14:11
旅の駅で「ちんちん揚げ」に驚いたあと、次の目的地を目指す。
目指したのは、城ヶ崎海岸にある「門脇吊橋」。
城ヶ崎海岸といえばこの吊橋、と言ってもいいくらい、有名な観光スポットだ。
なにを今更感がある場所だけど、実は一度も訪れたことがない。この門脇吊橋に限った話ではなく、今日一連の立ち寄り地や食べたもの、ほぼ全てが未体験のものだ。
車があると、ついついびゅーんと途中をすっ飛ばしてしまい、最終目的地に向かってしまう。なので、途中にそこそこ有名な観光地があっても、素通りしてしまっている。
「東伊豆?何度も行ったことがあるよ。大体わかってる」
と思っていたけど、それは「雰囲気がわかっている」だけであって、観光地としてはほとんど理解していなかった。
まあ、旅行ツアーガイドじゃあるまいし、全国各地の観光地に精通する必要はないのだけど。
とはいえ、「わかっているようで、わかっていない」ことが多いことにあらためて驚かされる。城ヶ崎海岸は、以前一泊したことがあるというのに。
椰子が街路樹になっている道を走り、海岸線を目指す。
えーと、分岐がある。
右に行ったら「吊橋遊歩道P」、左に行ったら「門脇吊橋・灯台P 900m」。
どっちに行ったら正解なんだ?僕らは吊橋に行きたいだけなんだ。
正解は、左。
「吊橋遊歩道」というのは、城ヶ島海岸沿いにずっと伸びている遊歩道で、吊橋から南に離れた場所にある伊豆海洋公園を起点として、伊豆急行富戸駅まで伸びている。吊橋はその間に位置している。
海沿いの遊歩道を隅から隅まで歩くと、だいたい2時間。城ヶ島観光を旅の主目的にするならそれも楽しいだろうけど、今回はパス。なにしろ小雨が降っている。吊橋だけ見て、引き上げよう。
ちなみに、紛らわしいといえば、この界隈には「橋立」という吊橋もある。「伊豆高原界隈の吊橋」で調べたら、この二つの情報がごちゃ混ぜになっていることがあるので注意。
・・・おい、お前、「一度も訪れたことがない」くせに偉そうなことを言うか。ついさっき覚えたばかりの知識なのに。
14:14
駐車場があった。全く海は見渡せないけど、どうやらここが門脇吊橋の最寄りらしい。
うお、有料なのか。普通車、500円。やるなぁ。
僕ら、吊橋をちょちょいと見て、それで帰るのでせいぜい10分15分なんですけど、もうちょっと値引きは・・・あ、無人ゲートですか。値引き交渉する相手がそもそもいない。
今更「利用しませんさようなら」というわけにはいかないし、かといって路駐するのもまずい。おとなしくお金を払うのです。そして心清らかに、何の憂いもなく吊橋を見に行くのです。
駐車場から門脇吊橋まで、100メートルちょっと。近い。
あ、吊橋が見える。
14:22
門脇吊橋。
その奥に、門脇灯台が見える。
観光向けの吊橋。小ぶりの岬二つを海上で結ぶ、長さ48メートルのもので、昔の地元民が使っていたというわけではなさそうだ。
定員は100名、と書いてあるけど、誰かがカウントしているわけではない。なので、「そろそろ100人かな・・・」と思ったら、次の客は吊橋上が空くのを待つほうがいい。とはいっても、100人も一度に乗るようなことは滅多にないとは思うけど。
エレベーターの「定員」と一緒だ。あの定員通りきっちりと客が乗ったのは、見たことがない。定員になる前に、「重量オーバーですよ」という「ブー」というブザーが鳴るし。
門脇吊橋と、門脇灯台。
門脇灯台は展望台が備わっている灯台なのだそうだ。なので、灯台にしては形が変だ。
伊豆高原にある、お椀型の綺麗な形をした山「大室山」。山焼きを毎年して、木々が生えていないツルンとした山肌ということもあって美しくもあり、不気味でもある。
もちろん火山噴火によってできた山なのだけど、その溶岩が海に流れ出したのが、この城ヶ崎海岸。
おいおいおい、どうなってるんだよ。山自体はすまし顔で美しいフォルムなのに、やってることは大違いでこんなに荒々しいじゃないか。デトックスして、汚れたものは海に投げ捨てたのか?
溶岩が流れ出して出来た大小様々な岬。
その隙間に波が打ち寄せて、岩が細かくなっている様を吊橋から見下ろすことができる。
波打ち際は大きな岩、そして奥に行くに従って、だんだん細かい石になる。
こうやって波によって石が削れていくなんて、何千年何万年という規模感の出来事だ。それにくらべてなんと自分の人生がちっぽけなことよ。・・・ならば、少々悪いことをやっても、きっと神様仏様は許してくれるに違いない。
やめなさい、そういう開き直りは。
でも僕は多分地獄には落ちない。だって、「蜘蛛一匹を踏み潰さなかった」というだけで、仏様はカンダタを地獄から救って天国に招き入れようとしたんだ。僕は蜘蛛一匹どころか、もっと沢山の命を助けている。
というか、カンダタ以外の地獄にいた人達って、一体どれだけ極悪非道に徹していたんだろうな。蜘蛛一匹さえ、助けたことがないということは、目に付くもの全ての動植物を殺戮しまくっていたに違いない。ひどい。
(つづく)
コメント