おマグロ様コンロは、銀色に覆われている。まるで宇宙衛星の外観のようだ。
炭をガンガン投入して火力を上げると、この長丁場のBBQ中に熱源が途絶える可能性がある。以前、炭を売店で追加購入したことがあるが、1,000円近いお値段でびっくりしたことがある。なので、極力省エネモードで運用中。
ホームセンターで炭を買えば、3キロで300円くらいだろうか?それを持参すれば、ヒャッハー!と叫びながらガンガン火力を上げることができるだろう。でも、やらない。なぜなら、みんな公共交通機関で訪れているわけで、そんな重たいものをわざわざ運び込みたくはないからだ。そもそも、このバーベキューのコンセプトが「手ぶらでバーベキュー」なのだから。
いったんおマグロ様のご機嫌を伺おう、ということで包んでいたアルミホイルをめくってみたところ。
・・・赤い身が白っぽくなってきてはいるものの、「火が通った」とはほど遠い感じ。これを食べたら、多分おなかを壊す。
「刺身状態でも食べられるんじゃないのォ?」
という声があったが、刺身用として売られているものではないので、何があるかわからない。マグロォの頭を食べておなかを壊しました、というのはありがたくない話なので、ここはじっくり火を通しておきたいところだ。
「とはいえ、一体いつになれば火が通ることやら・・・」
思わず天を仰いでしまいたくなるくらいの、火の通らなさよ。
「いや、でも今見えているのは火が通っていない面だから。ひっくり返すと違うでしょう」
言われてみればそうだ。
ということで、三人がかりでおマグロ様をひっくり返してみる。
うわあ!
目ん玉がこっちを見てる。ギョッとした。魚だけに。
思わず手が引けてしまい、軍手の編み目がマグロォのギザギザな歯に引っかかって取れなくなった。
「うわ!食べられてる!今僕、マグロに食べられてる!」
一人興奮して叫ぶが、「いやそんなのはいいから。早く手伝って」と周囲からたしなめられてしまった。
マグロォを購入したお店のサイトによると、「アルミホイルで覆って片面1時間、もう片面1時間」で食べられるのだという。今が折り返し地点。まだまだ先は長い。
「とりあえず、火が通っていそうなところから食べちゃおうか?」
誰かがそう言いだし、フライングで目の周りの肉をガリガリと引きはがし始めた。
とにかく、わちゃーっとした会なので、スーパーでの食材選びの段階でも料理を焼いている時でも、誰かがフライングしたもん勝ちになっている。
当初イメージとしては、ほくほくにできあがったおマグロ様をデーンとテーブルの真ん中に置いて、みんなでニコニコしながら箸を伸ばす、というものだったけれど。まあ、いいか。いつまで経ってもこの調子じゃその光景は実現しなさそうだし。
で、マグロォの肉。
カマなどの魚の骨周りの肉を食べる時って、骨から肉をほぐしつつ食べる行為全体が醍醐味だと思う。こうやって皿に「肉だけ盛られた状態」だと、全然「マグロ、喰ってやったぜ!」感が乏しい。
うまいか?と言われると、まあうまいんだが、あんまり印象には残ってない。マグロを焼いた!という事実だけが深い満足感で、味についてはいまいち。
教訓。カマやカシラの身をほぐして提供するのはやめよう。
カニでもそうだよな、「殻を剥くの、面倒くさい~」とみんなぼやくが、じゃあカニフレーク状態になったものが山積みになっていて、「ご自由にお取り下さい」ってなっていたら興ざめだ。
「そういえばにんにくのホイル焼き、誰が責任とるんだ?」
にんにくを皮のまま2房、アルミホイルにくるんでおいて、炭火の上に直接転がしてあった。しかし、転がしたまではいいが、そのまま転がされっぱなしでかれこれ2時間程度。いくらなんでもやり過ぎだと思う。
遅まきながら取り出して、中を開けてみたら黒焦げ寸前のにんにくが。でも大したもので、皮を剥くと中のにんにくは無事だった。ただし、ドロドロになっていて、溶けかけたキャラメル状。到底指で皮なんて剥いていられないので、ほとんど「吸う」形でにんにくを食べた。栄養ドリンクだな、こりゃ。
それにしても我々、たまにしかバーベキューをやらないものだから、まだまだ未熟だ。こういうのは、年に何度とか、定期的に開催していって知識と経験とレシピを積み重ねていかないと。単に過去の場数の累積だけじゃ、ダメだ。つくづくそう思った。
食材買い出しをしたマルエツでは、朝10時過ぎだというのに結構「おつとめ品シール」が貼ってある商品の品揃えが良かった。野菜だけでなく、肉などもいろいろと。というわけで、3割引きで買った味付きカルビを炒める。
ようやく焼肉らしい肉が出てきた感じがするが、既に満腹感というか、「もうそろそろいいかな」感が全員に漂い始めていた。なので、カルビにキャベツを混ぜ、野菜炒めを作り始めた。
カルビ野菜炒め。
これはこれで旨いんだな。でも、シメに近いような雰囲気になりつつある。
そんな折り、休日出勤のため到着が遅れていたたっぴぃさんが登場。テーブルの上はひととおり食い尽くされた状態であり、残った料理も冷えてしまっていて申し訳ない。
とりあえず駆けつけ三杯で、大いに食べてもらう。
たっぴぃさんは都心で仕事があったので、「遅れて行く分何か買っていきますよ」と言ってくれていた。そんなとき、カツが「笹かまぼこ」とつぶやいたため、わざわざ本当に笹かまぼこを買ってきてくれた。
笹かまぼこといえば宮城県名物だけど、これをどこで?宮城県のアンテナショップは池袋にあるはずだけど。たっぴぃさんに聞くと、秋葉原駅構内にあるJR東日本エリアのグルメセレクトショップ「のもの」で買ったのだという。「棚にあるやつ、全部もらっていきます」と総ざらいしたらしい。なんと大胆な犯行。
こちらは揚げかま。海老が入っているらしい。
「これはおいしいです!」とカツが目をまん丸にして喜びを訴えかける。食べかけの断面を見ると、まるではんぺんのように分厚かった。なんだこりゃあ。こいつァ食べ応えがある。こりゃ、フワフワしてさぞやうまいだろうな。
それにしてもカツ、先ほどはさつま揚げを網で焼いてご満悦だったけど、今度は予想外の笹かま&揚げかまでますますご機嫌だ。おいちょっと待て、バーベキューだよな?今日は?ついに「熱を加えないで食べちゃう」ものまで登場しはじめたぞオイ。
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