名古屋おいしいとこどり

カオス愛知の再発見

日 時:2009年(平成21年) 03月20日~22日
場 所:愛知県名古屋市界隈を中心にあちこち
参 加:ちぇるのぶ、おかでん、ばばろあ、しぶちょお (以上4名)

3月、春分の日三連休は特に予定がなかった。そんなとき、愛知のしぶちょおから「ばばろあが名古屋に来るよ。せっかくだから名古屋に来たら?」とお誘いをかけてくれた。でも、単に名古屋に行くというのはいまいち盛り上がらない。温泉に行こう、とか山に行こう、というのとは違うからだ。

するとしぶちょおが言う。「名古屋にはいろいろ独特な文化や食べ物があり、それらを見て回るだけでも十分に楽しい」と。確かに、その話は以前からしぶちょおとしていて、「ディープ名古屋オフなんてのをアワレみ隊のBBSで主催してもいいねえ」という会話すらしていた。なるほど、ディープ名古屋か。

体調が悪いしなあ、とか交通費が結構かかるよなあ、なんて電話口で愚痴を垂れていたら、ちょうどそこにばばろあからメールが。「黙って名古屋に来い。」と一言。

これで観念した。了解です、急きょ明日から名古屋入りしますです。へぇい。

テーマは「ちょっと変わった都市・名古屋を巡る」。これで行こう。

2009年03月20日(金) 1日目

ダンダン亭

名古屋での宿はしぶちょお(&ひびさん)宅に居候させてもらうのでコストゼロ。

往復の交通については、新幹線代が勿体なかったので青春18きっぷを使って鈍行で移動した。すごく久しぶりだ、青春18きっぷを使うのは。

その高揚感からか、朝、「目覚まし時計が電池切れで止まっていて起床時間が大幅に遅れる」という漫画のような展開になってしまい、結局東京→熱海を新幹線で先回りする、という大いに無駄な結果になってしまった。熱海から、鈍行。

学生時代は16時間かけて、鈍行で帰省していたものだ。時間はいくらでもあったから、16時間の移動くらい屁でもなかった。

東京から広島への帰省は、いわゆる「大垣夜行」を利用して夜を徹して移動できる。しかし、その逆、広島から東京へは非常に列車接続が悪く、大抵は名古屋を中継点として一泊していた。それがしぶちょおの家だったわけで(今住んでいる家とは違う)、そのおかげでおかでんは名古屋を知らない、という程ではない。

しかし振り返って当時を思い返すと、メシを食いに行くとなれば近所の餃子の王将だったし、出かけるとなれば本屋だった。ご当地グルメにも、観光スポットにもとんと疎いままだ。まあ、それが貧乏学生クオリティというやつだ。

そんなわけで、今回あらためてこのような企画が立ち上がり、ようやく「名古屋らしいものが体験できる」というおめでたさはある。

さあ、2泊3日のディープ名古屋散策の開始だ。

現地にてしぶちょお、ばばろあと合流した後、まずはお昼ご飯を食べに出かけることにした。

「あれ?ひびさんは?」と振り返ると、ひびさんは涙目になって首をぶんぶん振っている。

「ひびさん、花粉症が酷くて外に出られんのよ。だから家でお留守番」

しぶちょおが解説する。

そんなに酷いなら薬を飲めばいいのに、と言うと、薬はイヤーと言う。なかなか難しいお年頃のようだ。

さて、初日お昼に選ばれた場所は、担々麺が旨い店だという。ばばろあが「ぜひここは食っとけ」と、脱糞しそうな勢いで力強く推奨する。しぶちょおもその傍らで同意。日本人の好みに合わせた軟弱な担々麺がはびこる中、そこの一品はガツンと、ドカンと、バスンと、麻辣に仕上がっているのだという。それは素晴らしい。マラも好きだが麻辣も好きだ。「名古屋らしさ」はないが、美味さに国境はない。ぜひ食べよう。

・・・というわけで訪れた「ダンダン亭」。遠路はるばる、てくてく歩いてたどり着いた。最寄りの駅からちょっと離れているので、ちょっと歩く。名古屋の町はぼんやりと広がり、商業地と住宅地が中心部でも混在しているのが特徴だ。東京と町の生い立ちが全く違うのがよくわかる。道がやけに広いし。

そのダンダン亭だが、シャッターが閉まっていて本日休業。あちゃー。のっけから躓いた。

コンパル
名古屋名物エビフライサンド

「次は矢場で降りるんかのう」
「いや、上前津の方が近い」

というばばろあとしぶちょおの暗号をぼんやり聞く。ばばろあは、しぶちょおを頼りに何度も名古屋を訪れているために地理に明るい。一方、おかでんは大学生時代、即ち10年以上前のしぶちょお今池在住時代しか知らないので、繁華街だのなんだのというのはさっぱりだ。彼らの見識にここは任せる。

市営地下鉄の一日乗車券を購入したわれわれは、一路「上前津」なる駅を目指すことになった。この地下鉄、初乗り200円と滅法高い代物で、一日乗車券は600円。3回乗れば一応元が取れることになる。

そのまま「上前津」駅に行くのかと思ったら、二人とも「さも当然」の顔をして途中下車をするのだという。何事だ。何が始まるというのか。いや、そもそも「上前津」に何があるのかさえわかっていないので、どこで降ろされても何もわからないのだが。

目隠しされた囚人同様のおかでんがおそるおそる看守しぶちょおに聞いてみたところ、「ここにはコンパルがある」と自信満々に言う。はあ、そのコンパルが目印っすか。でもコンパルって何。

「ひびさんは仕事帰りに、夕食としてここでテイクアウトして帰るくらい、コンパルが好きだ」

なるほど。どうやら美味いらしいということと、ひびさんの勤め先が近いらしいということは分かったが、それ以前にコンパルって何よ。「金春」と書くなら、中華料理屋で見かけるのだが。小籠包お持ち帰りかい。

・・・なんて考える間もなく、目的のコンパルに到着した。うは、地下街の中にあったのか。てっきり、しぶちょお&ばばろあが推奨する店だから、路地裏の怪しいところにあるのかとおもっていた。名古屋名物「地下街」の、しかも改札出てすぐのところにあるとは心の準備ができていなかったぞ。

ひーひーふー。ひーひーふー。

ラマーズ法で呼吸を整える。

で、今度は何だ。何があるというんだ。また担々麺か?創価学会か?この時点で、まだおかでんには「何がある」というのは聞かされていない。

すると、「これだ」としぶちょおが自信満々に店の前・・・正確に言うと、店の脇・・・に立ちつくした。ええと、「テイクアウト」?「名古屋名物エビフライサンド?」

ああ、そうなのか、これからわれわれがやろうとしているのは、海老フライサンドのお持ち帰り、ということなのか。この時点でようやく納得がいった。

いや待て、本当に納得がいっているのか?行ってないだろ、お前。

そもそも、「海老フライ」というのは名古屋名物であったという事に驚いた。よく、愛知の方言で「海老フライ」の事を「えびふりゃー」と言うのは聞いていた。ギャグになっているくらいだ、全国区の常識だ。しかし、実際問題、名古屋においてえびふりゃーが名物であるというのは聞いたことが無かった。伊勢海老、というのは知っているが、尾張海老だのなんだのというのは、知らん。言われてみれば、「天むす」というこれまた名古屋名物のおむすびにえび天は入っているので、ひょっとしたら本当にえびふりゃーは名古屋名物だったのかもしれん。

そんなことを走馬燈のごとく考えてしまったのが、この「コンパル」のエビフライサンド。しぶちょおは、自信満々にお持ち帰りを1つオーダーしている。えええ、なぜアナタはそんなに自信満々なの。

コンパルのサンプル

「コンパルのエビフライサンド、美味いんだこれが」

とうれしそうにしぶちょおは言う。

「まあ、とりあえず食っとけ。話はそれからだ」

とばばろあも同調する。おおう、状況を知らぬはおかでんだけか。完全にアウェー感漂っております。でもそれがいい。そういう「知らない名古屋」を知るために、今回はここまでやってきたのだから。

何しろ、最近睡眠障害が酷いので、my枕を名古屋まで担ぎ込んだくらいの苦労人が今回のわたくしだ。枕なんて軽いものだから、楽だろうと思ったら・・・でかいんだな、枕って。普段何気なく使っているので全く気にも留めないが、いざ鞄の中に入れようとしてあぜんとした。海外旅行用のキャリーバッグ1個が、完全に枕だけのために潰れた。そのため、名古屋二泊のために、(枕だけが入った)キャリーバッグ1個をゴロゴロ転がし、あとリュック一つという出で立ちになってしまった。そんじょそこらの海外に行くよりもかさばっているってどういうことだ。恐るべし、名古屋。・・・あ、名古屋は関係ないか。

話を戻すと、このコンパル、とてもレトロな雰囲気の喫茶店で味があった。従業員さん、というより「ウエイトレスさん」と呼ぶべきであろう人たちが、みんな黒い服に白エプロンという出で立ちだ。こんなの、東京界隈じゃコスプレぐらいでしかお目にかからなくなりつつある。とても味わい深い。そして、店員さんの数がやたらといる。効率化と人件費の抑制を極限まで突き詰めたチェーン展開のカフェではあり得ない「店員密度」だ。一体この店は人件費に売上のどれだけを持って行かれているんだ。大丈夫か、と心配になったくらいだ。

でも、そういうところが、「チェーン店ではない喫茶店の良さ」なんだろう。そういえば、名古屋界隈ではあまりチェーン店の喫茶店(スタバやドトール、エクセルシオールカフェなど)を見かけなかった。もちろん存在はするのだが、それ以上に個人経営もしくは名古屋限定展開の地場喫茶店が多い。面白いもんだ。

しぶちょおによると、

「名古屋の喫茶店は『モーニング』という独自の文化があって、それが無いとお客がついてこないから大手はやりにくいんじゃないか」

ということだった。なるほど。モーニングについては後日体験しているので、また別途記述する。

店頭に食品サンプルが並んでいるところも、レトロな感じがしてうれしい、楽しい。最近こういうの見かけなくなったよなあ。昔は、スパゲティーがフォークに巻かれて、中空に浮いているサンプルを見て「どういう仕組みだ?」とすっげえ不思議だったものだ。多分、おかでん世代までなら誰しもが抱いた、子供時代の甘ったるい想い出のはず。

子供の情操教育及び知的好奇心高揚のためにも、ぜひ喫茶店には食品サンプルを復活させて欲しい。税金投入しても良いくらいだ。

エビフライサンドのサンプル
値札

サンプルの中で、一番目立つ場所を与えられていたのが当然「エビフライサンド」。われわれがお持ち帰りしようとしている品だ。

見ると、6枚切りくらいのパン2枚の間に、デカいエビフライ3本とタルタルソース、そしてキャベツの千切りが挟まっているらしい。結構なボリュームだ。お値段もなかなかボリュームがよろしくて、890円。わおう。さすが海老。店内でお召し上がりの場合、当然これにコーヒーとか紅茶をつけることになるので、軽く1,000円を超える。夏目漱石さんお一人様さようなら、だ。ちょっと庶民にとってはびびる価格帯ではあるな。

このお店のサンドイッチは、中身によって「ホット」と「コールド」に分けている。コールドってなんぞや、まさか冷蔵庫で冷やしているのか、と思ったらそうではない。「焼いていないパンで挟みました」というものだった。つまり、野菜サンドなどは焼いていない白いパン、エビフライサンドなどは焼いたきつね色のパン、というわけだ。

ちょっとだけ芸が細かい。

ウィークデースペシャル

「エビフライサンド、890円って高いな」

という話をしぶちょおにしたら、

「大丈夫、今日は金曜日だから」

という。なんぞやと思ったら、「ウィークデースペシャル」と称して、日替わりでサンドイッチが割引されているのだった。で、毎週金曜日はエビフライサンドの日で、890円のところが740円。おい、150円引きかよ。びっくりするくらいの値引きしちゃってるじゃないか。どうなってるんだ、このお店。この曜日だけエビが大量入荷して、余ってしょうがないとか言うんじゃないだろうな。

「名古屋の喫茶はサービスが大事だから」

ということだが、お得感ありすぎ。東京人だったら、こういうのを見ると逆に「じゃあそれ以外の日の890円って一体どういう根拠の値付けなのよ」と噛みつきそうだ。でも本来なら素直に喜んでおくべきなのよね、こういうのって。とりあえず、わーい。

トーストを焼く
テイクアウトのエビフライサンド

・・・ということをつらつらとやっていて、まだ時間が余っているというのはどういうことか。それは、注文してから待つこと10分近くだったということにある。われわれは店の前でぼんやり、ひたすら待つ事になった。

何でこんなに待つの、と聞いたら、注文が入ってから作り始めるからだという。えっ、テイクアウトでもそうなの?それは驚きだ。店の前に行列ができたら困るだろうから、テイクアウト品くらいは作り置きして、ばんばん客を回転させていくものだと思っていたが・・・。さすがコンパル。

厨房を覗き込むと、確かになにやら調理中のパンが。パン、トースターで焼くのではなく、鉄板で焼いていた。すげえな。その隣では、ただいまエビフライ絶賛揚げられ中。

その後しばらくして、折り詰めに入れられたエビフライサンド到着。手提げ袋に入れ、ぶら下げながらまた地下鉄に乗る。

デモ行進

エビフライサンドを店内で食べず、わざわざテイクアウトにしたのは理由がある。この後、「台湾ラーメン」の元祖、「味仙」に行き台湾ラーメンを食そうという話になっていたからだ。これはおかでんからのたっての希望でもあった。

台湾ラーメン、といってもその名の通り台湾のラーメンではない。台湾出身の味仙の料理人が作ったラーメンだから「台湾ラーメン」。それが人気を呼んで、今では名古屋界隈の中華料理店の多くで採用されているポピュラーな麺料理となっている。ただし、日本のその他地域ではほとんど浸透しておらず、ましてや台湾人が見たら「何じゃこりゃ」とひっくり返るような知名度の無さだ。

その台湾ラーメンを本日お昼のメインに据えて、コンパルのエビフライサンドはおやつにしようというのがしぶちょお&ばばろあの合議によって決定された「効率のよい名古屋尽くし」計画。

地下鉄上前津駅を降り、町を歩く。この辺りは大須と呼ぶらしいが、電気街が形成され、またアニメグッズなどを扱う店も多数あり、さながら秋葉原の様相を呈していた。名古屋にもこういう場所があるのか。しらんかった。

「あれ・・・名古屋における繁華街って、栄の方だと思っていたんだが」

「それはデパートとかがある場所。電気街はこっち」

なるほど、東京でも銀座と秋葉原は同じ場所にないですよね、と言えば分かりやすいか。

「後でいろいろ見て回ろう」ということで、ひとまずスルー。

しばらく進むと、なにやらもの凄い人の列を見た。何だあれは。

「あー、混んどるなあ。やっぱダメかあ、昼下がりだから大丈夫かもしれんとちょっとは期待したんだが」

と悔しがるしぶちょおだったが、この店、味噌カツの名店「矢場とん」。

えええ、確かに味噌カツというのは名古屋名物ではあるが、トンカツ食べたいがために行列作るンですか、名古屋の人は。凄いな。それだけ、この店は絶品ということか。それとも「お客様感謝デー」とかなんとかで、トンカツ100円セールなんぞやってるのか。いずれにせよ、ありえん行列だ。

まあ、東京でも、ラーメン店にありえん行列を作っているわけで、お互い様なんだが。

しぶちょおとしては、台湾ラーメンを食べに行く道中ではあったが、隙あらばこのお店を昼飯会場に変更することも視野に入れていた。味噌カツは十分に名古屋限定料理だからだ。しかしさすがにこれはひどい。1時間待ちじゃ到底済まない列ができている。並んでるみなさん、貴方たちがカツにありつけるのはおやつの時間ですよ、夕ご飯どうする気ですか、と聞いてみたいくらいだ。

結局、予定通り「味仙」に向かう。

高速道路の高架下でなにやら赤い旗を持った人がわっせわっせとぐるぐる行進しているので何だろうと思ったら、中核派だった。最近みかけないと思ったが、頑張っているところでは頑張っているんだな。珍しいので写真を撮ったら、すぐ側にいたマスクをはめた人に睨まれた。おっと、四方八方に監視役を立てていたのか。あわてて退散。

味仙

行列ができる矢場とんから歩いてすぐのところに、目指す味仙発見。ただちに襲撃用意。

看板を見ると「中国南北酒菜 味仙」と書いてある。あれっ、台湾ではないのか。いや待て、これは「台湾は中国の領土」という、中国共産党の主張を・・・すいません、考えすぎだな。

もっと「餃子の王将」的な小さな店を想像していたので、ちょっと意外。なお、後で知ったのだが、この「味仙」は何軒も支店があり、ここは「矢場店」。本店は今池にある。

店内

店内は広くてびっくり。カウンター席があってお一人様がレバニラ炒め定食をがっついているような店ではない。床が油でつるつる滑る感じでもない。客席の間隔は広めになっていて、至って快適な空間だ。意外、意外。

そんな店なので、ランチ営業が終わったら中休みがあるので注意。通し営業かと思って、3時くらいにお店に来ても店はしまっております。

水が入った瓶

席についてしばらくすると、店員さんがやってきてドン、と瓶を置いていく。何かと思ったら、中に水が入っていた。これを手酌でお冷やを飲め、というわけだ。お冷や用ポットくらい買えばいいのにと思うが、これはこれで味があって楽しい。

店員さんの対応は至ってそっけないが、それがまた味わい深くておかでん的には結構好きだ。マゾなのかね、自分って。

いやまあ、でも、名古屋B級グルメを食べに来て、中華独特の円卓、しかもテーブルクロス付きの席に通された日にゃ何だか興ざめでしょ。「じゃあまずは棒々鶏を」なんて前菜を注文しちゃいそうだ。ここは黙ってレバニラ炒め定食よこせ、もちろんご飯は大盛りだぞという店の雰囲気こそ、ふさわしい。

お品書き1
お品書き2

とはいっても、このお店は「餃子の王将」的B級店舗ではなかった。メニューがさりげなくしっかりとした「中国料理店」だ。いわゆるジャパニーズ中華の定番である、「肉野菜炒め定食」だの「レバニラ炒め定食」「回鍋肉定食」などが幅をきかせているのではなく、単品メニューが並ぶ。

カエルを扱っていると思えば、アワビも扱っている。店側のやる気が伝わってくる。カエルなんて一日何食出るんだろう?在庫が無くなる前に、冷蔵庫からカエルが飛び出て逃げ出すんじゃないか?

青菜炒め

お目当ては看板メニューともいえる「台湾ラーメン」だが、ばばろあから「中華なんじゃけえ、適当に何品か頼んでシェアしようで」と提案があり、あれこれ頼んでみる事にした。

青菜炒め(炒青菜)、580円。今日の青菜は空芯菜だった。季節によって野菜は変わるのだろう。この料理の特徴だが、油っぽく、そして化学調味料っぽく仕上げてあるので無性にご飯が欲しくなる。今回、麺類を2品頼んだのでご飯類は頼まなかったが、少し後悔。

焼ビーフン

焼ビーフン(炒米粉)、690円。焼きビーフンを人生の中で食べた数なんて知れているが、その全てが「パサパサして、細い麺同士がひっついていて、食べにくい。喉が渇く。塩辛い」というイメージだ。長髪の女性が髪のメンテナンスを半年くらい怠ったために、髪の毛が絡まってます、といった風情。うわ、ひどい喩えをするな我ながら。

しかしこのビーフン、麺はビーフンにしては太めで、結構つるつるしている。ぱさつきが全くない。外見は糸こんにゃくか春雨か、といった感じだが、今までのイメージが覆ってとてもおいしい。これ、好みだなあ。味つけも適度。

具は豚肉、キャベツ、もやし、ねぎ、炒り卵といったところか。これを食べていても、やっぱり白いご飯が欲しくなる。台灣の人からしたら、「米の麺で、米を食べる」なんて変態行為以外の何者でもないだろうが。でも日本人の悲しい性なのよね、全てのおかずは白米をおいしく頂くためにある。

台湾ラーメン

さあ待望の台湾ラーメン登場。台湾担仔麺、とメニューには併記されているので、いわゆる台湾のダンツー麺(ターミー)をイメージしたものという位置づけらしい。しかし実際は全然似てもつかないものになっているが。

いっぱい580円。

このお店、さすがに餃子の王将クラスの価格帯設定にはなっていない。もう少し上の客単価を意識している。そんなわけで、一瞬580円の麺は安いと思うが、出てきた丼を見ると「あれ、小さい」と一瞬たじろぐ。安い分、量が少ないのだった。

でも、担仔麺を意識しているのであれば、これでも丼がデカすぎるくらいではある。そのかわりわれわれのように料理を何品か頼んで、互いにシェアしましょうという食べ方だとちょうど良いうれしいサイズになっている。

具は、挽き肉そぼろと、ニラともやし、大量の唐辛子とにんにく。スープは多分鶏ガラだと思う。特に特徴的なのが唐辛子で、そのせいで大変にスパイシーな外観をしている。辛い物が苦手な奴は近寄るな、という警報をガンガン出している。しかし辛い物好きにとっては、外見だけでご飯いっぱい食べられる自信がある。しかも、にんにくが強烈に香る。これでご飯二口ほど余計に食べられるな。とにかく、ジャンキーな食べ物であることには間違いない。

早速食べてみる。期待にそぐわないジャンクっぷり。そりゃあ、唐辛子とにんにくと肉がコラボすりゃ、美味いわな。たまらんですよ。ずるずる。

濃いめの味つけなのは名古屋人の好みなのか。薄味好みの人だと、この料理はキツいと思う。味が濃いし、しかもパンチが効きすぎ。でも、それがいい。

こんな料理を愛する名古屋人とは仲良くなれそうな気がする。あ、そうか、しぶちょが名古屋人だった。どうもコニチハー。

今、関東を中心に「ラーメン二郎」のインスパイア店が急激に増えている。醤油豚骨ラーメンで、極太麺で、キャベツともやしをゆでたものがトッピングされるというスタイル。相当ジャンクフードで、食べ続けたら確実に死ねる一品だが、ウケがよい。かくいうおかでんも、二郎のおかげで寿命をどれだけ既に縮めたことか。

で、だ。ああいうジャンクなものがまだまだこのご時世受け入れられるんだから、関東でも「台湾ラーメン」は流行ると思うんだがなあ。独立開業して、台湾ラーメン屋開きたくなってきた。それくらい、この麺は好きだ。

後日談だが、あまりに台湾ラーメンが好きになったので、このあと2カ月後に再度単身名古屋に乗り込み、一人で今池にある味仙本店に出かけたのだった(遅れてしぶちょおが合流)。そこで台湾ラーメンと再開したのだが、暴力的な味ではなく若干拍子抜けした。店によって味つけが異なるようだ。

そういえば、このお店のメニューには「台湾ラーメン」の他に「台湾ラーメン(アメリカン)」というものがあったっけ。辛さ控えめ、のものを「アメリカン」と呼ぶようだ。中華料理でアメリカンって。このメニューは今池本店には無かったので、恐らく矢場店では「普通に頼むと強烈な奴をお見舞いするぜ」という事らしい。素晴らしい。何しろ、メニューの欄外には注意書きとして「※胃腸の弱い方は、にんにく、唐辛子をお控えください。もしくは、減量をお申し付けください。」だもんなあ。契約書の中に小さく書いてある、「免責事項」のようなもんだ。お店、ガツンとにんにく唐辛子を入れる気満々でやんの。そのガッツにスタンディングオベーションで応えたい。

味仙ラーメン

もう一品注文されていた麺は、店名を冠した味仙ラーメン。790円。

コンパルの箱

台湾ラーメンよりも210円も高いが、中身はアサリがたくさん入った麺だった。レンゲで丼をかき回すと、底に沈んだアサリの貝殻がガラガラと音を立てる。アサリの出汁がよくきいているので、これがまずかろうはずがない。しかも、こっちも台湾ラーメン同様のこってり味つけに仕上げているので、アサリ料理にもかかわらずジャンク臭が漂っていて素敵。あさりとにんにくはどうしてこうも相性が良いのだろう。ほれぼれする。

サンドイッチ

昼間っから3人とも全員全身からにんにく臭を発しながらお店を後にする。

4品を頼んだわけだが、3人でシェアしたので食べた量はそれほど多くはない。まだ胃袋に余裕がある。

そこで登場するのが、先ほど購入したコンパルのエビフライサンドイッチだ。

「どこか公園で食べよう」

と、裏道に入り込む。

ソワソワしながら公園を探すおっさん3人。大変に怪しい。幼女を拉致監禁でもしそうな勢いだが、手に隠し持つのはエビフライサンドイッチだ。至ってラヴ&ピース。

適当な公園を見つけ、ベンチに座ってからコンパルの箱をオープン。開けてみると、折り詰めいっぱいにみっしりと詰まったサンドが登場だ。おお、凄い迫力だ。いかにも名古屋、という感じがする。いや、何も根拠はないけど。何が名古屋なんだ、と言われると困るが。

カツサンド、といえば関東人であれば「まい泉」とか「肉の万世」を思い出すだろう。しかしそれらのカツサンドは白いパンであり、トーストではない。白いパンに、カツのソースが染みこんでいるのを目で愛でるのがたまらん、という変態紳士も居るだろうが、こうやってトーストされたサンドを見るとがぜん「こっちの方が素敵」と思えてくる。なんて良い焼き色なんだ。家のトースターで焼いても、こんなに均一には焼けないぞ。やはり鉄板で焼いているのが奏功しているようだ。

普通、サンドの折り詰めといえば、断面図を上に向けてディスプレイするものだ。こんなのが中に入ってますよぅ、とPRするためだが、コンパルのサンドは全くそんなことを意に介していない。「まずはきつね色のトーストを見よ」と厳かに宣言してらっしゃる。ははぁ、仰せのままに。

エビフライサンド断面図

「もう食べて良し」とサンド様からのご宣告があるまでしばらく待機し、その後おもむろにサンドをわしづかみにする。食べ物を「わしづかみにする」だなんてお下品だが、このサンドの場合それしか食べようがないので仕方がない。有閑マダムでも総入れ歯のジジイでも、みんなわしづかみして食べやがれ。

なにしろもの凄い横幅だ。カツサンドを想像していたら、大いに予想を裏切られる。そりゃそうだ、海老フライが悠々と川の字になって横たわっているというだけでも相当な分厚さになるのに、それに加えてキャベツの千切りだ。これは大胆に、されど注意深く食べないと中身がこぼれるので注意だ。エビフライが一本転がり落ちたりした日には、その日一日涙が止まらないだろう。

食べてみると、なんとも幸福な気持ちになれる。子供時代、おかでん家三世代が盆暮れに集まった時は「じゃあ家族全員でお食事にでも」となったものだ。それを思い出した。なぜかというと、少年おかでんは決まってエビフライを頼んでいたからだ。周囲の大人や兄貴がステーキなんぞを食べているのに断固対抗し、意固地になってエビフライだった。

そんな過去を思い返しながら、食べる。何か知らんが、名古屋グルメって「B級だけどさりげなくゴージャス」なのかもしれん。

それにしてもトーストを使ったサンドは美味いなあ。さくさく感がたまらない。食感にバラエティがあるのは楽しい。

コンパルエビカツサンドを食べるアワレみ隊メンバー

コンパルエビカツサンドを食べるアワレみ隊メンバー2名(+写真撮影おかでん)。

分厚いサンドを手にしながらの写真撮影は大変なリスクを伴うの注意。

公園の景色1
公園の景色2

食後、公園の景色を眺めながら食休み。

住宅街の中だが、結構優雅な気持ちになれるもんだ。日比谷公園で弁当食べて昼寝しているサラリーマンをTVでよく見かけるが、端から見てると侘びしくてたまらん。しかし実際にこうして公園でご飯食べて、ゆっくりすると案外これも良いもんだ。

ただ、目に入ってくるものがなんだか変だ。

ブランコ。おいちょっと待て、そのひげ面の海賊みたいなモニュメントは何だ。特注品か?すごいな。名古屋市始まったな。このブランコを漕ぎながら、傍らにいる女性に愛の告白をしたい。うそだけど。

そして、すべり台でもないしジャングルジムでもない、何だか微妙な「単なる盛り上がり」の富士山。これ一体、どういう楽しみ方をすれば良いのだ。

「いや、それが思いつかないようじゃあ、もう歳なんよ」「そ、そういうもんなのか」

この富士山を最高に楽しむ方法、何かないだろうか?怪我しちゃまずいし、ハードなのはダメだからちょっと難しい。

食事処 晩酌処 大盛

「大須の商店街に行こう。いろいろ名古屋らしいものがあるし、ういろう買わないと」

というので、二人に連れられて大須観音の方に向かう。

途中、ある一軒のお店の前でしぶちょおが立ち止まり「このお店も見逃せない」と紹介した。オオモリだよ、という。ん?大森?カズフサのことか?

見ると、店頭には漫画日本むかし話盛り状態のご飯のモニュメントが。飲食店らしい。その名を、「食事処 晩酌処 大盛」という。単に名前だけが大盛りなのかと思ったが、この店頭のご飯の盛りっぷりを見ると本当に盛りやがるらしい。イカす。

壁には「今日の大盛+」という張り紙があって、

日替わりのおすすめメニューに

1,しっかり食べたい時に!無料で大盛にする
2.ごはんにはやっぱり!味噌汁(小)を付ける
3.バランスを考えて!野菜の煮物をつける
4.健康にこだわりたい!金印えんめい茶をつける

これら4つの中から好きな物もの選べます!

と書いてある。どうやらご飯の盛りだけじゃなく、あれこれ太っ腹のようだ。この手の太っ腹食堂は大抵こ汚いお店で、昔ながらの親父が「若い貧乏学生に腹いっぱい食べて欲しい」という親心でやってるもんだ。しかしこのお店は何だかこしゃれている。店頭の怪しいご飯盛りモニュメントを除けば、喫茶店でございと言ってもよい外観。怪しいな。これも名古屋的、なのか?

ただいまのおすすめは、「春らんまん 絶品!しらすごはん」のようだ。それは至って普通なのだが、隅っこに「おいしいしらすシリーズ」という表記が。どうやらしらす料理にはシリーズがあるらしい。やるな。どさくさに紛れて面白い。

あと、その張り紙の下には「N.T.B」と大きな文字が。「香しき一撃!」「これはハマる!」という煽り文句がそそられる。でもN.T.B.ってなんだ。寝取られ?・・・いや、それはN.T.R.だ。「ハマる」ではなく、「ハメられる」が・・・いや失礼、なんでもない。

よーく張り紙を見ると、小さく略字の説明があった。それによると、「にんにく・たっぷり・ぶたどん」の略なんだと。面白い店だな、ここ。

大盛メニュー
マンガ盛

メニューの一例が店頭に出ていたので見ると、定食類はまた別途あるのだろうが、基本的には「ご飯+味噌汁+小鉢+おかず類」をそれぞれ組み合わせて、自分好みのお膳をこしらえるというコンセプトらしい。

昔の食堂って、こういうのが当たり前にあったものだが、今じゃ「まいどおおきに食堂」「宮本むなし」「めしのはんだや」といったチェーン店くらいでしかあまりお目にかからなくなった。「適当なつまみで気軽に酒呑んで、最後ご飯食べて締める」というスタイルをとりたい人にとっては、こういうお店は大変に使い勝手がよろしい。実際おかでんは、めしのはんだやを居酒屋代わりによく利用していた。小皿100円くらいからあるので、重宝する。

それは兎も角、よーく見ると何だか変な記述がある。冒頭の「おいしいごはん」の欄にそれがある。サイズを選べるわけだが、そのサイズが「小」「中」「大」、そして「マ」となっているのだった。マ?マ、って何だ。マ・クベの名字か。あれはいいものだ。

この疑問に答えてくれる回答は、すぐ脇にあった。でっかく、「ご飯マンガ盛 350円(税込)」と書いてある。マンガ盛り、の略が「マ」だったというわけだ。すげぇ略称。

この「マンガ盛」の字に被さるように、「ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ」と意味不明な効果音(?)がつけられている。ラブやんか。やっぱり「大盛」だから「大森カズフサ」を意識したのかな。マンガだし。

この張り紙、「男にはやらなければならない時がある・・・」なんて書いてある。そうなのか。やらなければならない時にやることって、マンガ盛り食う事なのか。激しく疑問を感じるが、この勢いにはただ圧倒され、「そ、そうッスね」と言わざるをえない。何しろゴゴゴゴだもん。なんか地球やばい。マジやばい。だったら「男ならやらなければならい時が」と言われれば、もう何でもやるっす。

とりあえず頭をモヒカンにして、「ヒャッハー」と叫ぶところから始めようか。

このお店、興味津々だがさすがにマンガ盛りを食べるほどの胃袋キャパは現状、ない。「面白い店だねえ」とほほえみつつ、このお店を後にした。

後日知ったのだが、このお店って創業半世紀を超える老舗らしい。現在の主人になって面白路線になったのかな。それとも昔からこんなノリだたのだろうか。

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