とりあえず飲み物を受け取って、そのまま人の流れに沿ってAデッキの奥へと向かう。するとそこは青い光に照らされた広いスペースだった。
普段はテラスとして、椅子と机が並べられていて、海の景色を楽しみながらお茶が飲めたりするのだろうか?
そんなスペースには、ちょっとしたステージが用意されいた。ここでイベントが開催されるようだ。ステージ脇にはDJブースがあり、女子大生DJが司会進行をしていた。
本日のタイムスケジュール。「ゆかたダンサーズ」というダンサーがステージ上で踊るらしい。
ステージ周辺にはスタンディング用の机もあるのだけど、既にこの界隈は人でいっぱい。料理を置く場所がどうしても必要になるので、人はみな「机または机がわりになる場所」に固まっている。ステージ前は今のところがら空き。
とりあえずフードチケットを買いに行こう。
食べ物はあちこちのフロアで売られているのだけど、フードチケットはAデッキの小さな窓口でのみ売られている。まるでこっそりと何か密売をやっているかのような、小さな窓。そこでお金と引き替えに、船上通貨であるフードチケットが手に入る。
フードチケットを買うのに並ぶのはイヤだなあ、買うならまとめて最初に買ったほうがいいかなあ、と思ったが、全然待たずに買うことができた。
100円のチケットが5枚つづりで500円。500円単位でチケットは売られている。
使い切らなかったとしても、返金には応じてくれない。だから、この1時間45分の間に過不足なく使い切る必要がある。あんまりまとめ買いをしない方がいい。欲しいと思ったらすぐに追加購入できるので、チビチビ買うのが正解だろう。
とりあえずこの場で3,000円。このあと1,000円追加して、5名グループで合計4,000円しか消費しなかった。案外食費はかからないものだ。「乗船料は安いけど、食べ物がぼったくってる」という構図になっていないのが素晴らしい。
素晴らしいことばっかりではない。
心配されていた雨が、一気に降り始めた。しかも、かなりの勢いだ。土砂降り、という言葉が正しい。風も強くなってきたし、快適なクルージングとはいかないっぽい。
屋根があるので飲食しながら濡れることはない。しかし、東京湾の夜景を満喫、というのはちょっと厳しくなってきたぞ。一気に周囲がガスってきた。
テラスの案内が階段の裏側に貼ってあった。この納涼船が終わったら、すぐにこれを剥がして定期船として元の装いに戻るのだろう。
Aデッキの上には「トップテラス」というフロアがあるのだけど、この雨なのでトップテラスは閉鎖されていた。たとえ閉鎖されていなくても、誰も足を踏み入れなかったと思う。それくらい、しゃれにならない雨だ。
Aデッキは5名が談笑できる手頃な場所が見つからなかったので、Bデッキまで下りる。Bデッキの屋外にはベンチがあったけど、ここも既に人でいっぱい。
「Dデッキまでいけば、フリースペースがありますよ」
ということで偵察部隊を船底に送り込んだのだけど、しばらくしたら首を横に振りながら戻って来た。
「空いてはいるんですけど、窓一つないです。これじゃ、船に乗ってる意味があんまりないです」
ああ、それはダメだ。船底で宴会をやる、というのはちょっと面白いけど、折角だから東京湾の夜景も見たい。それでこそ納涼船だ。窓がなけりゃ、単なる「地下の居酒屋で不自由な宴会」をやっているに過ぎない。
どうやらCデッキにはなんとか場所があるとの偵察結果だったので、Cデッキを目指す。
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