ドイツ語科 Meine Lieblings
これまで僕がこの外語祭で見聞きしてきた中では、もっとも繁盛しているお店と思われるのがドイツ語科のお店だった。
みんな大好きソーセージとビールの組み合わせは、人々を夢中にさせた。そして長蛇の列をも厭わない人がぞくぞくとお店の前に並んだ。
しかし今年は、僕が想像していたような酷い混雑状況ではなかった。
とはいえ、学祭の実行委員もこのお店は行列ができることを予め想定していたのだろう。人が往来する道路に面した場所にお店を配置し、長蛇の列ができた場合は円形広場内に列が伸びるのではなく、道路側に列を逸らすことができるような場所を指定してあった。
長蛇の列がこのお店の前にできていなかったのは、とにかく作りまくっていたからだ。
鉄板の上にヴルスト、すなわちソーセージがどんどん乗せられ、焼かれていた。開店前から在庫づくりに余念がなく、そのおかげで大量のお客さんをさばくことができていたようだ。
なぜかプレッツェルは販売中止の張り紙が転倒に出ていた。
「前売り券は払い戻します」と書いてあるので、何か不慮のアクシデントがあったらしい。プレッツェルの材料を仕入れそびれたのか、それともプレッツェルが入っていた段ボールを誤って水没させてしまったとか、落としたとか。
カリーヴルスト400円。
お酒が飲める人なら、ぜひビールと一緒に食べたい料理。長いソーセージを目の前にすると、人々は思わずにっこりと微笑んでしまう。
そんな性質は2歳児の弊息子にも存分に受け継がれており、彼は「食べたーい」と言い、一人でバクバクとヴルストを食べ始めた。「待て!勝手に食べるな!」と親が静止しなければならない状態だった。
結局、2歳児が1/2本、大人が1/4本ずつという不平等なシェアとなった。子どもはこういうとき、一歩も妥協しようとしない。
英語科 More Calories? (モアカロリーズ?)
店名を見ると、かなり挑発的な、若気の至りの言葉が使われている。「モア カロリーズ?」だって。
一昔前の僕なら「イエス、オフコース!」と即答していたが、今回は店名にすら気づかなかったし、気づいていたとしても「いやぁ・・・カロリーはそんなにいらないかなァ・・・」と面白くもなんともない、真面目な返答をしていたに違いない。なんてつまらない男なんだ、我ながら!
それにしても、せっかくこういうギトギトした店名にしたなら、もっと転倒をギトギトした装飾にすればいいのに。全く地味だった。
世界で圧倒的なシェアを持つ「英語」だが、ことこの外語祭においては、あまりインパクトがない。他の、日本ではあまり馴染みのない国やその料理の方が迫力があるからだ。英語圏の料理は、良くも悪くもよく見かけるものだ。
ごめん、「英語圏の料理は、良くも悪くもよく見かける」と行っておきながら、メニューに書いてある「スモア 200円」というのはなんのことか知らなかった。
調べてみると、「チョコレートと焼いたマシュマロをクラッカーで挟んだお菓子」だって。ああ、それなら知ってる。電子レンジで熱したマシュマロを(ブルボンのお菓子の)アルフォートで挟んで食べる、というのをやったことがある。
旨いか?と聞かれると、僕の口にはあわない味だが、「モアカロリー」を求めるならば最適な一品だ。
このお店の料理は結局買わなかった。売り切れだったか、仕込み中だったかで買うタイミングを逃した。
ここまでで円形広場の半分。さてここから先が残り半分。
円形広場の背後にある建物が講義棟。
東京外大は広いキャンパスを持っているが、講義棟はこれ1つしかない。
カンボジア語科 ខែម (カエム)
カンボジア語科。
どういうきっかけで学生さんたちはカンボジア語を学ぼうと思ったのだろうか。僕が高校時代ならば、カンボジア語という概念すらまともに理解していなかった。今の学生さんはネットなどを通じて視野が広いのかもしれない。
それにしても店の横断幕、アルファベットの部分を除くと字が全く読めない。おそらく「カンボジア語」とここで称しているのは、いわゆる「クメール語」のことなのだろうが、文字が呪文のようだ。
ソムローカリー、カンボジアンコーヒー、アンコールビールというメニュー。
僕らはソムローカリーを買った。
ココナッツを使ったカレーで、バゲット付き、500円。
弊息子タケ、ココナッツの味はほぼ初めての体験だと思うが、何だこれ!と抵抗を示すことなく大人しく食べていた。でも、カレーよりもバゲットをむしゃむしゃ食べるほうが彼にとっては好みだったようだ。
2歳にして世界各国の料理を食べている体験は、将来的に舌が肥えるきっかけになるかもしれない。でも、おそらく今日の日のことを彼は何一つ記憶に残さないはずなので、まったくグルメにはならないのかもしれない。
小さい子どもにいろいろな体験をさせることに対して、「どうせ記憶に残らないんだから、やるだけ無駄」という意見もあるし、「いや、さすがに全く何も役に立たないことはなかろう。何か人格形成に影響があるのではないか」という意見もある。今まさに子育てをやっている最中だけど、未だにその答えがわからない。
(つづく)
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