2020年6月/三密の山・高尾山&高尾山ビアマウントのwithコロナレポート

2020年06月21日(日)

朝6時過ぎに家を出て、雨が振り始めたために一旦撤退したのちに家でふて寝。昼頃にもう一度起き直し、「さて今日はなにをして過ごそうか?」ということになった。

おとなしく家にいても良かったのだけど、何しろ縦走計画がぽっかり空いてしまったので、喪失感が大きい。そして、昼にもなると雨はやんでいた。もともと雨の予報は出ていなかったし、当然といえば当然だ。

「じゃあ、高尾山だけ登って、ビアマウントで早い夕ごはんを食べて帰ってこよう」

ということにした。高尾駅からバスに乗って小仏峠まで行って、そこからミニ縦走を企てるということもできた。でも、そんな中途半端な縦走だったらやらないほうがいい。陣場山からの縦走企画にお取り置きしておきたい。

今回は、「ザ・観光地」である高尾山を真正面から登り、withコロナにおける混雑状況を見極める調査の旅、ということにした。もちろん、人が密集している場所に出るのは極力控えている我々だ。ガチ混みだったら、すぐにUターンするつもりだ。正午を過ぎてからダラダラと高尾山を目指すのは、敢えて混雑を避けるためでもある。

果たして高尾山は混んでいるのだろうか?それとも、空いているのだろうか?

空いている、ということはさすがにないと思う。だって、東京都民において、「ちょっくら山っぽいところに行ってみるか」と思ったらまず思いつくのが高尾山だからだ。緊急事態宣言からの東京アラートで自粛を余儀なくされていた1,400万人の東京都民が、まず目指すのは高尾山という可能性がある。そうなると、芋の子を洗う状態になっていてもなんら不思議じゃない。

事前にいしがビアマウントに電話をかけてくれていた。予め予約をしておこう、というわけだけど、2名なら予約不要とのこと。4名以上からだと、予約しておいたほうが確実らしい。しかし、今日はとても空いていて、予約無しでも余裕という情報だった。お昼時点ではそうかもしれないが、午後から夕方になるにつれて果たしてどうかな。なにせ天下の高尾山だ。そしてその名を轟かせている人気スポット、ビアマウントだ。油断はならない。

13:59
14時近くなって、新宿駅に到着。「今日はこれから登山なんです」というシチュエーションで、ここまで遅い時間に都心にいるというのは過去に経験がない。夜景でも見に行くの?というシチュエーションだ。

そういうお気軽な山、それが高尾山だ。

東京界隈の地理に詳しくない人のために説明しておくと、高尾山は東京都の西にある標高599メートルの山だ。ミシュラン・グリーンガイドに掲載されたり、つい先日は「日本遺産」に認定されたりと、何かとほまれ高い山だけど、実際はお土産物屋さんとか茶店が並ぶ参道で、かなり俗っぽい山だ。メインの登山道である1号路なら、麓から山頂まで1回も土を踏まずに、舗装道路を歩くだけで登頂できてしまう。

この山がなぜそこまでも愛されているのかというと、今回の僕らがそうであるようにチンタラしていても登れる、便利な山だからだ。

新宿駅から京王線で直通。または特急八王子行きに乗って途中北野駅で乗り換え。するっと山麓の「高尾山口」に到着だ。

山ってぇのは、登りはじめるまでが大変だ。最寄り駅に着いてからも、バスに乗って登山口まで移動があることが多い。で、バスが便数が少ないので、どのタイミングで到着すればよいのか、あれこれ調べるのが結構面倒で腰が重たくなりがちだ。

それがどうだ、高尾山の場合はなんにも考えずに登山口に立てる。なにしろ、高尾山口行きの電車はバンバン出ているのだから。この心理的ハードルの低さは、都心近郊の山として名高い筑波山や丹沢山系や奥多摩の山々のどれにもできない芸当だ。

そんなわけで、14時だっつーのに今からお昼ごはんですよ。

いしが「BERG(ベルク)でホットドッグを食べたい!」というので、BERGに行くことにした。ここは新宿駅の地下に昔っからある名店で、ビールとホットドッグが特に知られている。僕はこれまで何度か潜入を試みたことがあるけれど、タバコ臭くて客が多くて、諦めたことが何度かある。まともにご飯を食べるのは初めてだ。

もちろん混んでいれば入店はやめるつもりだった。最近、友人たちと会食の話が出ても、「Zoomで・・・」とか「屋外のテラス席があるところじゃないと」なんて言っているんだ、人付き合いが悪いクセに、こういうときだけ狭い空間でご飯を食べているなんて友人たちに示しがつかない。

しかし、幸い昼下がりということもあって、お店は空席が多かった。だったら、ということでご飯を食べていくことにした。

いしがホットドッグ、僕がカレー。

狭いテーブルの傍らには、透明のアクリル板が立ててあった。これが2020年6月時点における、BERGなりの新型コロナウイルス対策、というわけだ。

この記事は5年後も10年後もこのサイトに残り続けるだろうから敢えて記録として残しておくが、自粛ムードが解除されつつある2020年6月は、「どこまで厳格にウイルス対策をすべきか?」ということであらゆる業界が首を捻っているところだ。対策を打っていないところはぜんぜんやっていないし、ギャグですかそれは?というほど対策を打ちまくっているお店もある。

笑っちゃうのが、「居酒屋で、お店の入り口にはゲート状の次亜塩素酸水噴霧器があってそこを客は通過。注文は紙のメニューがなく、お店のQRコードをスマホで読み取り、ブラウザで表示された画面から行う。四人がけテーブルは十字形にアクリルパネルが立てられ、料理の受け渡しは店員さんがやってくれず、料理は客席手前までしか持ってきてくれない」なんていうお店が大真面目にテレビで紹介されていたことだ。料理の取り分けもできないし、会話は「刑務所の接見室」みたいにアクリル板越しだし、なんか新しい時代を予感させる凄みがある。

または、アクリル板は設置しないけれど、みんな透明のフェイスシールド(サンバイザーのつば部分が顔を覆うように下を向いているもの。透明のつばになっていて、自分の顔に他人のつばが飛んでこないようにブロックする)をつけた状態で乾杯し、フェイスシールドの下にジョッキをねじ込んで酒を飲んでいたり。

まさか20世紀のSF作家も、こんなアイデアを思いついた人はいないだろう。もしこんな近未来SFを発表していたら、「冗談にも程がある」とまったく相手にされなかったはずだ。でも見ろ、これが現実だ。

さすがにそんなすごいお店はそんなに多くはないだろうけど、各飲食店は自分なりの解釈で、「うちは感染症対策をちゃんとやっています」ということを表現している。入り口に消毒液が置いてあるのは当然(ただし、アルコールが慢性的に不足しているため、消毒液の中身が何なのかは客はまったくわからない)だし、このBERGのようにアクリル板を設置しているお店も結構ある。

ただ、見ての通り、狭いテーブルにかろうじてアクリル板が乗っている状態。そのため、「料理を他人からの飛沫感染から防ぐ」ことができても、対人において飛沫感染をブロックするという役目は殆ど果たせていないのだった。

「形だけじゃん」と言うのはたやすい。でも現時点ではこれが限界。打つべき手は段階的に打っていく、それしかやりようがない。あとは、周囲に迷惑をかけないように「食事は手早く、お喋りはあまりしないように」と客が心がけるくらいか。

五穀米と十種野菜のカレーセット660円。

スパイシーな味わいで結構食べごたえがある。

ホットドッグ・ブランチ550円。

食べたら、すぐにお店をあとにする。さすが新宿の名店、結構混んできた。お昼からビールを飲んでいる人が多いようだ。

新宿駅はかなりの人が行き交っていた。通常モードの週末がどのような状況なのか詳しくないので比較はできないけれど、元の生活に戻りつつあるように見える。「ソーシャルディスタンス」を意識している人は少ない印象がある。もちろん、他人との距離は空けたほうがよい、ということは頭にあって意識はしていても、それが自分の行動に定着していないといった感じだ。

15:12
ガラガラの電車に乗り、高尾山口までやってきた。いつもは四六時中人で溢れかえっている駅前も、人影がまばらだ。

新宿駅にあれほど人がいたのに、電車は空いていて余裕で座ることができた。一体あの人達はどこから現れてどこへ消えていくのだろう?

高尾山口からケーブルカーの清滝駅までの道中、お店は見渡す限り全部閉まっていた。中にはやっているお店があったかもしれないが、気が付かなかった。

下手に営業を再開すると、大勢の人を招き入れてしまうことになる・・・ということで自粛を継続しているのだろうか?それとも、お昼時だけ営業して、昼下がりになると閉店する短縮営業なのだろうか?時刻は15時、そういう可能性はある。

15:21
今回はケーブルカーを使わないで、6号路から山頂を目指すことにした。所要時間はだいたい90分の見込み。

15分おきに運行されているケーブルカーを横目に、6号路を歩く。さすがにケーブルカーは着席できずに立っている人がいたけれど、在りし日の大混雑状況と比べれば大違いだ。ただそれでも、昨今の事情を考えると、「わっ、人が密集している!」と身構える状況に見える。

6号路の入り口ともいえる、舗装道路から山道に分かれるポイントでは、ソーシャルディスタンス確保のための張り紙がカラーコーンに貼り付けてあった。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため休憩の際は約2mの間隔をあけましょう!

と銘打たれた張り紙で、イラストとともに

大人のイノシシの大きさは110cmから160cm。イノシシ親子が間に入れる程の間隔をあけて自然公園を満喫しましょう!

と書いてあった。

堅苦しく注意するよりも、ちょっと楽しく表現したほうがいいよね、という優しさを感じさせる内容だ。しかし肝心のイノシシ親子をなかなかイメージできない。

ここでは休憩のことしか書いていないけど、登山中であっても2メートルの間隔を開けることは当然求められるだろう。なにせ、ハアハア熱い吐息を吐いているのだから。後ろの人は油断ならない。

15:22
6号路を歩く。

高尾山の場合、舗装された1号路を歩く人がとても多いけれど、その次に人気なのがおそらくこの6号路だ。沢沿いに進んでいくルートは、変化があるし歩いていて楽しいからだ。

しかしぜんぜん人がいない。今この時間から山頂を目指す人が殆どいないのは当然として、下山のためにすれ違う人の数も少ない。どうやら、本当に高尾山は人が少ないらしい。これは意外だった。「安・近・短の場所」として人がウワーッと集まっていると思っていたので。

15:31
琵琶滝が見えてきた。以前僕が滝に打たれて修行体験をした場所だ。また体験したい、と思いつつまだ再訪がかなっていない。いずれ機会をみて、ぜひ。

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時間が時間だけに、さすがに滝に打たれている行者さんはいなかった。

15:39
ちょっとした坂をぐいぐい登る。モンベル製のマスクは通気性に問題がなく快適なのだけど、さすがに汗で濡れてくると息苦しさが出てくる。このあとは、人とすれ違うときだけマスクをし、それ以外はマスクを顎にずらすという運用に切り替えた。

なお、人とすれ違ってしばらくはエアロゾルが空中を漂っていることを想定し、10メートルくらい距離が空いてからマスクを外す、という念の入れようだ。そこまでやる必要があるのかどうかはわからないけれど、今はまず「基本動作」を身に着けておきたい。応用編としてルールを緩和するのはその後でいい。

15:55
「あれっ?」

目の前の看板に、「右:自然研究路1号路、左:自然研究路2号路・高尾山頂」という文字が彫られていた。琵琶滝に気を取られてしまい、6号路から外れてしまったのだった。

高尾山の登山路を紹介する地図には描かれていないことがあるけれど、琵琶滝でルートは分岐し、そのまま沢沿いに進む6号路と、2号路・展望台につながる別ルート(特に名前はないらしい)があるのだった。紛らわしい。

たとえば、高雄電鉄登山のwebサイトを見ると、このルートは記載がない。

https://www.takaotozan.co.jp/course/

この地図を頼りに登山をしていたら、目の前に現れた標識に目を白黒させることになる。

一方で、高尾山マガジンのwebサイトを見ると、細く琵琶滝から2号路に向けてルートが伸びているのがわかる。

https://mttakaomagazine.com/trails

このまま右に曲がれば、ビアマウントはもうすぐそこだ。しかしそれはあんまりにも拍子抜けなので、2号路から3号路を経由して山頂を目指すことにした。

(つづく)

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