草津二十番勝負【ミニ湯治強行軍】

体調が優れないのはここ数カ月ずっとだった。どうも頭がぼーっとする。朝会社いくのがとても辛い。疲れているのに、熟睡感が無い。「頭がぼーっとする」のがあまりにひどいので、このサイトも「体調不良宣言」とともに更新が完全ストップしてしまったくらいだ。その結果、約2カ月近く更新が止まった。

酒飲みなので、もともと肝臓の調子がベストではない。ひょっとしたら肝機能低下による全身倦怠感なのかと思った。だから、「三度の飯は食べなくてもビールは欠かしたことがない」という生活習慣を改め、休肝日を作るようになった。お酒を飲まない日というのはそれはそれで良いもんだ、ということを今更のように気がつくきっかけとなった。おめでとう、34歳のオレ。そして、血液検査の結果、γ-GTPが若干高いもののそれ以外は全く問題なくなった。

これで朝のだるさは少し改善した気がする。しかし、その割には調子がベストではない。ベターでもない気がする。いやむしろ悪いままだぞ。ううむ、これが加齢というやつか。でもどうも釈然としない。

そんな中、久々に整体に行ってみた。もともと肩が凝りやすいのだが、最近はそれほど自覚症状を感じていないのでご無沙汰していた。すると、整体師は背中をざっと揉むやいなや、「これまで触ってきた人の中で一番固い」と苦笑いしながら言い放った。それだけなら、整体やマッサージにありがちな「凝ってますねえ」系のリップサービスだ。しかし、おかでんは過去別の2店舗でも全く同じ事を言われたことがあり、あながち大げさな話ではないようだ。どの店でも同じリップサービスを提供しているとは思えない。同じ空間には他のお客さんだっているわけだし。

しかもその整体師、僅かに自覚症状があった首と肩だけでなく、「ほら、ここも凝ってます」なんていいながら腕、足を揉む。「ああ、これはひどい。全身に疲れが広がってしまっていますね」と絶望的な発言。確かに、揉まれて気付く、体の凝り。あちこち揉まれて、なんて気持ちよいのかと快楽を感じると共に、恐怖を覚えた。

それからだった、凝りについて強く意識するようになったのは。開けなくても良かったパンドラの箱が開いたかのように、その日を境に強い肩こり、首凝りを感じるようになった。意識すればするほど、痛い。頭がぼーっとする度合いも強くなったような気がする。

こっちだってその状況に甘んじているわけではなかった。打てる手は打った。

(1)フィットネスクラブ
従来にもまして、ヨガ、ピラティス、ストレッチ、バランス、そしてルーシーダットンまで取り組んでみた。やった直後は開放感を感じたので、やってることに間違いはなさそうだが、今の体だと疲労物質が余計貯まってかえって悪化してしまいそうな感じ。

(2)整形外科
総合病院の整形外科に行き、徹底的に見て、根本的抜本的革新的かつ斬新な対策を打って貰おうとした。会社をわざわざ休み、朝から待合室で待つこと2時間、ようやく診察してもらった。担当医は、肩こりがひどいと聞いて、非常につまらなさそうな顔をして「じゃレントゲンとりましょか」と一言。いやもっと問診とかやってくれないんスか。どうも、肩こりのような平凡な症状では医者としてのモチベーションが湧かないらしい。

レントゲンを前後左右から撮影し、さあ結果はどうなんだ、頸椎がゆがんでいるとか、なんとかスゲーことになっているのではないのか、とちょっとだけ期待。もちろん、骨が曲がっていては大いに困るのだが、原因が特定できると精神面で落ち着く。

すると、お医者さん、さらにつまらなさそうな顔をしながらレントゲンを指さし、

「ストレートネックですね。首の筋肉が硬直して、本来湾曲しているべき頸椎が真っ直ぐになっています」

という。

「そ、それは何かスゲー病気なんすか」
「いや、肩こりの人はよくある症状です」
「は、はぁ・・・」
「あと、男性の割にはなで肩ですね」
「え?そんなこと言われたこと、一度もないですよ」
「でも、横からのレントゲン写真を見ると、肩関節が胸骨の上端より下に位置してます」
「うーむ、で、それは問題なんですか」
「いや、肩の筋肉が引っ張られやすいので、肩こりになりやすいですね」
「で、抜本的な治療は?」
「とりあえず湿布と、筋肉を弛緩させる飲み薬を出しときます」

以上おしまい。

引っ張ったり押したりするのは、「整形外科」ではなく「リハビリ科」になるらしい。しまった、湿布貰うために半日潰してしまった。湿布は有り難く使わせてもらった。ボルタレンテープというやつ。確かに医薬品だけあって、普通のサロンパスなどよりははるかに効き目が感じられる。でも、しょせん湿布であり、劇的な変化が得られるわけではなかった。ちなみに、筋弛緩の薬は、どうせ脳の交感神経をブロックする系の薬だろうから、飲まなかった。そっち系の薬は効果が得られやすい反面、抜けだしにくくなるからいやなんだ。

(3)リハビリ科
低周波治療器による治療開始。市販されているやつとどう違うんだ、と思うが、機械が巨大なのできっと医療用器具は市販品と違うんだと思いたい。

あと、ウオーターベッドに仰向けで寝る器具があって、これが気持ちよかった。ベッドの下からジェット噴流がゴゴゴと吹き上げてきて、ベッドの生地の下から押し上げてくる。それが上から下へ縦横無尽に動く。新手のマッサージ器だ。とても気持ち良いのだが、残念ながら抜本的な解決策にはならない予感。ただし、一回のリハビリで320円なのは安い。

ところが、「平日18時以降もしくは土曜日12時以降の診療については、平成20年度より診療報酬体系が変更となったため、時間外手数料をとります」という張り紙があった。会社帰りに行くとなると高くつく。これは悲しい。

(4)内科
整体師が「体に疲労物質が溜まるのは、肝臓や腎臓の調子が悪い時に起きやすい」と言っていた。なるほどごもっともだ。また、背中の筋肉が凝るのは内蔵疾患から起因することが多いのだという。それはけしからん。改めて内科で検査を実施。血液検査だけでなく、超音波エコーで念を入れてみた。結果、肝臓、胆のう、胆管、膵臓、腎臓全て問題なし。健康な体に産んでくれた両親に感謝。

(5)心療内科
うつの初期症状として、強い肩のこりや頭痛が生じる事がある。体からの危険信号というわけで、放置しておくと本当のうつが発症するケースがある。そんなにストレス感じてたっけなあ、と思いつつも心療内科受診。

初診の場合、30分近いカウンセリングがあるのね。家族構成や仕事の詳細にまで突っ込んだ話になったのでびびった。

しかし、「まあ、肩こりなんて多くの人がなるわけですし、気にしないことですよ」と一笑に付された。「確かにおかでんさんの言うような事例(肩こり)はあり得ますが、現時点でお話を聞く限りうつではないと思います」だって。なんだったら緊張をほぐす為の抗不安薬だそうか、という話もあったが、それは断った。デパスの類だと思うが、非常に癖になりやすい薬として定評があるのでやめておきたい。誘惑には負けやすい性格なものでして。

そうこうしているうちに、ついに体が言うことを利かなくなって、朝会社に行けなくなった。体がだるすぎる。お酒の飲み過ぎ・・・じゃないよなあ。社訓じゃないけど、「飲んだ翌日は這ってでも会社に来い」という言葉が自分の所属する会社ではよく言われる。二日酔いで休むなんて言語道断、会社に出てきてぶっ倒れる方がまだマシだ、というわけだ。生産性が低いという点では会社に出るだけ無駄なのだが、根性論の世界がまかり通っている。話がずれた。何が言いたかったかというと、そんな職場にいるので、二日酔いごときでは会社をサボらない。つまり、二日酔いを上回るくらいに体がだるいということだ。

これはいかん。いかんぞ。本格的にやばい。

対策として、2年くらい前に楽天で買った「福辻式 首ストレッチャー」なるものを押し入れから引っ張り出してきた。これ、首を強制的にのけぞらせて、ストレッチするという代物。5分もすれば、首が痺れてくる。やり過ぎ厳禁。でも、やってみたら大層塩梅が良かった。思考回路も若干クリアになった気分。しかも首まわりの血行が良くなり、首ストレッチャーをしながら新聞を読んでいるだけなのに汗ばんだぐらいだ。

さらに、東急ハンズで「姿勢矯正ベルト」を買ってきて、装着。猫背になりがちな背筋をのばした状態にするベルト。これも悪くないようだ。肩胛骨内側の血行が良くなった気がする。ちなみに、100円ショップでも同様のものが売られているが、粗悪品なので買わない方が良いです。∞型の単なるゴム帯。確かに両肩に装着すると猫背は矯正されるのだが、着けてしばらくするとゴムが脇の下に食い込み、非常に痛い。耐えられない。

そんなわけで、不本意ながら会社を欠勤していた日は、昼間はひたすらストレッチ、夜はフィットネスクラブでストレッチ及び有酸素運動という時間を過ごした。夜は、枕無しで眠る。今まで、テンピュールの枕を使ったり、松下電工製のエアー注入により頭の形に自動フィットする電動枕を使ったりしていたが、それでも朝起きると肩と首がガチガチになったからだ。結局、キンチョールのスプレー缶を首の下に置いて寝るのが今の自分にとってちょうど良さそうなので、それに落ち着いた。ただこれでは熟睡できるわけがない。寝返りを打つたびに目が覚める。辛いのう。

そんな苦痛の日々を送っている最中にやってきたのが十月の体育の日三連休。「せっかくの三連休、今年は山に登っていないから山に行かなければ。もうシーズンオフだ」という気持ちになっていた。しかしまあ待て、体調不良ですと会社休んでいるような輩が、連休になったらウキウキしながら趣味の登山をしているっておかしくないか?上司にどう説明つけるんだよ。「その程度の体調不良で会社を休んでいるのかねキミは」と言われる。

首肩の痛みというのはそこだけに問題があるのではなく、腰だとかの別の箇所の不調から派生して痛みの箇所が広がっていく事が多い。だから、「首肩のマッサージ」だけではなく、「全身マッサージ」「全身運動」は重要な事だ。だから「調子が悪いので、全身の血行を良くするために登山に行きました」というのは論理として間違ってはいない。でも、通用しないだろうなあ。

そういう「対外的な観点」で登山は無理、というのもあったし、登山の際にザックを背負うというのがたまらなく今の体調だと憂鬱。ますます血行が悪くなりそう。やっぱり登山は却下だ。とはいっても、三連休家でひたすらストレッチやっているのは憂鬱すぎる。何か良いアイディアは無いものか。

そこでひらめいたのが、「そうだ、湯治だ」。

湯治。日本では古くから伝わる文化で、もともとは農閑期の農家の人が、冬季に1カ月単位で温泉宿に泊まり込み、農作業の疲れを癒したものだと言われる。今でも体調に問題がある人が長期にわたって温泉療法に取り組んでいる例は多い。特に東北地方には湯治客を相手にしている湯治宿が散見される。

湯治は最低一週間以上行うのが普通。温泉の効果が出始めるのが一週間以降だからだ。逆に言うと、1泊2日の温泉旅行程度ではその薬効を得ることは難しい。転地効果によるリラックス、といったところが関の山だろう。

湯治を始めてだいたい3日目くらいから、温泉の薬効のせいで体調を崩す事がある。倦怠感、食欲不振、下痢、病状の悪化など。これを「湯あたり」といい、湯あたりになるといったん温泉に入るペースを落とし、回復に努める。湯あたりをおこすことは決して悪い事ではなく、「好転反応」とよばれる。なぜなら、その調子悪化を境にして体調が快方に向かい始めるからだ。温泉療法は、基本的に「毒物を体に取り入れ、自己免疫力を強化させる」というワクチンと似ている。だから、「抗体」ができるまでは調子が悪いが、抗体ができれば強い体に生まれ変わるというわけだ。

おかでんも、その先人の知恵に授かり、早く体調を回復させようと思い立った。目指すは、天下の名湯、日本三大薬湯であり、なおかつ日本三大名湯の一つとも謳われている草津温泉。

草津温泉は都心からそれほど遠くないところに位置しているし、温泉の強烈さは日本有数だ。即効性が期待できそうだ。でも、「草津に行こう」と思い立ったのはそれだけではない。この草津、地元の人のための共同浴場が18箇所も存在し、そこに部外者でも「貰い湯」と称して入浴させて貰うことができるからだ。

以前から「草津共同浴場を全部回る」事を狙っていたのだが、今回こそがまさにそのタイミングではないのか。地元の方のご厚意で、共同浴場は全て無料。お金がかからずに天下の名湯を満喫、体調回復。これは今の自分にとって最適だ。そうだ、草津に行こう。

ただ、リスクも十分に理解していた。草津のお湯は強烈で、ただでさえ1時間もじっくり入っていたら湯疲れを起こす(湯あたり、とは違う)。2泊3日で18箇所も回ったら、確実に湯あたりを起こし、かえって体調を悪くさせる恐れがある。あと、湯治というものは一日にアホみたいにお湯に浸かるのではなく、2~3回程度に留めるのが普通。たくさん入れば効果倍増、というものではない。体は疲弊するし、湯あたりのリスクを高めるだけだ。

・・・と、わかっていても、今の体調をなんとかしたかった。あと、共同浴場巡りという企画にわくわくした。よし、三連休はミニ湯治で決定だ。これでばっちり体調を直し、翌週からはエリートサラリーマンの道を疾走するんだ。

2008年10月11日(土) 1日目

雨の関越道

企画前日夜に「草津行き!」と思い立ち、翌日朝にはもう出発だ。フットワークが軽いというか、計画性が無いというか。

思慮の浅さは当日になっていやというほど思い知らされた。

朝早く家を出発するつもりだった。関越道で渋川伊香保ICまで行くことになるので、ETCの通勤割引(午前9時まで)を利用するつもりだったからだ。

しかし、起きられなかった。体が動かない。草津に行くのが非常に面倒になった。

・・・そりゃそうだよなあ、体調不良です、といって会社休むくらいの状態だ。週末になった途端に急にフットワークが軽くなる訳がない。そうだとしたら仮病だ。

2時間くらいぐだぐだして、もういい加減に動き出さないとこの後の行程がうまくいきませんよ、という段階になってしぶしぶ行動開始。あー、だるい。

今回はお金をかけない旅を目指しているので、宿は確保しない。温泉街外れの駐車場に夜間だけテントを張って対応するつもり。キャンプ用品一式は車に詰め込んであるので大丈夫。でも、もし「さあ出発前にキャンプ用品をトランクに詰め込むぞ」という事になっていたら、絶対挫折していた。

朝9時45分、高速に乗る。外は雨。そして高速道路は大渋滞。三連休初日ということで、都心から脱出する観光客が多い。早くも、途中のICで降りて帰りたい気持ちになる。待て待て、この体の不調を直すぞという強い意志を持て。途中で諦めるな。

共同浴場巡り開始直前

草津の共同浴場がどこにあるのかについては、こちらの地図を参照されたい。

草津の温泉街は地形上非常にわかりにくい。アップダウンが激しい上に、道が非常に入り組んでいる。そして道が狭い上に駐車スペースがない。うかつに湯畑方面に車を突っ込ませてしまうと、観光客に取り囲まれてしまい身動きつかなくなるし、対向車が来て涙目、なんてことになる。いかに、「目指す共同浴場に遠からず、近からず」な場所に駐車スペースを確保し、最低限の徒歩で目的地にたどり着けるかが課題となってくる。

おかでんは草津に既に十回以上訪れているのである程度地形には明るいつもりだったが、改めて地図を見ると知っている場所は「大滝乃湯~湯畑~西の河原」の間だけだった。多分、多くの観光客も同じレベルではないか。公共交通機関を利用した人はバスターミナル~湯畑の地理にも明るいとは思うが。

さて、どうやって共同浴場を巡っていきますかね。

問題なのは、共同浴場はいつでも入れるわけではない、ということだ。午前中は清掃時間になっていることが多いし、午後は15時くらいから「地元民専用のため、観光客は入れません」となることがある。そして夜中は防犯上の理由で入れません、と。ただ、共同浴場ごとにルールは異なるので、事前情報をもとにうまいこと切り盛りしていかないといけない。なにしろ18箇所だ、そうやすやすとクリアできる数ではないぞ。

しかも、自分自身には今回課題を課していた。草津に訪れたのは治療が目的であって、共同浴場『制覇』が目的ではない。一箇所につき、30分は滞在し湯を十分に堪能すること、ということにした。カラスの行水ですぐに風呂からあがっていたのでは、治りっこない。と、なると、18箇所だと9時間、か。まあ、3日あれば十分すぎる時間はある。焦る必要はない、一つ一つ確実にお湯を頂戴してまわろう。

一般的に首都圏から草津温泉に車で入る場合は、渋川伊香保IC→中之条→川原湯温泉→長野原草津口→草津、というルートをとると思う。しかし、おかでんの場合はカーナビが「こっちの方がええで」と指示することもあって、普通、渋川伊香保IC→中之条→沢渡温泉→暮坂峠→草津、というルートをとる。草津の東側からの侵入。

となると、一発目の共同浴場は、草津温泉街の東端にある「こぶしの湯」ということになる。

共同浴場は、それと分かりやすい派手な建物ではない。基本的に地味だ。サイズも大きくない。車で走っていると見落としがちなので、注意しながらアクセルを踏む。ええと、地図によると火葬場の手前・・・か。火葬場まで行ってしまうと行き過ぎなんだな。

おっと、あった!発見。湯屋独特の作りの建物がちらりと見えた。あれだな。あわててブレーキを踏み、車を路肩に停めた。さあ、一発目の湯治開始だ。

ちなみに写真は、姿勢矯正ベルトを装着している状態のおかでん。防弾チョッキのように見えるが、こういう形状のベルトを着けていると背筋がしゃんとする。

こぶしの湯

株式会社長岡組、という看板が出ている建物の敷地の一角がこぶしの湯だ。草津中心地方面からやってきたら、確実に見落としてしまうと思う。浴場への入口が、中心地に背を向ける方向にあるからだ。

[第01湯 こぶしの湯(万代鉱源泉) 12:48]

こぶしの湯(万代鉱源泉)

こぶしの湯。草津にはたくさんの源泉があるが、ここは万代鉱源泉を利用している。源泉温度94.6度、PH1.7と強烈なお湯だ。

その名の通り、昔は硫黄を採掘していた鉱山から噴出したお湯。お湯がじゃばじゃば出てきて始末に負えなかったのと、時代の流れと共に石油精製のついでに硫黄は容易に確保できるようになったため、硫黄鉱山は採算が取れず閉山。結局、今では草津を代表する源泉の一つとなっている。湧出量が非常に多いので(諸説あるが、だいたい5,000L/minくらいと言われるようだ)、あちこちの施設に給湯されている。また、町内道路の融雪にも使われている。

こぶしの湯自体は万代鉱源泉から街を挟んで対極の位置にあるのだが、ここまで配管されているというのだからすごい。草津温泉街の地下には温泉パイプが張り巡らされているのだろう。

こぶしの湯脱衣場

脱衣所。入口入ってすぐのところにある。

張り紙を見ると、この湯は9時~11時半が掃除時間、15時~21時までが昭和区民専用時間として設定されているようだ。21時以降、深夜に入浴することができるのかどうかは不明。実質的には11時半~15時までよそ者は入浴可、と考えておいたほうがよさそうだ。

細かい字で注意

なにやらびっしりと紙にしたためられた文字。お経か?

読む気力が出ないボリューム感だが、とりあえず読んでみた。

こぶしの湯は地元の人が長い間に渡り町当局に建設のお願いをくりかえしようやく望みかない十八番目の温泉共同浴場としてでき上がりました。地元住民の負担はもちろんのこと、町当局、区民の方々、多くの方の御奉料をいただきこの近所の人々が管理し毎日清掃しゴミを捨ててまわりに花を植えております。

遠くから草津へ来られた方々にもいい湯だな、いい風呂だな、気持の良い風呂だなと感じていただきたいと願っております。

天然よりの恵の湯に感謝をこめて汚さずいたずらせず気持ちよく入ってください。(以下略)

十八番目の共同浴場、ということは一番新しくできたお風呂ということになる。町外れということもあって、実現にこぎつけるまではいろいろ苦労があったと思う。その気持ちを文章にせずにはいられなかったのだろう。わかります。

「せっかく作ったんだから、地元民はもとより部外者にもぜひ満喫して貰いたい」という気持ちを表現しているが、その一方で「これだけ苦労して作ったんだぞ、有り難く入れよ部外者諸君」という声にならない思いが若干混じっているその微妙感。いや、ホントそうだと思う。創設に苦労された方からしてみれば、おかでんをはじめとする区民以外の人は「応分の負担をしないくせにただ乗りしている輩」だ。しかし、そういう排他的観点はできるだけ除外し、広く利用してもらおうじゃないか、という志はとても素晴らしいしありがたいことだ。なかなかできることじゃない。

こぶしの湯浴槽

こぶしの湯浴槽。4人くらいが入れるサイズか。足を伸ばして浸かるなら、3名。

窓があり、空を眺めながら浸かる事ができるのでとても開放感がある。

こぶしの湯天井

しっかりと湯気抜き用の高い屋根が作られているんだよなあ。低い天井でコンクリート壁で湯気が籠もりまくり、なんてことが起きないようにちゃんと作られている。18ある共同浴場の一つ、にすぎないわけだが、本格的な作りだ。

当然、屋根を高くする分コストが相当高くなったはずだが、それを分かっていても「屋根は、高く。」と要望したんだろう。素晴らしい判断だと思う。

肩までみっちりお湯に浸かる

お湯を頂く。最初は先客2名がいたのだが、途中で退出したのでお風呂を独占できた。後半、子供連れのお父さんがやってきたが、子供はこのお湯を嫌がってなかなかお風呂に入ろうとせずぐずっていた。まあ、そりゃそうだよなあ。きついお湯だから。

湯温はちょうど良い感じ。若干熱めだが、ビリビリする感じはしない。ただ、このあと共同浴場を巡りまくって分かったが、直前の人が加水していたり、人が大勢入っていると当然湯温が下がる。温泉が供給されている蛇口からの流量次第ということもある。「ここのお湯は熱い、ぬるい」という話はあまりあてにならない。時と場合によって全然違うことになるだろう。

頭の付け根まで湯船につかり、暖をとる。今回の旅で主に治癒させたいのは首と肩、特に首だ。できるだけ深く湯に身を沈めないと、温熱効果が得られない。頸動脈が湯にさらされるとのぼせるのが非常に早くなるが、この際仕方がない。のぼせては湯から出てクールダウンさせ、また湯に入り直す事を繰り返した。

30分経過で、風呂からあがった。もうこれで十分という感じ。これがあと17もあるんスか?いや、そんなに入らなくてもいいですわ。でも待て、いまの一湯で体調が良くなったか?いや、全然良くなっていないではないか。良くなるまで入り続けろ、それがここに来た目的だ。うへーい。

温泉街方面

こぶしの湯の前を走る道路から温泉街方面を見た図。

まだ全然「草津温泉に来ました!」感がない場所。こんなところにも共同浴場があるとは、全く気付かれない穴場だ。

ネット時代だからこそ、こういう場所を事前に情報収集し、訪れることができる。時代の変化と共に観光も変化していく。地元民にとっては複雑な心境ではあると思うが。

いいやま亭

お昼ご飯をまだ食べていなかった。時刻は13時20分、いい加減食べておかないと飲食店のランチタイム営業が終わってしまう。

この日のお昼に食べようと思っていたのは、「いいやま亭」の釜飯だった。釜飯という言葉に惹かれたのと、ちょうど立地が先ほど入湯した「こぶしの湯」と次の「恵の湯」の間くらいにあるからだ。

このお店もネットで調べた。今の時代、ネットを有効活用しないと生き残れないな、と思う。特にこのお店のように、温泉街の中心地から外れているならなおさらだ。

路面に出ている看板はあまり大きくないので、うっかり通過するところだった。気がついて慌ててブレーキ。

いいやま亭店内

店内に入ってみると大混雑。駐車場に小型の観光バスが止まっていたので「ほう、見かけによらずここは団体客も集客するようなお店だったのか」と思っていたのだが、そうではない。単に普通サイズの飲食店に団体が押し寄せただけだ。

そんなわけで、店内は自分より前に5人組の待ち客あり。

店員さんに「1名ですけど」と来店を告げたら、「今いっぱいなんですよー・・・」と申し訳なささそうに言われた。その後に「お待ちいただくことになりますが、よろしいですか?」と続くかと思ったが、何もなし。要するに、本日はお引き取りください、ということか。商売っ気ないなあ。

「それは今日、もうアウトということですか?」と聞いてみたら、ようやく「お待ちいただいてよろしければ」という言葉を引き出せた。ええ、待ちますとも。どうせ釜飯、注文を受けてから炊くわけであり、20分以上待つことになる。今席が空いていなくても先に注文しておけば何ら問題はあるまい。

花いんげん釜飯

いろいろな釜飯があるので、どれにしようか悩む。

「当店人気No.1!」と記されているかにイクラ釜飯1,730円に惹かれるし、当店人気No.2と謳われている舞茸釜飯990円も魅力。

しかし、思案の末選んだのは、「草津温泉でしか食べられない店長おすすめ」のキャッチコピーがまぶしい、「花いんげん釜飯」1,150円を選んだ。

花いんげん(花豆)は、嬬恋、草津、六合あたりの名産品だ。空豆のようにばかでかい豆で、砂糖で甘く味付けする。小豆が巨大化したと思えば認識としてそれほど外れてはいない。

正直、ご飯の中に甘い豆が入っているのはどうかとも思ったが、名産なのは事実だし店長お奨めだし、やっぱり地の物を食べてこそ健康増進だろうと意を決した。

で、待つこと20分ほどでできたのがこちら。

花いんげん釜飯

花いんげん釜飯。

なるほど、釜の蓋をあけてみると、5つのお豆ちゃんがずらずらと並び、その真ん中には栗が鎮座して一座を取り仕切っている。他の具は一切ない。釜飯、炊き込みご飯ともなるとついつい牛蒡や人参などを入れてしまいたくなるが、シンプルイズベストということだな。

ちなみにこの花いんげん釜飯は1,150円だが、山菜、鮭、舞茸、鶏、牛、あさり、えびの釜飯がいずれも1,000円以下。実は花いんげん、結構な高級食材らしい。海老の釜飯よりも高いというのはなかなかなもんだ。

早速頂く。しゃもじでお茶碗に移し、食べる。うん、おいしい。甘いご飯ってどうよ?と思ったが、悪くないです。ご飯そのものが甘いわけではないので、違和感はなかった。花いんげんの釜飯が食べられるお店なんて、全国で殆どないだろうから、これは良い体験をした。

ところで「店長おすすめ」でありながら、「人気No.1」どころかNo.2にもなれないあたりが、花いんげんの地味さを醸し出している。名物なんだから、食べて損はないと思うんだけどなあ。

ご飯の量は一合といったところか。セットではなく単品で注文したので、「釜飯」「お味噌汁」「漬物」、以上。炊きあがるまで時間がかかるが、食べ始めるとあっという間だ。一人での来店の場合、もくもくと食べるのでなおさらだ。まるで先を急いでいるみたいじゃないか、と思いつつも、食べ終わってしまうとやることがなくなったのでお会計。どうもごちそうさまでした。

路地裏

14時前、エネルギーチャージ終了後行動再開。

食事時間を利用して、十分にこぶしの湯での蓄熱は放出することができた。これで次のお風呂にモチベーション高く浸かることができる。

さて次のお湯は「恵の湯」なのだが、路地裏にあるために大変分かりにくい。手元の地図では正しい位置関係が把握できなかった。

間違って、袋小路の道に迷い込んでしまいUターンする羽目にもなった。こういうとき、小回りがきく車なのでありがたい。

しばらくうろうろしているうちに、青と赤の暖簾が下がっている建物がちらっと視線に入った。あ、あれだ。

[第02湯 恵の湯(万代鉱源泉) 14:03]

 恵の湯(万代鉱源泉)

暖簾が下がっていなかったら、民家だと思って素通りしていたに違いない。そんな、風景にとけ込んだ共同浴場だった。ここもお湯は万代鉱。

恵の湯脱衣所

おじゃましまーす、と中に入ってみたら誰もいなかった。風呂上がりまで誰もやってこなかったので、観光客も訪れないようなマニアックな共同浴場なのかもしれない。地元の人だったら普通、お風呂は夕方に入る。こんな昼下がりに誰もいなくて何ら不思議ではない。

意外だったのが、「おっ、脱衣所が広い!」ということだった。共同浴場、というのはこじんまりしていて、脱衣所が狭いもしくは浴室と一体型というのが一般的だと思っていたが、ここはそうではない。ちょっとした銭湯くらいの広さはあるぞ。

恵の湯浴槽

恵の湯浴槽。これも結構広い。一度に複数名がやってきても押しくらまんじゅうにならずに済む広さ。

温泉の析出物

コンクリートの壁には、温泉の析出物がこびりついていた。これはちょっと意外だった。草津の温泉は何カ所か入ったことがあるが、析出物があるのは見たことがなかったからだ。そういう泉質なんだ、と思っていたのだが、そうではないということか。

ただ、この後訪れたお風呂全てにおいて、同様の析出物を見かけることはなかった。ここだけの事象。ひょっとしたらこれは析出物なのではなく、コンクリートが温泉で変質したものなのかもしれない。正体不明。

恵の湯天井

外見は非常にさりげない恵の湯だが、湯船から天井を見上げると結構高く作られている。太い梁も使われており、なかなかなものだ。外見は若干年期を感じる建物だが、中の木材はまだ新しい。そんなに古くない時期に改修したものと思われる。

それにしても、この湯をメイン浴場とする地元の方ってせいぜい数百人程度だろう。にもかかわらずこれだけのものを作るんだから風呂への気合いの入れ方が一般人とは違う。