重力がいざなうのです【奥多摩トレックリング2】

2013年10月、おかでんと10ヶ月の乳児を背負ったママさんとの二人で奥多摩を自転車で疾走した記憶はとても強く残っている。(当時の記録はこちら)

長い長い下り坂を、重力に引っ張られる快感。そしてそれが数秒といった短時間でなく、数分、なんなら数十分続くという「ありそうでない経験」。刻一刻と変化していく景色も楽しく、青梅市街にゴールしたのちに「また次もやろう!」と早速決定してしまったくらいだ。

スタンプラリー的なものを好む僕としては、一度体験したものを二度三度と味わいなおす、ということはあまりしない。それでも、すぐに「次回計画」を言い出したのは、それだけこの「奥多摩を自転車でダウンヒルすること」が楽しかったからに他ならない。

四季折々で同じコースを走るというのも変化が楽しめそうだ。また、まだこの楽しさを知らない人を引率するというのも楽しそうだ。あれこれ思案するだけでも、楽しかった。

そんなわけで2014年4月、第二回目の奥多摩ダウンヒルを開催することになった。レンタサイクルの予約が一杯になることを恐れ、3ヶ月前に仲間に声をかけ、2ヶ月前には「さあ自転車の予約を各自入れておいて!」と周知する徹底ぶりだった。

前回参加の女性(+1歳を無事に迎えた赤ちゃん)にももちろん声をかけたのだが、その日は友達の結婚式が先約で入っていたのでNGだった。3ヶ月前に声をかけていれば、大抵はオッケーがもらえるものだが、冠婚葬祭がらみなら勝ち目がない。

前回同様、山サークルの人たちに声をかけたのだが、さすがに前回僕が山サークルのMLに写真付きで「いやあすばらしかった、あれは最高だった」と激賞レポートを投稿したので反応は良かった。幹事としては意気揚々と、奥多摩駅へと向かった。

2014年04月20日(土)

奥多摩駅
トレッキング客であふれる奥多摩駅

あいにくの曇り空の下、奥多摩駅に下り立った。東京都最果ての地、青梅線終着駅。乗降客のほとんどが、地元民ではなくトレッキング客だ。みな一様にカラフルなザックやウェアを装着している。じっと見ていると目がチカチカしてしまうくらいだ。いかんな、まだ今シーズン目が山用に慣れていないらしい。

奥多摩駅前

雰囲気のある奥多摩駅。ここで全員集合という段取りになっていた。

新宿駅あたりから全員揃って電車でゴトゴト現地入り、とはならなかったのは、参加者の中に車で奥多摩に来ている人がいるからだ。えっ、車?とその計画を事前に聞いたときはびっくりしたが、マイ自転車を持ち込むのだという。おお、なんというやる気。

その人と息子さんのコンビは、ゴール地点である河辺まで車でやってきて、輪行袋に自転車を詰めて電車で奥多摩駅に到着していた。終わったら、そのまま河辺から車で帰宅という段取りだ。

他にも、自転車は現地でレンタルするんだけど、奥多摩まで車でやってきました・・・という人もいた。この人は、河辺でサイクリング終了後奥多摩に戻るのだという。これはこれですごい。またスタート地点に戻るだなんて。

一般的なレンタサイクルによるサイクリングというのは、スタート地点とゴール地点は同一だ。しかし今回の奥多摩ダウンヒルはスタートとゴールが30キロ近く離れている特殊な形だ。車で参加するというのはそれなりに大変だ。

「終わってから、また奥多摩駅まで電車で戻ってくるだなんてタルくないですか?」

マイカーだけどレンタサイクル、という方に聞いてみた。そこまでしてマイカードライブをしたいのか?いうのが理解できなかったからだ。するとその方は、

「実は大菩薩峠のほうの温泉に宿をとってて、そこで一泊するんですよ」

と嬉しそうに教えてくれた。おおう、そういうことか。サイクリングで疲れた足をそのまま温泉直行で癒す。アンタ最高だ。

こうやって参加者みなさん、自身や家族の楽しみや癒しと組み合わせて今回の企画を捉えてくれているのは幹事冥利に尽きた。

奥多摩駅の駅前売店

河辺から輪行してきた親子は、駅前で既に自転車を組み立ててブレーキのチューニングを行っていた。やるなあ。お子さんは中学1年生の男の子で、よくぞまあこんなおっさん達のサイクリングに付き合うものだと感心する。第二次反抗期前の、最後の従順なのだろうか。でも、アウトドア好きなんだからいい大人に育ちそうな予感。

奥多摩駅前では、臨時屋台が出ていていろいろなものが売られていた。お茶やビール、地場産のきのこ類、わさびなど。これからの旅のおとも向けというものよりも、どっちかというと奥多摩みやげを買って都心に帰るとき用のものが中心だった。いろいろ興味深かったが、まさか「あわび茸」を買ってザックに詰めて、自転車を漕ぐという気にもなれなかったのでパス。

トレックリング外観

全員集まったところで、奥多摩駅前でレンタサイクルを営むお店「トレックリング」に向かった。

誰かが遅刻した場合、次の電車までかなり間が空いてしまう。東京都とはいえ、ここは山奥。そんなに便数が多いわけじゃない。なので、万が一があったらやばいなあと思っていたのだが皆さん問題なくオンタイムで集合できた。

相変わらずトレックリングのお店の外は、派手な看板などは出ていない。うっかり見落としてもおかしくないくらいだ。

トレックリング黒板

トレックリング店頭の黒板。

原則ここで自転車を借りる人は、事前予約をしてから訪れるので、ここで大々的に宣伝をする必要がないのだろう。地味目に書かれている。

青梅で乗り捨てOK!
電動自転車で奥多摩湖や日原鍾乳洞にも行けます!

と書いてある。ちなみに今回は、前回と全く同じ道を使うつもりだ。人数が増えたことだし、既に経験がある道を僕が引率したほうが良いと判断したからだ。いずれこの企画で回数を重ねることがあれば、日原鍾乳洞などにも行ってみたいものだ。

ちなみに、このトレックリングのうわさを聞きつけた友人が自転車を借り、友達と日原鍾乳洞を目指したそうだが、途中の坂道でへこたれてしまったらしい。本人は「道中の渓谷を楽しめたから満足」とは言っていたが、電動アシスト付きの自転車じゃないと素人には難しい場所なのかもしれない。

トレックリング店内には自転車いっぱい

トレックリングの店内。自転車がいくつも並んでいてワクワクさせられる。もう既に借りる自転車は予約段階で決定しているのだけど。電動アシスト付き、クロスバイク、マウンテンバイクあわせて10種類以上の品揃えがあり、それぞれにサイズ違いもある。自分の好きなものを選べる半面、希望の車種やサイズが選べない場合があるので注意が必要だ。僕のように身長がそこそこある人の場合、Lサイズの確保は必須なのだが、少ない数のLサイズを予約するためには結構早めの手配が必須となる。

出迎えてくれたトレックリングの店員さんは、僕のことを覚えていた。

「ええ、よく覚えていますよ、小さな赤ちゃんをおぶっている方とご一緒でしたよね」

半年も前のことなのにびっくりだ。そんなに印象深かったのか。まあそうか。赤ちゃんを背負ってレンタサイクル、なんて後にも先にも例がなかったそうだ。

サイクリング計画は入念に

書類に記入したり身分証明書を提示したりといった事務処理を行ったのち、店員さんから道中の説明を受ける。

基本的には前回同様、お店からいったん奥多摩湖を目指し、そこでお昼ご飯。その後ダウンヒルを開始し、青梅市の河辺駅近くにある「自転車コーキ屋」にて自転車を返却する予定だ。今回は屈強な男どもしかいないので、前回よりも早く下山できそうな予感。

ただし、ルート上に問題があった。前回は、奥多摩駅から奥多摩湖までの間を、「むかしみち」という青梅街道旧道を使って走った。これが今回は使えないという。

「むかしみち」の方が風情があるし、道中みどころがいくつもある。さらには、トンネルの数が少ないので安全でもある。しかし土砂崩れがあり、道がふさがってしまっているというのだから仕方がない。おとなしく、車がびゅんびゅん走っている現在の青梅街道を走ることにした。

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