ビール無しの山、そしてバイキング【赤岳】

八ヶ岳の主脈稜線

12:27
開けた場所ということもあり、ようやく前方に八ヶ岳の主脈稜線が見えてきた。

屏風のようにそそり立っている、というと表現が大げさだが、こことあそこが同じ山の中だということがにわかに信じられない。今いるところが単なる平野に感じられる。

これからが本番だよ、ということだ。心してかからないと。今のところ、快調、快適。

ただし、虫の多さには閉口した。とにかく、虫が多い。ハエ、アブ。それがぶんぶんと顔の周りをつきまとうので、うっとおしいやら怖いやら。早足で歩いても、やつらは平然とついてくる。

すれ違った人の中には、モスキートネット付きのブーニーハットをすっぽりかぶっている人がいた。蚊帳のように肩から上をすっぽり覆っている。ああ、それは良いアイディアだ。本当にそういうのがあってもいいくらいだ。

次、こんな季節に山に登るときは真剣に購入を考えよう。

また樹林帯の中

12:36
また樹林帯の中に戻る。

山の頂が見えてきた

12:45
今度はくっきりと山のてっぺんが見えるようになってきた。

これでようやく、準備完了ってことだ。さあ、ということはもうすぐこのあたりの山のぼりのベースキャンプとなる、行者小屋が見えてくるだろう。

行者小屋

12:52
行者小屋到着。

開けた場所にあるので、大きな山小屋だ。狭いところに押し込まれたような作りの山小屋が多い中、ここは広々している。

屋根の上にはソーラーパネルがびっしりと張られているのが今風。山小屋で使う電力の何割くらいを太陽光発電で賄えているのだろうか?

山小屋の前

12:52
山小屋の前は広場になっていて、多くの登山客がくつろいだり食事をとっていた。

とても開放感がある。目の前に広がる山々を眺めながら、ここで半日過ごすというのは良いプランだと思う。あいにく今日はガスっていて山の上はあまりよく見えないのだけど。

山歩きの初心者の場合、行者小屋一泊で美濃戸口往復というのもありだと思う。さほどきつくない登山道なので、格好の練習になるし、山小屋泊という体験も得られる。天気がよければ、夜空はさぞやきれいなことだろうし。山の上に登ることだけが登山じゃない。

行者小屋のテント場

12:52
広い広場を持つ行者小屋だが、テン場も広い。

ここまでの道中、さほどきつい道のりでもないわけだから、テント泊というのもいいかもしれない。ここでテントを構え、翌日は荷物をこの地にデポした状態で身軽に山頂を目指す、という。

山歩きでテント泊した経験は甲武信ヶ岳のときしかないのだが、たまにはテントもいいな、とこの風景を見て思った。テント泊だと、山小屋の定番「狭い寝床で隣の人とぶつかり合いながら、夜明けをひたすら待つ」ということがなくなるのが最大のメリット。

行者小屋外来食事メニュー

12:53
大きな山小屋、行者小屋は外来の客でも食堂で食事をとることができる。

ラーメン、牛丼、カレー、うどん、そばといった食事は800円。

ちなみに生ビールも800円だ。そう、この山小屋には生ビールが完備されている。飲みたい人はぜひどうぞ。

行者小屋名物おでん

この山小屋はおでんが名物らしい。ウッドデッキのところで、おでんがしめやかに煮えていた。ちくわ、がんも、大根、玉子・・・。基本的なものはすべてそろっている。

お値段は100円ないし150円の2プライス。単品アラカルトで買うことができる。生ビールとお好きなおでん2個で1,000円、という「生ビールセット」があるので、宴会をやりたい向きだとそっちを使ったほうがお得だ。

ビール、かぁ。

別に飲みたいとは思わないんだが、昨年まで「山といえばビール」という思考回路だったので違和感を感じる。飯食うときにはビール、山小屋ついたらビール。山頂でもビール。とにかく、「一息つく」時にはビールがあった。それがもうないのだから、一体どうやって時間をすごせばよいのか、想像がつかない。

一番困るのが、山小屋についてからだ。これまでは、山小屋着から夕食までのたっぷりある時間を使ってビールを飲んでくつろいでいたものだ。でも今回はそれがない。暇をもてあましてしまうんではないか。今から心配だ。前回、三斗小屋温泉の時は「温泉に入る」ってことで十分に時間が潰せたけど、さて今回はどうしよう。

「我慢できなくなって、うっかり飲んじゃう」っていう心配は全くない。自分でも不思議なくらい、ビールには全く未練がないし、飲みたいとはこれっぽっちも思わない。変わったな、俺。

冷水で冷やされるビール

12:53
ジュースとビールがみっちりと詰め込まれた水槽。

今日は三連休中日。今日下山する人、今日入山する人がいっぱい行者小屋を通過する。さぞやいい売れ行きだろう。

ちなみに「缶ルービー」は500円、「ペットボトル」は400円という値付けになっていた。山物価が火を噴いているぜ。
ちなみにビールはモルツの取り扱いがあり珍しい。いまどきモルツを見ること自体珍しいのに、まさか山小屋でお見かけするとは。サントリーの営業マンががんばったんだろうな。でも、プレミアムモルツを置いていないというのは、ここでは売れないということなんだろう。ただでさえ山物価、プレモルのような値段が高いビールだとさらに高くなってしまう。さすがにそれだと、手を出す人も少ないだろうな。そもそも、プレモルはスポーツで汗をかいた直後に飲むのに適したビールではない。

なお、モルツ以外にも、スーパードライ、黒ラベルを確認できた。キリンは取り扱ってたかな?覚えていない。

赤岳はガスって見えない

12:54
赤岳を見上げたところ。

山頂付近はガスっていてはっきりと見ることはできない。しかしおかでんはこれからあのガスに向かって突撃するわけだ。今日はまあガスっていてもいい。山頂を踏む明日の朝こそは晴れていて欲しいものだ。

本日のお宿、「赤岳天望荘」も、稜線上に見え隠れしている。直線距離だとさほど遠くないのだけど、まだまだ標高差があるから大変だ。

本日のお昼はパン

12:58
行者小屋の様子をなんとなく把握できたので、自分も一息つくことにしよう。

山小屋ウォッチングは山歩きの中で最大級の娯楽。自分が一息つくよりも、ウォッチングするほうが重要だ。だから、飯は後回しになっていた。

ザックから取り出したのは、パン。

過去を振り返ってみると、山歩きでパンを持参したことってとても少ない。今回もパンを持参するつもりはなかった。しかし、昨日うっかりパン屋で興奮してしまい、あれもこれもと買ってしまったので、その余りが今日のお昼ご飯に回されたというわけだ。さまざまなパンが並べられて売られていると、テンションあがるよな。ついつい買いすぎてしまう。

ちなみにおかでんが一番気に入っているのはアンデルセン。二位はポンパドウルだ。バゲット系の生地にチーズが混ざっているタイプのものが大好き。

おかでん昼食中

13:00
今日は惣菜パンによるお昼ご飯と相成った。

淹れたての紅茶でも飲みたいところだが、荷物がかさばるし重たくなるのでそういうのは一切持ってきていない。そういえば、一時は

「山で食べるカップラーメンってご馳走だよな」

ということでラーメンばっかり食べていたが、最近は全然そういうことをやっていない。年月の経過とともに、どんどん面倒くさがりになってきているのだろう。いかんな。次回山歩きでは奮起を期待したい。

それにしても、山歩きの食事でパンはやっぱりダメだ。口の中の水分が奪われるので、余計な水分消費となってしまうからだ。もちろん水は十分すぎるほど余裕を持って持参しているので問題はないのだが、山の中で水をゴキュゴキュと飲んでいるとなんだか後ろめたさを感じてしまう。

地蔵尾根

13:08
パンを食べ残し、身支度して行者小屋を後にする。

なにしろ、今晩はバイキングだ。「食べるな!」と言ったって食べちゃうに決まってるんだから、お昼ご飯くらいは罪滅ぼしで少量に抑えておきたい。罪を犯す前に罪滅ぼしをする、というわけで、つまりは「今晩は食うぞ」という犯行声明に他ならない。

さて、行者小屋の裏手に回りこんだところに、登山道の分岐があった。左手に進めば赤岳鉱泉。右手が、主脈稜線につながっている地蔵尾根だ。今晩の宿・赤岳天望荘は稜線の上にある小屋なので、この地蔵尾根をぐいぐいと登っていかなければならない。

登山地図をみると、この地蔵尾根には危険を示すマークがつけられていた。急な登りが続き、結構しんどいらしい。まあ、それは仕方がない。これまで十分楽をしてきたのだから。

地蔵尾根の登りはじめはさほどきつくない

13:11
まずはこれまでどおりの、さほどたいしたことのない道を歩く。

いや、これまでどおり、ではないな。斜度が明らかにきつくなってきている。お昼ごはんで得たカロリーをそろそろ総動員させないと。そういう点でも、行者小屋の立地というのはとても良い場所だ。

赤土むき出しの登山道

13:19
おー、いよいよ険しくなってきたぞ。

ここは尾根なので、登山道の両側がだんだん細ってきた。

階段登場

13:28
いよいよ階段が出てきた。

あくまでも「階段」であり、「ハシゴ」ではないのでまだマシ。それでも、こういう人工物を作らなければならないほど斜面が急になってきたぞ、ということだ。しかも、階段にはご丁寧に手すりまでついている。

こういう階段が結構長い間続く。

階段の途中で人とすれ違うのは難しいので、行くなら一気にのぼってしまわないと。

ちょうどこの時、目の前に夫婦の登山客がいたのだが、目の前の階段に尻込み気味。

「お先にどうぞ」と道を譲られたので、こっちは息も絶え絶えに階段に取りついた。しかも、階段の上には、下山しようとする人がおかでんの通過を待ち構えており、前に進むも地獄、立ち止まるも地獄状態。ひいひいいいながら登り切る。疲れたー。

登りがとてもけわしい

13:35
どんどん標高が上がっていく。行者小屋までのルートとは、うって変わっている。同じ山とは思えないくらいだ。

でも、これくらいがちょうど心地よい。ダラダラと時間をかけて登り続けるより、一気に標高を稼いでとっとと終わりにしたい。

急な階段

13:38
おおう、なかなか急な階段だぞ。

こういうのは、一段一段、一歩ずつ確実にのぼっていかないといけない。ウキウキ気分で二段飛ばしなんかしていたら、足を滑らせて落ちる。落ちたら最悪、死ぬ。死ぬのはイヤだ。戦争反対!

一気に荒涼とした世界に飛び込む

13:40
いつの間にかガスの中に突入していた。これまでの良い天気から、なにやら山岳ムード溢れる雰囲気に。

岩場と、ガス。そして人はほとんどいない。

これまでの喧噪は一体どこへやら。静かな山歩きが楽しめる。

でも、風は相当に強い。時折ごごごおぅ、と風が吹き抜ける。道ばたで一息ついていたおじさんが、

「なんなんだこの天気は!せっかく山に来たのに!」

と絶叫していた。いや、せっかくのところ恐縮ですが、山ってこんなもんですよ?

読者の方から、先日「おかでんさんって雨男じゃないですか?山のぼってる写真、雨が降ってる事が多いような」とかなんとか言われたのだが、それは声を大にして否定したい。違う、と。山はいつもこんなんです。晴れてればラッキー、くらいに思わないと。

地蔵尾根上部

13:44
覆い茂っていた木々はどこへやら。すっかり荒涼としたところを歩く。ところどころ鎖場もある。

シャクナゲが咲いている場所もあり、それを見ると少し気が安らぐ。・・・と、ちょっと花鳥風月を愛でるふりをしておく。

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