13:50
剱神社から駐車場まで、ほんの少し歩く。
道路標識を見上げると、国道438号と439号の表示。いやあ、すごいな。ここまでして国が道路整備する必要ってあるのだろうか?あるんだろうな、きっと。自治体じゃ管理しきれない、ということなのだろう。
奧祖谷二重かずら橋、という看板も出ていた。ここから7キロちょっとの場所にあるらしい。
見ノ越駐車場付近には、何軒か売店がある。
店頭のソフトクリーム看板に惹かれ、ソフトクリームを買ってみた。おっと、傾いてきたぞ。早く食べないと。
駐車場に停めてあった車の中に、兄貴がいた。読書をして過ごしていたそうだ。「かずら橋にでも行ってくれば良かったのに」と聞いてみたら、「車がある程度大きいし、道が狭くて難儀すると困るから残っていた」と答えた。そこまで激ヤバの秘境ではないと思うのだが。
「7キロくらい先で、結構近場だぞ」と教えたら、「そうか。それは惜しいことをしたな」と言う。僕にしろ兄貴にしろ、もうよっぽどのことがないと、この山奥までやってくることはないだろう。
14:08
往路と同じ道を退却する。
行きと帰りで違うルートを使って帰りたいところだ。しかし、祖谷渓から大歩危・小歩危経由で帰るのも大変なので、おとなしく最短ルートを使う。なにしろ、我々兄弟は実家を起点にここまでやってきている。兄貴には小さな子供もいるし、夕方のお風呂に入る時間までには帰宅していないと、なにかとまずい。
帰り道、せめての抵抗ということで、行きの際に「おや?」と気になってはいた場所に立ち寄ることにした。
剣山スキー場。
ナビにはそう記されている。
四国にだってスキー場がある、ということは知っていたけど、一体どんな感じなのだろう。夏の間はもちろん誰もいないはずだけど、様子を見てみたい。
「廃墟じゃないか?」
「どうだろう、シーズンオフだとこんな感じなのかな?」
草が生い茂り、しん、と静まりかえっている。当たり前だ、ただでさえとんでもない山奥だし、「夏はグラススキーをやっています」というアクティビティがない限りは用がない場所だ。
ゲレンデマップが、ゲレンデ手前に掲げられていた。
リフトが1本、コースが大きくわけて3つ、というコンパクトなスキー場だった。
「剣山スキー場」と名乗ってはいるけれど、僕がさきほど登った剣山とは別の山だ。まあ、「苗場山スキー場」が苗場山にはないのと一緒と思えば、これくらい誤差の範囲だ。
うわ。
夏のゲレンデってこんな感じだったっけ?
石段を登ってゲレンデに出てみると、そこは「草が茂っている」というよりも半分自然に戻っている状態だった。
これ、冬になったら伐採するのだろうか?ずいぶん草がモコモコしているぞ。このまま雪が積もったからといって、ハイそうですかと気軽に滑れるようにはならない気がする。
それなりの傾斜があるゲレンデだ。初心者には情け容赦ない。
いくら標高がそこそこある、といってもここは四国だ。雪質が良いとは思えない。グズグズの雪ならまだしも、アイスバーンとなっていたら減速できずに直滑降してしまいそうだ。
そんなわけで、「ロッジ」と呼ばれるセンターハウスのところには、「減速」と大きな看板が出ていた。
いや、言われなくても減速しますって。なにせ、減速しないと建物に激突してしまう。
大きなスキー場の場合、建物が建っている手前あたりは緩斜面または平地になっているものだ。しかしこのスキー場はあまり平地の余裕がない。なかなかハードだと思う。
ロッジ全景。さほど古い作りには見えないけど、どうなっているのだろう?
しばらく、「これは廃墟だ」「いや、まだやっているのではないか」と兄弟で議論したけど、結論は出ず。
後で調べてみたら、2007年にこのスキー場は「無料開放」になっていたのだという。つまり、閉鎖はされていないけど、職員は一人もおらず、滑りたければ勝手に滑ってくれ、というわけだ。もちろん、ゲレンデの手入れなどは何もされていない。
だから、廃墟といえば廃墟だし、やっているといえばやっている。二人とも微妙に不正解だった。
そんな曖昧な形で運営しなけりゃいいのに、と思って掘り下げて調査してみたら、「このゲレンデは国定公園内にあるので、スキー場を廃止したら森林の原状回復をしなければならない」のだそうだ。つまり植林せよ、というわけだ。
儲からないから閉鎖したいのに、植林でお金をかけるわけにはいかない。ということで、「無料開放」というわけだ。なんてトンチがきいているんだ。いや、こんなのはトンチとは言わないか。
(つづく)
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