通りに用を足すことができたおかでんであったが、いざ後始末をしようとした時に問題発生。
あっ、トイレットペーパーが切れてる!
ぎゃー。
2013年07月15日(日) 2日目
05:03
二日目の夜が明けた。
まあ、想定の範囲内だが、やっぱり寝苦しい夜だった。
危惧していた寝床だが、案の定隣の人が我が物顔で完全占拠し、安らかに眠っていた。
多分、「隣には今日は誰もいないようだ。ラッキー、広く使える」と思って、眠りについたんだと思う。そういう人をたたき起こして、「ここ僕の陣地だから退いて」というのは正直、忍びなかった。熟睡しているようだし。
しばらく、その安らかな寝顔を観察していたが、情が湧いても仕方がない。こっちだって寝なくちゃいかんのだ、ちゃんとそこは主張しなければ。
で、お休み中のところを申し訳なかったのだが、起きてもらって、動いてもらった。
しかし、おかでん領土を侵略していた人は、おかでんがいないものという前提で自分の領土もゆったりと使っていた。そのため、自分の領土がさらに隣の人に若干侵略されていて、その隣の人はさらにさらに隣の人に少し侵略されて・・・と、ドミノ倒し的に侵略が日常茶飯事になっていたのだった。
だから、おかでんが急に現れて、正しく自分の領土を主張した暁には、直接おかでん領土を侵犯した一人だけでなく、向こう三軒両隣まで影響を受ける事になった。おかでん登場後数分間は、玉突き式にゴソゴソする寝床となった。
朝3時頃から、ヘッドライトを灯してゴソゴソする人たちがでてくる。赤岳登頂して下山するだけならそんなに急ぐことはないのだけど、このあと縦走します、なんて人は早立ちすることになる。そういう人たちが、外の気象状況を話し合ってるのが聞こえる。
相当、天気が悪いようだ。
「雨は小雨なんだけど、風が相当強いんだよなぁ」
ぼやきが聞こえる。しかもその風は相当強いらしく、ちょっと通常の登山の続行が危ぶまれるレベルだという。やれ、困ったな。
とりあえず、朝ご飯を食べてから今日の事は考えよう。
5時前に起床し身支度をし、5時には食堂の前に着いた。既に食事は始まっており、呼び出しがあるまでしばらく待機。
05:05
朝ご飯は、コーヒーカップの色で判別され、呼び出しを受ける。
おかでんのカップの色「ピンク」が呼ばれたのは結構早かった。本来朝食は5時からで、おかでんの番は2回転目だから5時半近くの呼び出しかな、と思っていたのだが。今日は客が多いということもあって、食堂は前倒し開店してくれたらしい。
朝なので、食堂の回転は相当早い。牛丼屋レベルのスピードで、次々と宿泊客は食事を済ませ、去っていった。
さて、朝ご飯もバイキングですよと。
今日もしっかり食べて、山頂を目指す体力を養おう。・・・ただし、天気が悪くならなければ、の話だけど。大丈夫かなあ?
バイキングは昨晩同様、料理が盛られたバットがずらりと並ぶ構成。
手前から、梅干し、きゅうりのつけもの、山菜。
昨晩同様、脇役から順番にお皿に盛っていく事になる。まさか梅干しを5個も6個も取る人はいないと思うが、全体バランスをよく考えながら盛りつけていかないと、後で困ったことになる。
05:05
バットは続く。
オレンジ、たけのこの土佐煮、ソーセージ。
ようやく、おかずらしいものとの遭遇。
05:05
そして最後は玉子焼き、肉団子。
おそらく、全部またはほとんどができ合いのものだろう。山小屋では温める程度の調理しかしていないはず。それでもこうやって、ちょっと幸せな朝ご飯が提供できているんだから、良いご時世になったものだと思いたい。
05:06
というわけで、本日のおかでんの朝ご飯。
昨晩食べ過ぎたという反省から、少し少なめにしてみた。夕ご飯をしっかり食べて、朝ご飯を抑制するなんて本筋からは逆のことをやってるけど。
05:23
食後、外に出て様子を確認してみた。
うーん、濃霧、小雨、そして猛烈な風。
ちょっとこれは身の危険を感じるレベルだ。
周囲の人たちも困惑していて、仲間同士で作戦会議を開いている。で、その多くが赤岳山頂登頂を諦め、地蔵尾根や県界尾根を使って下山しようという結論を出していた。山頂はあともう少しだというのに。でもそうせざるを得ないような説得力が、今目の前で吹き荒れている風にはあった。
おかでんも思案しっぱなし。さて、どうしよう。
06:04
30分ほど待機。
天候の状況を見極めるためだ。地蔵尾根ルートで下山するのが賢明っぽい状況。周りの人たちも、誰一人として山頂を目指す、とは言っていなかった。
しかし、いろいろ検討の結果、おかでんは山頂を目指すことにした。風が強いのであおられる危険性はあるものの、ここから先滑落してしまうような断崖はない。なんとかいけるだろう。
そのかわり、赤岳登頂後縦走を予定していた中岳、阿弥陀岳は断念。赤岳から直接下りるルートである文三郎尾根を使って行者小屋まで一気に下ることに決めた。
06:09
いよいよ赤岳山頂を目指して、最後の登り開始。
雨はほとんど降っていないが、強風の中に小雨が混じっている。風に吹き付けられているうちに、メガネが水滴でびっしょりになってしまう。
前後に登っている人は一人もいない。みな、諦めて地蔵尾根から下山したか、山小屋で様子見を決め込んでいるらしい。
天気がよければ、山頂を見上げながら「ホレ、あともう少し。頑張れ頑張れ」と楽しく登れるんだろうが、何しろこの天気だ。体が風で浮き上がらないように岩をつかむので大変。
厳しい登りはさほどないのだが、傾斜は結構きつい。まだ今日は歩き始めて時間が経っていないので体力が十分にあるが、赤岳頂上山荘に泊まるため、ラストスパートでここを登る人ってのは悲鳴をあげちゃうかもしれない。
06:16
途中から鎖が張り巡らされていた。それだけ、足元注意ってことだ。ただし、はしごはなく、「鎖以上はしご未満」といったレベル。
06:30
思ったより早く、赤岳頂上山荘が見えてきた。
完全にガスの中に沈んでいる山小屋。晴れていれば相当な景色が楽しめるのだろうが、今日においてはそんなこと言っちゃダメ。
06:33
赤岳頂上山荘があるということは、山頂までは目と鼻の先ってことだ。
つまり、登りはこれでほぼ終わり。
なんか、すごくあっけなく感じる。あとは下るだけか。まあ、そのくだりが結構長いんだが。特に行者小屋から先、バス停がある美濃戸口までダラダラと歩かなくちゃいけない。
当初はこの山小屋を素通りするつもりだったが、せっかくなので中の様子を伺ってみることにした。
建物入り口には、「入り口はこちら→」と書かれた看板が掲げられていた。
宿泊受付、お食事、飲み物、おみやげといった取り扱いがある。
こういうところでお土産を買うのって、正直言ってばかばかしいことだ。わざわざ山の上まで業者さんがお土産を運び上げ、そして山小屋で登山客がそのお土産を買って、また山のふもとまで持って帰る。なんという無駄な位置エネルギー!
いずれ、山小屋のお土産ってのは、サンプルが1つだけ置いてあって、「現物の引渡しは登山口にて」っていうのが出てくるかもしれない。もしくは、「ご自宅に配送します」か。そのほうが、登山中の荷物が増えなくて楽。
06:34
赤岳頂上山荘の中にまで足を踏み込んでみた。
さほど広くないカウンターでは、ところ狭しといろいろなものを扱っていた。それにしてもバンダナとかキーホルダーって誰が買うんだろう?山小屋土産の定番ではあるけど、バンダナなんて日常生活でそんなに出番がないものだろうに・・・。
玄関先は、登山客がごった返していた。まだこの時間になっても出発していない人たちが大勢いるということだ。場所が場所だけに、下山するしかないのだけど、それでも天気の回復を待って行動開始というつもりなのだろう。
悪いがお先に失礼しますよ。
こういうとき、単独行ってのは気楽だ。自分の体調は自分がよくわかっている。そして自己責任だ。しかし、パーティーを組んでいる場合、他人の体力や体調まで慮らないといけない。判断をミスると、すぐ死につながるのが山の常。パーティーのリーダーは責任重大だ。だから、こんな天気の中、おいそれと突撃はできないのだった。
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