野外炊事部・海鮮地獄鍋の巻(その2)
鍋の具となる魚は決まった。次は揚げ物の具となる魚だ。
4月頭とはいえ、雨が降りしきるこの日はとても寒かった。うっかり薄着で訪れていたので、寒くて思考回路が鈍る。早く買い物を済ませて、車に逃げ込みたい。
魚屋さんに相談したら、「揚げるんだったらオコゼがいいねェ」と仰る。しかも自信たっぷりに。オコゼ!それはいい。
「背びれに毒があって危険」という印象しかない魚だけど、見た目の不細工さと不釣り合いに旨いということは聞いたことがある。揚げたらきっとうまいに違いない。
お願いすると、ちゃんとぶつ切りにさばいてくれるという。ありがたい、てっきりプロ向けの店であり、魚をさばくなんてやってくれないと思っていたのだけど。
オコゼ一尾800円。骨が多いとはいえ、がっちりとした体格でこのお値段はやっぱり安いと思う。多分、だけど。普段オコゼなんて売っているのを見ないので、相場観がさっぱりわからない。
「あとはメヒカリなんてのもいいヨ~」
なんてついでにお薦めをされてしまう。
メヒカリ。茨城沖でよくとれる特産品とも言える魚らしい。深海魚。目が光るからメヒカリ。
名前は知っていたけど、実物は小魚程度のサイズで、「えっ、アナタがあのメヒカリさんでしたか!」とびっくりした。もっとぎょろっとした目で、ギラギラ光って、怪しい生き物だと思っていたので。太刀魚みたいな。
それにしてもこれだけどかっと入って300円は安いなー。買っちゃえ!
「素揚げにするとうまいと思うんすよ」
「よっしゃー、揚げまくるぞー」
テンションが上がる。
返す刀で、同じお店でカレイも買ったった。
写真手前にある「本ムシカレイ」は1山(4匹)500円。朝食の焼き魚なんぞにとてもよろしいが、今回買ったのはそれではない。左奥に見える、単に「カレイ」と書かれたものだ。これだと1山100円。見ると、7匹いらっしゃる。安いなあ、もう。
こうなると、商売なんて世界の話じゃない。「在庫処分」の世界だ。網にひっかかっちゃったんだからとりあえず売るけどさぁ、っていうことなのだろう。
我々買い出し部隊は、「勝手に食材をどんどん決めちゃって申し訳ない」という気持ちを先ほどからずっと持っていた。やっぱり野外炊事の楽しさは、メニュー決めや買い出しにもかなりの比重がある。で、買い出しに参加していない人たちを差し置いて決めちゃって悪いなあ、と思っている。ましてや、高い食材を買ったりしたらその気持ちはなおさらだ。
一方、「カレイ1山100円でございます」とか「メヒカリ300円です」と言われたら、「安い!これだったら、買い出しに参加できなかった人でも許してくれるだろう」という安心感がある。だからバンバン買える。
そんな様子をじっと屋根の上から見下ろす、カモメ。
おいお前、目つきが悪すぎるぞ。人一人くらいは余裕で殺したこと、あるだろ?
先ほどカジキかまみりん漬けを買ったお店で、個人消費用にトロサバミリン干しを買った。よこさんとシェアだ。かなりお高いけど、試食させてもらったらめっぽう旨いんでやんの。
「ちくしょう、うまいなあ、これは反則だなあ、サバにこんな値段は払いたくないのになあ」
と悔しがりながら、財布の紐が緩む。
こういうとき、シェアする仲間がいるとありがたい。一人買い出しならこうはいかない。
ついでに、しらすやほしえびも買ってシェアしてしまう。
明日の食材買いだしに目処がついたので、ほっとして自家消費用を物色する我々。
カツオのサクが1,000円!おおう、欲しくなってきたぞ。
さらに、ビントロも500円引きだ!
つられて、カツオもビントロも買ってしまった。もちろん三人でシェアだ。
三人で分割しても、それでもかなりの量となった。刺身用のサクなので、今晩中に食べなければならない。家に持って帰って、初めて「しまった、明日の昼も魚なんだった」ということに気がついた。迂闊すぎる。
一応クーラーバックは持参していたのだけど、とてもじゃないが入りきらなかった。なので、持ち帰り用の保冷バックを追加で購入した。
でも、そのお陰で保冷用の氷も無料で入手でき、家まで鮮度を保つことができた。
一応、那珂湊の大洗にも立ち寄ってみた。何かいいものが他にあるかもしれないからだ。あんこうが丸ごと一匹、未だに売られていたら思わず買っちゃうかもしれん。
無茶を承知であんこうを買い込み、明日は木の枝にあんこうをぶら下げて吊るし切り!やり方は知らんけど!・・・ってやるのも楽しいよね、なんて思いながら。
しかしやっぱりあんこうはもう売られておらず、むしろほっとした。ソイやらタラを買っているというのに、いまさらあんこうが出る幕など、ない。
とりあえずお昼にしよう、お昼に。
入ったお店は、海鮮焼きをメインにするお店らしい。各テーブルにはコンロが置いてあり、そこで貝やら海老やらを炙って食べる。炙る食材はセルフでトレイに乗せ、食べたい分だけお会計して自分の席に持ってくるスタイルだ。
しかし我々は、なんだかあんこうシーズンの終わりをまざまざと見せつけられた気になっていたので、あんこうを食べることにした。
よこさん発注のあん肝。
そして、偶然にも三人そろってあんこう唐揚げ定食。
「明日昼、魚をしこたま食べるのにね」
とお互い顔を見合わせて笑う。しかしこの時点ではまだ気がついていない、「明日のお昼」だけじゃないぞと。今晩もカツオとビントロの刺身が待っているんだぞ、と。魚ばっかりだ。
大洗から退却途中、新三郷のコストコに立ち寄って買い物をした。
あんまり我々が買い出しをしすぎると、野外炊事部当日である明日にやることがなくなってしまう。買い出しも楽しみの一つなので、我々が今買い込み過ぎちゃダメだ。なので、「これはコストコじゃなくちゃ買えないよね?」というものだけを買っておき、野菜などスーパーで買えるものはほとんど買わなかった。
・・・じゃあ、なんでこんなにテーブルの上に食材が乗っているんだって?
うっかり、「自家消費用」をこれだけ買ってしまったからだ。「これ、シェアする人~?」なんて声を掛け合いながらあれこれ買ったらこのザマだ。
いったんおかでん家に立ち寄り、戦利品の仕分け作業を行う。
コストコで、明日の料理用に買った唯一の野菜がこれ。
パプリカ、といっていいのかな?それとも赤いシシトウ?
見た目は超巨大な唐辛子だ。こんなのを鍋に投げ込んだら、辛くなるだろうが馬鹿!よせ!という代物。しかし、ラベルを見てもわかるとおり、「sweet」と書いてある。辛くはない。
これを当日ひょいっと出して、みんなをびっくりさせようという腹づもりだ。「激辛好きのおかでんならやりかねん」と思われるであろうところがミソ。楽しみだ。
それにしてもどうするんだよこれ。
ここにあるの、シェアした後の僕個人の自家消費食材。生ものも豊富にある。
みんなを送り届けて、帰宅後に一人でコイツらと対面したときは深いため息が出た。買いすぎた、と。
とりあえずピザは分割して冷凍しておかないとすぐに傷む。ピザをえっちらおっちら包丁で分割し、ラップで一切れずつくるんで冷凍庫に入れた時点でくたびれ果てた。もういいや。あとはしらん。明日夜にでもやろう。
・・・あっ、いけない、刺身だけは今日食べておけよ?多分量が多すぎて食べきれないけど。
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