慣れない団体山歩き【西沢渓谷】

一人で山に登るのは気軽で良いものだ。思い立った日に突撃できるし、他人にペースをあわせなくていい。山は一歩間違えば死に直結する場所だ。だから、同行者のリスク管理までこっちが背負うのは、はっきりいって相当面倒なことだ。

しかし、仲間とわあわあ言いながら登るってのも悪くないものだ、と最近認識が改まってきた。SNS全盛の時代だからこそ、フィジカルを使った実体験というのはいっそう大事になってきているし、その実体験を「その場で、仲間とじかに共有」も見直されていると思う。まあ、当たり前の事なんだけど、仮想空間でのコミュニケーションが増えれば増えるほど、これまでの「人付き合い」ってのが改めてクローズアップされることになる。

そんなわけで、2013年の僕は会社の山サークルに入ってみた。同好会のたぐいにはこれまで一度もお世話になったことがないのだが、同じ趣味の人が集うならさぞや楽しいだろうと思ったからだ。

山サークルに入ってみて驚いたのが、その年齢構成のいびつさだった。50歳を過ぎているような熟練者が皆無、というのも驚きだが、新入社員が全体の半分近くを占めていたからだ。一体何事だ、おい。入社と同時に入会すると楽天ポイント5,000円分プレゼント、とかやってたのかと疑ってしまうくらいだ。

そういえば、ここ数年は若者の登山ブーム、というかトレッキングブームが到来しているというのは僕も実感するところだ。その勢いで、会社の山サークルに入ってくるのだろう。なので、会全体の平均年齢がものすごく低くなっている。「登山」というジャンルにおいて、こんなことになるとは数年前まで想像だにしなかった。「ジジババの姥捨て山振興会」だと嘲笑っていたのに。いつの間にか僕の方が姥捨て山側に回る年代になっちまってた。

ただ、新入社員諸君は若いこともあって、山に対して知識も実績も乏しい。そもそも、山が好きだから山登りやります!というよりも、みんなで屋外でわーわー楽しめそうだから、という動機の方が強いっぽい。だから、高尾山からまずは始めます、高い山なんてどうなんすかねえ、という人ばかりだ。そのくせ、「富士山には登りたいです」というのだから面白い。やっぱり、富士山は登山経験の有無を問わずものすごいブランドイメージがあるということがわかる。

そんな若者たちなので、僕とは基本的に住んでいるテリトリーが違う。僕は泊がらみの山歩きを一緒にできる仲間が欲しいのだが、新入社員諸君はまだそこまで実力もなければ興味もない。そもそも、彼らは「同期の仲間たちと楽しくやりたい」と思っているのであり、一回り以上歳が離れているおっさん(おかでん)とつるむ気なんて全然ない様子だった。おっさん側は「若い世代と交流したい」と思っていても、若者たちは「おっさんに興味ない」というこのギャップに切なくて悶絶した。

このあたりも、SNSの普及によるところが大きい気がする。仲間で情報交換し、つるむことが容易になった分、仲間以外の人と積極的に交流する動機付けが減った。そりゃそうだ、わざわざ気を使わないといけない年上の人と接するなんて面倒だもん。その年上からいろいろな知見が得られるかもしれなくても、多分今の若い世代なら「そんなの、ネットで調べれば十分ですよ」と一刀両断だろう。切ないのう。

僕は若者に媚を売る必要はない、自分たちの世代で楽しくやるぜ!と40歳前後のサークルメンバーに目を向けてみると、これがもう全然元気がない。いや、元気はあっても、「家族がいるので泊まりは無理」とか、「子供を連れて行きたいので、子供が行ける場所」といった制約がついてくることが多い。なので、やっぱり「山小屋泊で縦走したいのう」という僕の希望と合致する仲間ってのは見つけづらかった。あー。

あと、僕くらいの年齢になると、役職がついたり仕事が忙しかったりして、公私ともに充実しまくりなわけだ。おかでんのように独身、万年平社員のモラトリアムな人生を送っているのとはわけが違う。そんなわけで、このサークルに入っていると、世代間ギャップにクラクラきたり、同世代の充実ぶりにモヤモヤしたりと、ルサンチマン刺激されまくりであんまり居心地が良くはないのは事実だ。でも、これが現実なわけで、僕は僕なりに開き直って生きていくしかない。というか今の生活で特に不満があるわけでもなし、他人は他人でいいじゃないかと思うことにした。これでまた悟りの境地に一歩近づいたぞ。

さて、そんなおかでん悶々型山サークルだが、西沢渓谷に日帰りハイクをやることになった。通常の月例会なら、公共交通機関や各自の車に分乗して現地に向かうことになるのだが、今回は大掛かりにバスを仕立てて行くという。そんなお大尽な山登りができるなんて、さすがはサークル組織だ。一人でならありえない世界。せっかくなので、参加表明をしておいた。

西沢渓谷。山梨県塩山市の北側にある、風光明媚な渓谷だ。甲武信ヶ岳の南腹に位置し、四季折々に美しい景色を見せてくれる。以前甲武信ヶ岳登山をした際に下山した雁坂峠入口が、西沢渓谷の入口でもある。

以前から行ってみようとは何度も思っていたのだが、未だに果たせず。ここは渓谷ということもあり、どん詰まりの谷底にある。なので、紅葉シーズンなどになると人が溢れかえり大変なことになると聞いたからだ。そのため、渓谷沿いにある遊歩道は一方通行になっており、今来た道を戻るということはできない。

また、山のてっぺんという「わかりやすい目標」があるわけではないので、ピークハンターを自称する僕からしたら、なかなか行きづらい場所ではあった。だから、今回のような企画は渡りに船だった。

2013年09月28日(土)

集合場所

バスが並ぶ

06:34
当日朝、新宿駅西口に集合する。山梨方面に向かう貸切バスは、このあたりで乗車することが多い。それは、首都高速3号線のランプが近くにありすぐに中央高速に向かうことができるからだ。また、高層ビル街があるこのあたりは車の交通量が比較的少なく、路肩にバスを停めるのに向いている。

しかし、いろいろなビルがニョキニョキ立っている上に、地上と地下が入り組んでいる場所だ。地上を歩いているつもりが実は地下だった、ということもあり得るダンジョンであり、ややこしい。「新宿はよく買い物なんかで行きますよ?」という人であっても、それは東口側の話であって西口の高層ビル街が詳しいわけではない。なので、かなりの余裕を持って到着しておかないと、道に迷って遅刻してしまう。

しかも、お互い顔もあまり覚えていないようなサークルメンバーが集まるわけであり(このサークルは毎度の山行に参加義務はなく、幽霊もいっぱいいる)、さらには特に集合のための目印があるわけでもない。案の定、道に迷いましたーとか寝坊したので間に合いませんーという人が何人か現れた。

おおそうか、「寝坊」という選択肢が存在するのか!早朝集合とはいえ、その言葉に新鮮さを感じた。というのも、僕一人の登山であるとか、兄貴やコダマ青年との登山の場合、少人数であることもあって「寝坊」という概念がまったくなかったからだ。緊張感が違う。しかし、今回のような団体ツアーになると、つい緊張感が保てないのかもしれない。また、いくら寝ても寝足りないという若者ならではの特性ともいえる。

昨今おっさん化著しいおかでんは、朝起きるのが苦じゃなくなってきた。これも老化の一種なんだろうな。でも、こういう老化なら歓迎だ。眠くて仕方がない朝って、しんどいから。

車中で朝ごはん

07:15
貸切バス、出発。

「団体行動だから緊張感が欠けてる」と他人を評した僕だが、それは僕自身もそうだ。一応事前にリーダーから配られた行動計画や地図はチェックしているが、「自分で調べる」ということをしていないので頭にズシンとは入ってこない。「何かあったら他人がなんとかしてくれる」という気持ちがないといったら嘘だ。

一人山歩きがもっぱらの僕でさえこうなのだから、常に誰かに企画してもらって山に登っている人ってのは本当に地図を読んでいないかもしれない。登山ガイドに連れて行ってもらう山ツアーの参加者が、地図すら持っていなかった・・・という笑えない笑い話があるが、その気持ちよくわかるわー。今更ながら。

というわけで、リーダーが手配してくれたバスのシートにどっぷりと腰を落ち着け、朝ごはんのおにぎりとジンジャーエールを食べる。楽じゃのう。ええんかいのう、こういうので。

後方の席では、新入社員たちがはしゃいで会話に余念がない。いいね、元気があって。加齢と共に、人はみな自分の世界を作り上げ、縄張り意識が強くなり、上下関係を意識するようになる。おいそれと仲良くはできない。でも、若い人たちはそういう「しがらみ」が薄い分、本当にアクティブだ。素直にそれは羨ましいと思う。

中央高速渋滞中

07:17
中央高速は毎度お馴染みの大渋滞でござる。

自分がハンドルを握っていたら、この渋滞を超えるまでの間にくたびれてしまう。しかし、今や自分は客席に身を沈める身。しかも、タイムキーパーでもない。リーダーはこの渋滞をやきもきしているかもしれないけど、僕は「ま、こんなのもありだよね」と余裕だ。

西沢渓谷人口

09:48
西沢渓谷入口に到着。

お手洗い

09:51
道の駅みとみからしばらく進んだところに西沢渓谷歩道の入口があり、そこにお手洗いがある。バスには乗らず、現地に直接マイカーでやってくる人もいたことから、ここが一旦全員集合の場所となっていた。