見たことも聞いたこともない謎料理「東北農家鍋」をディープ西川口で食す

東北農家鍋の具がきたぞー。

大きなザルの上に、野菜が乗っている。

「色とりどりの野菜が、たくさん」と形容しようとしたけれど、ちょっと待った。案外シンプルだぞ、これ。大量のいんげん、かぼちゃ、じゃがいも、とうもろこし。以上。潔すぎて、一同震えた。これまで僕らが漠然とイメージしていた「鍋料理」とは明らかに違う。

いや、思い返してみると、これまでだって潔い食材の鍋は存在した。博多の水炊きなんてシンプル・イズ・ベストな具だし、もつ鍋だって基本はキャベツとモツとニラだけだ。

だけど、今回この具は、「ボリュームがすごいのに、なんかシンプルな具」という状態なので、テンションが上がるような上がらないような、微妙な塩梅なのだった。

さすが中国東北地方の鍋だ。寒い大地だろうから、農作物が豊富にあるわけではなかろう。こういう具こそが、リアルなんだと思う。ここで、カラフルな野菜や肉、魚がゴチャゴチャ入っていたら、リアル感が感じられない。僕らは金持ちの料理が食べたいんじゃない。庶民的な(雰囲気の)料理が食べたいんだ。

ちょっと侮っているような言い方をしてしまったけど、とにかくボリュームが凶暴だぞ。人物対比をすると、このサイズ感だもの。広角レンズを使って遠近感を強調しているんじゃなくて、実際にこれだけ、デカい。そして盛りがいい。ラーメン二郎の野菜マシ状態の盛りあがりっぷりだ。

なによりもこのいんげんのデカさよ。和食でよく見かけるさやいんげんが貧弱な栄養失調に見えてしまう、そんな発育の良さ。グラマー、セクシーと形容するにはちょっと無骨だけれど。

ザルの野菜類とは別に、骨つき肉がやってきた。すでに下茹でされているものだ。骨が多く、食べるところはさほど多くない。あくまでもこの鍋は、葉野菜ではない野菜をガツガツ食べる料理であることを知る。

奥に、しょうゆだれと薬味が入った湯呑が見える。

ガンガンに熱した鍋のふたをちょこっとずらし、そこに野菜と肉を入れ、さらにはヤカンから水なのかダシなのか、液体を注ぐ。

鍋が熱々なので、湯気がかなり出る。なるほど、そのために鍋の蓋が少しだけずらされているのか。

みよこの地獄の有様。

昔だったら、お坊さんが庶民に説法する際、「悪いことをすると、死んでから地獄でこのような目に遭うぞ」と諭すのに使えそうだ。それくらい、グツグツが半端ない。でかい鍋で、強い火力で、そして目の前で繰り広げられるスペクタクル。

こうなると一同、圧倒されるやらびっくりするやらで、苦笑するしかない。すごい迫力だ。活火山の火口を、縁から覗き込んでいる心境だ。冗談ではなく、本当にそんな気になる。だって、鍋がデカくて目の前なんだもの。

「机にめり込んでいる」鍋だからこその迫力だ。

(つづく)

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