アプト式とSL、両方乗るなら一日がかり【大井川鐵道】

09:15
大井川鐵道井川線、千頭駅を出発。ここから終点の井川まで、約2時間の長旅となる。

トロッコ列車みたい、と外観を見て思ったが、実際に相当狭い客車だ。写真を見ての通り、大人3人が横に並んで座ったらほぼいっぱい、という横幅しかない。

座席は基本的に2席+1席で1列につき通路を挟んで3席あるのだが、客車の最後尾は通路がない分、横長のシートになっている。バスと一緒だ。

それにしても、バスよりも横幅が狭い列車に乗れて、ワクワクする。

各車両の出入り口の開閉は手動になっていて、駅を出発する際は車掌さんが全車両を周り、扉が閉まっていることを確認している。小走りで慌ただしく対応していて、なかなか大変な仕事だ。ほかにも、途中乗車してきたお客さんを見つけたらチケットを販売したり、沿線の風景の解説をしたりと、ローカル路線とは思えない忙しさだった。

千頭駅ホームに停車している、トーマスのなかまたち。「機関車に顔が付いている」という発想がそもそも強烈なインパクトを誇るが、それを横から見るとさらに強烈だった。能面を見ているかのようだ。

09:22
景色の良さは本当に素晴らしい。

大井川の眺めを楽しむなら、井川方面に向けて進行方向右手のほうが景色が良いかもしれない。

金谷を出発したときは広大な河原を誇っていた大井川だが、だんだんと細くなり水量も減ってくるのがよく見えて楽しい。

09:27
いっぽう、進行方向左手は駅を見る機会が多かった印象だ。正確に数えていないので「印象」でものを語っているが、なんとなくそんな感じ。

いわゆる「秘境駅」だらけの路線なので、バス停かな?という駅もある。

たとえ駅前に集落があったとしても、実際に電車を使うという地元民は少ないだろう。なにせ便数が少なすぎて、日常生活の足としては使いづらい。

スピード遅めで、ゴトゴトと走る。

時折、大井川の右岸と左岸を行き来することがあるので、それも変化があって楽しい。

09:40
駅にやってきた。

ここには側線がある。

列車すぐ脇にある細いのは、れっきとしたホーム。路面電車の電停並だ。

川根小山、という駅だった。

周囲は森で、集落も集落に通じる道も見当たらない。もちろん道はあるのだろうが、列車で通り過ぎるときには見つけられなかった。

でもそんな駅なのに、駅員さんとヘルメットを被った作業員さんが立っていた。作業員さんはともかく、駅員さんがいるのはなぜだろう。有人駅・・・なわけないよな、ここ。

「川根小山」という看板の下に、「川猫山」とも書いてあった。猫人気にあやかろうというダジャレなのだろう。

09:41
川根といえば、お茶で有名なエリアだ。川根茶、というブランドになっているくらいだ。「静岡茶」という表現よりも解像度を上げて「川根茶」と名乗るくらいの、ブランド。「新潟県産コシヒカリ」ではなく「南魚沼産コシヒカリ」と名乗るようなものだろう。最近は和紅茶を売りにしていたりもする。

川根は山と谷と川が中心の場所なので、茶畑があちこちに点在している。牧の原あたりの「一面、茶畑」という大規模農園とは違う。

ちょうど新茶シーズン前、ということで茶畑の緑がとても美しい。お茶を飲まずとも、心が癒やされる光景。

09:50
赤い鉄橋を眺める。車内放送で解説があったけど、橋の名前は忘れた。

大井川の川幅がどんどん狭くなってきた。

結論から言って、井川までの2時間は見どころだらけで、飽きることがなかった。これはすごいことだ。

思い出すのが、黒部渓谷鉄道のトロッコ列車だ。あれも大変素晴らしい路線なのだが、途中からはトンネルだらけになってしまって退屈になる。最奥の欅平までぜひ行ってみたい!と思うのが人情だが、途中駅で下車して、そこから折り返しても全然後悔はしない、そんなレベル。

黒部も大井川も両方とも川沿いの路線だけど、黒部は渓谷が険しすぎてトンネルになってしまった、というわけだ。すごすぎる渓谷だと観光がしづらくなる。その点大井川鐵道はほどよい渓谷だ。

(つづく)

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