13:01
車は修善寺温泉へ。
修善寺エリアは何度も訪れたことがあるのだけど、肝心の「修善寺温泉」に足を踏み入れたことは一度もない。これは僕に限らず、案外多くの人がそうなんじゃないだろうか。
というのも、車で西伊豆を目指した場合、多くの場合は修善寺を経由して土肥(とい)に抜けていくルートとなるのだが、修善寺温泉の脇をビューンと素通りしてしまうからだ。また、電車で伊豆箱根鉄道修善寺駅に到着しても、これもまた温泉街からは離れている。
つい最近まで、僕は修善寺駅の周辺が温泉地なのだと勘違いしていたくらいだ。
修善寺温泉の中心部あたりは道幅が狭く、車の駐車スペースがあまりないようだ。
集落の手前に駐車場があり、そこに車を停める。
13:04
大きな建物が見える。旅館だろうか、それともマンションだろうか?
こちらから見る限り、マンションに見える。きっとマンションだ。だって、バルコニーがあって、そこに何やら洗濯物が干してあるっぽいぞ?さすがに旅館でそれはないだろう。
大穴として、「老人ホームでした」ということもあり得るけど・・・さて。
あれっ。「ホテル滝亭」と書いてあった。これ、ホテルなのか。
えー。それにしてはやけに俗っぽい建物だな、と思って地図で調べてみたら、ホテル滝亭と同じ敷地内に「セザール修善寺」というマンションが2棟、建っていた。
ホテルの大浴場も使える、リゾートマンションということらしい。今なら中古最上階眺望良しの部屋が290万円で売りに出されている。欲しい人は是非どうぞ。都心の会社に通う、というのはちょっと無理な立地だけど。
13:07
修善寺温泉の中心地に向けて、のんびりとした景色が続く。
「スナックみんなの家」だって。のどかな店名だ。
13:09
なんとなく温泉街っぽくなってきた。やはり「温泉」「伊豆」「寺」というキーワードから、蕎麦屋を営むお店が多い印象だ。ただし、伊豆半島で蕎麦が生産されているわけではない。
ただし、やっぱり温泉地にいけば定番ともいえる「廃墟」もある。ここは「水月」という温泉旅館があったようだけど、カーテンが閉まり、営業をしている気配がない。
良い立地で商売になる、と判断する人がいれば、買い取り手も出てくるだろう。でも、全国各地の温泉地で廃墟がしこたまあるのは、「ここで商売をやっても儲からない」と思っている人が多い、というわけだ。
「温泉が出ます!」というのは売りになるはずだけど、今時はスーパー銭湯でも「地下1,500mから汲み上げた天然温泉」なんてのを提供している。少々のことじゃ、客は寄りつかないということか。
これが濁り湯のような、特徴がくっきりした温泉地だったらどうなんだろう?そんな温泉を自分ところの風呂で楽しめます、というのは差別化が図れる。そういう温泉地だったら、廃墟旅館は少ないのではないか?・・・と思うけど、この推測はどうだろうか。
でも以前、磐梯山の裏手にある「中ノ湯温泉」の脇を通り過ぎたっけ。あそこは、建物周辺が青白い温泉をたたえた沼地になっていて、かなりワイルドだった。
それでも、宿自体は廃墟だった。惜しい。すごく惜しい。ポテンシャルとシチュエーションは最高によいのだけど。
13:13
いよいよ道が狭くなってきた。
確かにこれだと、温泉街手前に駐車場を作っておかないと大混雑になる。
13:14
日枝神社の鳥居。
奥にはうっそうと茂った鎮守の森。
せっかくだからお詣りしていく。
手水舎で手を清める。
この手水舎で、龍の口から出ている水は温泉だそうだ。アルカリ性単純泉。さすが修善寺温泉。
隣に、地名の由来となった「修善寺」があるので、こちらも参拝。
曹洞宗のお寺ということだが、弘法大師が開創したのだという。ええ?何でやねん。しかし、調べてみると、最初は(当たり前だけど)真言宗のお寺としてスタートしたのだけど、室町時代に曹洞宗に宗旨替えをしたとのこと。ああびっくりした、弘法大師が禅にも関わっていたのかと思った。
そんな経緯があってか、このお寺のご本尊は大日如来だ(大日如来は、真言宗においてもっとも位の高い如来とされる)。
それにしても弘法大師、一体何人存在したんだよ。たった一人で全国行脚して、お寺を建てまくったとは到底思えないのだけど。さすが大師と呼ばれるだけあって、凡人とはスケールが違う。
13:27
川の中州部分にあずまやがあり、岸から橋が渡されている。
あそこが、修善寺温泉由来の地と言われている「独鈷(とっこ)の湯」だ。
今は足湯として使われていて、誰でも無料で足湯を楽しむことができる。
この日は、東南アジアから来たと思われる親子が先客でいた。今更驚くことじゃなくなってきているけど、本当に外国人観光客は日本の隅々まで現れるようになった。
対岸に、古めかしい重厚な宿が見える。「花小道」という宿で、江戸川乱歩も愛したとか。
修善寺は全体的に、「社員旅行・団体旅行大歓迎!さあコンパニオン呼んでどんちゃん騒ぎをやりましょう!」というような大型旅館がない。そのかわり、広い敷地に日本庭園があって、能舞台もあります、といった風情を追求した宿がいくつもある。
交通が便利すぎない分、高度経済成長のイケイケムードに圧倒されずに済んだのだろう。
(つづく)
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