
露天風呂は、階段を下っていった先にある。こりゃ冬は相当難儀するぞ、雪が積もっているだろうから、道が分からなくなりそう。それ以前に、湯船に到着するまでに相当からだが冷えてしまう。

露天風呂。河原に面した斜面の中腹にある。
ここからだとわれわれが先ほど入っていた河原の湯が丸見え。
「女性は入っていないかー」
「いないなー」
まあ、仮に女性が居たとしても、水着着用だろうから何らうれしくないんだが。
女性の代わりに、オッチャンが一人河原の湯に浸かっていた。
「あのおっちゃん、得したな。われわれがこしらえたものをそのまま使えるんだから」
まあ、それをいったら、われわれだって既にできていた物をちょっとだけカスタマイズしたわけだが。
河原には湯に浸かるおっちゃんの他に、渓流釣りに訪れた数名の人達がフライを何度も投げこんでいた。彼らはどんどん上流に上っていき、ついには河原の湯の側までやってきたわけだが、なんかちょっと気まずい雰囲気ありそう。恥ずかしいですよ、どっちも。特に釣りグループの中には女性も含まれていたし。

露天風呂の脇に、うなりを上げる百葉箱のようなものがあった。

中を開けてみたら、そこにはポンプが設置されていた。ああなるほど、ここから源泉をくみ上げていたのか。
ということは、この露天風呂は限りなく源泉の湧出地から近い、ということになる。なんだかありがたい話だ。

露天風呂に浸かる。
うん、湯温が調整されていて心地よい。こりゃいいや。
「やっぱ、さっきの河原もいいけどさ、温泉の快適さでいったらこっちの勝ちだよなあ」思わず唸る。

湯船に体を沈めてみると、目の前には河原が広がる。
「ほら、こうすれば河原でお湯に浸かっているのとほとんど変わりないぞ」
いわゆる借景、というやつだ。
ここから先、電柱もガードレールも全く無い大自然のままの景色が広がるので、非常に快適。
この中津川をどんどん上り詰めていくと、以前アワレみ隊でキャンプを張ったことがある群馬県の野反湖に到着する。野反湖でのテント生活は今思い返しても別世界にいたかのようだったな。
大自然に敬意を表して、仁王立ちになる二人。正面から見たらモロ出し状態だけど、河原には誰もいない。開放感が尋常じゃない。股間を拭きぬけるそよ風。ちりんちりん・・・いや、風鈴じゃないからそんな音は鳴らないけど。

18時から食事時間だ。
まだ外は明るいが、食堂に向かう。今日はわれわれ含めて数組しか宿泊がないようで、食堂には誰もまだ来ていなかった。ま、こういう状態だからこそ、心ゆくまで露天風呂も河原の湯も楽しめたわけだ。混んでいたらなかなか今回のようにリラックスして湯に浸かっているわけにはいかなかっただろう。

「あ・・・」
食堂の隅に張ってあったカレンダーに目がとまった。
「業務用食材・冷凍食品・割烹材料」だって。多くの宿では、自前で一から十まで食材を調理するのが手間なので、業者さんから仕出しをお願いしているという現状があると聞く。でも、それは一応オフレコ的な話。建前としては自分の宿で調理してます、という事にしてある。その方がなんだかおもてなし感があるから。
「分かっちゃいるけど、いざ食事の前に『業務用食材、冷凍食品・・・』って書かれているカレンダー見ちゃうとなあ」
でも、宿毎に板前さんを雇うわけにもいかないわけだし、こういう業者さんを活用するのは正しい選択だとは思う。
それにしても、この片桐商店というお店、野沢温泉村にあるんだな。野沢温泉の業者さんがわざわざこの渓谷の奥深く、切明温泉まで食材を運んでいると思うとびっくりする。片道2時間くらいは余裕でかかるだろう。

本日の夕食。
この後に岩魚の塩焼きがやってきた。










料理は山の食材を存分に使ったもの。地味な外見だが、山菜がたくさん出てきてうれしくなる。
お味噌汁が豚汁、というのがちょっと珍しい。冬だったら特に暖まるだろうな、豚汁だと。


おかでん、当然のようにビールを所望。
こういうときは必ず瓶ビールを頼むおかでんだが(コストパフォーマンスが優れているため)、今回はなぜか生ビールを注文し、その後瓶ビールを頼んでいた。
多分、風呂に長く浸かっていたので喉が渇いていたのだろう。喉が渇けば、小さなグラスでビールを飲むよりもジョッキでぐいっ、ごきゅ!ずどん!といった方が心地よい。
ああ、幸せ。わし、もうビールと野沢菜だけで十分かもしれん。

野菜中心の食卓ではあったが、ちょっと異彩を放っていたのがローストビーフ。なぜこんなところに紛れ込んだの、という様相。
これを食べようとしたが、ナイフとフォークがないのでかぶりつくしかない。よって、写真のようにワイルドかつエクセレントな食べ方になってしまうのは仕方が無いことだ。

食後、明日の行程について議論。
東京のおかでんとしては、関越道の塩沢石打ICに向かい、関越道で帰るのが一番手っ取り早い。しかし、前日遭遇した竜王高原の蕎麦屋、「山の実」をぜひしぶちょおにも体験して貰いたかったので、竜王高原経由で信州中野ICから長野道を使って帰ることにした。
「山の実」をしぶちょおに体験してもらうんなら、場所だけ教えて「じゃああとは一人で行ってらっしゃい」と言えば良い話だ。しかしそうしなかったのは、しぶちょおが驚き興奮する様を見たかったからに他ならない。あの立地条件、あの店の外観、そしてあの蕎麦の美味さ、いちいちびっくりする要素満載だ。そのびっくりしているところをぜひ見たい。

おなかがこなれたところで、まだ入っていない内湯へと向かう。
広々とした湯船で、こちらも快適。
源泉の泉質はカルシウム・ナトリウム・塩化物・硫酸塩温泉。毎分164リットルの掛け流しで、加温加水なし。

24時半就寝。おやすみなさい。
2009年06月29日(月) 4日目

4日目朝。7時半から食事。
シンプルながらもこれだけあれば朝ご飯は十分、といった内容。トマトジュースがついているのがちょっと珍しい。
ご飯何杯食べられるんだろうか、これだけのおかずで・・・と考えてしまう。ペース配分はとても重要。えっと、まず温泉玉子でいっぱい、納豆でいっぱい、甘露煮そのほかのおかずでいっぱい?合計3杯?

しぶちょおは、えいやっといっぱいのお茶碗の中に納豆、温泉玉子、そしていんげんの胡麻和えを載っけてしまった。なるほど、これだとご飯のお代わりをする回数が少なくて済む。お互い体重が気になるお年頃、お代わりはちょっとだけ遠慮しなくちゃね。
でもおかでんは貧乏性なので、こんな「オールインワン」なトッピングはとてもできない。結局、想像どおり納豆でいっぱい、玉子でいっぱい、おかずでいっぱい・・・と3杯食べる羽目になった。うーす、ごっつあんです。


朝食後、ロビーに置いてあった栄村の紹介アルバムを見る。切明温泉のページもあり、建物の写真が掲載されていた。今と形が違う。今は一つの細長い建物になっているが、昔は三棟に分かれていたようだ。
解説のところには、「民家をデフォルメして雪渓された感じの温泉宿舎『雄川閣』」と書かれてあった。そうか、これ、デフォルメしてあったのか。トンガリ屋根あたりがデフォルメされているのだろうか?

館内を探検していると、家族風呂を発見。こんなものがあるとは知らなかった。

中を覗いてみると、家族で入るにしてもやや狭い風呂があった。
カップルで入るにはちょうど良いかも。
僕ら?いやー、別に入っても構わないんだけど、さっき朝風呂入っちゃったしなあ。しぶちょおは朝風呂入らずに早々に部屋に引き上げていたし。
というわけで家族風呂に入るのはやめ。

部屋に戻ると、しぶちょおが大の字になって寝ていた。
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