アプト式とSL、両方乗るなら一日がかり【大井川鐵道】

07:09
JR東海金谷駅の駅舎にほぼ隣接して、大井川鐵道金谷駅の駅舎がある。

駅舎、しかも始発駅でJRの大動脈ともいえる東海道本線の駅に隣接しているというのに、ものすごくシンプルな建物だ。

遠目でみると、「プレハブ?」と思ったが、近づいて見てみたらさすがにそうではなかった。

駅舎の中。

写真に写っているものが駅舎のほぼすべて、というほどの広さしかない。とはいえ、有人駅ではある。

平日の朝だけど、駅舎を行き交う人はだれもいなかった。

時刻表を見ると、概ね1時間に1本の運行状況だった。しかしよく見ると、そのうちのいくつかは観光列車であるSLだし、たった1駅先の新金谷止まりの列車も混じっている。沿線に住む住民の方々が日常の足として使うには厳しいダイヤだった。

そういえば、電車のきっぷが飲食店の自動券売機で売られているって、僕は初めて見た。確かに、こういう汎用品を使ったほうが安くつくだろう。

僕が知らないだけで、あちこちのローカル路線ではこういう券売機が使われているのかもしれない。いや、そもそもワンマン運転で車内精算することのほうが多いか?

なおこの券売機、2,000円札が使えるという点ですごいのだが、5,000円札、10,000円札は使えないので注意だ。

ボタンの上段が大人乗車券、下段が子ども乗車券の発券ボタンになっている。駅数が少ないので、全駅名がボタンになっているというのは面白い。

駅名で「門出」とか「合格」という演技の良い名前があるのも、面白い。

本来なら大井川鐵道は井川まで含めると長大な路線なのだが、なにせ途中が土砂崩れと崩落で断絶してしまっている。

不通区間は「川根本町コミュニティバス 千頭家山線」を利用することになるので、その運賃表が駅に貼ってった。

不通区間は川根温泉笹間渡から千頭の間なのだけど、このバスは川根温泉笹間渡から2駅手前の家山駅から出発する。途中、川根温泉笹間渡駅には立ち寄らない。

なので、僕らは「大井川鐵道全駅完全乗車」は今回できていない。家山駅から先2駅分は、乗らないからだ。乗り鉄ならば許されない空白区間だろうが、今回はそこまで完璧を求めない。

丁寧に川根本町コミュニティバスの乗降方法とバスのりばについて説明がある。

そういえばさっき見た券売機、不通区間の駅名がボタンに書かれていなかった。「売り切れ」のランプを付けておけばよいのだけど、そうなっていない。つまりは、復旧の目処が全然立っていない、という証拠だ。

復旧のために22億円かかる、という試算があったようだが、昨今の人件費・資材費高騰でもっとコストは上昇するだろう。果たして復旧できるのだろうか?

バスは、あくまでも「川根本町の、コミュニティバス」だ。「大井川鐵道不通区間の代行バス」という立ち位置ではない。

そのため、大井川鐵道の列車到着とうまく同期したダイヤにはなっていない。便数がとても少ない。

我々がなぜ朝7時という早朝に金谷駅にやってきたのかというと、ひとえにこのコミュニティバスの便数が少ないからだ。

大井川鐵道 金谷駅 07:24発 家山駅 07:56着
川根本町バス 家山駅 08:15発 千頭駅 09:00着

という計画を僕らは立てているのだが、この便を逃すとアウトだ。何がアウトって?その日のうちに終点の井川まで行って、戻って来るということがアウトだ。

なにせ、バスは08:15発を逃すと、次は12:06発。約4時間後だ。この便で千頭に到着できたとしても、既に井川行きの終電は終わっていて、間に合わないのだった。厳しい。

つまり、オール公共交通機関で大井川鐵道の井川往復をやるならば、金谷駅には朝7時に着いていないといけない、というわけだ。これはかなり厳しい。

じゃあみんなどうしてるんだ?と不思議なのだが、多くの人はSLに乗って満足するとか、車で途中まで移動してそこから乗降するといったことをやっているのだろう。

川根本町からの告知を読むと、「バス1台で運行しているので、客が多すぎて乗れない場合は乗車を断る」と書いてある。「増発はしない」とも明言していて、思わず「おお」と声が出る。そんなリソースはないよ、というわけだ。

ちなみにバスの乗客定員は31名。土日祝日だと、あっという間に31名なんて到達してしまいそうだが、その場合は家山駅で途方に暮れるしかない、というわけだ。

さすがコミュニティバス。だって、趣旨が町民の足だもんな。観光客に便宜を図るには限界がある。

隣駅の新金谷駅まで、歩いていった場合の道順が地図で紹介されているのも風変わりだ。

だって、鉄道なんだから、電車に乗っていけばいいだけの話だ。

それでも敢えて「歩いていくこともできますよ。1.6km徒歩21分ですよ」と丁寧に説明しているのは、ひとえに便数が少ないからにほかならない。

あと、新金谷駅は大井川鐵道の本社や車庫がある本拠地で、ここできかんしゃトーマスにまつわる展示がされているという。そういったものを見たい人向けの案内なのかもしれない。

いやでも、歩いて行かれたら会社は全然儲からないけど、それでいいのか?人が良すぎないか?

改札口。

この駅に駅員さんがいるのは、07:00~13:10と書いてあった。なんと、お昼以降は無人駅になるのだった。びっくり。

むしろ、途中駅である新金谷や家山のほうが遅くまで駅員さんがいる。

僕らは復路、家山から新金谷までの間でSLに乗る予定だ。なのでこれからの往路は、この駅で乗車券を買って改札を通過することになる。

ただ、このSLのチケットがややこしかった。

大井川鐵道の公式サイトでネット予約ができる他、東海道・山陽新幹線でお馴染みのEX予約でも予約ができるのだという。えっ、マジで?EX予約って、新幹線以外にもサービスを横展開していたのか。

どうやら「EX旅先予約」というサービスが存在しているらしく、それを使ってSLの予約ができるという。

なんで自社の公式サイトで独占予約にしないんだろう?と不思議だったが、せっかくなのでEX旅先予約なるものを使って予約をしてみた。

予約はすんなりいった。EX予約で毎回お世話になっているメアドから、「予約が取れたよー」という連絡がやってきた。

《予約内容》
■契約形態  手配旅行
■プラン名  大井川鐵道(SL列車) ≪4/13〜6/1ご乗車分はこちら≫【SL列車】かわね路4号片道乗車券 川根温泉笹間渡駅(16:04発)⇒新金谷駅(16:43着)※SL列車は新金谷駅止まり。乗車券は金谷駅まで 
■旅行期間  2025/04/28(月)    大人3名 こども1名
■旅行日数  1日間
■申込方法  インターネット申込
■支払時期および方法
購入時(契約成立日)に、EXサービス会員の登録クレジットカード会社へ代金決済処理を行います。(クレジットカード一括払いのみとなります)
■プラン内容
★★★こちらのプランは、大井川本線の「川根温泉笹間渡駅」から出発、「新金谷駅」まで(乗車券は、川根温泉笹間渡駅〜金谷駅まで)乗車するプランです。★★★
※SL列車は新金谷駅止まりとなります。新金谷駅⇒金谷駅間は、普通列車にお乗り換えください。

チケットは電子チケットで、メールに書かれているURLをクリックするとチケットが表示される・・・

はずだったのだが、システムの不具合が起きたので、金谷駅または新金谷駅でチケットの発券をしてくれ、という通知が後にやってきた。そんな事が起きるとは意外。

家山駅や川根温泉笹間渡駅ではチケットの発券をやってくれないので、今、金谷駅を出発する前に帰りのSLのチケット発券を受けておかないといけない。

公式サイトでSLを予約した人も、同様に金谷駅または新金谷駅でチケットの発券を受けないといけない運用だった。そのため、金谷駅でJRから乗り継ぐ場合は時間に相当の余裕を持ってくれ、と注意書きが書いてあるくらいだ。20分以上の時間を見ておいて欲しい、ということが書いてある。

SLのチケット発券のために有人窓口に行列ができてしまったら、あっという間に20分なんて過ぎてしまうだろう。

「SLチケットの発券をお願いします」と窓口の駅員さんに告げると、やや意外そうな顔をされた。えっ、僕何か変なこと言いましたか?

駅員さんはパソコンを指差し、「発券システムがまだ立ち上がってないんですよ。もう少し待ってもらえますか」と仰る。えー、そんなこと、あるの?もう有人窓口が開いている時間だし、電車の出発時間まで残り時間があまりないのに。

今日が平日ということで、駅員さんが油断したのだろうか?

「エクスプレス予約で予約したんですけど、システム不具合とやらでここで発券してくれ、という指示を受けたんですが・・・」

と伝えたら、「ああ」と駅員さんは納得した声を上げ、手元にある乗客リストと思しき紙をペラペラめくりながら「その話は聞いています。SLの中で発券しますんで、その旨を乗務員に伝えてください」と言われた。

へえ、運用ルールが変更になったのか。

いずれにせよ、決済そのものはクレジットカードで完了しているので、お金を持ってアタフタしなくて済む。その点は安心だ。

さて、これから大井川鐵道の旅、始まりだ。

この路線図を見ると、会社の本拠地である新金谷が大きく描かれていて、金谷駅はザコキャラ的にちょっと小さく描かれているのが印象的だ。大井川鐵道的にはそういう扱いなんだな、金谷駅って。

僕らみたいな観光客が利用する、大井川鐵道の入口となる華々しい場所だと思ったのだが、どうもそうではないっぽい。

(つづく)

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